〜生徒会室にて〜
「何度きても同じことです!」
「ぜっっったい認めてくれるまで何度でも来ます!」
「私は絶対にスクールアイドル部は認めませんわ!」
「で、でもでも!μ'sのこと詳しかったし…」
「あ、あのくらいは一般教養と言ったでしょう!?」
「それに!実はスクールアイドルのことが大好きって聞きました!」
「そんなことどこの誰がそんなこと言ってましたの!?」
「秋月蓮くんです!」
「……っ!?」
「あれ?同級生だったって聞いたんですけど……」
「……その通りですわ。彼と、どういう関係なんですの?」
「え?えっと、家の旅館にたまにお手伝いにきてくれてて、スクールアイドルも手助けも引き受けてくれました!すごく優しい人です!」
「…………そう、ですか」
「どうかしました?」
「なんでもありませんわ。もう話すことはありませんから早く退室なさい」
「で、でもまた来ます!」
「……」
ーバタン!
「……」
「……蓮」
〜〜〜
「久しぶりだな、ダイヤ」
「えぇ、久しぶりですわね」
もう長らく会ってなかったダイヤに急に呼び出された。呼び出しのメールを見たときはすごく驚いた。正直気まずさもあって、ちょっと緊張している。ダイヤ相手に緊張する日がくるとは思ってなかったよ。
「二年ぶり、くらいか?」
「えぇ、蓮が私におおよその事情と果南さんの場所だけ連絡してきて以来そのくらいですわね」
バツが悪くなって思わず顔を背けてしまった。
「その、後のこと全部任せたのは悪かったと思ってるよ」
「まったく…あの後果南さんが今までで見たこともないくらい大泣きしていて大変だったんですよ?」
「今はもう大丈夫なのか?」
「自分で連絡して確認してみてはどうですか?」
「……」
言葉に少し棘を感じる。
「まぁ今日はその話がしたくて呼んだわけではありませんわ。その話は今私たちが話しても仕方のないことです」
「そう、だな。それで、何の用だ?」
「スクールアイドルの手助けをする、と言ったらしいですわね」
やはりそのことか。タイミング的にも心当たりはそれしかなかったけど。
「どういうつもりですの?」
「どういうってそのままだよ」
「本当にやれると思っているの?」
「やってみなきゃわからん。でもそう簡単にあいつが折れない意思をもっているのはみててわかるだろ?」
「……そういえば、蓮はそういう人に弱いんでしたね」
流石よくわかっていらっしゃる。そもそもお前らを支えていた時だって、同じ理由だったんだ。
「それでも、これから絶対に折れないとは限りませんのよ?」
私たちが今、こうなっているように。そう暗に言っているかのようにダイヤは俺に問う。
「そうならないようにするのが、まわりのメンバーや俺の役目だ」
「そうですか」
ダイヤは目を伏せて何やら考え込んでいる。今、何を思っているのだろうか。
「お前はスクールアイドルを絶対に認めない、と言ってたそうだな」
「えぇ、その意見は変わりませんわ」
「お前自身、やってみたいと思わないのか?」
今でもスクールアイドルが大好きなことには変わりないはずで。
「そんなこと、出来るはずがありませんわ」
「まぁ、そりゃそうか」
果南やマリーを差し置いて、自分だけもう一回スクールアイドルやりますなんて、言えるはずもないことは容易に想像できる。
「でも認めてもらえないのは困るな。明らかに私情じゃないのか?」
「何を言われようと、私は認めませんから」
聞く耳持たず、か。相変わらず頑固なやつだな。でも手は打っておいた。
「まぁその話については適任者に任せることにする」
「適任者?」
「今週末、マリーがこっちに帰ってくるから」
「はぁっ!?」
スクールアイドルを本気でやりたがってる子がいること、中々それが認めなられないことを伝えたらこっちに帰ってくることを即決したようだ。こんなに早くくるとは思わなかったけど。
「これで晴れてマリーは小原理事長というわけだ。認める認めない云々はそっちに任せる」
「理事長!?学生がなれるわけないでしょう!?」
「あー、その説明は本人に聞いてくれ。俺から話しても信じれんだろ」
俺だってまだ半信半疑なんだよ。改めて小原家の偉大さを思い知った。
それに、俺が伝えなくても遅かれ早かれスクールアイドルの噂をキャッチしてこっちに颯爽と現れることになっていたように思う。マリーだからな。
「それに、期待してるんだよ」
「あのスクールアイドルをやりたがっている子たちを、ですの?」
「それもあるけど」
「すれ違った俺たちがわだかまりを解いてまたあの頃のように過ごせることを、だよ」
漠然と、マリーが帰ってくることで何か変化が起こり、そうなることを期待している自分がいる。
〜〜〜
翌日、お手伝いとは別で、十千万に新しいメンバーも含めて集まっていた。
「で、勧誘できたのか?」
「うん!こっちの梨子ちゃんが曲づくりも兼ねてやってくれるんだって!」
「こ、こんにちは…」
「はい、こんにちは」
この子が東京からきた転校生という桜内梨子ちゃんか。人見知りなのかな?ともかく、千歌が絶賛するだけあってかわいいな。あとアホの子っぽい千歌と並ぶとすごくまともそうにみえる。
「初対面のときはね、まだ4月なのに海に飛び込もうとしてたんだよ!」
「そ、そのことはいいから!」
前言撤回。やっぱりちょっと変な子だったようだ。
「でも、作曲が出来る子がいるのはいいな」
「梨子ちゃんすごいんだよ!」
「そ、そんなこと……」
「十分すごいよ」
俺も素人ながらも、過去に作曲をしようとしたことがあったが、付け焼き刃ものの勉強程度では中々上手くいかなかった。作曲出来る人はすごいなと強く感じたものだ。
「でもまだ私が歌詞を考えれてなくて」
「だめじゃん」
えへへ、と笑う千歌。まぁそれも大変なのはわかるけど。何やら恋愛ものの曲が作りたいらしい。
「それで、何か参考になる恋愛話、ない?」
「ないよ」
俺は恥ずかしながら恋愛経験がほぼ皆無だ。自分で考えててなんとなく情けない感じもするが。多分、そういうのに臆病なんだと思う。
「ほら、彼女とか!」
「いないって」
「いないんですか?」
「いないよ」
梨子ちゃんが意外そうに見てくる。いるようにみえるのだろうか?
「じゃ〜元カノとか!」
「あー、まぁ、いなかったようなもんだよ」
「「「いたの!?」」」
話していた二人に加えて、ずーっと黙々と衣装を製作中だった曜までもが激しく反応した。女子高生この手の話の食いつき良すぎなんじゃないかな。
「お前らが考えるような甘々なことはなんもしてないよ。恋愛経験ほぼ皆無なんだって。だから参考にもならんよ」
「う〜気になる」
「趣旨ずれてるじゃねぇか。歌詞作りたいんだろ?」
「そうだけど…」
ここにいる面子どの子もそんな経験はないようで中々進まなかった。女子高では誰かと付き合ったりとかは少ないのかな。多分。
「こい、恋か」
あまり自分では考えたことがない。考えて向き合うことが怖かったというべきか。
もし、俺に好きな人が明確にいるとしたら、それは誰なんだろうか。
ありがとございました。