拙い文章ですが、読んでくれるとありがたいです。
第1話
「お疲れ様です!」
「はい、お疲れ様。今日もありがとうね蓮くん」
この春、高校三年生となった。といっても進級する前と特に変わり映えはなく、こうやって顔見知りのところの手伝いを買ってでたり、バイトに没頭したりする日々が続いている。
今いる旅館『十千万』もその一つで、定期的に手伝いにきていて、今終わったところだ。
東京暮らしの母に代わってこの旅館を実質的に切り盛りしている高海家の長女の志満姉さんに挨拶をして帰ろうとすると、慌てた様子の二人の少女に呼び止められた。
「あっ蓮くん待って待って!」
「うん?どうした?」
呼び止めたほうの子はこの家の三女の高海千歌。隣にいる子は渡辺曜。二人ともとても明るく人懐っこい性格で、この旅館に訪れる際に頻繁に会い、すぐに打ち解けて仲良くなった。
「あのね、手伝って欲しいことがあるんだ!」
「手伝うって何を?」
いつも宿題手伝ってとか、お菓子ちょーだいとかよく頼まれたりすることはあるが、今回はいつになく真剣だ。
「私たち、スクールアイドルがやりたい!」
「……スクールアイドル?」
「知らない?スクールアイドルってねー」
「知ってるよそのくらい」
知っている。
『スクールアイドル』
それはかつて身近にあって自分も関わっていたもので。複雑な思いとともに思い出す。
「なんでまた?」
「μ'sみたいになりたいの!」
μ's。それは確か、数年前のラブライブ王者の伝説のスクールアイドルだったか。
……そういえばあいつも大ファンだったっけな。
「やるって言ったって大変だぞそれ。大丈夫か?」
「大丈夫!やるったらやる!」
じっと千歌の目をみて聞く。
「本気か?」
「もちろん!全力でやる!」
何が何でも絶対にやりたいというその目はとても輝いてみえた。これからあるであろう困難なんて微塵も考えていない目。それでもやりたいから全力でやる、全力で突っ走るようなその意思がとても魅力的に思えた。
それはまるで、いつしかの彼女らの目をみているようで……
「わかった。できる範囲でなら何か手伝うよ」
「ほんと!?やったー!!」
本当に嬉しそうに喜んでくれている千歌と曜。そこまで喜んでもらえるとこっちも嬉しくなる。
「で、今何で困ってるんだ?というか二人以外何人いるんだ?」
「まだ二人だけだよ?」
「え?」
二人だけ?まぁ二人のスクールアイドルも普通にいるんだろうけど……。
「浦の星女学院ってそれで部としての認可おりるか?部としてやるんだろ?」
「それがさぁ!人数集めても生徒会長がスクールアイドル部は絶対に認めないって言ってて!」
「生徒会長が?なんでまた」
すると、曜が言いにくそうに口にした。
「なんか、そういうのを嫌ってるって噂で……」
嫌ってる、か。
あれ?でも確か……。
「そっちの生徒会長って、ダイヤだったよな?」
「えっ知ってるの!?」
「あぁ…中学で同級生だったよ」
高校に入ってからの付き合いの方が濃かったけど。
「あいつ、スクールアイドル大好きだぞ?」
「「えぇっ!?嘘!?」」
信じられないと二人は驚いたようだ。
あの三人の中でもダイヤは群をぬいてスクールアイドルが大好きだったというのに。数々のうんちくを聞き流した身としては、そんなあいつがスクールアイドルが嫌いだということのほうが信じがたい。
「ほんとかなぁ?」
「嘘じゃないぞ。今度聞いてみたらどうだ?」
まぁその様子だと素直には認めなさそうではあるけど。
それにしても、ダイヤがそんなこと言ってたのか……。
「まぁ、それもどうにか出来たらどうにかしてみるよ」
「そんなことできるの?」
「わからんけど、やるだけやってみるよ。手伝うって言ったんだしな」
本気でやりたいなら尊重してあげたい。手伝ってあげたい。
「「ありがとう!」」
「いえいえ。お前らも勧誘頑張れよ?そもそも人数足りてないんだから」
「了解だよ!今ね、すっごくかわいくてきれいな東京からの転校生誘い続けてるの!」
「そりゃあ見てみたいな。続けてるって、中々okもらえないのか?」
「あともうちょっと!あともうちょっとでいける気がするんだよ〜」
「そうは見えないんだけどなぁ……」
曜の苦笑いを見る限りあまりうまくいってはいないようだ。まぁいきなりスクールアイドルなろうって言われても困惑するのは想像に難くない。
「そろそろ帰るよ。スクールアイドル、うまくいくといいな」
「うん!ありがとね!」
バイバーイ!と手を振る二人に別れを告げ、帰路についた。
スクールアイドル。
また関わることになるとは思わなかった。今でも思い出す。楽しかった活動の日々とその終わりを。
〜〜〜
『そうならそうと本人に言えばいいじゃねぇか!!あいつからすると急に裏切られたようなもんだぞ!?』
『言ってどうなるの!?鞠莉が聞いてもここに残ろうとするに決まってるじゃん!私たちの都合で鞠莉の将来を奪うの!?』
『あいつがどうするかを決めるのはあいつ自身だ!!それでもスクールアイドルがしたいっていう意思は無視するのかよ!?』
〜〜〜
「……っ」
思わず顔をゆがめた。あれっきり一度も会っていない。
スクールアイドルを手伝うことで過去を思い出して複雑な心境になることは否めない。
……でも。目標に向かって全力で頑張りぬこうとしている意思をみると、どうしても応援したくなる。
ーーそういうの、好きなんだよ。
たとえあの時の二の舞になる可能性があるとしても、支えてあげたい。
そうならないように、応援したい。
「さて、どうするかだけど…」
スマホを取り出し、通話アプリである人物に連絡をとると、相手はすぐに反応してくれた。
「ハロー、もしもし?」
「おう、相変わらずだな。マリー」
「急なんだけど話したいことがあってさ」
「浦の星女学院の子が、スクールアイドルをやりたいんだってさ」
本編はアニメベースでシリアス寄りで進行して、短編で各キャラに焦点をあてたほのぼのした話を投稿する予定です。
ご意見ご感想お待ちしております。