とある魔術の絶対重力‐ブラックホール-   作:プロジェクトE

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感想・評価をお待ちしております。
褒められるとやる気を出すので、できれば褒めてください。
まあ、色々な意見があると面白いので、そちらも聞きたいです。
とりあえず、今回はキャラ同士が話す部分がいつもより少ないので、
ちょっとシリアス部分と説明部分が多くなってしまった気がしないでもないです。
しか~し、楽しんでいただければ幸い、独自解釈等混じっていますが、
あまり気にせず、広い心で、用法用量をお守りの上楽しんでください。


第10話 一部屋限りの幻想曲 ~fantasie~

 

「なんとかここまで来れば大丈夫か?」

「当麻にインデックスを背負って貰ってんのに悪いけど、正直その白い服は目立つから大丈夫かどうかって聞かれると正直微妙なんだよな」

神無月と上条は自分たちの寮から逃げ出し、現在は夜の街に繰り出していた。

火災報知機に組み込まれていたスプリンクラーを作動させたのが原因で消防署に連絡が入ったためあっという間に寮に人が集まってしまったためだ。

インデックスは学園都市のIDを持っていないであろうことから、はたから見ればただの不審者でしかない。

最悪、神無月たちの寮での不審火の容疑者に上がる可能性すらある。

一応、魔術師をそのまま放置してきたため、あんなあやしい人間を警備員(アンチスキル)が見逃すことはないと思うが、インデックスが関係者と思われないとも限らず、またその際には否定する証拠がない。

部屋の中にひきこもると言う手段もないことはなかったのだが、あの魔術師は仲間がいる風な口ぶりだった為出来る限り危険に巻き込まれないため逃げてきたのだった。

特に今襲われれば神無月はひとたまりもない。

能力の使用による肉体ダメージは大きく、インデックスほどで無いにしろあまりにも酷使した肉体は思うように動かない。

正直に言って歩くことすらしんどいと言うのが神無月の偽り無き本音だった。

それに加え、能力を限界まで使用した為、ある程度の休息と栄養を補給しなければとてもじゃないが戦う事はおろか逃げる為の能力使用すらままならない。

そのためあの寮にいつまでもいる訳にはいかなかったのだ。

また、インデックスの傷に対し、ただ寮の中にいるだけで何もしないという不安から飛び出してきてしまったところもある。

しかし、二人には行くあてがない。

闇医者や治療が得意な能力者の知り合いは残念ながら二人の人脈にはなかった。

インデックスのフードは上条の右手で触って魔術的な効力を打ち消したため魔術師に追跡されると言う事はないはずだが、いつまでも当てもなく彷徨う(さまよう)訳にはいかない。

一応、応急処置でインデックスの背中の傷からの出血は抑えられてはいるが、それでも傷が無くなった訳でも出血が完全に止まった訳でもない。

早く処置が必要なことに変わりはない状態だった。

「おい。 おい! 聞こえてるか、お前の一〇万三〇〇〇冊の魔道書の中に怪我を治すような魔術はないのかよ」

上条がインデックスの意識を飛ばさないように頬を軽く叩きながら問いかける。

インデックスは魔力がないから魔術が使えないと朝言っていた。

ならば、自分なら出来るのでは?と上条は問いかけたのだ。

「ある・・・けど、君には無理」

その言葉に上条は愕然(がくぜん)とする。

「それは、俺の右手の所為か・・・、また、この右手が悪いのかよ」

「なら、俺がやれば―――」

神無月が言ったところでインデックスが弱弱しく首を振る。

「そうじゃないんだよ、君たちには無理、そもそも超能力者っていうのがもうだめなんだよ。 魔術は・・・ね、才能の無い者が、君たちのような才能のある者とおなじことがしたくて生み出されたものなんだよ。 才能のある者と才能の無い者では回路が違うの、才能の無い者のために作り出された魔術は、才能のある者には使えないんだよ」

学園都市の人間のほとんどは学生だ。

無能力者(レベル0)だろうと超能力者(レベル5)だろうと、等しく能力を使う為に脳の回路を拡張している。

例え今ほとんど学校に通っていない不良でも最初は、自分の力の限界にぶち当たるまでは、少なくとも最初の一回くらいは必ず自らの能力を知る為に脳の回路を拡張している。

つまり、この学園都市の人間は魔術を使う事が出来ないということだった。

「そんな馬鹿な話があるかよ。 二三〇万人も人がいて誰もお前を助けられないだなんて」

「ちょっと待て、なあインデックス超能力者じゃなければ魔術ってのは使えるのか? 特別な魔術の才能みたいなものが無くても?」

神無月は思いついたようにインデックスをみる。

「え、うん。 必要なものが準備できて、きちんとした手順さえ踏めれば特別な才能なんかは必要ないよ。 手順や準備が不十分だったりしたら、脳内回路と神経回路を焼き切って廃人になることもあるけど、私は禁書目録(インデックス)だから超能力者じゃない人にならやり方をきちんと伝えて成功させられる」

「だったら、当麻行こう」

「行くって、何処にだよ」

そう言って神無月は携帯をいじると画面を上条に見せる。

「そんなの小萌先生の家に決まってんだろ」

そう言った神無月の携帯には担任の月詠小萌の家の地図が映し出されていた。

 

 

神無月と上条の担任の月詠小萌は、学校での仕事を終え一日の楽しみである晩酌を始めようとしていた。

非常に小柄で顔立ちもとても二十歳(はたち)を超えているようには見えない、世間一般の目から見ても小学生にしか見えない小萌ではあるが歴《れっき》とした成人女性である。

もちろん法律による飲酒も認められている。(ただし、家以外で飲むと警備員(アンチスキル)に声をかけられる)

そんな小萌の一日の締めを飾る楽しみが晩酌(ばんしゃく)なのだった。

小萌の晩酌は仕事のストレスから来る自棄酒(やけざけ)という意味合いはない。

小萌にとって高校での教師生活は苦ではないからだ。

しかし、苦ではないからといって大変ではないかと言われればもちろんそんなことはない。

今年小萌の担当しているクラスは特にだ。

たいていのクラスには問題児は必ず一人はいるものだが、今年小萌が担任を務めるクラスは非常にやんちゃな生徒だけを集めたのではないかというほど賑やか(小萌主観)である。

