とある魔術の絶対重力‐ブラックホール-   作:プロジェクトE

1 / 14
第01章 幻想御手 ‐持たざる者の欲する力-
第01話 ビリビリビリビリ言ってんじゃないわよー!


 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「は―――――――――――――――っ・・・」

「おい当麻、俺の真横で世界の終わりのような溜息をつくなよ」

そう、今日7月16日は『能力測定(システムスキャン)』の日だった。そのため午前中で能力測定の終了した俺こと神無月有真(かんなづきゆうま)は、クラスメイトの上条当麻と第7学区にある学校から帰宅ならぬ帰寮している最中だった。

 ここ学園都市は超能力開発を行う街だ。学園都市はあらゆる教育機関・研究機関の集合体であり学校の授業として超能力の開発を行っている。そんな学園都市の人口の約8割は学生であり、日々自身の能力の向上に努めている。そして学生の能力レベルを測定する行事こそが能力測定(システムスキャン)だ。能力のレベルは無能力者(レベル0)から超能力者(レベル5)の6段階に分かれており、数字が大きくなるほど能力が高い。もちろん、能力レベルが高いほどその基準に達する人数は少なく、超能力者(レベル5)に至っては学園都市230万人中8人しかいない。そんな自身の能力の格付けが成されてしまう能力測定(システムスキャン)を、学生は定期的に受けることが義務付けられており、その能力測定(システムスキャン)の日というのが今日なのだった。まあ、学園都市に住む学生にとっては能力のテストと成績表の配布が同時に行われるようなものだった。あと4日で夏休みという時期にあるこの検査(イベント)は結果の優れない学生にとっては悪夢のような行事でしかない。そして、その悪夢の直撃を受けた人物こそ俺の隣で沈んでいる上条当麻(かみじょうとうま)だった。

「溜息にでもしないと消化できないんです! そりゃあ、毎度のことながら無能力者(レベル0)だってことも能力測定(システムスキャン)受ける前から分かってはいたことさ、ああ、分かっていたさ、でもそのせいで補習させられるのは納得がいかないんです!」

当麻の迫力に押されて若干たじろいでしまう。

「・・・あ、そうだ、今朝学校行くときになんか新しいクレープ屋が始まるって言うチラシもらったんだ。 補習前の景気づけに奢ってやるから元気出せって」

「マジですか!? 今月の食費の入った財布を落として無くしてしまった(わたくし)上条当麻にクレープを奢ってくれると!?」

「俺の知らない内にまたそんな不幸に遭っていたのか・・・というか奢るって言った瞬間に目をキラキラさせて土下座を敢行するな、なんだ一人大名行列か! ええい、止めろー! 周りの視線が俺に突き刺さるー!!」

 

 

 『常盤台中学』

二三〇万人もの学生を抱え東京都の三分の一の広さを誇る超能力開発機関『学園都市(がくえんとし)』の中でも五本の指に入ると言われる名門の中学校だ。同時に世界有数のお嬢様学校もある。名門の名は伊達ではなく入学は困難だ。その理由の一つは在学条件の一つに『強能力者(レベル3)以上』という区切りがあることだろう。どんなに財産があろうともこの基準をクリアできなければ入学することはかなわない。某国の王族の娘をあさり不合格にし、国際問題に発展しそうになったこともあるほどだ。逆に能力があれば多少貧乏でも金銭的な補助もある事から入学することはできるのだ。また、常盤台中学は総生徒数二〇〇人以下という少人数制を採っていることも入学を難しくしている。しかしこの基準のおかげもあり現在では『超能力者(レベル5)』を二人、『大能力者(レベル4)』を四七人も抱えるに至っている。才能あるものを集め、その交流によって切磋琢磨させることで、もともと高い能力をさらに伸ばすこと、そして少人数制を使い一人一人を集中的に教育できるので高い能力を育てられること、それが名門の名を守っているのだろう。

 常盤台中学には女子寮がある。校舎から走って20分ほどの距離にあり、常盤台の生徒はここからバスに乗り学校まで移動する。朝このバスに乗り遅れると全力で20分もの間走り続けなければ学校に間に合わない。走って20分の距離ともなるとかなりの距離だがこれでも学校の敷地内である。常盤台中学は隣接する4つのお嬢様学校と土地を共有し合うことで『学舎の園(まなびやのその)』と呼ばれる普通高校の約15倍もの面積の共用地帯を作り出している。

 そんな常盤台中学女子寮の食堂の一角で学園都市に7人しかいない超能力者(レベル5)の一人第三位の御坂美琴(みさかみこと)は食後の紅茶を飲みながら午後の予定を考えていた。

(あ~『能力測定(システムスキャン)』も午前中で終わっちゃったし、午後はどうしようかな。漫画は昨日立ち読みしてきたし)

今日は7月16日の木曜日、美琴は毎週月曜日と水曜日が漫画の立ち読みの日と決まっていてちょうど昨日コンビニで漫画を読んできてしまったばかりだった。いくらお嬢様学校の生徒といえども実態はこんなものである。典型的な絵に描いたお嬢様というのは逆に珍しいくらいだった。美琴が午後の予定を静かに考えていると食堂の誰よりも大きな声が彼女の思考を分断した。

