初音島物語   作:akasuke

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次からの前段ということもあり、少し短めに。


episode-39「誰かの、その夢は」

 

 

 

 

 

episode-39「誰かの、その夢は」

 

 

 

 

 

 

 

魔法。

それは、人智の及ばない、 非科学的な現象の総称だ。

 

様々な物語に登場し、誰もが一度は魔法を使ってみたいと憧れる。

しかし、どんどん成長していくと人は諦める。

魔法は空想上の産物であると理解するからだ。

 

でも。

それでも、もし自分が魔法を現実で使えたら。

 

そのように。どこかで淡く、小さい期待に胸を膨らませる人々も少なくない。

 

そんな中。

 

 

 

――あぁ、この感覚は……。

 

久しぶりだな、と。

桜内 義之は、動けない自身に対して驚きもせず、いまの自分の状況をぼんやりと理解した。

 

 

桜内 義之は、魔法使いである。

ただし、彼は自身が魔法が使えることを特に誇ったことはなかった。

 

それは、彼が二つの魔法しか使うことが出来ないからである。

 

ひとつは、和菓子を手から出すことができる魔法。

好きな和菓子を生み出すことが出来るのは凄いことなのかもしれないが、作り出した分だけお腹が空くので義之はそこまで有り難くは感じなかった。

 

そして、もうひとつは。

 

 

――また、誰かの夢を見させられているのか。

 

他人の夢を見させられる魔法。

意図して見ることも出来なければ、その夢に介入出来るわけでもない。

義之からしてみれば、はた迷惑な能力であった。

 

しかし、夢を見るのを止めることが出来ないのは何十、何百回も見てきたから分かっていた。

義之は素直に夢に意識を集中させるのであった。

 

 

ぼやけてた景色が徐々に色付き始める。

そして夢で映り出した先は、義之がどこか見覚えのある場所であった。

 

 

――これは…風見学園、だよな? 

 

この夢を見ている人物が歩いている場所は、義之たちが居る風見学園の校舎と酷似していた。

少しだけ違和感があるのは夢だからであろうか。

義之が多少の疑問を抱く間に、夢の人物は校舎の窓から下を見下ろした。

 

そこから映る中庭には、四人の男女が佇んでいた。

正確には、とある男女が対峙し、その男女に二人が付き添う形である。

 

中庭にいる人物に対して、義之は驚きを感じた。

 

 

――あれは、由夢…音姉…いや、違う。

 

女生徒は、由夢に、いや音姫にだろうか。

どこか少し似ている気がした。

それだけではなく、他の人物には杉並やななかに、少し雰囲気が似ていたりしたのだ。

 

 

『おかしいよね、兄さん。 兄妹でこんな……』

 

『あ、あぁ…変だ、どうかしてる。これじゃあ、まるで――』

 

恋人、だな。

杉並に似ている人物が、ニヤリと笑みを浮かべ、後ろから二人に語り掛けた。

 

 

『『…………っ!』』

 

その言葉を述べた人物に二人は思いきり振り返った後、顔を見合わせて照れた様子を見せていた。

 

その二人の様子を見た義之は、胸から感情が溢れてくるのを感じた。

 

 

――これは……、喜び?

 

義之は、同調している夢の人物と気持ちが共有される。

彼の胸には喜びが溢れてきていた。

 

夢の人物が周りに視線を向けると、周りには同じように窓から中庭の二人を見て笑ったり喜んだりしている女生徒たちが居た。

それを見て、更に喜びの感情が強くなった。

 

しかし。

その喜びの感情が一瞬にして、別の感情へと塗り潰された。

 

 

『兄さん、わたしっ……――』

 

女生徒が兄と呼ぶ人物に伝えようとした、その時。

急に、彼女の前に桜吹雪が舞い、女生徒が崩れ落ちるように倒れたのだ。

 

 

『――っ』

 

崩れ落ちる女の子へと慌てて男子生徒が駆け寄る。

そして、付き添っていた二人や窓越しで見ていた女生徒たちも同じように向かって行っていた。

 

 

そんな中。

夢の人物だけは呆然と立ち尽くしていた。

 

そして、感情が一気に喜びからマイナスの感情に書き換わる。

悲しみ。苦しみ。あと、罪悪感だろうか。

 

 

『わたしの、せいだ』

 

視線が定まらない状態のまま、夢の人物がつぶやく。

誰かに聞かせるわけではなく。

思わず、自身の気持ちが口から自然と漏れてしまったかのように。

 

 

 

 

 

『わたしが…桜を咲かせたから』

 

 

 

 

『わたしが、魔法の木に願ったから』

 

 

 

 

『わたしの、せいだっ!』

 

 

 

 

『―――っ―――!』

 

 

周りから誰かの声が聞こえるが、夢の人物はただただ走り続けていた。

そして、その視界に映る光景が徐々にぼやけ、色褪せ始める。

おそらく、夢から醒め始めているのだ。

 

 

――ま、待ってくれ! さっきの言葉はっ……、この夢の人物はいったい…っ!

 

義之が慌てて言葉を掛けるが、夢に介入する力は彼にはなく。

 

 

 

そして―――。

 

 

 

 

 

 

――――――――――――

 

 

 

―――――――――

 

 

 

――――――

 

 

 

―――

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりに、懐かしい夢を見ちゃったな……」

 

とある少女は、夢から目が覚めた後につぶやいた。

 

懐かしく。

そして、泣きそうになりながら。

 

 

 




D.C.S.S(ダ・カーポ セカンドシーズン)は、わたしがD.C.を、美少女アニメを知る切っ掛けでした。

D.C.II P.Sのとある少女のルートは、わたしが最も大好きで涙を流しながら嬉しくなったルートでした。


さて、ここからどんどん物語は進んでいきます。
また見て頂けたら幸いです。
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