「え?…どういう事?」
ミツイは、アヤネの言っている事が信じられなかった。
「兄さんは、たぶん仲間に殺されたの」
「!?」
ミツイは、アヤネが言っている事の重大さをわかっていた。
傭兵による傭兵殺し…
傭兵団の中で、最も憎まれる行為だ。
しかも、彼女の兄はシノノメの顔だった。
最強と言っても過言ではない、その男が、仲間に殺されたという事は、冗談でも口に出来ない事だった。
そして、その団は今、自分が所属している、誇りに思っている団だ。
もし、周りで誰かがこの話を聞いていたら、侮辱だと怒り出す団員の方が多いだろう。
ミツイは、思わず辺りを見回した。
周りには、誰もいない。
「ミツイ君…あなたにとっても、本当に嫌な話だとわかってる。
ごめんね…こんな話して」
「アヤネさん…理由を教えて欲しい」
「うん。
兄さんは、年の離れた私の事を、本当に可愛がってくれていた。
私も、兄さんが、大好きだった。
それは、兄さんが死ぬ一週間前の事よ。
兄さんが、私をドライブに連れて行ってくれた。
二人で出かける事は、よくあったけど、その時は目的地も教えてくれなかった。
なんとなく、兄さんも無口だったと思う。
そして、港についたの。
でも、今度は小さなボートに乗って、沖まで出ていった。
そして、周りに島も船も見えなくなった場所にボートを止めると、
『 いいか…俺の話をよく聞くんだ。
俺は、もうすぐ死ぬかもしれない。 』
そう言ったの。
でもよく兄さんは
『 傭兵として、罪人と戦って死ぬのは、ずっと前から覚悟していた。
そうできれば、本望だ。
だけど、アヤネの花嫁姿を見たいから、やっぱり死ねないな 』
……って、冗談を言っていたから。
でも、その時は、冗談なんて言える顔じゃなかった。
その時の兄さんは、凄く怖い顔をしてた。
そして、
『 もし、1ヶ月以内に俺が死んだなら、
俺は、仲間に殺されている。
だから、その時はお前が真実を明らかにしてくれ。 』
そう言って、私に日記を渡したの。
鍵のかけられた日記だった。
『 これは、お前が読んじゃいけない。
俺がもし死んだなら、
この中に真実を書いているから、
これを、ある人にお前が届けるんだ 』
日記を開ける鍵は、もう捨てたって言ってた。
だから、壊さなきゃ中は、見られないようになってた。
そして、この日記を持っている事を、絶対に誰にも知られるなって。
兄さんは、私を強く抱きしめてくれた。
その時、兄さんは泣いてたの。
私は、兄さんが泣いているのを初めて見たわ。
それから、一週間後に兄さんは死んだ。
私、とっても怖かった。
本当に、兄さんが死んじゃったから。
そして、きっとあの日記に、兄さんを殺した人の名前が書いてあるって思った」