とある魔術の絶対重力‐ブラックホール-   作:プロジェクトE

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第09話 生き残りを懸けた小夜曲 ~serenade~

 

「これは治療だ。 目を離すな、恥ずかしがるな、それこそ患者(かんじゃ)に失礼だろ!」

「そんなこと言われても、純情ハートの上条さんには女の子の裸なんて直視できません!」

そう、現在、神無月と上条はインデックスの背中の切り傷の止血をする為にガーゼを傷口に当て包帯で巻くための準備段階として、まずインデックスの服(純白の布地を安全ピンでとめたものを服であると仮定する)を脱がしていた。

「俺たちの所為(せい)でインデックスは切られたんだから、純情なんて甘い考えは切り捨てろっ! それに当麻は一回インデックスの服を木っ端みじんにして、すでに見てるんだから、一回見るのも二回見るのもさして変わんないだろ! いいか、今の俺たちは言うなれば医者だ。 医者は患者の裸を見ても欲情しない。 はい繰り返してっ!」

「医者は患者の裸を見ても欲情しない! 俺は患者の裸を見ても欲情しない! 俺はインデックスの裸を見ても欲情しない!・・・・・・って、無理! 上条さんは目の前の光景を直視できません」

「ああもう、じゃあ欲情したままでもいいから、とりあえず目の前のインデックスをちゃんと見ろよ! 見ないで包帯が巻けるほど器用じゃないだろうが」

「有真センセイ! 欲情、欲情、叫ばないでくださいっ! わたくし上条当麻は別に欲情してるわけではありません。 ただ、ドキドキで直視できないだけで」

「直視しろぉおおおおおおっ! そして、包帯をきちんと巻け―――っ!」

「ふぅ、取りあえず、これで応急処置は終わったから、一時的には大丈夫なはずだ」

「上条さんはもう疲れました。 戦う以上に疲れました」

戦闘に続けて、慣れない他の人の、しかも女の子の体の応急処置なんて、体力に加えて精神面でもかなりの疲労になった。

「で、これからどうするんだ? この子、学園都市の外の子なんだろ? 病院だって、鬼じゃないから治療はしてくれると思うけど、その後で捕まる可能性があるよな」

「そう、問題はそこ、だよな・・・」

命をがけで神無月と上条の命を守ろうとした彼女をただ逮捕(たいほ)させるのはあまりに人情にかけると言うか忍びない。

そうやって、神無月と上条が考えていると、

 

「だから、僕が回収するって言ったのが分からなかったのかい?」

 

神無月と上条が凍りつく。

瞬間的に振り返るとそこには先ほど倒したはずの魔術師、ステイル=マグヌスが立ちあがっていた。

「いや、まさか素手で僕の剣を壊されるとは思っていなかったよ。 うん? 僕が起きていることが不思議かい? 確かにさっきの攻撃は僕の顔面を捉えて的確なダメージを与えたよ。 普通なら、数時間は気絶することになっただろうね。 でもね、炎剣を壊すことを攻撃の第一段階に組み込んだ君のパンチは僕にパンチが届くまでに力の入れ具合がただ僕の顔面をただ殴りに来るよりも(ゆが)んでいて、確実に僕を気絶させるまでは(いた)らなかったというわけさ。 それに僕としてもその子に死んでもらっては困るから、応急処置の間は僕自身の体力の回復も()ねて気絶したふりをさせてもらったと言うわけさ」

「ちっ、起きてんだったら手伝えよな。 まあ、起きてるって知ってたら知ってたでぶん殴って確実な眠りに()かせるんだけどな」

警戒心を隠さずに神無月が魔術師を(にら)むと、魔術師も今までの余裕そうな笑みを消し、話す。

「今の戦闘で僕は分かった。 君たち二人は危険だ。 何故彼女を守っていた歩く教会が破壊されていたのか疑問で仕方なかったが、それが理解できた。 君たち二人はどちらも、魔術を阻害(そがい)もしくは破壊する働きを有する力を持っている。 君たちのどちらかがその子の歩く教会を破壊した。 そして、その力は僕たちの計画にとって脅威でしかない。 害悪と言ってもいい。 だから、もう加減も何もない。 本気で行かせてもらう」

そう宣言した通り、魔術師の周りの空気がさらに変容(へんよう)したかのように気配が変わった。

しかし、魔術師ステイル=マグヌスを脅威に感じる神無月と上条以上に、ステイル自身の感情は口で言うよりさらに穏やかではなかった。

目の前の二人はステイルの人生における最大の脅威(きょうい)と言えた。

ステイルはこれまでの人生をこの炎の魔術に(つい)やしてきたと言っても過言(かごん)ではない。

そして、それを簡単に打ち破れる存在など、ほとんど出くわした事がなかった。

少なくとも敵として相対(あいたい)した中では、ステイルの炎を退(しりぞ)けたものはいなかった。

大量の水で炎が消されたならまだ分かる。

しかし、炎が砕けるなんて言う無効化のされ方は今までに見たことも聞いたこともなかった。

それだけに、自らの技量だけで目の前の二人を倒せるか不安はあった、しかしステイルにも引けない一線はある。

そして、今までの人生を積み重ねてきたその力を信じて今までも戦ってきたのだった。

だからこそ、ステイル=マグヌスは最大の脅威に最大の力でぶつかる。

 