「おーーーーーーーねーーーーーーーさーーーーーーーまーーーーーーー」

美琴が声の方を振り返ると予想通りツインテールの後輩が勢いよく走ってこちらに向かってくる。そう、このツインールの少女は白井黒子(しらいくろこ)、美琴を尊敬してやまない美琴のれっきとした後輩である。まあ、尊敬では済まないレベルで美琴を慕っているのだが。

「どうしたのよ、黒子。 そんな必死な形相で走ってきて」

「どうしたのよ、黒子。 ではありませんわ、お姉さま。 そんなこと言っている場合ではありませんの。 あー、悔しいったらありませんわ。 どこの馬の骨とも知れない輩の分際でーーー!」

「ちょっと、アンタは何をそんなに悔しがっているのよ」

「う~、お姉さまが、お姉さまの学園都市第三位の座が、どこの馬の骨とも知れない輩に奪われたんですの! これが悔しがらずにいられましょうか」

黒子の大声が響き渡り食堂内は一瞬シンとなった。そして、次の瞬間には、

「ねえ、今の聞いた? 御坂様が第三位の座を奪われたって話――――」

と、食堂はその話題でもちきりになった。今の一瞬だけで学校全体の噂になるのが目に見えた美琴は頭を抱えた。そんな美琴の様子には気が付かない白井は自分の思いのたけをひたすらに語る。

「もう、黒子は悔しくて、悔しくて、それに聞いた話ではお姉さまの第三位を奪って輩は今まで超能力者(レベル5)ですらなかったそうですのよ。そんなどこの馬の骨とも分からない輩にお姉さまのポジションをとられたかと思うと、キーーーー、いらいらしますの! というわけでお姉さま今から真相を確かめに行きますのよ」

そういって白井は美琴の腕をつかむ。

「ちょっと黒子、行くってどこに行くつもりよ」

「わたくしの在籍する『風紀委員(ジャッジメント)』の第177支部ですわ。 あそこからなら『書庫(バンク)』にアクセスできますから」

そう言って白井は美琴の腕を取ってズンズン進んでいく。

腕を引っ張られズルズルと引きずられるようについて行く美琴だが内心では、

(私を超えて第三位になった能力者か、ちょっと戦ってみたいかも)

などと考えていた。そんな美琴の心情を読み取ったのか白井は、

「お姉さま、いま新しい第三位が誰かはっきりしたら戦ってみたいとか考えていたでしょう。 だめですのよ、権限を持たない一般人が無闇に能力を使うと色々なところから睨まれますの。 それでなくともお姉さまは超能力者(レベル5)、ただでさえ目立つというのにお姉さまと新しい第三位の超能力者(レベル5)同士で戦ったりしたらどうなると思っていますの?」

「わ、分かってるわよ、そのくらい。私だってそのくらいの分別はあるわよ」

若干取り繕ったような美琴を白井がジト目で見るが、あきらめたようにつぶやいた。

「分かっているならいいんですの、でもお姉さま町の不良にからまれたときも能力で対処せず私たちを待ってくださいね」

そうなのだ、美琴は町でからまれることが多々ある。そんなときも基本的に風紀委員(ジャッジメント)を待たずに自分で何とかしてしまう。常盤台はお嬢様学校で有名なので金目当てで近づいてくる男も多い。しかし、常盤台のお嬢様たちがみな強能力者(レベル3)以上であることも覚えておくべきだろう。何も知らずに近づけばあっという間にボコボコにされるのは目に見えている。確かにお嬢様ということもあり男に慣れていない者もいるが、美琴のようにあしらうのに慣れている者もいるのだ。

「う~ん。 今度から少しは待つようにするわ」

白井はその今度が永遠に来ないような気がして溜息をつき、あきらめた。

 

 

一人大名行列状態だった神無月への好奇の視線からやっとこさ逃げてきた神無月は再び歩く速度を落としていた。

そんな神無月に上条は問いかける。

「それで、そのクレープ屋ってどこにあるんだ?」

「ん? ああ、第7学区ふれあいひろばって書いてあるからすぐ近くだな」

「そうか、良かったー」

当麻は何か素晴らしく安心した顔をしている。

「何をそんな安心した顔で喜んでるんだ?」

と神無月が上条に問いかけると上条は『そんなことも知らないのか!?』といった顔になった。

「今日は木曜日だぞ!? スーパーでお肉のタイムセールがあるから間に合うか気になったに決まってるだろ!」

「知らねえよそんなこと! 確かに安売りしてたら嬉しいけど、そんな曜日ごとの安売り品まで把握してねえよ!」

「くー、ブルジョワめ。 貧乏学生の(ふところ)具合をなめんな! ん、待てよ・・・今日は俺だけじゃなく神無月もいるんだからセール品が2倍買えるんじゃないか!? お一人様一パックのお肉が2パック買える! ふ、ふふ、ふふふふふ」

「・・・」

クレープを奢るだけじゃなく、食材漁り(ショッピング)にも付き合わされるのかと神無月は一人溜息をついた。

 

 

「ここがわたくしの所属する第177支部ですわ」

食堂を出た二人はバスと徒歩を駆使して風紀委員(ジャッジメント)の第177支部まで来ていた。白井の能力は『空間移動(テレポート)』で美琴と共にここまで移動することも可能だが、学園都市では緊急時と授業以外での能力の使用は基本的に禁止されているので結果としてバスと徒歩という移動手段になったのだった。