もともとノリのいい生徒たちが集まったのかクラスは毎日お祭り騒ぎである。

特にそれを先導しているであろう人物が四人ほどいるため、誰かが必ず騒ぎを起こすのだ。

今日も何だかんだで四人のうちの一人である神無月の甘言に乗せられて、いつのまにか女子テニス部の衣装に着替えて補習授業をしてしまったのだった。

そしてそのことの違和感に気が付いたのは補習が完全に終了してからだった。

そんな、生徒たちに振り回されながらも楽しく授業を行える今の職場環境は非常に大変ではあるものの小萌は非常に満足していた。

そして、小萌の一日の疲れをとる楽しみがこの晩酌なのだ。

小萌は冷蔵庫で(しも)が降りるくらい冷えたグラスにキンキンに冷やした缶ビールをとくとくと注ぎ、泡が溢れる(あふれる)か溢れないかというギリギリのラインで止める。

今回も手際よく上手く注げ、小萌はご満悦(ごまんえつ)だ。

そして、それをグビグビと音のなるくらいの勢いで喉に流し込む。

冷えたビールが暑い夏の夜特有の煩わしい(わずらわしい)熱気を体から吹き飛ばしてくれるような感覚に小萌は最高の気分だった。

そしてさらにもう一口。

ふわふわの泡が唇に優しく触れ、黄金の爽快感(そうかいかん)(のど)を通り抜け体に沁み渡る(しみわたる)、そして、最後にホップから生成される苦みが舌を適度に刺激し後味となる。

 

「はぁー、この一杯の為に生きてるんですぅ」

 

なんともおっさんくさいセリフではあるが、これは小学生にしか見えない幼女先生の言葉である。

そんな最高の気分の小萌先生の耳に普段聞きなれた生徒の声が聞こえたような気がした。

 

『なんで有真は小萌先生の家の住所を知ってたんだよ』

『むしろなんで当麻は知らないんだよ。今年最初のホームルームの時間に配られたプリントに書いてあっただろうが』

『えっ、そうでしたか・・・?』

『当麻、お前プリント読んでないだろ。 で、俺は取りあえず念の為に住所をggooooleMAPで調べて登録しておいたんだよ』

そんな声が少しずつ小萌の家に近づいて来て玄関の前で止まったような気がした。

 

 

「ここ、か?」

「たぶん、きっと、そうなんじゃないかなあ・・・。 正直言うと、自分で調べておいてなんだが自身が無くなってきた」

二人が戸惑う理由は、自分たちの担任の住んでいるアパートと思われる建物が自分たちの担任教師のイメージと非常に乖離(かいり)していたためである。

何が言いたいかというと、

小学生みたいな姿の担任教師が住んでいるアパートにしてはとても時代を感じさせる佇まい(たたずまい)だったのだ。

良く言えば、レトロ。

悪く言えば、ボロイ。

何というか、昭和の初期から建っているような雰囲気なのだ。

建物全体のイメージカラーは赤錆色(あかさびいろ)

最近の耐震性能の高い建物作りという風潮に真っ向から勝負を挑む(いどむ)ようですらある。

二階へと続く外の鉄階段もかなり錆びていて、場所によっては穴があいている。

廊下には各部屋の玄関があり、その横には部屋ごとに洗濯機が鎮座(ちんざ)している。

どうやら、風呂場という概念すらこの建物にはないようだ。

「おいおい、ここホントに学園都市の中かよ」

「確か学園都市って外の技術の二、三〇年先を行ってるんじゃなかったけか? それとも、二、三〇年先ではこういう・・・古風な感じの建物が人気になるのか?」

「いや、たぶんそれはないと思う。 まあ、とりあえず小萌先生がここに住んでいるかどうか確認してくる」

そう言って建物に向かう神無月を上条は呼びとめる。

「いや、確認ってどうやって?」

「こういう集合住宅なら表札くらいあるだろ。 無かったら、郵便すら届かない事になるからな、それは現代日本ではさすがにないだろ」

「ああ、なるほど」

「ちょっくら見て来るから、当麻はそこで休んでてくれ」

「悪い、頼む」

さすがにここまでインデックスを一人で背負わせてしまったこともあり、神無月は一人で一階から順に一軒一軒表札を確認していく。

「鈴木・・・橋本・・・戦場ヶ原・・・桜・・・神沼―――」

一階を見終わって二回に移った神無月はある一室の前で足を止めた。

「ホントにあったよ・・・」

二階の廊下の突き当たりである一番奥の部屋のドア横には、『つくよみこもえ』と丸っこい字で書かれた表札が掛かっていた。

「なんで表札が平仮名なんだよ・・・」

神無月は確かにあのお子様先生の見た目からすれば違和感はないように感じたが、本人的にはそれでいいのかと思ってしまう。

しかし、今はそんなに悠長(ゆうちょう)に考え事をしている暇はないため、すぐに上条を呼びに行くのだった。

 

 