「世界を構築する五大元素の一つ、偉大なる始まりの炎よ。 それは世界を育む恵みの光にして、邪悪を罰する裁きの光なり。 それは穏やかな幸福を満たすと同時、冷たき闇を罰する凍える不幸なり。 その名は炎。 その役は剣。 顕現(けんげん)せよ、わが身を喰らいて力と為せ―――――――ッ! 魔女狩りの王(イノケンティウス)ッ!!」

 

そう叫び、唱えることで、魔術師ステイル=マグヌスの目の前に炎の巨人が出現した。

先ほどまでの炎剣とは異なる明らかに大きな力を持った塊だった。

炎を人型に形作るのはコールタールか重油のようなドロドロした粘性の高い液体が芯となっているためだ。

その人型の炎の塊は燃え続ける。

そしてそれは人型である故に当然の行動をとる、つまり2本の足で立ったまま歩き出したのだった。

神無月は魔女狩りの王(イノケンティウス)の接近してきた熱波から離れるように一歩下がる。

「おいおい、人の形をしているからまさかとは思ったけど、動くのかよ。 当麻、打ち消せるか?」

「分かんねぇけど、やらなきゃならないだろっ!」

そう言うが早いか、上条は魔女狩りの王(イノケンティウス)に向かって突き進み右拳を突き出す。

お互いに近づくように進む、上条と魔女狩りの王(イノケンティウス)はすぐに激突する。

そして、

ボン!!と、予想以上のあっけなさでステイルの切り札、魔女狩りの王(イノケンティウス)は飛び散った。

あまりにもあっけない。

魔女狩りの王(イノケンティウス)の重油の体は水風船が割れたかのように辺りに飛び散った。

その時上条は見た、切り札であるはずの魔女狩りの王(イノケンティウス)を砕かれたステイル=マグヌスが笑っている事に。

その瞬間、上条の警戒心メーターは一気にMAXまで跳ね上がった。

尋常じゃない危機感から上条は咄嗟にその場から後ろに飛び退く。

その瞬間だった。

周りに飛び散ったはずの魔女狩りの王(イノケンティウス)を構成していたドロドロした粘性の液体が一瞬で元の形に戻った。

しかも、はじけたときに消えた炎も再び点いている。

「な、―――――――ッ!」

上条はすぐに神無月のところまで下がる。

あの巨人は確かに異能の力だった。

それなのに上条の右手が打ち消しそこなった。

あきらかに異能の力にもかかわらず上条の右手で消えていない。

「どういうことだよ。 一度は破壊できたのに何で再生するんだよ」

神無月は可能性を頭の中で浮かべて答えを探る。

回数制限か?

いや、違う。当麻の右手に触れたんだ。

一度壊れても修復される魔術だとしても、その修復という部分さえもが魔術なんだから当麻の右手で打ち消せない訳がない。

じゃあ、なんなんだ。

壊れた次の瞬間にまた召喚したのか?

いや、それも違う。

目の前の魔術師は戦闘中にわざわざ呪文を詠唱(えいしょう)するなんてめんどくさい事を行ったんだ。

詠唱しなくても召喚できるなら詠唱なんて最初からしない。

当麻の右手で壊せない魔術なのか?

いや、それも考えにくい。

壊せないなら、一度でも壊れて見せる意味がない。

さっきのが当麻を嵌める罠であった可能性も捨てきれないが、壊れないだけで、こちらにとって十分な脅威となりうる。

ならば、やはり一度でも壊れて見せる意味はないか。

・・・・・・もしかして、あれが本体ではない?

核が他にあるのか?

確かに、それならば納得がいく。

一度壊れたからと言って、修復もすぐに出来る。

じゃあ、あの化物の核はどこにある?

そう神無月が考えている間にもイノケンティウスと呼ばれた炎の巨人は神無月と上条の方に接近してくる。

接近してくる間にイノケンティウスの手の部分が変化していた。

芯となっているものが、重油のような液体のため形の変化は容易(たやす)いようだ。

そして、その手は剣のようなものを握ったような形に変化していた。

しかし、それは正確には剣ではなかった。

良く見れば、わかる。

それは、十字架だった。

2mを超える巨大な十字架。

キリストの磔にでも使われそうな大きな炎の十字架だった。

炎の巨人を操る魔術師が神父然としているため、キリストを磔にするような十字架を武器として使うのは、宗教的に良いのか悪いのか神無月としては疑問の浮かぶところだったが、それどころではない。

その巨大な十字架を炎の巨人が振り上げて、神無月と上条めがけて振り下ろそうとしているのだから。

「チッッ・・・!」

神無月が即座に重力剣で対抗する。

ぶつかりあう、炎の十字架と重力剣。

やはり炎剣と同じように炎の十字架も重力剣との接触で壊れる。

しかし、瞬時に炎の十字架は修復してしまった。

「だったら、これなら―――」

再び、神無月の重力剣と炎の十字架が激突する。

今度は重力剣と炎の十字架、どちらも壊れることすらなかった。

神無月が舌打ちをする。

神無月は重力剣が壊れることを見越して、壊れるたびに新しい重力剣を生み出す方式に切り替えたのだが、炎の巨人イノケンティウスの炎の十字架も神無月の重力剣と同程度の速度で回復する。