「へー、アンタの仕事場ってこんなところなんだ。 今まで来たことなかったから少し新鮮」

美琴が支部内を見回す。室内は、企業のオフィスのような雰囲気で、壁際には落し物を保管するラックやプリンターなどが置かれている。大きめの棚には過去の事件の記録などを保管しているのか広辞苑よりも分厚いファイルがいくつも並んでいる。また、荷物も多いようで中身の詰まった段ボール箱で壁ができている。そのほか休憩用のソファと作業用デスクがいくつか置かれていた。美琴が室内を物珍しそうに室内を見ていると知らない少女の声が美琴の隣にいた白井にかけられた。

「あれ、白井さん? それにそちらの人は誰ですか?」

大きな棚に隠れて見えなかった奥の作業用デスクの前の椅子に腰かけていた少女が白井に話しかけた。黒髪のショートヘアのほんわかというか飴を転がすような甘ったるい声の少女で、過剰な量の髪飾りが特徴的な少女だった。彼女の髪飾りは造花で遠目に見ると花瓶を頭に乗っけているのではないかと思うほどの数があった。その少女の隣には長い黒髪に白梅を模した髪留めを付けた少女がいた。どちらも同じ学校の制服を着ている。

「ああ、初春いましたの。 お姉さま、こちら柵川中学1年の初春飾利さんですの」

「初春飾利です。よろしくお願いします」

初春は美琴が白井と同じ常盤台中学の制服を着ていることに気が付いたあたりから緊張しているようだった。

「えっと、初春そちらは?」

白井は初春と一緒にいたもう一人の少女の方を見る。

「あたしですか? あたしは初春のクラスメイトの佐天涙子です。 初春の親友やってます」

二人の名前を聞くと今度は自分がと美琴が名乗る。

「初春さんに佐天さんか、私は常盤台中学2年の御坂美琴よろしくね」

美琴は名乗るのと同時にニコッと笑った。すると初春がすぐに食いついた。

「え! 御坂って、もしかして超能力者(レベル5)の第三位、超電磁砲(レールガン)のあの御坂さんですか!」

ものすごい食いつきように美琴は少したじろいだ。そして初春の問いには白井がすぐさま答える。

「そうですの、常盤台中学のエース超電磁砲(レールガン)の御坂美琴といえばお姉さまのことですわ」

うわー本物だーと初春と佐天はテンションを上げている。そこで初春ははたと気が付く。

「そういえば、白井さんも御坂さんもどうして今日はここに? 白井さん今日はお仕事の日じゃないですよね。 緊急な事件も起こっていないですし」

白井は初春の言葉にはっとした顔になると叫んだ。

「何をいっていますの、緊急に決まっていますわ! お姉さまが第三位ではなくなったとの噂がありましたのよ。 だからわたくしたちはその真偽を確かめに来たんですのよ!」

「え、ホントですか白井さん!? そういうことなら私も手伝いますよ」

「お願いしますわ、初春。 その手のことはあなたの方がわたくしよりずっと速いですから」

ハイというが早いか初春はコンピュータのキーボードをすごい勢いで叩き始めた。書庫(バンク)にアクセスしているのだろう。少しの間四人がコンピュータのディスプレイに注目しとても静かになった。そして初春のキーボードを叩くカタカタという音だけが響く。

「ありました美坂さんのデータ。 あ、ホントみたいです、確かに第四位になっています」

確かに画面に移された美琴のデータには第四位と書かれていた。

「初春、お姉さまの上に現れた現在の第三位も調べてもらえます?」

「大丈夫です、そっちも調べてあります」

初春がタンとエンターキーを打つともう一人のデータが画面に出力された。

(名前:神無月有真(かんなづきゆうま) レベル:超能力者(レベル5) 順位:第三位 能力:絶対重力(ブラックホール) へえ、こいつが新しい第三位ってわけね。おもしろいじゃない、どこかで出会ったら戦ってみたいわね)

美琴がそう考えていると佐天は能力に疑問を抱いた。

絶対重力(ブラックホール)? どんな能力なんでしょうねこれ。 御坂さん分かります?」

「う~ん、私も聞いたことない能力名ね。 黒子分かる?」

「わたくしも聞いたことがありませんわね。 初春は分かります?」

「ちょっと待ってください、それも今調べます」

初春がカタカタとキーボードを叩くとそれらしい記述が見つかった。

「未知素粒子制御系の能力の一つで、重力を制御する能力だそうです。 でも、これ以上は何も書かれていません」

「重力か、今までに見たことのない能力ね。 ねえ、こいつの写真ってないの? 私のデータには写真が載ってたのに。」

「このデータ更新されたのが今日の午前中みたいで写真までは載ってないみたいです。 でも普通なら昔の写真くらい載せると思うんですけど」

美琴は少し残念そうな顔をしたがすぐに笑って初春を(ねぎら)う。

「そっか、載ってないか。 わざわざごめんねこんなこと調べさせちゃって」

「いえいえ、こんなことぐらいお安いご用ですよ」

二人の会話の最中、白井は美琴が写真を見れなかったことに逆にホッとしていた。

(お姉さまのことですし、写真があれば相手を見つけて戦うに決まっていますの。 今回ばかりは書庫(バンク)のデータに写真が載っていなくて助かりましたわ)