上条を呼んできた神無月は玄関のチャイムを鳴らす。

するとぴんぽーんという音が鳴った。

古さの割にきちんとチャイムが鳴ったことに驚きつつ、一秒だけ待って神無月はチャイムをもう一度鳴らした。

あまり時間の無い現状で返事が遅い事に(ごう)()やした上条は扉を蹴破る(けやぶる)事にした。

そしてドゴンという音が響く。

しかし、ドアは蹴破られるどころか凹みもしなかった。

そのかわりに上条は、

~~~~と声にならない悲鳴を上げて、蹴っていない片足でケンケンをしている。

こんなときでも変わらず不幸な上条に神無月は溜息(ためいき)をつく。

すると間もなく、

「はいは~い、対新聞屋さん用に扉だけは頑丈なんですー。 開けますよー」

と言う声が聞こえ、ガチャリと開かれた扉が急に吹いた突風で上条の顔面を直撃した。

「っおおおおおおおおおお・・・」

鼻頭を押さえる上条。

それでも背負ったインデックスを落とさなかった根性を神無月は正直に凄いと思う。

扉の隙間(すきま)から小萌が顔をのぞかせ、いましがた扉が何にぶつかったのかを発見する。

「だ、大丈夫ですか? 上条ちゃん」

「だ、だいじょうぶでう」

鼻を押さえて言う上条とその隣にいる神無月を見て小萌は、

「えっと、上条ちゃんと神無月ちゃん、新聞屋さんのアルバイトでも始めたのですか?」

上条の背中が見えていない小萌はそんな冗談じみた事を言ったが、

「ああ、すみません先生。 詳しい事情は後で話すんで、とりあえずこの子の傷をどうにかするのが最優先なんでちょっとお邪魔しますよ」

「ちょっと、神無月ちゃん勝手に入っちゃ困りますって、上条ちゃんも続いちゃだめですって・・・・えっ、きゃああああ、ど、どうしたんですか上条ちゃんその背中」

小萌は上条に背負われたインデックスの傷を上条の傷と勘違いして叫ぶ。

神無月と上条は、血の色にあわわわと驚いて右に行ったり左に行ったりしている小萌の横をすり抜けて廊下を直進する。

後ろで小萌が『包帯はこっちにあったんでしたっけ、それより消毒が先? それとも病院に連絡した方が』といまだに左右に行ったり来たりしているのを一瞥すると小萌が先ほどまでいたであろう部屋に侵入した。

 

 

小萌の家のリビングらしき部屋に入った神無月と上条は一瞬部屋の惨状(さんじょう)に止まった。

いきなり来訪したのだ、客が来る状態になって無くても仕方がない。

だが、それでも限度があるだろうと二人は思った。

部屋の真ん中にあるちゃぶ台は、ひどく古い事と山盛りになった煙草の灰皿が乗っていることを覗けば、まあ問題はない。

しかし、それ以外が問題だった。

部屋に入った二人の目にいきなり映った物はビールの缶だった。

床という床がビールの缶でいっぱいだった。

片づけの苦手な高校生男子の部屋よりもひどい。

「凄え、女の人の幻想をここまで的確にブチ殺せるなんて。 ある意味、当麻の右手より凄いかもしれない」

「ああ、俺の右手でもここまでの惨状は引き起せない」

「確かに当麻は結構綺麗好きだもんな。 食器は洗うし、掃除はするし」

「それは普通では?」

「まあ、今俺たちのいる部屋はそれが出来ていないようだがな」

周囲を見回す神無月の視界には、ビールの空き缶、ビールの空き缶、ビールの空き缶、煙草の吸殻が入ったビールの空き缶、ビールの空き缶、山盛り灰皿、である。

「なあ、一昔前にゴミ屋敷っていうテーマでドキュメンタリーがやっていなかったか・・・」

「ああ、あった気がするな・・・」

遠い眼をする神無月と上条。

「いきなり押し掛けてきてその発言は舐めてるのですっ!! 」

ようやく混乱状態から抜け出した小萌が廊下からやってきたことで、神無月も呆然(ぼうぜん)(状態異常)から抜けだした。

「やっべ、あんまり悠長にしてらんねえんだった。 当麻はまだインデックスを背負っててくれ、俺が床というか畳の上を片づけちゃうから」

「ああ、出来るだけ早く頼む」

即座に片付け開始する神無月を見て小萌は叫ぶ。

「せ、先生がやりますから神無月ちゃんはてきぱき掃除を開始しないでください。 先生にだって見られたくないもの一つや二つって―――それ先生のパンツですー! そんな下着売り場の店員さんのような無感情で綺麗に畳まれるとそれはそれで先生傷付いちゃうんですよ―――!」

 

 

小萌の部屋を掃除し終えた神無月は上条と共にインデックスを畳の上にゆっくり下ろすのを手伝っていて、そんな二人の傍らにこの部屋の主は壁を向いて体育座りしていた。

「うう、先生、たった三〇分の間に色々な物を失った気がするのです・・・」

すっかり落ち込み気味の小萌の着ているフード付きパジャマから生えているウサギ耳もなんだか少し元気がないようにピコピコ揺れている。

傷口を床につけないようにインデックスを床に下ろした神無月はそんな小萌を振り返る。

小萌にはこれからインデックスを救う為に魔術を使ってもらわなきゃならないのだから、神無月としても小萌をいつまでも落ち込ませておくわけにはいかない。

「先生、そんなに気にすることもないですよ。 一歩部屋に足を踏み入れた時点でほとんど先生の私生活がどんなか掴めたので、そこから先生の評価が落ちることはありませんでした」

「それって、部屋に入った時点で先生の評価は最低辺まで落ちたと言うことなのです!?」

「そ、そんなことはないですよ・・・まあ、個人的に女の人には煙草を吸っていてほしくはないですけど」

「神無月ちゃんは煙草を吸う女の人は嫌いなんですー?」

「まあ、そうですね」

「きっぱり言い切られました! 先生、今日から禁煙するのです・・・って、それよりも、いえ、神無月ちゃんが煙草を吸う女の人があまり好きじゃないと言う事も重要なんですが、その白い修道服の子はどうしたんですか? きゅ、救急車は呼ばなくていいんですか?」

聞かれた神無月は上条を振り返り目配らせする。すると、上条は首を縦に振って、

「先生、ちょっと内緒話こっち来る」

「はい?」

よく分かっていないであろう小萌は上条に呼ばれて何の疑いもなく近づいていく。

そして、上条はインデックスの傷を覆っている包帯を少しずらした。

「ヒィッ!」

小萌が悲鳴を上げるのも無理はない。

インデックスの傷はそれほどまでに酷い。

包帯をずらした上条ですら目を覆ってしまいたくなるような傷。

真一文字に切られた傷は赤黒い血の色の奥に白い背骨のようなものが見えるほどまで深く切られている。

上条は嘔吐感を堪えながら、包帯を元に戻す。

その時、

 

「―――出血に伴い、血液中にある生命力が流出しつつあります。 警告、第二章第六節。出血に伴う生命力の流出が一定値を超えた為、強制的に『自動書記(ヨハネのペン)』で覚醒(めざ)めます」

 

と、インデックスが床に倒れたまま氷のような冷静な声をあげた。

小萌も上条も神無月もその声に驚き、インデックスの顔を見る。

そんな三人を異にも返さず、インデックスは言葉を続ける。

 