一見互角に見える構図(こうず)だが、実際は神無月が追い込まれた形となった。

なぜなら、炎の巨人を召喚したのちの魔術師の魔力の消費はたいしたものではないのだが、神無月が重力剣を作るのには莫大なエネルギーが必要で、そもそもここまでの連続した重力剣の使用はかつて行ったことが無く、自らの限界突破(げんかいとっぱ)をする勢いで能力を使用しているのだった。

つまり、このままぶつかりあって拮抗状態を保っていても神無月の方が先にエネルギー切れで能力が使えなくなり負けるのだ。

「当麻! こいつの十字架を受け止めてくれ! 俺じゃあ分が悪い」

「分かった」

神無月を押し潰す勢いで圧力をかけてくる炎の巨人の()るう十字架を上条が右手で消しにかかるが神無月の剣同様、瞬時に回復してしまうため消しきれない。

しかし、神無月と違い上条の右手は常に異能の力を消す力を宿しているためエネルギーの消費がないという点では今回は上条の右手の方が神無月の重力剣と比べて有利だった。

それでも、長物を扱う神無月と自分の右手を使う上条では受ける圧力や恐怖感が違う。

たとえ魔術を打ち消し攻撃を防げるといっても、近距離で炎の巨人が襲ってくると言うのは恐怖以外の何物(なにもの)でもないのだ。

もちろんそれは上条にだって言えることである訳で、

「ちょっ、やっぱり、無理。 有真、死ぬっ! こんなの、真正面から受け続けられない!」

「そう言われても、俺の能力だって無限に使える訳じゃないんだ。 今は耐えてくれ!」

「~~~、ああ、もう分かった、わかりましたよっ! 出来る限り、やらせていただきます!」

文句を言いつつも、上条が炎の巨人を押さえていてくれる。

その間に神無月は何か突破方法がないか考えを巡らせる。

炎の巨人を直接妥当するのは、現状不可能。

上条の右手が通用しない時点でまともにやって完全破壊できるとは思えない。

ブラックホールで完全に吸いこんでしまうか?

いや、重力剣が壊れる事を考えても吸い込む事は出来ない可能性の方が圧倒的に高い。

一番手っ取り早いのは、魔術師を気絶させて炎の巨人が動かなくなればいい。

しかし、魔術師を気絶させても炎の巨人が動かなくなるかどうかの保証はない。

それに炎の巨人をすり抜けて魔術師に近づくのは困難。

ワームホールを魔術師のすぐ後ろにでも繋いで、後ろからこっそり頸動脈でもしめてさっくり気絶させたいところではあるのだが、そうもいかない。

なぜなら、先ほどの重力剣の使い過ぎでワームホールを繋ぐだけのエネルギーが残されていない。

また、飛び道具として重力剣を投げて、魔術師を攻撃する事は可能だが、殺さずに無力化させるなんて事は難しいというより不可能だ。

手詰まり感が半端ない。

ああ、もうほんとにどうすればいいんだよ。

神無月は炎の巨人の進行を食い止めてくれている上条を見ながら、頭をかきむしった。

当麻の時間稼ぎに釣り合うだけの答えがなかなか見いだせない。

焦る神無月の耳に声が聞こえた。

 

「―――ルーン、『神秘』、『秘密』を示す二四の文字にしてゲルマン民族により二世紀から使われる魔術言語で、古代英語のルーツとされます」

 

インデックスが不自然に感情のない声でまるで辞書でも読むかのように淡々と話している。

その無感情の声に神無月と上条は喋っているのがインデックスだと言う事が一瞬分からなかった。

まるで、ロボットのような落ち着きようは逆に神無月と上条を不安にさせた。

とても、背中を切られて大量出血していた人間の出す声にはとても思えないからだ。

いくら、神無月と上条の手で止血を行った後だと言ってもあの傷が痛くない訳がないのだ。

骨まで見えかけるような傷であるのに、失血死しそうなくらい血を流した後だと言うのにインデックスはそれでも淡々と語る。

魔女狩りの王(イノケンティウス)を攻撃しても効果はありません。壁、床、天井。辺りに刻んだ『ルーンの刻印』を消さない限り、何度でも蘇ります」

不意に上条がインデックスに問いかける。

「お、まえ・・・インデックス、だよな?」

「はい。私はイギリス清教内、第零聖堂区『必要悪の教会(ネセサリウス)』所属の魔道書図書館です。正式名称はIndex-Librorum-Prohibitorumですが、呼び名は略称の禁書目録(インデックス)で結構です。自己紹介がすみましたら、元のルーンの説明に」