美琴はとりあえず、相手の名前と能力は分かったがそれ以上の成果は無かった。そして、あっさりと午後にやることもまた無くなってしまったのだった。

「それにしてもまた、やることが無くなっちゃったわね、これからどうする黒子」

「そうですわね、どうしましょうか」

と悩む二人に佐天が声をかけた。

「御坂さんと白井さんこれから暇なんですか? あたしと初春はこれから何かキャンペーンやってるっていう新しいクレープ屋に行くつもりなんですけど一緒にどうですか?」

そう言って佐天はそのクレープ屋のチラシを見せた。

「えーと、なになに、クレープ屋らぶるん第7学区ふれあい広場NEW OPEN先着100名様にゲコ太紳士Verマスコットプレゼント、こんなことをやっているんですの。 せっかくですから行ってみませんお姉さま? ってお姉さま? どうしたんですの食いつくようにチラシをみたりして」

美琴の目はチラシにくぎ付けになっていた。

「えっ何、なんか言った黒子?」

白井は視線をもう一度チラシに戻し、読みなおす。

「いえ、お姉さまがずいぶん熱心にチラシを読んでいるものですから、お姉さまはクレープ屋さんにご興味が?それとももれなくついてくるプレゼントの方ですの?」

すると美琴は顔を赤くして否定する。

「わ、私はそうクレープに興味があるのよ。 ゲコ太になんて興味ないんだから、だってカエルよ両生類よどこの世界にこんなものもらって喜ぶ女の子が・・・」

そう言った美琴のカバンからゲコ太(通常Ver)のストラップがはみ出しているのを初春と佐天は気が付き思わず口からあ・・・という声が出た。二人の視線に気が付いた美琴は顔を赤くして驚きの表情で固まる、白井はこらえきれずに口を手で押さえながらプププと笑うのだった。

 

 

「うわ、すっごい人」

「何でこんなにちっちゃい子が?」

佐天と初春は(もっと)もだった。クレープ屋のある第7学区ふれあい広場は、大勢の子供たちであふれていた。どうやら、学園都市内の学校に入学する子供たちとその保護者が下見のために大型バスで見て回っていたようだ。そして、ちょうどこのふれあい広場で休憩することになったようだ。この人数なのでクレープ屋にも既に列ができている。その最後尾に4人は並ぶのだった。

「休憩は一時間ですー。あまり、遠くに行かないでくださいねー」

とバスのガイドが大きな声で呼びかけている。

それを聞いて初春は白井に話しかける。

「どうも、タイミングが悪かったようですね」

「そうですわね、わたくしは先にベンチを確保してまいりますわ」

これだけの人がいると座る場所の確保は難しくなる。折角クレープを買うのだからゆっくり食べたいのが人情だ。こんな炎天下の中立ちながらクレープを食べるのはあまりいいものではない。そういうわけでの白井の提案だった。

「あ、じゃあ私も、佐天さん私たちの分お願いしますね。」

「お金は後でお支払いしますわー」

二人は4人の中で一番先頭にいた佐天にクレープを頼んだ。

「え、ちょっ・・・」

後ろを佐天が振り向くとすでに初春と白井は座る場所確保に移動してしまっていた。そして、美琴は腕を組んで指でとんとん二の腕を叩いている。ゲコ太(紳士Ver)は限定100個なためかなり焦っているようだ。そんな美琴を気遣って佐天は言う。

「・・・御坂さん、順番換わります?」

そんな佐天の言葉に美琴はパッと一瞬顔を輝かせたが、すぐに表情を戻して取りつくろう。

「べ、別に順番なんて。 私はクレープさえ買えたらそれでいい―――」

一度興味ないと言ったのでプライドのためか断ってしまう。そんな美琴の横を子供たちが駆けていく。

「やった、ゲコ太ゲットー」

「わたしもわたしも」

そんな子供たちを美琴の視線は羨ましそうに追いかけていく。それを見た佐天は苦笑いで溜息をついた。そして佐天の順番が回ってきて注文していたクレープを手渡される。

「お待たせしましたー、はい、どうぞ、最後の一個ですよ」

おまけのゲコ太マスコットもついてきた。

「あ、どうも・・・って、え、最後?」

そう佐天が聞いた瞬間に後ろの美琴が膝をついて崩れ落ちた。

「あ゛~~~~~~~~~~~」

こんな日差しの強い晴れた日だが、美琴の周りだけ暗くなるような負のオーラがまき散らされている。そんな重い空気に耐えきれなくなった佐天は美琴に話しかける。

「・・・あの」

美琴がゆっくりと佐天の方を向く。その目はとても羨ましそうな色をしている。

「よかったら、これ」

と佐天がゲコ太マスコット(紳士Ver)を差し出すと、美琴は今までに見せたことのない俊敏さでゲコ太マスコットを佐天の手ごと握り締める。まるで、カマキリが獲物をとらえるかの如きスピードだった。

「え、いいの、ホントにいいの!?」

すでに手は標的であるゲコ太を掴んでいる。

あまりの勢いに佐天は後ろに若干後ろに下がりつつ答える。

「ええ」

「ありがとーーーーーーー!」

「い、いえ・・・」

美琴は佐天の手を握りながら、力いっぱい頭を下げる。すでにプライドとやらはどこかに消えてしまったようだった。その後、初春たちのところに戻る美琴はスキップに口笛というとてもふわふわした足取りだった。

 

 