「現状を維持すれば、およそ15分後に私の体は必要最低限の生命力を失い絶命します。 これから私に指示に従って、適切な処置を施していただければ幸いです。」

 

インデックスの言葉を聞いた上条は、

「先生、今から俺は救急車呼んできます。 先生はその間、この子の話を聞いて、お願いを聞いてあげてください。 とにうかく絶対意識が飛ばないようにしてください」

いきなり『魔術を使ってください』なんて言ったところで魔術さのものを信じてもらうのに時間が掛かってしまう。

今、小萌にインデックスの指示通りに動いてもらう為には内容を全部話すよりもそのとき何をすればいいのかを伝えた方が手っ取り早い。

やり口は詐欺師同然だが、今はとにかく時間がない。

上条はインデックスの床に倒れるインデックスの顔を覗きこむ。

「なあ、インデックス。 何か俺に出来る事ってないのか?」

「ありえません。 この場における最良の選択は貴方がここを立ち去る事です」

上条の右手はあらゆる魔術を打ち消す。

それはこの場にいるだけでこれから行おうとしている回復魔術を打ち消す可能性が高い。

自身の右手を恨みがましく見る上条に神無月が小萌に聞こえない程度の声で話しかける。

「当麻、俺がこっちに残っているから心配すんな。 最悪、俺が脅すか嘘八百並べて小萌先生には絶対魔術を使ってもらうから、お前はインデックスの怪我が治った後の為の買い物でもしてきてくれ」

「・・・分かった。 そっちのことは頼む」

そう言うと、上条は踵を返し、

「先生、俺ちょっとそこの公衆電話まで走ってきます」

「上条ちゃん、電話ならそこに――――」

小萌が言い終わるのを聞かずに上条は部屋から飛び出していった。

 

 

上条が部屋から出ていくとインデックスはその無機質な瞳を小萌に向けた。

「現在時刻は日本標準時間において何時ですか? 日付もお願いします」

「七月二〇日の午後八時半ですけどー?」

時計を見ていない小萌をインデックスは怪訝そうな目で見て、その視線の先を窓の外に向ける。

「―――星と月の位置から見て、天狼星方向に誤差〇・〇三八で一致しました。 現在時刻は日本標準時間の七月二〇日午後八時三〇分でよろしいですね?」

「はい、正確には五三秒に入ったところですけどー、って起き上がっちゃあダメですよ! 神無月ちゃんも止めて下さいです」

言われた神無月は首を横に振ると、

「先生、彼女の言うとおりにしてください。 必要なことなんです」

「で、でも・・・」

そう言っている間にもインデックスは、部屋の真ん中に置いてある卓袱台(ちゃぶだい)に向かい、「・・・巨蟹宮(かに座)の終わり、八時から一二時の夜半。 方位は西方。 水属性の守護、天使の役は智天使(ヘルワイム)・・・」と呟きながら卓上に自らの血で魔法陣、そう称するしかないものを描いていく。

インデックスの血によって卓袱台いっぱいに描かれた図形は、大きな円の中に五芒星を描き、その円の外側にどこの国のものか分からないような文字がさらに大きな円を作っている。

その様子を見て小萌はギョッとして近づく。

「な、何やってるんですか。 今は動いちゃだめなんです。 そこに横になって大人しく救急車を待つんです!」

「救急車が何を示すものなのか分かりませんが、それはあと一五分の間に傷を塞ぎ、体内の生命力(マナ)を必要量補完することができますか?」

「それは・・・」

小萌には想像がついてしまった。

救急車がここに来るまでにだいたい一〇分はかかる。往復でその倍。インデックスの言っていた一五分が限度という根拠は分からないが、それでも顔面蒼白になっている状態の彼女の様子からは救急車が来ても間に合わないことが伝わってくる。

「で、でも。 動いたら余計に血が止まらなくなるのです。 今は静かに待った方がいいんじゃ―――」

「先生!」

それでもどうするべきか迷っていた小萌を神無月の大きな焦り声が叩いた。

「神無月ちゃ―――――ヒッ!」

大声で呼ばれて振り返った小萌の目の前には、台所にあったであろう包丁を持った神無月の姿があった。

「か、神無月ちゃん、な、何を」

両手を上げて降参ポーズの小萌に神無月は念を押すように静かに、しかし脅すような圧力を視線に乗せて話す。

「先生はインデックスの言う事を聞いてください。 議論の余地はありません。 一刻の猶予もありませんから。 もし、先生が聞いてくださらないならその時は―――」

神無月の手に持った包丁が照明のあかりを反射しギラリと光った。

そしてその鋭い包丁の先端が首に押し当てられる。

 

神無月の首に。

 

「その時はこの包丁が俺の首の動脈をぶった切ります」

 

包丁の先端から神無月の血が包丁の刃に沿って一滴たらりと伝う。

神無月は上条との約束通り最悪の場合使うと言った脅しに入ったのだった。

ただし、包丁の向き先は小萌ではなく、神無月自身。

追い詰められた犯人が自分の頭に銃口を向けるようなクレイジーな行為。

光を失った凍えるような瞳の神無月の唐突な行動に、口をパクパク開閉させて小萌はあわあわしている。

時間の無いなか小萌に放心されていても困るので神無月は、

 

「返事はッ!!!」

 

その大きな声で小萌の体がビクンと震え、背筋がピンとなる。

「はっ、はい! わかったのです。 何でも、言う事を聞くですから、その包丁を首から話して下さいー!」

 

 

自らの担任教師に『何でも言う事を聞く』と言わせた男、神無月有真は、インデックスの話を聞き回復魔術の準備に戻った小萌の小さな背中を見て罪悪感につぶれそうだった。

今も小萌は準備の合間にチラッと神無月の方を振り返り、視線が合い、ビクッと体を震わせて準備に戻るという動作をたびたび繰り返していた。

あきらかに警戒、ではなく怖がられてしまっている。

確かに時間がない状態で効率良く小萌に魔術を使ったもらう為に仕方がなかったのだが、刃物をちらつかせた脅しなどまるでギャングのやり口だった。

包丁を使ったのも重力剣などより分かり易く、かつ人間の根源的な恐怖に訴えかけるからであり、確かに予想通りではあったのだが、如何せん効果覿面(こうかてきめん)すぎた。

だが、かといって止める訳にはいかない(・・・・・・・・・・)

今も小萌が神無月を振り返るたびにニコッと笑い、包丁を持った手をパタパタと左右に振る。

もちろん、その行動がどのように相手に伝わるかも分かった上でだ。

当然小萌の目にはこう映っているだろう。

『ちゃんとやらなきゃ失血死体寸前患者がもう一体増えるぞ』と。

完全に相手の善意を利用して、良いように使う。

最低の人間の所業だった。

しかし、神無月の罪悪感に潰されそうな心と小萌の脅されて従わされた行動の結果から月詠家の卓袱台の上にはこの部屋のミニチュアが出来上がりつつあった。

ゲームのメモリーカードを卓袱台に見立て、それを間に向かいあうように二体のカエルの食玩、片側のカエルの背後にはもう一体のカエルの食玩が置かれ、部屋の本棚に対応するように文庫本が立てられる。

「えっと、何をやってるんですー? こんな時にお人形遊びって訳じゃないんですよね?」

