この星の魔法使いに祝福を!   作:村正 ブレード

2 / 6



プロローグ『転生』

 「……どうなってんだこれ」

 

 目が覚めると其処は三途の河が果てしなく流れる地獄の入り口ーーーではなく、何処とも知らない不思議空間だった。

 更に体が幽体ではなく、実体の状態だった。千切れた筈の右腕も元通りになっている。

 本当に、一体どうなっているのだろうか。何故か置いてあった椅子に腰掛け、思案していると、

 

 「それについては、私がご説明します。霧雨魔理沙さん」

 

 声が聞こえた瞬間、俺は反射的にその場から飛び離れ、臨戦態勢をとる。

 そこに居たのは羽の生えた女性で、先程の態度に驚いているのか、呆けた表情をしていたが、すぐにむっとした表情に変わる。

 

 「……初対面の女性に対して、その態度はどうかと思いますが」

 「悪いな、こちとら初対面の女に殺されかけた事も有るんでな。これ位は許してくれや」

 

 嘘は言っていない。実際、出会って数秒で戦闘になった事もあった。

 

 「……まあいいでしょう。さて、お気付きかと思いますが、貴方は死んでしまいました」

 

 分かっていた事なので素直に頷く。寧ろ、あれで死んでいなかったら首を傾げていた所だ。

 いや、今も充分首を傾げる状況なのだが。

 

 「……あまり驚かれ無いんですね」

 「そりゃあ、分かりきった事に驚く意味もないだろ。それよりも、早く進めてくれ」

 「あ、はい。という訳で貴方には選択肢が有ります」

 「選択肢?地獄か、天国かを選べってか?」

 「いえ、天国か、それとも転生するかです」

 「……?」

 「えっとですね、実を言うと天国は貴方たちが思っているような場所ではなくて、お爺さんなどが日向ぼっこしているだけの、何もない場所なんです」

 「……ん?」

 

 天国とは天界の別称だと思っていたが、どうやら違うらしい。どちらかというと冥界に近いモノの様だ。

 

 「……なら、転生ってのは?」

 「転生は主に二つの選択肢が与えられます。ゼロから現代に転生するか、記憶を保持したまま異世界に転生するかの二つです。異世界への転生は諸事情により特典を与える事は出来ませんが、その代わりある程度の支援をさせていただきます」

 

 よく分からないが、つまりはこのまま何もない所でひたすらぼーっとしているか、赤ん坊から人生をやり直すか、このまま異世界で一生を過ごすかを選べって事か。

 

 「ひとつ質問」

 「はい、何ですか?」

 「異世界に転生した場合、このままの状態で送られるのか?」

 

 何でもないような質問に見えるが、実はそうではない。このままの状態で送られるならばいい。しかし、違うのならば問題だ。成長しきるまで自由に動けないというのも有るが、自分の両親はあの二人だ。違う両親に育てられるというのは、余り喜べない。

 

 「ああ、その事ですか。それなら心配いりません。そういった願い出がなければ、貴方はそのままの状態で送られます。なんなら、そのボロボロの衣服も修復しましょうか?」

 「ありがたい。ぜひ頼む。......となると、もう特に要求というか質問は無いな」

 

 言いたい事は言い尽くしたし、これなら異世界でも何とかやっていけるだろう。懸念があるとすれば、面白い奴が居るかどうかだが、異世界なんだし、問題ないだろう。

 

 「それじゃあ、異世界行きで頼む」

 「分かりました。では......コホン。霧雨魔理沙さん、貴方の毎日が充実したものに為るよう、陰ながら祈っています」

 

 彼女が指を鳴らすと、足元に魔方陣の様なものが出現する。恐らく、異世界への転移装置なのだろう。天使と思しき彼女は微笑んで、

 

 「それではーーーいってらっしゃい!」

 

 陣が光ると同時に、俺の意識はかき消えた。

 

 

ーーーーー

 

 彼の姿が見えなくなったのを見て、私はふぅと息を吐いた。

 

 「不思議な方でしたね……」

 

 アクア様の仕事を受け継いで初めての人とはいえ、自身も天使の端くれ。数々の人間を見てきたと自負しているが、それでも彼の様なタイプは初めてだった。

そして、会話の中で少し違和感を感じていた。会話は問題無く出来ていたのだが、なんとなく噛み合わない感じがしたのだ。まるで、住んでる世界が違う(・・・・・・・・・)ような、そんなあり得ない感じがした。

 

 

 

「さてと、次の仕事は……あれ?」

 

 自室に戻ってきた私を待っていたのは、一枚の手紙だった。宛名を見ると上司からのようだ。封を切って取り出し、手紙を開いて読んでみる。

 

 「……『緊急につき簡潔に伝える。先程、別次元から混入した魂がそちらに向かった模様。そのまま私が向かうまで監視しておくように。くれぐれも異世界に転生させぬよう注意せよ。 ps.対象の生前の名前は霧雨魔理沙』………」

 

 いつも通りの機械的な文面だったが、その内容に私は思わず頰が引きつってしまった。

 

 どうやら、私はとんでもないことをしでかした様だ。これでは陰ながら祈る処か、逆に祈られてしまうかもしれない。

 

 「謹慎程度で済めばいいなぁ......」

 

 これからの事に体を震わせながら、私は大きな溜め息をついた。




時系列的にはカズマが転生して直ぐの所となっています。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。