懐かしいと書いてくださる方の感想をみながら、私も懐かしい過去を思い出したりしています。
D.C.が流行ったとき、SHUFFLEやTo Heart2など他の恋愛ものも人気でしたね。
感想をみて思い出しました。
さて、
D.C.IIのキャラが通う学校、風見学園。
この学園自体も、D.C.作品の魅力のうちの一つです。
普通の学校とは違い、イベントの数が多く、クリパと呼ばれる冬イベントはルート前の大事な場面ですね。
個人的には、学食の、シェフのおまかせコース等は食べたいなと。
ゲームをしながら羨ましく思ってました。
では、本編をどうぞ。
「義之、今日ってお昼どうするの?」
昼休み。
いつも通り、渉と昼飯を食べに行こうと席を立った義之に、小恋は緊張した様子で尋ねた。
そんな小恋を不思議そうに見つつ、答える。
「あー、学食に行こうと思ってるんだが」
小恋も一緒に行くか、と。
普段は弁当だが今日は違うのかなと思い、義之は誘った。
その回答に、小恋は、違うの、あのね、と何か言おうとしながらも躊躇った様子を見せる。
そして、何かを決心したのか、小恋は後ろに回していた手に持つものを義之の前に出した。
「あのね、今日ちょっとおかずを作り過ぎちゃって…もし良かったら義之、食べてくれない?」
はい、と。
目の前に差し出されたのは、ヒヨコのキャラクターが描かれた、可愛い弁当箱。
いきなり渡された弁当に、義之は目を丸くしつつも、貰えるなら、と受け取る。
せっかくなら、皆で食べようぜと、周りにいる杏や茜、渉に言う。
小恋は一瞬悲しそうな顔をするも、そうだねと肯定する。
小恋の内情を察して、すぐに答えたのは、杏と茜。
「素直に受け取っておきなさい」
「そうだよー? 私と杏ちゃんはぁ、今日はシェフのお任せ定食を食べるつもりだからね」
それなら、渉は食べるか、と。
今度は渉の方を見るが、渉はいや無理だわ、と苦笑しながら返事を返す。
今日の昼は初音と食べるって約束したからよ、と。
「あれ、いつの間にそんな約束したんだ?」
「朝にばったり会ってよー。 そんじゃあ、悪いな」
行ってくるわ、と教室から出ていく渉だった。
ほら食べて、と期待するような目を見せる小恋に、義之は渡された弁当を食べ始めるのであった。
―――――――――――――――――――――
教室から出た渉は、少し離れたところで足を止め、溜息を吐く。
そして、渉はつぶやいた。
俺にしては、頑張ったんじゃないか、と。
「まあ、及第点ね」
「渉くんにしては上出来だと思うよー?」
つぶやいた言葉に反応があり慌てて振り向くと、そこにはニヤニヤと笑う茜と杏の姿があった。
何でここに、と渉は驚く。
「何でってー、学食行く途中だからねぇ」
「初音と約束してるんじゃないの?」
その話が本当ならね、と。
何処か確信したように言う杏に、嘘がバレていることを悟った渉は、落ち込む様子を見せる。
「さっき杉並が、初音を連れ回しているのを見たからね。 嘘を吐くならバレないようにしなさい」
でもまぁ、と。
落ち込む渉を見ながら、言葉を付け足す。
立派だったわよ、と。
杏は、渉は空気を読まずに小恋の弁当を食べてしまうと予想していた分、渉の反応に幾分か感心していた。
茜も杏と同様の気持ちである。
「ほらぁ、可愛い女の子ふたりが一緒に食べに行ってあげるから」
「ふふ、渉にはもう一生ない光景ね」
うるせえ、と叫ぶ渉を両側で挟みながら学食へ向かう杏と茜であった。
episode-8「助手」
「あれ、さっきの場所を確か右で……あれ?」
どうしよう、と。
由夢は、自分の状況に対して、途方に暮れていた。
放課後。
ホームルームが終わり、由夢が友人の誘いを断って向かった先は、地下室の『非公式新聞部第二執筆室』であった。
勿論、向かう理由は、そこの部屋を専用として利用している彼方に会う為である。
単純に会うだけであれば、教室へと行けば確実だ。
しかし、上の学年の教室というだけで抵抗があるのに、初めて行くとなると変に注目されそうで嫌だった。
地下室に再び行くことになると理解していた為、昨日、杉並に案内されてた際に、道順を頭の中で暗記した。
暗記した、つもりだったのだ。
――わたし…覚え、間違えた?