「いや、いい。 だいたい、理解した」

感情の失せた顔で説明を続行しようとしたインデックスの言葉を神無月が遮った。

神無月も同様に今しゃべっているのがインデックスか分からなかった。

そして、インデックスの目を見て気付いた。

今しゃべっているのはインデックスではない。

目の光が失せ、感情の無い、その“表情”に神無月は心当たりがあった。

ちょうど、催眠系の能力者に操られているかのような表情だったのだ。

このインデックスの状態も魔術ってやつの一つなんだろう。

だからこそ、神無月はそんな状態のインデックスの声を聞くに堪えず、話を止めた。

しかし、感情的な側面とは別に神無月はインデックスの話で魔術師ステイル=マグヌスの魔術の弱点をインデックスの言葉から窺い知る事が出来た。

つまり一言で言って、あの炎の巨人には炎を撒き散らしている人型とは別の核となる物があると言う事。

それさえ破壊できれば、あの炎の巨人は止まる。

そう言う事だ。

だが、問題はどこにその核があるかだ。

もし核となる物が魔術師の体のどこかに隠されているとしたら絶望的だが、それ以外の場所であればまだ勝機はある。

魔術師がピッキングの達人で人の居ない部屋に核を置いているともなればさすがに見つけるのは困難だが、その部屋の住人が無自覚にでも破壊すると言う可能性が無視できないはずだ。

つまり誰かの部屋である可能性は低いはず。

この寮のどこかに炎の巨人の核があるとすれば、それは廊下のどこかである可能性が高い。

こっちがインデックスの言葉を聞いて、炎の巨人の弱点に気が付いたと魔術師も分かっているはずなのに、ピクリと眉を動かした程度で動じていない。

そうそう破壊されない自信があると言う事だろうか。

可能性としては、隠されているか、それとも少しくらいの数なら破壊されても良いくらいの数があるのか、最悪のパターン本人が持っているのか。

辺りを見渡すが、この階の廊下には、ぱっと見それらしい物はない。

この階以外の階に隠されているのだろうか。

「有真! こっちがそろそろ限界なのですがっ!」

悠長に構えている暇はなかった。

こうしている間も、上条は炎の巨人を抑え込み続けてくれていたのだ。

上条の能力なら、あの炎の巨人の攻撃に完全に押し負けると言う事はない。

しかし、それは精神(メンタル)を考慮に入れなかった場合だ。

触れれば焼き尽くされると言う炎の塊が目の前で意思を持って自分を焼き殺そうとしているのを間近で見て何も感じない者はいない。

何も感じない人間がいるとすれば、それは人としての歯車がどこか壊れている。

生存本能は人間、いや、動物としての、あって当然の精神構造だ。

生存本能とはつまり、恐怖を感じる力があるかどうかという事で、それが欠如しているともなれば、人間としてだけではなく動物として失格だ。

それは、生きようとすることこそが、生き物としての第一条件だからだ。

もちろん、上条は死への恐怖を持つ生き物に漏れず、恐怖を感じていた。

恐怖を感じて、間近に迫る死を与える炎の塊に対して腰が引けていた。

恐怖は生きるために必要な力であるが、生き残るために自らの命を守ろうとする心の動きでもある。

それはつまり、上条がどんなに炎の巨人の進行を防ごうと思っても、体は炎の巨人から逃げたい衝動に襲われるということだ。

俺の後ろにはインデックスが倒れている。

いくら無感情に話したとはいえ、背中をバッサリ切られているのだ。

動く事はおろか立つことも出来ないだろう。

これでは一緒に逃げる事は出来ない。

じゃあ、どうする。

俺ではあの炎の巨人を抑えきれない、かといって上条の方もジリ貧だ。

逃げるにしたって、インデックスを抱えて移動するのと炎の巨人が追いかけてくるスピードでは炎の巨人の方が早いだろう。

インデックスを盾にすれば止まる可能性もあるが、わざわざそんな成功するかどうか分からない一手を打ちたくない、それより何より人を盾にするようなことはしたくない。

俺たちはどうすればいい!

考えを巡らせる上条の耳にそれは唐突に聞こえた。

「灰は灰に―――」

あの炎の巨人を生み出したステイル=マグヌスと名乗った魔術師が新たな魔術を行使する声だった。

「―――塵は塵に―――」

神無月はこの状況をさらに悪い方へ持っていく、敵の一手に内心で舌打ちした。

くそッ!

あの炎の巨人を召喚して動かしている間にも他の魔術の行使が可能なのかよ。

こう言う時、漫画なら使っている力が大きすぎて他の事ができなかったりするもんじゃないのか。

現在の状況は最悪。

上条は炎の巨人を抑え込むので精一杯、インデックスはせいぜい声を出すだけ、神無月も重力制御できる量が極めて小さくなっている。

そこへ新たな攻撃。

神無月にはインデックスを守り、上条と共に逃げ出せる方法が思いつかない。

魔術師の右手に神無月の重力剣と渡り合った炎剣が生み出されていた。

神無月も咄嗟に右手に重力剣を発生させる。

「――――――吸血殺しの紅十字!」

その言葉と同時に魔術師の左手にも炎剣が生み出され、鋏のように両側から振るわれた。

炎の剣が伸びながら神無月と上条に迫り、そして剣は炎の巨人にぶつかり大爆発を引き起こした。

その爆発と瞬時に発せられた熱量で周りの空気が一気に膨れ上がり爆発の規模を大きくする。

突然の爆発の全てを防ぐことはできず、その膨大な爆風によって神無月と上条は七階の廊下から吹き飛ばされ空中を舞った。

それは爆発に巻き込まれなかったインデックスを七階の廊下に残してきてしまうという最悪の状況を作り上げてしまっていた。

そして空中に放り出された上条と神無月は爆風に(あお)られ落下していく。

「「インデッックスーーーーー!!!」」

落下しながらも神無月と上条は七階に置いてきてしまっインデックスを掴むかのように届かない手を伸ばして叫んだのであった。

 

