いなくなった子供は二人。
捜索は、デイライトの代表ウノハナが指揮をとり、ロデオソウルズも参加をした。
夜の捜索は危険な為、日の出から日の入りまで、数日にわたって捜索は行われたが、
成果は何もなかった。
デイライトの住民は捜索中ながらも、後悔や悲壮感とは違う、どこか疲れのようなものを感じさせた。
ある日捜索が終わり、片桐がウノハナに話をする。
「子供がいなくなった時は、いつもこのような雰囲気なのですか?」
「…そうですね、片桐さんは我々に子供を探す必死さが足りない、とおっしゃりたいのでしょ?」
「…いえ、そういうわけではありませんが……」
「皆、疲れてしまっているんです。
こうなるのも、もう何度目かわかりません。
なんの意味もない捜索をして、我々は子供達の不安が消えるのをただ待つばかり。
子供達の精神的なショックは、数日か一週間ていどで、またいつも通りに戻ります。
そうすれば、また明るい声で街は動き出すでしょう。
それまで……ただ待つだけなんです」
「……」
子供の失踪から一週間が過ぎ、捜索は打ち切られ、街はまた何事もなかったかのように、
子供達のはしゃぐ声で溢れていた。
片桐は、カイトらと話し合いをして、自分たちが出来る街への貢献として、
子供達の教育を手伝う事にした。
街の住民だけでは教えられない内容を伝える事で、子供達自身が、
自分で身を守る術を学べれば、との提案だった。
カイト、バニラは戦闘技術を教え、
片桐は、教育を教えた。
また、エリーやコノハ、柊などは、
調理や、応急処置の方法などを教えた。
マキオも、唯一自分ができる事として、小さい子供達に早く走るコツを教えた。
決して特別なものではなかったが、体を正しく動かすことにより、疲れにくくなったり、
怪我をしにくくなる、という内容のものだった。
マキオ達は教育を通して、子供達とより深く触れ合っていく。
大人に教える時と違い、子供は成長途中という事もあり、
飛躍的に能力を発揮する子供もいて、マキオ達もやりがいのようなものを感じる事となっていた。
また子供達の中には、ロデオソウルズへの入隊を希望する者もおり、デイライトとロデオソウルズの間には、
良い関係が築かれつつあった。
しかし、教育を始めて10日ほど過ぎた頃、その関係に水を差すように、事件は起きた。
三名の子供が消えたのだ。
ロデオソウルズが来て一月ほどの間に、二度の失踪事件が起きた。
前回と同じように、捜索は行われ、日が経つにつれ、次第に事態は鎮静していく。
その環境に身を置きながら、片桐は千人を超える子供達を管理する事の難しさを、痛感していた。
カイトが、片桐の部屋を訪れ話をする。
「片桐、悪いが少し無茶をさせてくれ」
「…どういう事ですか?」
「デイライトの自警団の若い奴らと話し合ったんだ。
………今夜、山狩りをしたい」
「山狩り?」
「ああ……今しかないんだ。
デイライトは、団じゃない。
戦闘の技術で俺やバニラを上回る者はデイライトにはいない。
だから、近いうちに俺達がデイライトを去ると、戦闘を伴うような対処は難しくなる」
「だから、ロデオソウルズの戦力を使って山狩りをし、原因を探ると?」
「ああ…以前に調査をした時は、危険を避ける為に、昼間しか調査をしていない。
だが、もしキメラが出るとしたら、夜だ。
だから、自警団の奴らと協力して、今夜、キメラの探索と討伐をさせてほしい」
「…いるかどうかも、わからなかったじゃないですか」
「でも、このまま何もしないなんて、俺には我慢できない!」
「危険ですよ?」
「だから、今ちゃんと断ってるだろ?」
「そうですね、確かに今までのカイトなら、勝手に行動していてもおかしくはないですからね」