「これは魔術です」

そう言うとインデックスは卓袱台の上にビーズをいくつか放り投げる。

するとビーズはこの部屋の缶ビールの転がっている位置に転がっていきそこで止まる。

目をパチクリさせている小萌の感情など意にも返さずインデックスは、

「それでは儀式を開始します」

と準備の終わったとたんに淡々と言う。

「―――へっ? これでおわりじゃないんですう?」

「・・・始まってすらいません。 今のは儀式場である『神殿』の作成。ただの準備です。 それよりここからはこちらの指示を正確にこなしていただけると幸いです。手順を踏み間違えた場合、あなたの神経回線と脳内回路を焼き切る恐れがありますので」

「? どういうことです?」

「失敗は貴方の肉体の破壊と死亡を意味している、と告げます。お気を付け下さい」

ぶっ!?と吹き出しそうになる小萌。

そして小萌は神無月を少し振り向くとインデックスに向き直る。

「一つ聞いてもいいのですか?」

何でしょうとインデックスが無機質な瞳を小萌に向ける。その瞳に若干たじろぎながらも小萌は問いかける。

「もし、もしもですけど。 先生が魔術?に失敗してしまったら先生は死んでしまうのですよね?」

「はい、魔術の核部分での失敗でなければ問題もなく魔術の継続は可能ですが、外的な干渉、例えば逆転系の魔術を術式に挟み込まれたり、誤作動を引き起こす魔術の干渉があればほぼ間違いなく私と貴女は死亡するでしょう。しかし、そのような妨害さえ入らなければ基本的には失敗の少ない部類の魔術です。この魔術は儀式場を術式発動前に組み上げるタイプの魔術です」

インデックスは卓袱台の上に構築されたこの部屋のミニチュアを指さし、

「つまりこの儀式場が核になります。そしてこのように正しく一度場を区切ってしまえば、術者の、この場合は貴方の意思で、執り行う魔術とは逆の思念を持って魔術の行使でもしない限り失敗はありません」

「えっと、先生が貴方の傷を治すことだけに集中すれば失敗はほとんどないという理解で正しいのです?」

「そうですね。その理解で問題ありません」

「それを聞いて少し安心できたのです。それでですね、一番聞きたかったことは別にあるのですよ。仮に失敗してしまった場合はそこにいる神無月ちゃんも失敗に巻き込まれてしまうかどうかが一番心配だったのですが・・・」

この先生は自分の心配よりも生徒の心配をするのかと神無月は驚く。

普通、自分の命が掛かっている時点で拒否されてもおかしくはないのにそれでも協力してくれてあまつさえ自分の命よりも他人の命を優先する。

いくら脅されているとはいえ、見捨てて逃げてしまうことだって出来るのに。

まったく本当にかなわない。

いったいぜんたいどんなふうに育てられたらこういう性格になるのか、こういうことこそ研究するべきなのではないだろうかと思う神無月だった。

そして小萌の神無月が失敗に巻き込まれるのかと言う問いにインデックスは、

「問題ありません。失敗は術者に跳ね返りますが、それ以外の物に術の失敗の影響は出ません。例えば、魔術の失敗をしたとしてその影響がそこに転がるビールの缶にも及ぶと思いますか? ただこの部屋に居たというだけでは彼はそこに転がるビールの空き缶と違いがありません。せいぜい、貴方が目の前で爆ぜるトラウマが一生もののトラウマになるくらいです」

「爆ぜるんですか!?」

ビールの空き缶と同列視されたことに納得のいかない神無月と爆ぜると聞かされて驚きを隠せない小萌を気にもせずインデックスは淡々と魔術を進めていく。

「はい、爆ぜます。 それでは、天使を降ろして神殿を作ります。私の後に続き唱えてください」

インデックスが呟いたのは意味を見いだせる言葉ではなく、音だった。

讃美歌の旋律を口ずさんでいるようですらあるが、そうではないことも神無月は何となく分かった。

きっと小萌も魔術と聞いた時何か怪しげな呪文でも唱えるものだと思ったであろうが、予想外の事態に取りあえず真似をしたのだろう。

その瞬間、小萌に対応するミニチュア内のカエルの飾玩が歌った。

小萌は驚き悲鳴を上げるが、その悲鳴さえもカエルの飾玩は同じように鳴くのだ。

もちろん飾玩に声帯がある訳がない、飾玩が振動し同じように音を出していたのだった。

「「リンクしました」」今度はインデックスの声も二重に聞こえる。

「テーブルに作った神殿はこの部屋とリンクしています。この部屋で起こった事はテーブルの上でも起きるし、テーブルの上で起こった事はこの部屋でも起きます」

インデックスが卓袱台の足をわずかに押す。

その瞬間、部屋全体が揺さぶられる衝撃を受ける。

同時に部屋の空気が変わる。

煙草とビールによる居酒屋のような空気が一瞬で早朝の森や雨の降った後の高原のように澄んでいく。

しかし、それも心地よい物ではない。明らかに場違いなところに来てしまったというような不安にかられるのだ。見えない何千もの目で観察されているような異様な感覚が小萌を襲う。

神無月も小萌同様、いや小萌以上の異様な力の淀みをひしひしと感じていた。

その力と来たら猛獣の群れの中に一人で紛れ込んでしまったかのような感覚を与えてくる。

場違いどころの話ではない、知らない内に敵地に来てしまったかのような感覚。

明らかに自分がこの場に居るべきではなかったと感じる。

周囲には何もいないはずなのに、いつ槍や剣が飛んできてもおかしくないというくらいには敵意を向けられている感覚がある。

そんな神無月の危機感など知らないインデックスは、

「思い浮かべなさい!金色の天使、体格は子供、二枚の羽根を持つ美しい天使の姿!」

と、突然小萌に指示を出す。

小萌はすぐに目を閉じて天使の姿を想像しようとするが、段取りもなし、準備もなしの状態でいきなりそんな事を言われても出来る訳がない。

小萌のイメージが纏まらず、周囲を異様な力の淀みがまとわりつく。

「とにかく思い浮かべなさい!本当に天使を呼んでいる訳ではありません。周囲の(マナ)を術者のあなたの意思に従って形を作りこむのです」

言葉で聞かされて出来る事なら、言われなくてもできるものである。

口で言われても天使の姿なんて絵ですら日常的に見る機会のない日本人には頭で描けるイメージには限界がある。

普段から教会へ日曜日のミサに行ったり、普段から聖書を愛読しているといった宗教心の濃い人でもなければ、天使の良く出てくるアニメや漫画を見ている人間でなければ、天使なんて言われてもぼんやり人間に羽根が付いた程度しか想像できることがない。

試しに天使の絵を書いてみろと言われて上手く描ける日本人がどれだけいるだろう。

ほとんどがあまり上手とは言えない絵になる事だろう。

そして描けないと言う事は細部にまでわたってきちんと把握していないと言うことに他ならない。

天使の細部も知らずに作りこむと言うのは不可能な話だ。

小萌も例に漏れず、天使の形が作りこめない。

そして周囲の力の淀みにより小萌自身は泥沼の中に沈んで言っているような感覚に余計に焦りを募らせる。