 

神無月と上条落下した。

廊下は、沈黙し、炎だけが廊下を焼き、溶けた塗料の臭いが漂う、そんな戦場もかくやという場所で魔術師ステイル=マグヌスは廊下に倒れる少女インデックスのすぐそばで立ち彼女を見下ろしていた。

先ほど引き起した爆発に巻き込んでしまったかもしれないと思った時は肝を冷やしたが全く問題なく自分の炎による怪我は受けていない。

しかし、切られた傷よる出血が多かったのか、インデックスは再び意識を失っていた。

そんなインデックスの傍らにステイルはしゃがみこみ、気を失っているインデックスの頬にかかる髪を指先で顔からどけようとして、指を近づけ、その手は途中で止まった。

そう、自分なんかが触れることなどもう許されないとでも思ったかのように。

ステイルはインデックスの顔を眺めると、立ち上がる。

そして、廊下に誰もいない事を、インデックスが起きない事を確認すると彼女を見下ろし、

そして呟く、

「僕は君の記憶を殺しつくす。 君の楽しい記憶も悲しい記憶も痛みも嘆きも苦しみも全部まとめて殺しつくす。 たとえ、恨まれ、憎まれ、忘れられて、いつか君に刺されることになったとしても。 それでも、君のため、そう思って、記憶を殺す。 だから、君は僕を恨んでくれて構わない」

そう言うと、ステイルは先ほどの爆発のあと意識的に修復させなかったイノケンティウスを元に戻した。

そして、ステイルは元に戻った超高温の炎の巨人に行けと命令する。

全ての記憶を焼きつくす、邪魔するやつは殺す。

その先で罪の清算を強いられることになったとしても。

この身が地獄の炎に焼かれる事になろうとも。

そう思いながらも、ステイルは人を殺すための炎を握りしめる。

 

 

ドンと壁に人をぶつける音が響いた。

「なんで、なんでだ、お前の力ならあそこにとどまる事も出来たんじゃないのか! なんで、なんで、逃げたんだよ!」

それは爆風で吹き飛ばされ一階まで落ちてしまった二人だった。

上条は神無月の襟をつかんで、壁に押し付けている。

インデックス一人を置いて来てしまったことの不安と重力制御能力を使えば落下する事もなかったであろう神無月に対する詰問から上条は神無月に掴みかかっていたのだった。

「・・・・・・」

そんな上条に神無月は何も答えない。

目をそらすでも、俯くでもなく、何も言わずに神無月はただ上条の瞳を見つめるだけ。

何も答えない神無月に上条が怒りをぶつけようとして、上条の手が不意に神無月の襟から離れた。

「・・・もしかして俺の所為か? ・・・俺が一人で落ちたら、どうする事も出来ないからか? だから、お前も一緒に落ちるしかなかったのか?」

そう、神無月は上条の言うとおり落ちずにいる事も出来たのだ。

しかし、落下する上条を放っておく事は出来なかった。

インデックスはすぐに如何(どう)こうされる事はないが、上条はあのまま落下すればまず間違いなく死ぬか大怪我をしていた。

だから、神無月は上条と一緒に落ち、重力制御で上条と神無月の体にかかる落下の勢いを殺したのだった。

そもそも上条の体に重力制御を掛ける事は難しい、必ず上条の右手が邪魔をする。

だから、神無月は上条の腕を自分の首の後ろにかけ、足を怪我した人の体を支えるような体勢で自分自身に重力制御を掛けることでなんとか着地に成功したのだった。

また、あの爆風の中では重力以外の外乱が大きすぎるため、うまく浮く事が出来ず、エネルギーが尽きかけているのでは重力制御もどの程度うまく使えるか分からなかったという理由もある。

そして、神無月が一人あの場に残ったとしても、上条がイノケンティウスを防いでくれていたから保てた力の均衡も上条が吹き飛ばされた後では保てない可能性が高かった。

また、あんな戦場で焦りに襲われていてはまともな対策も考えつくはずもなく、イノケンティウスの核を探す時間も欲しかったといういくつもの理由から神無月は上条と一緒に落ちたのだった。

しかし、神無月自身がそれで納得しているかと聞かれれば、答えはNOだった。

とっさに、インデックスを掴んで一緒に落ちればよかったのではないかと思ったり、あの場に残ればよかったんじゃないかと思ったりしてしまうのだった。

それでも、あの状況に陥ったら必ずこの判断を下したとも思う。

怪我人をあんな落下に巻き込むのはどう考えても危険、既に空中に放り出されていた上条だったからこそ一緒に落ちて勢いを殺すという方法を使ったのであり、いつ完全に能力がガス欠起こすか分からない状態で飛ぶくらいなら床に転がっている方がどう考えても安全だし、一人残ったとしてもイノケンティウスをどうにかできるとも思えないからだ。

