イオナが、涙を流しながら、刀を抜いた。
心は不思議と冷静だった。
この惨状を目の前にして、自分でも意外と落ち着いているのが不思議に感じていた。
イオナは、このステイゴールドの幹部達が、好きではなかった。
良い人達だと思った事はなかった。
乱暴で、野蛮で、プライドが高くて、その上…強くて……
卑怯だと思っていた。
でも、イオナの周りにいた男達は、日本でもだいたい皆、こんな感じだった。
だがそれ以上に、このシュラには、こんな人達が溢れていた。
でも、メイジ団長は好きだった。
厳しく怖い人だったが、自分に規律を持っており、人にも…また自分自身にも、
厳しくしている人だと思った。
言葉と態度は強くても、その心にはいつも、温かさを感じさせてくれていた。
生まれた時から、父親のいなかったイオナにとっては、もし父親がいたら、
こんな感じだったのではないか…
こんな父親だったら良かったのに…
そう思わせてくれた人だった。
メイジ団長が、タニアに恋をした時、
彼が、どんどん変わっていく姿もイオナは見ていた。
彼女にのめり込み、厳しかった自分を、少しずつ失っていく姿だった。
すごく悲しかった。
すごく悔しかった。
だけど、そんなメイジの事を少しも嫌いにはならなかった。
メイジ団長が、恋をする気持ちも、理解できた。
自分も恋をしていたから…
初めて、サラスと会った時、この人と一緒にいたいと思った。
シュラのような世界にいながら、誠実であろうとしているサラスの気持ちが、
すぐに伝わった。
そんな人は周りに少なかったからだと思う。
サラスが守りたいものを、自分も一緒に守りたいと思った。
一緒に、大切にしたいと思った。
サラスのように、自分も誠実でありたいと思った。
だから、全てを忘れて戦い方を覚えた。
何かにまっすぐになった事など、一度もなかったのに。
サラスだけを見て、刀を振り続けた。
痛みや苦しみなど…
サラスを思えば、本当に些細な事だと思えた。
今、目の前で、そのサラスが苦しんでいる。
彼の許容範囲を超えた事態が、今、彼を苦しめている。
自分がサラスを、守ってあげたい。
サラスに、こんな思いをさせた人が憎い。
そして、刀を抜いた。
ニーナが強いのは、わかっていた。
でも、そんな事は全く関係なかった。
何も考えずに身体は動いた。
ただ、ひたすら繰り返してきた動きだ。
今まで繰り返した中で、一番の動きだった。
素直に、自然に、刀は思い通りに振れた。
そして、目の前は白くなっていった。