「ほら、お姉さま遠慮なさらず」

「いらないって言ってんでしょ! 何よトッピングに納豆と生クリームって!」

そのチョイスする白井も白井だが、売る側も売る側だと言わざるを負えない。

そんな他愛もない話をしていると楽しげな空間をぶち壊す大声が響き渡った。

「おら! 近づくんじゃねえ! それ以上近づいたらこのガキぶっ殺すぞ! ガキぶっ殺されたくなきゃ、金を用意しろ! 今すぐ3000万だ!」

その声と共に爆発音と拳銃の発砲音が聞こえた。4人の座っていたベンチの後ろに通っている道路の真ん中で3人の男が子供を人質に取り拳銃を向けているのだった。

「な、何? なんなの?」

佐天は驚いていたが、白井と初春の行動は迅速だった。二人は即座に風紀委員(ジャッジメント)の腕章を付ける。白井は残っていたクレープを全部口に詰め込むとベンチを乗り越え道に出る。その際、初春への指示も忘れない。

「初春、警備員(アンチスキル)への連絡と怪我人の有無の確認、急いでくださいな」

それだけ言うとすぐに犯人の指定したラインギリギリまで接近していった。初春はすぐに白井の指示通り警備員(アンチスキル)への連絡を始めた。

「はい、そうです。 第7学区ふれあい広場前の道路で子供を人質にとった身代金要求事件発生警備員(アンチスキル)の出動を要請します。」

それらを見ていた美琴は自分もと白井の方に走って行ってしまった。

美琴が犯人の指定したラインのところにつくと、子供たちの親とバスのガイドがいた。

「お願いです、息子を、息子をどうか返してください!」

「うちの娘もです、返して下さい!」

「子供たちを返して!」

ラインギリギリから犯人に向かって悲痛な叫びが投げかけられる。

「うるせえ! 返してほしけりゃ金寄越せって言ってんだろーが!」

「っ!」

(何、あいつら・・・子供を盾にしてまで! 許せない!)

美琴は今のやりとりで頭に血がのぼってしまう。そんな美琴の体の周りでバチバチと電気が渦巻く。聞き覚えのある電気の奏でる音で美琴に気が付いた白井はすぐに美琴を止めに入る。

「お姉さまなんでここに来ているんですの! まあ今はそのことはいいですわ。 とりあえず落ち着いてくださいませ。 迂闊に攻撃したりはしてはいけませんわ。」

「子供たちが捕まってんのよ! 眺めてるなんてできないに決まってんでしょ。」

「駄目です、お姉さま。 お姉さまも見えるでしょう、犯人は子供の頭に銃を向けているんですの、攻撃したりしたら子供たちの命が危険なんですのよ。 仮に犯人を3人とも倒せてもお姉さまの電撃で銃が暴発しないとも限らないんですの。 だから、今は堪えて下さいですの」

美琴は分かってしまった。今の自分にできることはないと。自分の出る幕ではないのだと。

「っ、なんで、なんで見ていることしかできないの。 私は超能力者《レベル5》なのに。 なんでこんなに無力なの? こんなときに使えない能力じゃ意味ないじゃない・・・」

「お姉さま・・・」

白井は美琴の言葉を否定することも美琴を励ますこともできずに、ただ言葉をかけたい相手の名前を呟くことしかできなかった。

 

 

犯人の様子と子供の親の様子、そして何もできないことに苦しんでいる少女たちの姿をひろばとは道を挟んで反対側にいた2人の少年が見ていた。一人は170cmくらいの身長に黒髪をツンツンと立たせた少年。もう一人は170cmくらいの身長にオレンジみがかった茶髪を少し長めにしたような少年だった。そのうちの茶髪の少年が黒髪の少年に問いかける。

「なあ、当麻。 俺はあの子供たちを助けようと思うんだけどさ、お前はどうする?」

聞いて少年は聞く必要は無かったなと思った。なぜなら、黒髪の少年の目にはすでに火が点いていたからだ。

(やる気満々だな、とは言っても俺も人のことは言えないか)

「どうするも何も助けるに決まってんだろ」

「言うと思ったぜ、じゃあ銃口が次に子供の頭とは違う方向を向いたら俺が一番手前の男と左奥の男をブッ飛ばす。 当麻は右奥の男を頼む」

「ああ、まかせろ」

そうして二人の段取りは決まりそのときを待つばかりになった。

 

 

「おい、さっさと金を用意しねーか!」

あれから10分ほどが経ち犯人たちはしびれを切らせていた。たった10分と思うかもしれないが、犯罪を現在行っている人間の10分は数時間に匹敵するほど長く感じられる。周りからの視線やどこかから攻撃されやしないかという不安、今自分たちの行っていることへの恐怖からとても長く感じられるのだ。そんなとき、犯人の一人は自分たちが決めたラインのすぐ近くに白井のすがたを見つけた。正確には、風紀委員(ジャッジメント)の腕章を付けた白井の姿を発見したのだった。風紀委員(ジャッジメント)は、自ら志願して学園の治安を維持する学生だ。この学園都市での治安維持は風紀委員(ジャッジメント)の学生と警備員(アンチスキル)の教師で成り立っている。そのうちの片方が現場にいたのだ。犯人にしたらこれ以上の恐怖は無い。しかも、警備員(アンチスキル)は武装をしていても普通の大人、しかし風紀委員(ジャッジメント)で前線に出てくるものは基本的にかなりの高レベルの能力者、単独なら注意しなければいけないのは完全に後者だ。