やはりそれでも神無月は悔やむ。

何か出来る事があったのではないかと。

そして、上条に一緒に落ちた理由を問われても何も答えなかったのは、上条が自分のためにインデックスを置いてきたと知れば必ず自分を責めるからだった。

だから、神無月は何も言わない。

不意に上条が神無月を見て、

「ごめん・・・俺だって有真の事を糾弾できる立場じゃないのに。 むしろ、俺のために落ちてきてインデックスを置いてきちまったのに。 ごめん」

「何も出来なくて悔しいのは、俺だって同じだ。 何が超能力者(レベル5)なんだよ」

そして黙り込む二人。

落ち込む二人の沈黙を上条が破った。

「強くなりたい」

「そんなの、俺だって同じだ」

互いに力不足を感じる二人。

無能力者(レベル0)超能力者(レベル5)

二人のレベルは全く違っても、同じ現実を目の前に今感じる事は同じ無力感だった。

しかし、同じ無力感を味わう二人はそれでも同じく前を向ける。

「でも、まあ、今は落ち込んでる場合じゃなかったな」

「ああ、インデックスを助ける」

先ほどまでの暗い雰囲気など二人には微塵もない。

神無月のワームホールで一階まで移動させられていた清掃ロボットもまるでその気持ちに乗せられるかのように二人の後ろでぐるぐる回転するという特殊な動きを見せている。

インデックスを助けると言う共通項目が二人の心を押し上げ、気持ちを高ぶらせる。

そして、そういう高揚した気分の時にこそ得てして人は今までにない発想を出来るようになったりするのである。

「なあ、当麻。 俺、今少し思いついた事があるんだけど聞いてくれるか?」

 

 

そんな二人の変化を知らずに魔術師ステイル=マグヌスはどうやって神無月と上条を始末し、立ち去ろうかと考えていた。

ステイルも二人が無事でありそうな事には予測がついていた。

少なくとも、人が七階の高さから落下した際の肉が地面を打つ音がしなかったからだ。

とすると、階下で待ち伏せをされる可能性もある。

少なくとも神無月と上条が一階を陣取っていれば階段を使ってもエレベーターを使っても、必ず戦闘になる。

こんなときステイルは今回共に学園都市に来ている相方の爆発的なまでの身体能力が羨ましくなる。

彼女であれば今の傷付き倒れたインデックスを抱えても他の建物へ飛び移って余りある動きができるからだ。

しかもステイル=マグヌスにエレベーターは使用できない。

なぜなら、エレベーター内ではステイルの必殺技ともいえるイノケンティウスが運用できないからだ。

イノケンティウスがいなければステイル=マグヌスの勝利確率は大幅に下がる。

神無月とは重力剣対炎剣で持久戦になり長い時間をとられる。

また、上条に関しては炎剣を破壊し、そのうえ上条自身には何の負担もない。

これではイノケンティウスなしでは勝利はかなり難しい。

しかもイノケンティウスをエレベーター内で運用できない理由は他にもあった。

エレベーターは密閉区間、しかもこの寮のエレベーターは狭い。

そんな状態ではいくらイノケンティウスの炎がステイル自身の体を焼かないとしても熱せられた空気で肺を焼かれてしまう。

いくら魔術師とはいえステイルも人間だ。

肺を焼かれれば重症を受けることは間違いない。

そのうえ、ステイルはインデックスも運ばなければならないのだ。

インデックスはインデックスで、絶対防御を誇る『歩く教会』が無い状態だ。

これでは不用意にイノケンティウスのそばに置く事が出来ない。

また、イノケンティウスには火災報知機などを作動させないように動くように命令してある。

しかし、密閉空間であるエレベーターでは熱量が拡散しないため警報装置が作動しない事はあり得ないのだ。

警報装置のセンサを焼き払うことも出来なくはないが、その場合エレベーターが動かなくなる。

したがって、ステイルはイノケンティウスを運用できないエレベーターを使う事が出来ず、インデックスを担いで階段をイノケンティウスと共に降りるという選択をとらざるを負えないのだった。