そんなとき唐突に小萌の周囲に纏わりついていた不定形な力が収束して、天使らしい形をとった。

不意に自分の中の天使のイメージ像がはっきりとした小萌は恐る恐る瞼を開ける。

するとそこには子供と言うには少し大きな、一言で言えば少女の形をとった天使が目の前に現れていた。

目の前の天使に驚く小萌を他所にインデックスはポツリと、

「イメージの誘導・・・」

と呟き、神無月を見る。

そこには皮膚の一部に包丁を走らせたかのような傷を負った神無月がいた。

神無月は自分の傷を見て、視線をインデックスに投げる。

「つまりこれが能力者に魔術は使えないっていうことなんだな」

神無月はインデックスが小萌に向かって天使をイメージしろと言ったそのときに神無月自身も天使の形をイメージしていたのだった。

本来魔術はその魔術を執り行ったものにしか制御できないものだ。

だが今回は別だった。

先に神殿をくみ上げ構築した神殿と現実世界をリンクさせてからの詠唱。

準備だけを先に行っていながら、その準備で何をするのかを同時に決定していなかったのだ。

つまり、運動会の準備はしているのに運動会で何をやるかが決まっていない、そんな状態。

逆にその状態は誰かが種目を決めてしまえばその流れになってしまうということだ。

もちろんインデックスは魔術が分からない小萌が術を制御しやすいように普通の魔術師なら同時に行う作業をあえて分解して魔術を行わせたのだが、この場にはイレギュラーがいた。

それが神無月。

イメージがうまく固定化できなかった小萌より速く神無月のイメージが固定化してしまったのだ。

イメージが神殿内に固定化されるとそれは現実にも影響を及ぼす。

つまり本来の術者である小萌の脳内イメージを神無月の脳内イメージが上書きする形になったのだ。

そして上書きされたハッキリしたイメージが今度こそ小萌の作り上げた天使という形を作り上げることのなったと言うわけだった。

そして今回神無月が無意識に行ったイメージの上書きだが、失敗していればとんでもないことにもなりかねなかったものでもある。

イメージの上書きを利用した術式こそ、誤作動を引き起こす魔術そのものだったからだ。

なぜなら使う魔術によって場に作り上げる天使が異なる。

術者のイメージによって微妙に作り上げられる天使像に差異はあるものの大まかなその天使の根幹となる物がある。

これを無視して術と無関係の天使を作り上げるとその魔術は制御できなくなる。

これは大型クレーンを動かすのに、船の船長をつれてくるようなものだ。

もちろん、そんな魔術は力だけが暴走して術者はその反動を受ける。

それを故意に引き起すのが誤作動を引き起こす魔術だ。

相手の天使像を術の途中で故意に変質させ、術を暴走させることによって相手の魔術を失敗させる。

しかし、そもそも神無月は能力者だ。

能力者には魔術は使えないとインデックスは言った。

だからこそわざわざ小萌の部屋まで神無月と上条はやってきたのだが、神無月は魔術を無意識とはいえ使った。

それはどういう事なのか。

インデックスは能力者に魔術は使えないと言った。

しかし、それは全く使えないと言う事ではない。

使えはするが、能力者が魔術を使用すると力の制御が完全にはならないのだ。

例えば、電池で豆電球を光らせようと思ったら、電池と豆電球を繋ぐ導線、つまり回路が必要になる。

そして導線には銅が使われるとする。

しかし、これを別の金属の導線を使ったら、はたまた金属以外の物質を導線として用いたらどうなるのか。

物質にはそれぞれ固有の導電率があるため、違う物質を使えば当然導電率も変わる。

導電率が変わると言う事はその物質の抵抗値も変わると言う事だ。

それはつまり、その物質を電気が通り抜ける際に生じる仕事量、つまりこの場合は熱量が発生する事になる。

そして熱量が大きければその熱によって導線自体が焼き切れることもある。

つまり、別の物質で回路を生成した時と同じように、普通の人間を基準に作られた魔術を能力者が使用するとダメージを負うのだ。

そしてそれが神無月の腕に残された傷跡だったということだ。

しかしなにはともあれ、これで神殿内の天使の固定化が終了、ここからは作った神殿内でどのような魔術を起こすかを定義すればいい。

インデックスは言う。

「唱えなさい、あと一言で終わります」

インデックスと小萌先生、そして卓袱台の上のカエルの飾玩が歌う。

卓袱台の上ではインデックスに対応する飾玩の背中が熱したチョコレートのように溶ける。

そして、徐々に元の丸みを帯びたカエルのボディに戻っていく。

卓袱台の上で起こっている事はこの部屋の中でも起きているといっていたインデックスの背中を今見るのはとても勇気がいる行為だと思った神無月だったが、よくみると神無月に対応したカエルの腕もインデックスの背中同様どろりと溶けていて、つい自分の腕に視線を向けてしまった。

「ッ・・・」

神無月が腕を見ると、自分の腕の傷口が形容したくない様相に溶けていて、赤黒いゼリーのような状態になって徐々に血管、筋肉が修復されているところで、それをもろに見てしまった。

そして同時に神無月の体が急激に熱くなり冷汗が吹きでる。

傷の治癒とは無関係に周囲から何かが体の中に入ってきているような異物感を感じたのだ。

インデックスはこの術により傷の治癒と生命力(マナ)を補充すると言っていた。

つまりこれがインデックスの言っていた生命力(マナ)ってやつなんだろうかと神無月は不快感に顔を(しか)めながら手に重力剣を小さく出現させてみる。

魔術師ステイル=マグヌスと戦った時の消耗で重力剣を出せるだけの力は残っていなかったはずだが、それが出来てしまう。

つまり魔術的な生命力(マナ)と超能力を使用するのに使うエネルギーは同じということは、・・・どういう事なのだろうと頭を働かせようとるが、神無月は微妙な発熱の為に頭がうまく回らず、考える事をやめた。

取りあえず傷の回復と超能力のほぼ全開での使用が出来るようになったのだから良しとしようと。

そして、神無月とインデックスの回復が終了すると、

「生命力の補充に伴い、生命の危機の回避を確認『自動書記(ヨハネのペン)』を休眠します」

その言葉と同時に人形のようだったインデックスの瞳に光が戻る。

「あとは降臨()ろした天使を帰して、神殿を崩せばおしまい」

そう言うとインデックスは唄う。

小萌もそれに続いて、その唄を唄う。

フッと場に満ちていた空気が切り替わり、その瞬間に何とか座っていたインデックスがばたりと床に倒れ、すかさず神無月が支えに入る。

「おいインデックス、体はもう大丈夫なのか?」

「ん、大丈夫。 治すのには自分の体力がいるだけ、ちょっと何日か風邪っぽい感じになるけど傷自体は塞がっているから」

神無月はすっとインデックスの背中に視線を送り、傷がない事を確かめる。

「分かった、今は寝ろ。 当麻が帰って来た時にお前が元気ならアイツは安心できると思うから」