「おい、そこのお前風紀委員(ジャッジメント)だな! 一番前に出てこい!」

白井は自分のことを呼ばれたのだと気が付くと犯人の方へ顔を向ける。そんな白井に美琴は声をかける。

「黒子!」

「大丈夫ですわ、お姉さま、黒子はちゃんと仕事を終わらせて帰ってきますの」

そういって白井は犯人の定めたラインの一番前に立ち、宣言する。

風紀委員(ジャッジメント)ですの、おとなしく子供たちを解放してくださいですの。そうすれば罪も軽くて済みますわよ」

「馬鹿がそんなこと言われたからって引きさがれるかよ、先に言っとくぞ変な動きを少しでもしたらガキの命はねえからな。 おとなしくしてるならガキには手を出さない、だが、お前は厄介そうだ、お前は先に片付ける」

そういって男は銃口を白井にむける。銃口を向けられても白井はまだ余裕があった。

(大丈夫ですの、銃弾をテレポートでかわして、犯人の銃を金属矢(ダーツ)によって近距離から正確に撃ち抜く銃さえなくなれば子供たちを助けられますの)

さっきまで、金属矢(ダーツ)で銃を撃ち抜かなかったのは予想以上に犯人が銃を同じ位置に固定しないからだった。誤って子供に金属矢(ダーツ)が刺さるのだけは避けたかったのでいままで攻撃しなかったが、近距離まで近づけば確実に当てられる。だが、そこでテレポートしようとしていた白井は違和感を感じ、その違和感はすぐに確信へと変わる。

(わたくしがテレポートしたら銃弾はわたくしの後ろの方々に当たる!? まさか彼らはこれも見越して!? これでは避けられないじゃありませんの! まずいですわ、このままでは()られるしかないじゃありませんの)

黒子の今の状態に気が付いた美琴は大声を上げる。

「黒子―――!」

美琴の声が白井に届いた。そして、銃をもつ男の顔が初めてであろう殺人からの泣き笑い混ぜたような歪んだ顔になり銃弾が発射された。白井の目には銃弾が自分に向かって飛んでくるのが見える。

(ああこれが死ぬ間際のスローな世界ってやつですのね。 ああ、もっとお姉さまと一緒にいたかった。 まあ、お姉さまたちの盾になって死ねたのなら本望ですわ)

白井があきらめかけたときその声は響いた。

「なーにあきらめたような顔してんだよ! こんなことくらいで人生投げ出してんじゃねえ!」

白井の目の前にオレンジみがかった茶髪の少年が勢いよく横から飛んできた。

そんな銃弾(こと)くらいどうにでもなると、だから安心して後ろにいろとでも言うように、その少年はまさに英雄(ヒーロー)のように現れた。

白井は気が付いた、銃弾が遅く見えていたのは死ぬ間際だったからじゃない。世界の動くスピードが極端に遅くなっていることに。犯人も美琴も白井自身もほとんど動くことができない。そんなスローの世界の中をただ一人の少年だけが普通の速度で動く。銃弾すら1秒に5mmも進まないような世界を悠然と歩く。その遅くなった銃弾を少年は素手でつかみ取り地面に叩きつける。そして、犯人たちにだけ聞こえるように呟いた。

「なあ、知ってるか? 時間っていうのはな必ずしも一定じゃないんだぜ。 強力な重力の前では時間すら歪んで遅くなる。 そんなにのろのろしてたら100年たっても俺には追いつけねえ。 少しはまともに動いてみろよ」

そう言った次の瞬間、その場の時間の進み具合が元に戻り、遅い時間の流れの中で思いっきり前に出ようとしていた白井は盛大に前につんのめる。白井の方を既に見ていなかった茶髪の少年はそのことに全く気が付かず次の行動に移っていた。少年は時速200kmぐらいの速度で一番手前の犯人の右上方まで移動すると側頭部にとび蹴りを喰らわせていた。ドゴッという鈍い音が響き蹴りを食らった犯人は10m近く蹴り飛ばされ動かなくなる。

「まずは、一人め」

そして、続けざまに左奥の犯人の腹に手を触れる、するとその男の体はフッと浮き上がり近くのビルの壁まで吹き飛びめり込む。その衝撃で壁にクモの巣状の亀裂が走った。

「二人目」

その間わずか0.3秒。だが、右奥の男はまだ残っている。

「何なんだテメエは! 俺たちの邪魔をするんじゃねぇ!」

その男は発火能力者(パイロキネシスト)だったらしく右手から炎を上げて茶髪の少年を燃やそうとする。しかし、その男の思惑はすぐに打ち破られる。茶髪の少年と犯人の間に割って入った黒髪のツンツン頭の少年がいて、彼の右手が犯人の炎に触れると、まるで蝋燭の火を消すがごとく簡単に炎は消し飛ばされてしまった。犯人は驚きのうちに黒髪の少年の拳に顎を撃ち抜かれその場で崩れ落ちた。

「サンキューとうま、ナイスなタイミングだった」

「神無月もさすが新第三位だな」

そういって二人はハイタッチした。

 

 

その様子を車の中から眺めていた男がいた。車は青のスポーツカーで改造によって時速500kmまで出せるようになっていた。この車の中に乗っていた男も犯人グループの一人だった。金が届いたら仲間を拾って急いで車で逃亡する予定だったのだ。それなのに、たった2人の学生に仲間3人があっという間にのされてしまい、金も手に入らなかったのだ。