だが前もって、イノケンティウスを先行させていたのだから、もうすぐあの二人もただの燃えカスになっているだろう。

そして、その考えは次の瞬間に打ち砕かれた。

突如現れた神無月が手に黒い球状の塊を持って、それをステイルめがけて投げつけたからだった。

咄嗟の事にステイルは驚くが、体を捻って何とかこれを回避する。

そして、ステイルに当たらなかった黒い塊、神無月の重力弾は壁にあたり直撃箇所から約半径1mの円形に亀裂を走らせていた。

その様子に、神無月はチェッといった顔をする。

「いいタイミングだと思ったんだけどな、良い回避能力だよアンタ。 敵ながら、あっぱれってかんじだよ。ホントに」

神無月は突如現れたが、先ほどまで神無月にはワームホールを作るだけの力は残っていなかった。

では、なぜ急に七階に現れたのか、答えは簡単だった。

というか、一目見れば分かる。

神無月の足は地面に付いていなかった。

端的に言えば、浮いている。

重力制御可能ならば、自身にかかる重力も制御できて当然。

しかも、ブラックホールなんて言うバカみたいな大きさの力の消費はしない。

確かに神無月の絶対重力(ブラックホール)は強力ではあるが燃費が非常に悪い。

神無月が大量に摂取する糖分は神無月が単純に好きだからという理由もあるが、神無月の脳での重力演算をするうえで必要だからという側面もある。

しかも、あれだけバカみたいな糖分量を見れば分かる通りのバカみたいな燃費の悪さだった。

しかし、単純に軽い(ブラックホールに比べれば比較的)重力制御だけなら神無月はまだまだ動けるのだ。

そして今、油断していた訳ではないが、ステイルの全く考えていないであろう場所、つまり空中からの重力弾で攻撃を放ったのである。

今の神無月の攻撃は壁に亀裂を走らせたが、単純な能力の特異性で言えば重力剣には遠く及ばない。

魔術以外のおよそ全ての物を切り裂ける重力剣と、ただ物体にかかる重力を増し圧力という形で力を加える重力弾とでは行使する力のレベルが違う。

しかし、それでも神無月の重力弾は人間がまともに喰らって意識を保てるような甘っちょろい物ではなかった。

そんな神無月の攻撃を避けやすいようにステイルは神無月から距離をとる。

地面に足をつくステイル、空中を飛行する神無月、どちらが回避が簡単かなんて問うまでもなかった。

しかも、神無月は先ほどの剣と剣でのぶつけ合いから間合いをきちんと測って飛行している。

そう、ステイルの炎剣の長さが決まっていないとはいえ、それでも炎剣を振るのに掛かる時間、それを考慮したうえでいつ剣を振られても回避がほぼ確実に行える間合いで神無月は飛行しているのだ。

「敵ながらあっぱれだって? それはこっちの台詞だよ、全く面倒なヤツだよ君はッ!」

剣での攻撃は難しいと悟ったステイルは炎剣での攻撃を諦め、手に即座に作り出した炎弾を神無月に向けて発射する。

そしてそれを放たれた神無月は重力弾で迎撃するでもなく、ただ回避する。

避けて避けて避けまくる。

そしてこの状況はあらかじめ神無月のたてた作戦から全く少しも外れていなかった。

 

 

神無月がステイルのところへ飛行する前に上条に話した内容はこうだった。

「当麻の役割はインデックスの言っていた『ルーンの刻印』だっけか? 炎の巨人の核になる物を探して出来るなら破壊すること、俺の役割はかく乱、当麻が炎の巨人の核を探している間の魔術師の足止め」

「まあ役割分担は分かったとして、詳しい流れはどんなふうにするつもりなんだ?」

「まずはそうだな、俺が重力制御で飛んで、魔術師に奇襲を仕掛ける。 これで、倒せればいいけど、多分失敗する。 まあ、敵戦力を過小評価してもろくな事にならないからな。 倒せればラッキーくらいの感覚。 そして、俺がアイツと戦って七階にくぎ付けにしておくからその間に当麻は他の階で炎の巨人の核を探索、および出来るなら破壊。 物凄く、簡単に話すとそれだけ」

「・・・それだけ?」

「そう、それだけ」

神無月が上条にうなづくと、上条は首を横にぶんぶんと思いっきりふる。

「無理無理無理です。 飛んでいる有真はいいかもしれないど、あの炎の巨人に襲われたらどうするんだよ。 それに有真だって、あの魔術師が遠距離の技を使えたときはどうするんですか!?」

「それは――――――」

 

 

相変わらず、ステイルの手からは炎弾が連続で発射され、それを神無月が回避、当たらなかった炎弾は隣の寮の壁を焦がすという一連の作業が絶え間なく行われていた。

そして、それは止まらない。

ステイルが炎弾を止めれば、その時とばかりに神無月が重力弾をステイルに向かって発射する。

よって、ステイルは神無月めがけて炎弾を発射し続けなければならないのだ。

しかし、その攻撃も全て回避されてしまうのだから攻撃を行う側としては心を折られる状況だ。

状況だけ見ればどちらが勝っているとも言えないが、この勝負はかなり危うい均衡のもとに成り立っていた。

なぜなら、神無月の飛行と重力弾、ステイルの炎弾、それはどちらも行使者がたった今、相手への対処を行うためだけに初めて使った技だったのだ。

二人とも自分の能力に付いての把握はかなり行えている。

だから、自分の出来る事はなんとなく一度として使った事のない技でも分かる。

しかし、それでも一度として使った事のない技を完全に制御できるかと言われれば、それは違う。

出来る訳がない。

そして、それはこの戦いでも言える。

一見すれば連続して炎弾を発射するステイルも炎弾を回避しつつ重力弾で応戦する神無月も今の戦い方に慣れているかのように見える。

しかし、神無月が完全に重力弾をステイルが炎弾を、完全に制御しきれているのであれば、二人の放つ弾が直線でしか飛ばないなんて事はあり得ない。

もっと、確実に相手に当たるような不規則で曲線的な動きも含んだ動きになるはずなのだ。

それがない時点で、とっさに使い始めた事が神無月とステイルお互いに分かってしまうのだった。

そして、ステイルは奇襲を受けたためにその不完全な技を使わなければならないが、では神無月はなぜそんな不完全な技でわざわざ奇襲にでたのか。

そこにステイルは気が付いた。

(まさか、彼らは他に何か企んでいる?)

