「……来ないな……」
「………来ないわねえ」
「来る気配すら無いな」
現在、俺たちは圧倒的な人材不足を解消すべく、パーティーの募集をしていた。
今欲しい人材は魔法職一人に戦士職一人といった所だろうか。もっとも、多少選り好みはすれど、来てくれる人を拒絶する事はしない。そんな事をして後で後悔するのはこちらなのだ、とマリサは言っていた。
俺もそれに同感だったのだが、アクアの奴が余計な事をした所為で、そんな考えは無になってしまった。
バンッ!とアクアがテーブルを叩いて立ち上がる。
「というか、二人はともかく、何でアークプリーストの私が居るのに誰も来ないのよ!おかしいとは思わない!」
「そりゃあ、お前……」
「あんな募集の仕方で、人が来る訳ないだろ」
チラリ、とクエスト掲示板の隣にある募集掲示板を見る。そこの張り紙の一つが、俺たちのだ。内容は流石に言い辛いが、簡単に言えばブラック求人みたいな物だと思ってくれればいい。
ご丁寧にも、有りもしない感想まで書いていたので、その気合の入りようが分かる。
………そのやる気を、頭の良さに変えて欲しい。
「魔王討伐が目的とはいえ、流石にハードル高すぎじゃねえか?」
「確かに、仕方ないっちゃあ仕方ないが、上級職のみ募集は厳しいだろ」
「うう……。だってだって、魔王が相手なのよ?言っちゃ悪いけど、そこいらの冒険者じゃ蹴散らされるのがオチよ。それなら、最初からある程度まで戦える上級職のほうが良いじゃない」
「……まあ、それには一理ある。とは言っても、新人の上級職なんて早々見つかる訳無いだろ?」
居たとしても、他のパーティーに参加しているだろう。受付の人に聴いたが、今の時期は新人冒険者は少ないのだそうだ。
さて、どうするか……。
「「 「うーん……」」」
ーーーーー
その後も暫く待ったが、未来の英雄候補は遂に現れなかった。もうしょうがないと、条件の手直しをしようとしたその時に、“それ”は現れた。
「ーーーすままい。上級職募集の張り紙を見たのだが、此処で間違いないかな?」
俺たちの前に現れたのは、俺と同じ位の女の子だった。
その娘は気怠げな、それでいて芯はしっかりとしている様な紅色の瞳を此方に向けている。
腰まで伸びたその黒い髪は、何処か艶かしい印象を俺に抱かせる。黒いローブをその身に纏い、右手に杖を持つその姿は、正しく“魔法使い”そのものだった。
そんな、俺の好みドストライクな少女に見惚れていると、彼女は静かに名乗りを上げた。
「ーーー我が名はめぐみん。紅魔族随一のアークウィザードにして、爆裂魔法の境地に至りし者が一人」
「…………冷やかしに来たのか?」
「ち、ちがわい!」
その奇想天外な名乗りに、俺は思わず声に出して突っ込んでしまったが、彼女は慌てて否定する。
いや、めぐみんってなんだ。渾名かなんかか?
「その紅い瞳…もしかして紅魔族?」
アクアのその問いに、めぐみんはこくりと頷いた。
「如何にも。私は紅魔族だ。……それと、図々しい願いなのは分かっているのですが、その、何か食べさせてくれないでしょうか?」
めぐみんがそう言うと、めぐみんの腹が鳴った。
「えっとねカズマ。彼女達紅魔族は生まれつき高い魔力と知力を持っていて、一族の殆どがアークウィザード、つまりは魔法使いのエキスパートになる素質を秘めているの。……そして、大抵変わった名前を持っているの」
「それに、爆裂魔法の遣い手と来ている。紅魔族随一ってのも強ち間違いじゃないだろう。……名前以外はまともそうだしな」
成る程。俺をからかっている訳じゃ無いのか。
俺はメニュー表をめぐみんに向ける。
「あー、何だ、うん。取り敢えず、何か好きな物でも頼んでくれ。……あんまし高いのは勘弁してくれ。それと……」
「?何ですか?」
「……俺はカズマだ。これから宜しく頼む、アークウィザード」
「めぐみんです。……此方こそ、宜しくお願いします。カズマ」
めぐみんはむっとしながら、それでいてとびきりの笑顔を浮かべながらそう言った。
次回はジャイアントトードとの再戦。原作とは一風変わっためぐみんの爆裂魔法が火を噴く!予定。