「うん、そうする。 良かった、あなたやあの人に、背負わせることがなくて」

「・・・・・・」

「私が死んだら、やっぱり背負わせちゃう事になるからね、だからそうならなくて良かった」

「・・・・はあ、ったく、怪我人はそんなこと気にせずに寝てりゃあいいんだよ。 自分のことだけ考えて、俺たちのことなんか別に気にしなくても、怖いとか痛いとか死にたくないとか言って俺たちに『助けて』ってそう一言(ひとこと)言ってくれればそれで」

「うん、つぎはそうする」

「それでいい、もう寝ろ。 まだ辛いだろ?」

インデックスはへへっと笑う。

「じゃあ、お言葉に甘えて、おやすみなさい」

「おう、おやすみ」

 

 

そんな様子を見ていた小萌はインデックスが眠りにつくと神無月に恐る恐る話しかける。

「か、神無月ちゃん? えっと、結局何がどういう事だったんですか」

神無月が小萌に振り向き、ずいと近づき、小萌の口からひぇと空気が漏れる。

そして次の瞬間、

「すみませんでしたーーー!!!」

「へっ?」

小萌に土下座で謝る神無月がそこにいた。

「緊急事態とはいえ、先生を脅して、無理やり言う事を聞かて、本当にすみませんでした」

「えっと、はい、いいのです。 たしかにあのときの神無月ちゃん本当に怖くて、ちょっと漏ら、いえなんでもないのです。 ちょっと、しそうになっただけで、してないのです」

顔を上げ、小萌と向き合う神無月。

「ええと何の事か分かりませんが、つまり許していただけると?」

「はい、許してあげるのです。 緊急事態だったのは先生も立ち会ったので分かっているのですし、悪いことの為に先生を脅したんじゃなかったんですから先生としては許してあげるのです。でも、」

一区切り置くと、小萌は神無月に目を真っ直ぐに見て、

「もう一回あんな風に自分の命を軽んじるような真似をしたら先生今度は許さないのです。 先生を巻き込むのは構いません。 でも、自分の命だけは絶対に大事にしてくださいです」

真剣な小萌に向かう神無月は背筋をまっすぐにのばし、小萌を見つめると、

「はい、肝に銘じます」

と心から小萌に誓った。

そして、小萌はところでと切りだす。

「話は変わるのですが、神無月ちゃんはどういう経緯で先生の家に来たのです?」

「ええと、話せば長くなるので、それは当麻が帰ってきてからにしても?」

「むう、しょうがないのです。じゃあ、上条ちゃんが帰ってくるまでは待ってあげるのです。 じゃあ、もう一個聞きたいことがあるのですが、今日は神無月ちゃんと上条ちゃんはどうするのですか?」

「どうすると言いますと?」

「だから、先生の家に泊っていくのか、それとも寮に帰るのかと言う事です」

「え、もちろん先生の家に泊まっていきますけど?」

「先生の許可も取らずにさも当たり前のように泊っていく発言です!?」

「だって先生、さっき俺が許してくれるんですか?って聞いたら許してあげるのですって言ったじゃないですか」

「泊る事を許してくれますかって聞いてたんですか!?」

「それに先生、今朝俺が冷蔵庫とか買いに行こうとしたら補習でストップ掛けて、いざとなったら先生の家で御馳走してくれるって言ったじゃないですか。それってつまり、先生の家に泊って言ってもいいってことでしょう?」

「とんでもない論理の飛躍を見たのです!?」

「ま、取りあえず、一週間くらいお願いします」

「しかも長期滞在する気満々なのです」

「では当麻ともどもよろしくお願いします」

「さらに人数を増やしやがったのです。でも、先生の家にもそこまでのお布団は流石にありませんよ?」

「じゃあ、俺が先生と一緒に寝るって事で。 朝まで寝かせませんよ」

ついに神無月の言葉で小萌は顔を真っ赤にして倒れる。

まあ冗談ですけどねと言う神無月の言葉を聞く前に小萌は意識を失っていた。

静かになった部屋の中で神無月はインデックスと小萌先生の布団を敷き、二人を布団まで運ぶ。

そして、全てうまく言ったことを上条にメールする。

窓の付近に腰かけた神無月は首を後ろに倒し、窓から月を眺めながら今日も忙しい一日だったと思いながら、小萌に何でも言う事をきくって言わせた事を今後どのタイミングで交渉の切り札にしようかと一人思案して、次に夕飯のメニューで意見が割れたときに使うかと考えて眠りに落ちていくのだった。

 

 




後書きコーナー

作者:いやー、『はたら○魔王さま!』面白かったなー。

美琴:って、何暇そうにアニメ見てんのよ! そんなに時間があるんだったら、さっさと続きを書きなさいよ! 『はたら○魔王さま!』たしかに面白かったけど・・・

作者:何で美琴先生はそんなにカリカリしてんの?

神無月:いや、そこは今回出番がなかったから以外考えられねえだろ・・・

美琴:べ、別に、そう言う訳じゃ―――

作者:じゃあ、いきなり始まりました。 第一回『はたら○魔王さま!』クイズ選手権、司会のプロジェクトEです。

美琴:えっ、なに、何でいきなりクイズ選手権が始まってるの・・・

作者:考えるな、感じるのだ。

神無月:美琴、気にしたら負けだぞ。 小説書くのに必要なことはどれだけ自分の脳みそが腐っているかを表に出せるかにかかっているっていうのがこの作者の言だからな。

美琴:腐ってるんだ・・・

作者:腐ってるは腐ってるでも、腐女ってる(くさってる)じゃないからな、あくまで頭のいかれ具合を表すだけで。

美琴:どちらにしろ終わってるじゃない。

作者:まあ、なにはともあれ。始まりました。『はたら○魔王さま!』クイズ選手権。じゃあ、さっそくで悪いんですが、選手紹介に移ります。 では、赤コーナー、今日も明日も超電磁砲(レールガン)、常盤台の電撃姫、学園都市第四位、御坂美琴選手―――。

美琴:えッ!? 私もう出ること決定してたの!? というか、今日も明日も超電磁砲(レールガン)ってなに!?

作者:青コーナー

美琴:ちょっ、スルー!?

作者:ゴホン(しきりなおして)、青コーナー、都市伝説になるほどの甘味好き、今日も絶対重力(ブラックホール)で何でも吸引、学園都市第三位、神無月有真選手―――。

神無月:美琴諦めろ、突っ込んでも無駄だ。 あとがきコーナーの中ではこいつが全てを掌握してる。

作者:続いて、白コーナー、その右手はどんな異能もブチ殺す、学園都市が誇る無能力者(レベル0)、上条当麻―――。

上条:えッ、あれ、スーパーの安売りに来てたはずが、なんですかこの真っ白な空間は?

神無月:当麻も来ちまったか、これでお前もここの住人だな、ドンマイ。

上条:有真? あれ、ホントにここどこでせう?

神無月:だとさ(作者を向いて)。

作者:ああ、ここは不連続時空間、Another Time Ocean - Gravity Alternative Kind Iatrogy
、通称『あとがき』だ。

上条:そ、そう、なのか?

神無月:おい、騙されるな。 不連続時空間の英訳があんな適当なもんな訳ないだろ。 あきらかに今思いつく単語を『あとがき』に合わせて言ってるだけだぞ。

上条:そ、そうなの?

