中庭に面した縁側で、マキオとニーナ、そしてミミミが、
腰掛けて話をしている。
「ミミミ、お前が勘違いしたんだろ?
じゃあ、やっぱり悪いのはミミミだよ。
さぁ、マキオにちゃんと謝るんだ」
ニーナが腕を組んで、ミミミを説得する。
「……」
ミミミは、眉を「ル」の字に、吊り上げ、
そっぽをむいている。
ふわふわの桃色がかった明るい髪は、耳の下辺りでくるっと巻いている。
瞳は黒目がちで、少しだけつり上がり、いたずらっ子さを強調している。
「いゃ……いいですよ、ニーナさん…
謝ったりするような事じゃ…」
三人で話していると、カイトがやってきた。
その右目はプックリと腫れている。
「マキオ、ダメだぞ!
このガキンチョには、いつも苦労させられてんだ。
ちゃんと謝らせろ。
そして…俺にも謝れー!」
どうやら、カイトの頬はミミミにやられたらしい。
「うるせぇー!」
ミミミはカイトに向かって置いてあった、救急箱を投げ飛ばし、
凄い速さで逃げ去っていった。
カイトはよけて、ミミミを追いかけていく。
「……あ〜ぁ、ミミミちゃん…逃げちゃいましたね…」
「ふぅ…ったく、困ったものだ。
マキオ、どうだ?血は止まったか?」
鼻栓を抜くと、ツー鼻をつたってくるのを感じ、
慌てて上を向く。
「あぁ、まだみたいですね…」
ニーナは、ティッシュをもう一度小さくして、マキオの鼻につめてくれた。
マキオは、一番隊隊長ニーナの怖い場面しか見た事がなかったからか、
二ーナに接近され、ドキドキしてしまった。
(…ニーナさんて、怒ってないとこんな綺麗な人だったんだなぁ…
良い匂いもするし……)
「……マキオ、どうした?」
「…いやっ、あ…ありがとうございます…」
「フフ…気にするな」
ニーナは立ち上がり、中庭に出ると散らかっている救急箱の中身を拾う。
マキオも手伝おうと立ち上がるが、右目がふさがっている為、ちょっと変な感じだった。
「…ニーナさん、ミミミちゃんて何歳なんですか?
かなり小さいみたいだけど…」
「いくつだったかなぁ?
でも、そんなに子供でもないんだ。
中学生くらいだったと思うけど…
マキオ、いいよ座っときな」
「あ…すいません。
中学生か……今ここにいる人達は皆、大人だから、
友達がいなくて、寂しいんですかねぇ?」
「どうだろうな…ミミミは団に来た時から、なんていうか…
ずっとあんな感じで、反抗ばっかりしてるから。
街にいた時は、他に子供もいたけど、その子らとも、
仲良くはなかったし」
「でも……僕を殴ったのは…あの…ネロさんと勘違いして…
抱きついたからって言ってましたけど、ネロさんとは大丈夫って事ですか?」
「ああ、ミミミを連れて来たのは、ネロだから」
「へぇ…そうなんだ。
もしかして、ネロさんの…?」
「…違うよ、ネロの子供じゃないよ。
ミミミの親は別の人」
「ですよね。
ミミミちゃん可愛いし、ネロさんとは似てないですから」
「何故かは知らないけど、ネロには懐いてる…っていうか、
まとわりついてるっていうか…」
まぁ、あれでも最初に比べたら、他の団員にも慣れてきた方なんだ」
「そうですか、でもなんだか少し可哀想だな」
二人で話していると、中庭に一人の女性が入って来た。
「あれ?ミミミは?」
「ああ、どっか逃げて行った」
「そう…どうしたのその怪我?」
その女性は、長い髪を後ろで結び、身体のラインが見える、
忍者のような黒っぽい装束を身につけている。
顔には、動物の仮面をつけていた。
マキオは初めて見る人だった。
「…あぁ、ちょっと…」
ニーナがマキオの代わりに答えた。
「ミミミだよ、ネロと勘違いして、マキオ抱きついたんだ」
「あ〜、それで気づいて殴られた」
「…まぁ…ははは」
「キツネ、お前がちゃんとミミミを見ててやらないからだぞ、
会議が終わってから、どこに行ってたんだよ?」
「ごめんごめん…ちょっとね…
えっと…初めてだよね、マキオ。
ふ〜ん……確かに顔も少し…髪が伸びてる感じもネロに似てるかも」
「そうですか!?……切っておきます…」
マキオは、キツネからネロに似ていると言われ、かなりショックだった。
自分は団に入ってからは、頑張って出来るだけ明るく皆んなに接してきたつもりで、
まさか、ネロのような暗すぎる印象の人と似てるなんて、言われるとは思ってなかった。
「あれ?ネロに似てるって言われて、嫌だった?
マキオもネロの事、好きじゃないんだ?」
「キツネ、マキオをからかうな」
「フフフ…ゴメンね、ジョーダン。
でも、ネロもあんな感じだけど、顔は結構イイ感じで、女にはモテるんだよ?
だから、マキオもね。
例えばバニ…」
「キツネ!
いいから、早くミミミを捕まえとけよ」
「は〜い。
二ーナ怖いんだからまったく…
じゃぁね、マキオ」
キツネは手をひらひらとさせて、去って行く。
「マキオ、ごめんな。
あいつと会うのは、初めてだったろ。
キツネは、団長の情報部員でさ。
仕事柄、団にはあまりいないんだ。
ちょっと、性格的に人を逆なでする所があってね。
悪く思わないでくれよ」
「…はぁ………二ーナさん」
「ん?」
「……団員に髪切るの上手い人います?」