こちらに感想を書いてくださる方々は、D.C.が好きなんだなって感じます。
一人ひとりの感想に、D.C.作品やキャラへの想いが溢れている気がします。
印象に残るのも、D.C.作品の魅力ではないでしょうか。
それでは、本編をどうぞ。
episode-7「朝の出来事」
珍しいな、と。
いつも通り、朝に芳乃家に向かった音姫が、キッチンであまり見ない人物がいたことにより抱いた感想である。
「あれ、さくらさん。 おはようございます」
「あ、音姫ちゃん? おはよー!」
音姫の挨拶に、料理をしながら顔だけ振り返り、さくらは笑みを浮かべながら挨拶した。
「さくらさんが朝食つくるなんて、珍しいですねー」
「にゃはは、久しぶりにご飯つくりたくなっちゃってね!」
朝早く起きて作ってるんだ、と。
音姫の問いに、張り切った様子を見せるさくら。
普段は起きる時間も少し遅いので、あまり見掛けることもない。
なので、朝に会うこと自体が珍しいのだが、朝食を作るのなんて特に珍しいなと思う。
張り切った様子も、音姫には何だか気になった。
「さくらさん、何だか今日はやけに機嫌がいいですね。 何かあったんですか?」
「あはは、ちょっと、いや、すっっごく嬉しいことがあってね!」
それが何かを聞こうと思ったが、
もうすぐ朝食できるから居間で待ってて、と言うさくらに、音姫は返事をしながら居間に向かった。
その居間には、由夢と義之がいたが、義之は何だか少し落ち着かない様子を見せていた。
「あれ、弟くんどうしたのー?」
「い、いや、なんでもないよ音姉」
音姫が尋ねるも何でもないと返され、疑問に思いながらも普段の定位置に座る。
そのタイミングで、できたよーと、さくらが朝食を持ってやって来たのであった。
並べられる朝食のおかずを見て、由夢が驚いた表情を見せる。
「あれ、なんだか今日の朝食、品数が凄い多いですね」
由夢が驚くのも無理ないな、と音姫は思った。
何せ、音姫も同じように思ったのだから。
音姫や義之も朝食は手を抜かず毎回作っているが、その品数より3、4品多いのである。
しかも朝から重くならないように気を遣った品々であり、これは作るのに時間が掛かっただろうな、と思った。
さぁ食べて食べて!と急かすさくらに、音姫や由夢、義之は食べ始める。
「うわっ、美味しいです、さくらさん」
「ありがと、由夢ちゃん!」
料理を食べた由夢が、素直に食べた感想を述べる。
嬉しそうにお礼を言うさくらを尻目に、確かに凄い美味しいなと思う音姫。
そして、さくらは今度は義之の方に視線を向け、尋ねる。
「義之くんは? 美味しい?」
美味しいですよ、と何故か照れた様子を見せながら感想を述べる義之。
そんな義之を嬉しそうに見つつ、これも食べてと色んな料理を差し出すさくら。
義之に甲斐甲斐しく世話をするさくらの様子に、何かあったのかなと疑問に思う由夢と音姫。
そして、音姫は、キッチンで話した内容について改めて質問を投げる。
「そういえば、さくらさん。 凄く嬉しいことがあったって言ってましたけど、何があったんですか?」
「うんっ! 今までで1番嬉しかったって言えることがあったんだ! 聞きたい? 聞きたい?」
「は、はい、聞きたいです」
どうしようかなーと、にやにやした表情で言うさくら。
音姫も由夢も、悩んでいるように見せながらも本当は言いたいんだろうな、と理解する。
「さ、さくらさん、ご飯のおかわりが欲しいです!」
何かを遮るように、大声で言いながら、茶碗をさくらに差し出す義之。
え、もうっ、すぐに持ってくるからっ、とさくらは嬉しそうにキッチンへと向かう。
「……で、何をやらかしたんですか、兄さん?」