「クソ、こんなはずじゃなかったのに。 今回の計画にどれだけ時間をかけたと思っているんだ!」

彼らはこの計画を実行するに当たり、銃器の入手から、車の改造、逃走経路の選択、潜伏先の確保、とかなりの時間を使っていた。大体1年以上の時間をかけて計画していたのだった。それがものの数秒の間で見事なまでに粉砕されたのだ。

「こうなったら全員まとめて・・・」

そうつぶやくと男は車のエンジンをかけた。

 

 

神無月と上条は捕まっていた子供たちの手を引いて親のいるところまで連れていった。子供たちは今になって恐怖がよみがえったのか親のところに泣きながら走って行く。

「ママ―――、パパ―――」

「おとーーさーーん、おかあさーーん」

子供とその子の両親が固く抱き合う。なんとも感動的なシーンだ。少しすると子供と親がこちらに歩いてきた。

「息子をありがとうございました。本当になんと御礼を言っていいのか。ほら、雄哉もお兄ちゃんたちにありがとうって」

「おにいちゃんたちたすけてくれてありがとう、ぼくもおおきくなったらおにいちゃんたちみたいにつよいひとになってこんどはぼくがおにいちゃんたちをたすけるからね」

神無月は頬を緩めるとその子の頭に手を乗せてなでながら言う。

「おう、楽しみにしてる。」

子供たちの親とバスのガイドさんから御礼を言われた神無月と上条は一息ついた。そこに美琴と白井がやってくる。そして白井が先に切り出した。

「さっきは助けてくださりありがとうございますですの」

「ん? いや、気にすんなって、こっちも好きでやったことだし」

「ところでお名前をうかがっても?」

先に応えたのは上条だった。

「俺は上条当麻よろしく」

「上条さんですの、わたくしは白井黒子こちらこそよろしくお願いしますわ」

白井と当麻は握手した。

「次はあなたの名前をうかがっても?」

「ああいいぜ、俺は神―――」

と神無月が名前を名乗る前にバカでかいエンジン音が響き渡った。そちら側を見ると青いスポーツカーがこちらめがけて一直線に突っ込んでくるのが見える。運転席にはさっきの身代金要求事件の犯人と似たような服装の男が乗っていた。

「まだ、他にも仲間がいたのか。 はー、懲りないなー。 一人でも逃げりゃあ良いのに。 ったくしょうがない奴らだ」

「待って、私もやる」

最後のおかたづけに向かう神無月に美琴は言う。

「ん、別に俺一人でも大丈夫だぞ?」

「私は、あいつらのことを許せない。 子供を人質にしてお金を要求したこともそうだけど、私の後輩を傷つけようとした。 だから、これは私の喧嘩でもある」

そういうと美琴はこっちに向かって走ってくる車の方を向きゲームセンターでよく見かけるコインを上に弾きあげる。同時に神無月の手に黒い粒子が収束し、長さ4m近い黒い剣を形作る。神無月はその作りだした剣を後ろに振りかぶった。次の瞬間、美琴の指先に落ちてきたコインが閃光を噴き、神無月の振りかぶっていた黒い剣が投擲された。

黒い剣は回転しながら美琴の超電磁砲(レールガン)より早く車の正面ど真ん中にぶつかる。いや、ぶつかるという表現は正確ではない。まるで、豆腐に包丁を入れるように、いやさらにそれより抵抗なく車体を通り抜け真っ二つにした。速すぎる切断の為かすぐには車体は離れずそのまま走る。そこに音速の3倍以上の速度でゲームセンターのコインが飛んできて既に切られていた車体がコインの引き起す爆風にも近い風で半分になり舞い上がる。車に乗っていた男は、風にもまれ車体の切り口から車外に放り出された。男は地面に激突する寸前に神無月のアイアンクローで顔面をキャッチされ大きな怪我はなかったが精神的なショックが大きすぎたのか白目をむいて気絶していた。切られて舞い上がった、割と値の張る青いスポーツカーは神無月や美琴を飛び越え、誰もいない地面に落下し爆発炎上した。高級車は一発で再起不能(スクラップ)へと変貌した。なんというBefore・Afterあっという間に何ということでしょう状態に。二人の一撃は超能力者(レベル5)超能力者(レベル5)と呼ばれる所以(ゆえん)そのものだった。周りで見ていた子供たちとその親達も、また初春と佐天・そして犯人たちも驚きで唖然としていた。そのなかで白井だけが『さすがはお姉さま~』とキュンキュン喜んでいた。

 

 

「で、アンタさっきのは何なのよ」

美琴は神無月に詰め寄っていた。神無月の自己紹介の前に犯人グループの最後の一人が車で突っ込んできたため美琴は神無月という名前すら知らない。能力も彼女にしてみれば未知数。銃弾を受けとめたと思ったら今度は訳の分からない黒い剣で車を両断したのだ、気にならない方がおかしい。