「ああ…自分のそういう所は反省してる。
それに、今は団長が不在だ。
お前に迷惑をかけたいわけじゃないが、このままじっとはしてられない」
「……それで………誰が参加するんですか?」
「自警団は、二十人ほど出られるらしい。
こちらからは俺とバニラ、他に三人の団員とマキオも連れて行きたい」
「では、もしもの時のこちらの犠牲は、六名ですね?」
「そんな事には、絶対にさせない。
………約束する。
もし、犠牲になるとしたら、俺一人にする」
「……これは、デイライトの問題だと理解していますね?」
「ああ」
「…」
「…」
「わかりました」
「すまん」
カイトは、部屋を出ようとドアに手をかける。
「カイト…」
「?」
「必ず全員で帰ってくる事が、条件ですよ?」
「……ああ」
カイト達は準備をし、日暮れとともに山に入った。
自警団二十三名
ロデオソウルズ六名
総勢二十九名での、山狩りだった。
マキオは、温泉街で団の子供を捜索した時の事を思い出した。
同じように山の中は暗く、松明の灯りも少し先までしか照らさない。
カイトはひとまず、以前マークをした場所まで向かう事にした。
自警団は、興奮しているようで、掛け声を上げている。
「見てろよ、バケモノ!…今日こそ決着をつけてやる!」
「子供達の恨みは、俺達がはらすぞ!」
「もうバケモノの好きにさせてはおかない!」
マキオは盛り上がる士気の中、どことなく不安を感じていた。
その雰囲気を悟ったのか、バニラが声をかけてきた。
「大丈夫?……マキオ?」
「あ…ああ、ありがとう、バニラ。
大丈夫だよ………バニラは…怖くないの?」
「……いいえ……怖いわ」
「え?」
「私も……怖い」
「そう…だよね」
「マキオも見たよね…?
あのキメラ…」
「…うん」
「……私、勝てるとは思えないから」
マキオは、他の団員に聞こえないように、小声で話す。
「じゃあ、どうして引き受けたの?
断る事も出来たはずだよ?」
「…じゃあ…マキオは?」
「お……俺は…」
マキオは何も言えなかった。
バニラも参加するとわかっていた。
守りたかった。
そう出来ないと、わかっていても。
子供達の事も、当然なんとかしたかったが、
それ以上に、バニラの事を考えて参加した。
「と…とにかく、バニラ。
無茶しないようにね。
カイトや、自警団の人達は、少し興奮しているみたいだから、
バニラも、気をつけて」
「……うん」
数時間、夜の山を歩き、なんとかマークの地点までたどり着いた。
カイトが、
「ここで、ひとまず3隊に分かれて、周辺を捜索しようと思う
十人で一組になってから……」
そう指示をしていた時、マキオはまた奇妙な感覚を覚えた。
何か………いる。
マキオは辺りを見回すが、暗闇の中では、何も見えない。
松明を所々に照らしても、黒い木々がぼうっと浮かぶだけだった。
他の人達には、何も感じていないようで、指示を出しているカイトの方だけを見ている。
しかしマキオは、やはり何かがいると確信し、声を上げる。
「カイト!」
カイトは、突然のマキオの呼びかけに、瞬時に異変を覚え、
「皆、辺りを警戒しろ!」
と声を上げる。
全員が松明の灯りを周辺に、照らす。
辺りには、何も見えない。
木々の葉が、風に重なる音が不気味は獣の声のように聞こえている。
何秒か経ったあと、一人の自警団が「あ…」と、小さく声を漏らし、
闇の中を指差した。
それにすかさず反応したのは、バニラだった。
急に背中に差していた弓矢を手にし、見えないほどの速さで、闇に放った。
矢は風を切った後に、
カッ…
と何かに刺さった音がした瞬間、
松明を照らす捜索隊二九名の中に、異形な姿が現れた。
カイトが背中の槍に手をかけ、叫ぶ。
「気をつけろ!………キメラだ!」