そんな一連の様子を眺めていた由夢が、ジト目で義之を見ながら尋ねる。
明らかに、さくらの張り切った様子は義之が何かしたからだと理解したからだ。
「し、知らない」
「ほんとーですか?」
「気になるなら、さくらさ…いや、機嫌が良いんだから問題ないじゃないか」
この話は打ち切りとでも言いたげな義之に、溜息を吐きながら由夢は、わかりましたよ、と返した。
その直後に、もってきたよー、と大盛りのご飯を差し出すさくら。
茶碗に盛られるご飯の量をみて、冷や汗を流しながら義之は礼を言う。
――仕方ないから、お姉ちゃんが一肌脱ぐかな。
そうだ、さくらさん、と。
先程の話はして欲しくないという様子の義之をみて、音姫は別の話題をさくらに振る。
「この煮付け、以前食べさせていただたいた時より美味しいんですけど、何か味付け変えたんですか」
「ん、これ? そうだなぁー」
一瞬考えていたさくらだが、思い出したのか、音姫に伝える。
今日は、隠し味を入れたよ、と。
その隠し味について音姫が尋ねると、さくらが満面の笑みで答える。
「お母さんの、義之くんへのたっぷりの愛情!」
「「お母さん?」」
「ブホッ!」
話題が変わったことに安堵し、お茶を飲んでいた義之だが、さくらの発言を聞いて思わず吹き出してしまった。
ちょっと、兄さんきたない!
弟くん大丈夫ー!?
ティッシュ、ティッシュ持ってくる!
このあと、居間の慌ただしい状況は続き、先程の話は有無やむになったのであった。
――――――――――――――――――
「は、早くしないと遅刻する。い、いってきます!」
「ちょっと待って弟くん!」
「はぁ……それじゃあ行ってきますね、さくらさん」
「あはは、いってらっしゃいー」
出ていく義之たちを、重役出勤のさくらは玄関で見送る。
そして居間に戻ったあと、張り切りすぎたと、さくらは反省した。
昨日の夜に義之から大切なメッセージをもらったさくらは、お返しをしてあげたいと、朝早くから料理を作った。
義之に喜んで欲しくてやったことだが、自分の行動が空回りしてしまったことに気付く。
――そうだよね、急に呼ぶのは恥ずかしいよね
今まで名前で呼んでいたのに、急にお母さんと呼ぶのは、学生の義之くんには照れ臭く、恥ずかしいのだろう、と。
ましてや、由夢ちゃんや音姫ちゃんがいるなら尚更だ、と。
――うん、そう、急ぐ必要はないよね
さくらは義之の心情を察し、呼んでくれるのを待とうと思い直すのであった。
そんな時、
ガラガラ、と。
玄関からまた扉が開く音がして、気になって向かうさくら。
さくらが向かった玄関には、先程出ていった義之の姿があった。
「あれー、義之くん、忘れ物?」
「あ、いや…その……」
すぐに戻ってきた義之に、さくらは目を丸くする。
そんなさくらを見ながら義之は言い淀み、そして言葉を発した。
――今日は一緒に夕飯食べましょうね、母さん
い、いってきます、と。
慌てて喋りながら扉を閉じた義之に、一瞬さくらは呆然とし、そして義之の言葉を理解すると、駆け出して外に出る。
「うん! 今日は絶対に早く帰ってくるから!」
照れながら手を振る義之に、満面の笑みを浮かべながら手を振り続けるさくらであった。
今日、喫茶店でゆっくりしていた時に思い付いたので投稿しました。
実際の作品をイメージし、さくらさんや義之くんならこういう出来事がありそうだなと思いました。
書く予定がない話でしたが、キャラをイメージすると物語が勝手に書けてしまいます。
来週からは仕事が少し忙しくなりそうなので、ペースが落ちると思います。
週一では書きたいですけどね。
あと、作業の合間とかで書けそうであれば、平日に載せるかもしれません。
また見ていただければ幸いです。