美琴:気付きなさいよ。 不連続時空間って単語の欠片も混じって無かったじゃない。

上条:(´・ω・`)ショボーン

作者:続いて、黄色コーナー、食欲旺盛、上条家の食費の八割はこの人、必要悪の教会(ネセサリウス)の誇る魔道書図書館、禁書目録(インデックス)―――。

禁書:あれ、当麻だ。 当麻、どこに行ってたの、わたしはお腹がすいちゃったんだよ。

上条:インデックス!? お前、どこから、どうやってきたの!? そして全くぶれませんねアナタは・・・

禁書:え? えっと、そこの人(作者を指さして)がお菓子を上げるから、こっちに来てって言ったからついて行ったら、いつのまにかここにいたんだよ。

上条:知らない人に付いて言っちゃだめって常識でしょ!

禁書:どうしたの当麻。 そんなにイライラして、もしかしてお腹が空いてるの?

上条:あああああ、もう!

作者:最後に黒コーナー、どんな犯罪者も逃がさない風紀委員(ジャッジメント)の恐るべき空間移動能力者(テレポーター)、常盤台中学一年、白井黒子―――。

白井:お姉さま――――――――!

美琴:ヒッ!? (ゴスッ!)

白井:おぶふッ!

美琴:あ、あんたいきなり、空間移動(テレポート)で上空から抱きついて(ダイブして)来ないでよ。 びっくりして、思わず手が出ちゃったじゃない。

白井:て、手ではなく肘でしたわ、お姉さま。 でも、黒子はこの痛みも快感に♥

美琴:ズザザザザ(美琴の後ずさり)、あ、アンタもどうやってここに来たのよ。

白井:そこの方(作者を指さして)がお姉さまのいるところに連れて行って下さると言うのでついてきただけですわ♥

美琴:(インデックスをちらりと見て、白井に視線を戻す)同レベルか・・・

禁書:む、なにか今失礼なことを考えたね、そこの短髪。

美琴:何よ、事実じゃない。

神無月:はいはい、そこまでだ。これ以上、ややこしくするなよ。

作者:ふう、参加者全員がそろったところで、今回の大会のルールを説明させていただきます。しかし、その前に今回の大会のテーマを発表します。今回のテーマは―――――『恥』です!(ドドン)

参加者一同:・・・・・・・・・

作者:今回のテーマにそって、ルールが設定されています。順番にクイズに答えていってもらって、答えられなかった罰ゲーム。この箱の中のくじを引いてもらい、そこに書いてあるお題を実行していただきます。そして、最も精回数、もとい正解数の多かった人は願いが一つかなえられます。では早速、第一問、ちゃちゃん。
あっ、『ちゃちゃん』が『ちーちゃん』に見えたなら貴方はなかなか魔王愛があります。

美琴:早く始めなさいよ・・・

作者:では、第一問、『はたら○魔王さま!』第七話でエメラダエトゥーヴァさんの机の上にあったお菓子の名前は何でしょう。

美琴:分かる訳ないじゃない!!

作者:しょうがないですね、じゃあヒント、どーん。


http://livedoor.blogimg.jp/netaatsume/imgs/0/7/071a504b.jpg


美琴:明らかにもうヒントじゃない!?

作者:あれ、失敗しちゃった?((≧ω・)☆てへぺろ☆(・ω<))でも、答えは分かりましたよね。 では、回答をどうぞ。

美琴:ご、ごく・・・と・・・きー(顔を真っ赤にして)。

作者:うん? 聞こえませんよ、美琴先生((・∀・)ニヤニヤ)。

美琴:イラッ☆・・・ご、極太・・・ボ・・・ィー

作者:はい、もっと大きな声でー↑

美琴:い、言えるかーーーーッ!!!(ビリビリ)

作者:ギャーーー

美琴:アンタこれを言わせたいがためにだけ今回のあとがき書いたでしょ! (ビリビリ)

作者:ギャーーー

神無月:それくらいにしとけよ・・・作者(コイツ)最近、『得盛海苔弁』が『誰得海苔弁』に見えちまうくらいに頭が逝ちゃってきているから・・・。

美琴:う、分かったわよ。

神無月:おーい、大丈夫か!?(ツンツン)

作者:・・・・・・(返事がないただの屍のようだ)

神無月:ふう、作者が文字通り逝っちまったんで今回のあとがきコーナーはここまでだな。
しょうがない、俺が次回予告を。来週登場するヒロインさんは、この人とこの人とこの人とこの人とこの人。

■スポットライトが来週のヒロインに当たる。■

禁書:む、これはどういう理屈なのかな当麻。 もしかして、光を何もないところから生み出すと言うのは光を掲げる者(ルシフェル)の力をモチーフにしてうんたらかんたら―――

小萌:ふえっ、なんですか。 前回もいきなりここに連れてこられましたけど、いったいここはどこなんですぅ?

白井:よかったですわ。 わたくしお姉さまに肘をもらっただけで今回のあとがきで出演箇所が無くなったかと思いましたの。前回のあとがきで今回の本編で出番があると聞いていましたのに、結局出番ゼロだったのですからここくらいは。

初春:えっと、えっ? あ、あれ、今まで風紀委員(ジャッジメント)の支部で報告書を書いていたはずだったのに?

佐天:う~い~は~る~~~~(バサッ)*スカートをめくる音

初春:きゃああああ、佐天さん、何でいつも急にスカートをめくりあげるんですか!

佐天:いやー、何かいきなり訳の分からないところにいきなり連れてこられたから、日常を取り戻す為にまずは初春の縞パンでも見て心を落ちつけようと思って。

初春:その方法で心を落ち着けないで下さい!

神無月:えー、あー、まあ、そんな訳でこの五人が次回登場するヒロインという事らしいんで、じゃあ、次回、第11話 自己限界からの遁走曲 ~fuga~、よろしくお願いします。

美琴:ちょっと待って、え、何で、私にだけ出番がないの?

作者:ふふふふふ、やってはいけない事をやっちまったな、美琴先生、いや、御坂美琴! おお前は俺を怒らせた。 この場所、この空間において、そう、あえていうなら、俺が神ッ! 俺に逆らったら、出番が無くなるのさ!(ドヤッ)

美琴:そ、そんな・・・(ガクリ)*膝から崩れ落ちる音

上条:なあ有真、あいつら盛り上がってるみたいだけどどうする。

神無月:もう収拾がつかないから、俺らで閉めるか。

上条:そうだな、それがいいよな。

神無月&上条:では、今回のあとがきはここまで、次回もみなさん楽しんでいってください。ばいばい(⌒ー⌒)ノ~~~(* ̄▽ ̄)ノ~~ マタネー♪





神無月:今さらだけど、クイズやってるところより、参加者紹介の方が長かったって言うのはどうなんだろうな。というか、参加者の八割は問題すら出されてなかったのはいいのか? まあ、何というか作者が言ったテーマは間違ってなかったな。 皆、恥(パンツとか性癖とか出番について)を晒したような生き方をしているなという事が分かったという点においては、うん。

上条:閉めた後にごちるなよ・・・









作者:ふう、本編(なかみ)より3カ月以上先にあとがきだけ出来てしまった。
これでいいんだろうか・・・
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