「さっきのっていうと黒い剣か? それとも銃弾を掴んだ方か?」

「どっちもよ!」

「ん~、重力ってあるだろ? 重力って強力なものになると光さえ逃がさないほど強力なものもある」

「ブラックホールのことでしょ?」

言って美琴は何か引っかかりを感じたが確信が無かったため考えるのをやめた。

「そう。 さっきの剣は小さいブラックホールが集まっていたようなもんだ。俺の能力は重力を制御する能力だからブラックホールも作れる。 んで、重力の効果範囲をさっきの黒い剣の形にすると黒い剣に触れたものが吸い込まれる。 さっきの車なら剣に触れた部分の原子を強制的に剣が吸い込んだから真っ二つになったというわけ。 切れない物はないと自負してる。 あと、強力な重力は時間の流れを遅くする。 だから、能力を発生させている俺以外の物が遅くなって銃弾すらも掴みとれたってわけ」

説明を受けて美琴は感じた。

(どう考えてもこの力超能力者(レベル5)クラスもしかするとこいつが・・・)

確信の欲しい美琴は尋ねる。

「アンタは名前は?」

「名前? 俺は神無月有真、10月を示す神無月に真実が有るって書いて有真だ。 能力は重力制御、通称絶対重力(ブラックホール)超能力者(レベル5)だ、よろしく」

「やっぱり、アンタが神無月有真」

「ん? 俺のこと知ってるのか? あれ、俺たちどこかで会ったことあったっけ?」

神無月は記憶を辿ってみるが一向に脳内検索に引っ掛からない。

思い出そうと必死になっている神無月を美琴は止める。

「あったことはないわ、今日が初対面だもの」

「じゃあ、なんで俺のこと知ってたんだ?」

「アンタのせいで私が第四位に格下げになって調べたからに決まってんでしょ!」

いや、そんなことは決まってはいない。

「第三位っていうと・・・え、まさか、君が超電磁砲(レールガン)?」

「そうよ、アンタのせいでこっちは四位に転落したの、って訳で私と勝負しなさい、勝負」

「おいおい、いきなり勝負って何なんだよ・・・それよりそっちの名前は?」

とそこに上条が現れた。

「あれ、どうも見たことがある奴がいるなと思ってたら、お前かビリビリ」

「え、当麻お前の話によく出てきたビリビリってこいつのことだったのか」

「ああ、そうなんだ。 ことあるごとにビリビリビリビリ電撃飛ばしてくるんだ、勘弁してもらいたい」

「お前超能力者(レベル5)にビリビリ電撃飛ばされてよく無事だな、不幸っていうわりに死んでないあたり実はそこまで不幸でもないんじゃないか?」

「いやいや、ビリビリ攻撃されてる時点でかなりの不幸だぞ」

二人にビリビリビリビリ言われて美琴の周りでバチバチ電撃の火花が舞い散っていた。

「アンタら人のことビリビリビリビリ言ってんじゃないわよーーーッ!」

美琴がそう言い切るのと同時に青白い閃光が上条と神無月の方向に飛んだ。その瞬間二人の方向からズドンという雷の落ちたときと同じ音がした。普通なら美琴の『雷撃の槍』をまともに喰らえば無事では済まない。だが、2人の少年は無傷で立っていた。上条は右手を上げた状態で。

「こえー、いきなりなんだ?」

雷が間近で落ちる経験などほとんどの人は持ち合わせていない。神無月も同様にいきなりのことに驚いていた。一方、上条はすぐにくるりと向きを変えると美琴とは逆方向を向いて走り出した。美琴は上条を追おうとしたが神無月がまだその場で立っていたので狙いを変えた。

「さーて、さっき言った通り勝負よ」

美琴の目が据わっている。本気とかいてマジと読む人の目だ。

「まあ、待て落ち着けよ、ええとビリビリ?」

ブチッという音と共に再び雷撃の槍が神無月を襲う。

神無月はとっさに右手を突き出して防いだ。右手は黒くなっているが焼け焦げて黒くなったわけではなかった。先ほどの黒い剣を構成していた粒子が右手を覆っていてそれによって雷撃の槍を吸いこんで防いだのだった。

「ア・ン・タはよっぽど死にたいみたいね」

顔が笑っているのに目が笑っていない。怖すぎる。

即座に上条の方にダッシュ。

「ちょっ、神無月こっちに逃げてくるなよ!」

「しょうがないだろ! 向こうにはなんだか分からないがキレてる超電磁砲(レールガン)がいるんだぞ。 どうやって逃げろっていうんだよ」

後ろから『待てやコラー』と美琴が追いかけてくる。

「なんだか分からないがごめんビリビリー」

「俺もごめんビリビリー」

美琴の怒りの理由を分かっていない二人は、さらに美琴の怒りの火に油を注ぐ、いや火にガソリンを飛び越えニトログリセリン(ダイナマイトの材料)を投げ込むことを言う。美琴の怒りが今の一言で5倍くらいに加速する。

「だ・か・ら、ビリビリ言ってんじゃないわよー!」

雷撃の槍が2人に向かって連発する。美琴の攻撃を避けまくって逃げていると神無月はあることに気が付いた。

「なあ、当麻、タイムサービスって何時から何時までなんだ?」

「え、そりゃあ・・・」

時計を見る上条の時間が止まる。美琴の電撃を避けている間にとっくにタイムサービスの時間は過ぎていた。上条の顔が一気にやつれた。それでも美琴は攻撃の手を緩めない。

「アンタたち今日は逃がさないわよ!」

そんな声が聞こえ神無月と上条は再び走り出す。

「これはアレだな」

「当麻の得意なアレだな」

そして二人は同時に叫ぶ。

「「不幸だ――――!!!」」

その声は赤くなり始めた夏の空に消えていくのだった。

 

 




感想と評価をお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。