暗記した通りの道順で向かったのだが、目的の場所に辿り着くことが出来なかった。
何個か覚え間違えてそうな場所に戻り、行き先を変えたのだが、着かない。
――仕方ない、今日は戻ろう。
一旦、目的地に向かうのは諦めて地上へ戻ろうと思ったのだが、色々と試行錯誤したせいか、暗記した筈の道の戻り方を忘れてしまう。
そして、冒頭の状況へ戻る。
「これ…わたし、もしかして」
迷子なのでは、と。
現在の状況を認識し、呆然とする由夢。
まさか学校で迷子になると考えていなかったのである。
困った。
非常に困った。
「か、かくなる手段は……」
恥ずかしいが叫んで助けを呼ぼうとさえ考えていた由夢。
その直後、夢で聞き慣れた声がした。
あれ、朝倉さん、と。
瞬時に振り返った由夢の視線の先には、求めていた人物の姿があった。
思わず安心して力が抜けてしまうのを感じた。
「はつね、先輩……」
「こんな所で、どうかしたんですか?」
驚いた表情をしながら、彼方は由夢に尋ねる。
その問いに、由夢は俯きながら答える。
「その、昨日の場所に行こうとして…その……」
迷子に、なりまして、と。
恥ずかしくて小声になってしまう由夢。
そんな由夢の表情をみながら、彼方は言葉を発する。
一緒に行きましょうか、と。
はい、とか細い声で返事をしながら、由夢は彼方の後ろについていくのであった。
――――――――――――――――――
「それで、ご用件は?」
執筆室に着き、由夢にお茶を渡しながら、彼方は質問した。
ありがとうございます、と。
お茶を受け取ってお礼をいいながらも、彼方の質問に返さず、どこか落ち着かない様子を見せる由夢。
「その……あの……」
彼方は、由夢が何かを言おうとして、躊躇しているのを感じた。
そんな由夢に、ゆっくりで良いですよ、と。
子供をあやすように、笑いながら伝えた。
彼方の笑みをみて、決心した様子をみせる由夢。
「わたし…わたしを、その」
――助手にしてください、と。
その発言に目を丸くする彼方。
そんな彼方に、恥ずかしそうな表情をしながらも自分の気持ちを伝えた。
「昨日、初音先輩の話を聞いて、凄いと思いました」
彼方からしてみれば、杉並を除く他の人達は初対面であった筈だ。
それでも、記事の内容に興味を持ってもらったからと、自分の過去を含めて思いを伝えた。
由夢は、予知夢で彼方の性格も、想いも知っていたからこそ、彼方の話した内容を真正面から信じる。
しかし、もしかしたら、彼方の話をまったく信じないで嘘と思われる可能性だってあった筈である。
それでも、伝えたいと。
自分の思いを伝えた彼方を、由夢は凄いと思った。
そして、そんな彼方のことを手伝いたいのだ、と。
「その、お手伝いさせてください」
力になりたいんです、と。
照れたように笑う由夢。
さきほど彼方に対して話した内容は、本音である。
しかし、それだけではなくて。
少しでも側にいたくて。
一歩踏み出したい、と。
自分の気持ちに正直になりたいと、由夢は思ったのであった。
そんな由夢の言葉、その想いを聞いて。
何だかくすぐったいな、と彼方は照れながらも嬉しく感じられた。
そして、その気持ちを由夢に伝える。
「あの…なんて言えば良いんでしょうか」
素直に嬉しいです、と。
由夢と同じように、照れた表情を見せながら答える彼方。
そして、よろしくお願いします、と由夢に伝えるのであった。
次回は土日になるかなと思いつつ、朝や夜に少し書ける時間があったので少しだけ投稿します。
今回は前話と同様、ゲームでいう所の日常パートです。
まだ続きがありましたが、キリがいいのでここまでで。
また見ていただければ幸いです。