機械生命体と機械の様な男の昼下がり   作:紫野

1 / 2
機械生命体と機械の様な男の昼下がり

ナーガ・レイ。彼には感情が無い。彼の一族は遥か昔、争いをなくすために感情を捨てた。そして彼は機械生命体であるバランスと共に行動することで感情を手に入れようと旅をしていた。

 

 今日も彼は感情について勉強していた、そんな昼下がり。ついこの間、惑星ジガマにてラッキーという青年に出会い、色々あってバランスと共にキュウレンジャーになった。その時彼は宇宙幕府ジャークマターに対して怒った。それは彼が初めて感情を表した瞬間だった。ナーガはその時の興奮が冷めやらぬまま、次の感情について相棒であるバランスと話していた。

 

「 バランス。俺はこの間、怒ることができただろう。次はどんな感情があるんだ。」

「おお!そうだったね~じゃあ今度は喜ぶことかな~感情は喜怒哀楽四つが一番大事だからね~」

「喜ぶ…どうしたら俺は喜ぶことができる」

「えーっとね~…喜ぶっていうのは、…あ!」

「どうした、バランス」

「僕からだと毎回同じことになっちゃうな~って。じゃあ今日は他のみんなに聞いてみると新しい発見になるかもしれないよ~」

「そうか。では聞いて来よう。」

 

そう言うとナーガは部屋を離れ、キュウレンジャーの仲間のところへと向かった。

まずはシシ座系出身のラッキーの元へと向かった。ラッキーの部屋は彼らがいた部屋からそう遠くない。

部屋の前に行くと、ナーガは扉に書かれている巨大な文字を確認して扉を開けた。

 

「ラッキー」

「うおわ!!」

 

中に入るとベッドに横たわり、まどろんでいたラッキーが飛び跳ねる。どうやらラッキーはノックせずに入ってきたナーガに驚いたようだ。

 

「いきなり驚かすなよ、ナーガ!」

「すまない。」

「まあいいけどさっ…で?何かあったのか?」

「そうだ。今日はバランスに喜ぶことを教わるつもりだったが、たまには他の意見も聞いたらどうだと言われて、ラッキーのところに来た。」

「そうか!喜ぶことか~俺は嬉しいことがあった時に喜ぶな」

「嬉しい…こうか」

 

そういうとナーガはおもむろに顔の中心にしわを寄せて目を吊り上げた。それはいわゆる怒る感情をあらわにした。

 

「違う違う!!ナーガ、それはこの間の怒るってやつだ!」

「じゃあ、嬉しいとはどういうことだ」

「嬉しいってのは、好きな食べ物を食べられた時とか、好きなことができた時とか。とにかく!!好きなできごとが起こった時だな!!」

「好きな出来事…」

「ナーガは何が好きなんだよ」

「好き…う~ん…。」

「好きな食べ物とかないのか」

「食べ物は体に栄養を与えてくれればいい。」

 

感情を捨てた一族には自分達の生命活動が続けられること。それが全てだった。

 

「えーーないのかよ。じゃあバランスは?ずっと一緒にいたんだから好きだろ!」

「バランスが、好き…。バランスは特別な存在…。好きなのか?俺はバランスが」

 

彼は好きという感情も分からなかった。共に過ごしてきたバランスの事をどう思っていたのか言葉で表すことができない。しかし、表すことができなくとも彼には彼なりの思いでバランスに接してきたつもりだ。

 

「特別に思えるってことは嫌いじゃないってことだから、お前はバランスが好きなんだよ!俺にはそんなに小難しい半紙はできねえから、あとは他にも聞いて来いよ」

「分かった。」

 

ラッキーに送り出され、部屋を出たが、ナーガはラッキーに言われたことで心がざわついていた。このざわつきは自分では考えたことももちろん感じたこともなかった。このまま他の仲間にも聞こうと思ったが、どうにも落ち着かないため、一度部屋に戻ることにした。

 

自室に戻ると、ベランダに出ていたバランスがナーガに気が付き、声をかける。

 

「あれ、早かったねー?どうだった?どんなこと聞いてきたの?」

 

バランスを見ると先ほどのラッキーの言葉がよぎる。

 

「俺は…バランスが」

「んん?なぁに?ナーガ」

「俺は、バランスが好きなのか」

 

突拍子も無い言葉にバランスが慌てふためく。しかし、ナーガはじっと目の前にいるバランスを見つめた。

 

「えっえっえーーーー?!?!なになになにー!ナーガそれ誰に何聞いてきたの!」

「ラッキーのところに行ってきた。ラッキーが、好きな出来事が起こった時が嬉しいのだと教えてくれた。しかし俺には好きなことが分からなかった。そうしたら、ラッキーがバランスをどう思っているのかって」

「え~~。ラッキーはあんまりあてにならなかったかな~。」

「バランス。俺はバランスが好きなのか。どうしたら嬉しいんだ俺は。」

「う~~んと、僕が喜べば、ナーガは嬉しいの?」

「俺はバランスといることは嫌ではない。バランスがいれば俺は嬉しい…と思う」

 「そっか〜そっっっか〜う〜〜ん。」

 

眼前の機械生命体は柄にもなく頭を抱えていた。ナーガは自分の質問のせいでバランスを困らせていることを察した。

 

「すまない。時間がかかるならまた今度で構わない」

「待って、ナーガ。」

 

バランスは立ち上がろうとしたナーガの綺麗な手を掴んだ。ナーガは無感情にバランスを見つめた。その瞳にはバランスにしか分からないほどの微かな困惑を秘めているように見えた。

 

「ナーガは怒ることを覚えたけど、まだ使いどころ違うよね」

「ん?何の話だ。俺がバランスを好きかどう、…」

 

機械生命体よりも機械らしいナーガの細い身体にひと回りほど小さなバランスがしがみつくように抱きついていた。突然の衝撃に身じろぎをしたが、彼の冷たい身体による強い力に動けずにいた。

 

「バランス?」

「僕は、ずっと、、、」

 

 

バランスは震えていた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。