そこで気がつく。

いくら不完全な技同士のぶつかり合いとはいえ、その手数は凄まじい。

ステイルの手から繰り出される炎弾も直線でしか飛ばないとはいえ、秒間4発、1分に240発も打ち出している。

対する神無月もそれを完全に見切れる間合いを取りその全てを(ことごと)く避け、その合間に重力弾を放つ。

そんな激しい戦闘が起きているにも(かかわ)らず、戦いに(おもむ)いているのは神無月だけ。

つまり、

「そうか、もう一人は僕の魔術の核たる、ルーンの刻印を潰しに行った訳だね。 でも、君たちにはあれを潰しきることなんて出来やしないさ。 それに君の頼みの相方もイノケンティウスに焼き尽くされているころじゃないかな?」

神無月のたてた役割は完全にステイルに見切られていた。

だが、不意に神無月が予想通りだと言わんばかりにハハハと笑った。

「あんたの言うとおりだよ。 確かに、当麻はルーンの刻印とかいうものを探して壊しに行ってる。 だから、俺と当麻はそれぞればらばらに動く形になる。 そして、俺がここにいる以上当麻があの炎の巨人に襲われる可能性は高いだろう。 でもさ、そんなことはアンタに言われる前から気がついてんだよ! そして、気が付いているのになんの考えもなしにここに来る訳ないだろ!」

言うが早いか、神無月は重力弾を投げつける。

ただし、それはステイルの居る方向とは全く違う。

飛んでいるが故の階下への攻撃。

「まさかッ!」

ステイルは気がつく。

なぜ、不完全な技で奇襲を仕掛けたのか。

一発目の重力弾を避けられたら、炎弾と炎剣の回避しやすい場所まで飛行して遠ざかったのか。

そして、こちらの攻撃がやむとこちらを挑発するかのように攻撃し、且つこちらを足止めするような攻撃を行うのか。

「その距離は回避に必要な距離ではなく、この建物の全体を見渡せる距離かッ!」

神無月が飛んでいるのは学生寮側から見て手すりの向こう側の少し離れた位置。当然だが、そこは確かにステイルの炎剣や炎弾を避けやすく、反撃にも転じやすい距離。それだけではく、この学生寮の廊下は建物に存在する側面4面の内1面にしかついていない。建物の構造的に当然ではあるのだが、一面全てを見渡せすことができるならそれは廊下でのみの戦闘を行っている今回の戦いの全てを見る事が出来るのである。それはつまり七階より下の階の廊下でルーンの刻印を探す当麻が常に視界に入る位置取りでもあるということ。

そして、たまに攻撃を行っていたのはステイルを七階に留めておくため、そしてステイルへの攻撃の中にわずかに含まれた本命、全く関係ない下へと飛んでいく重力弾。

それは階下でイノケンティウスと戦う上条への援護。

これが神無月の考えた、上条をイノケンティウスが狙った場合の対策だった。

イノケンティウスを狙った、ステイルに向ける重力弾より強力な重力を持つ、威力の高い重力弾。

もちろん、神無月の攻撃はイノケンティウスの再生によってほとんど意味をなさないが、それでも当たればイノケンティウスの表面を潰し、連続で当てればイノケンティウスを足止めさせるくらいにはなる。

そして、それだけの時間が稼げれば上条はイノケンティウスから逃げつつ、ルーンの刻印を探し、破壊のための手を講じる事が出来る。

そして、それがステイルにばれたところでステイル自身には何も出来ないのだ。

神無月から注意をそらせば、重力弾が襲ってくる。

かといって、神無月と戦っていればルーンの刻印を破壊しようとする上条の相手はイノケンティウスに任せるしかなくなる。

(クッ、あの短時間でここまでの作戦を立てるのか! 本当にこの学園都市ってところは恐ろしいところだねッ)

歯を食いしばり、内心で焦りながらもステイル=マグヌスには神無月たちの作戦に対抗する術が見いだせない。

 

 

「あっぶねぇ! 有真も人使いが荒すぎんだろ。 つか、これはどうしたらいいんだよ!」

上条はイノケンティウスの攻撃を防ぎ避けつつ考える。

神無月の援護でイノケンティウスが怯んでいる隙に急いで走って距離をとり、廊下一面にびっしり張られているルーンの刻印の一枚を引っぺがし、眺めながら頭を(ひね)る。

上条が壁から剥がしたのはセロハンテープでべたべたと寮の廊下の壁、床、天井まで所構わず至る所に張られた名刺サイズの紙のなかの一枚。

その紙には、ルーンの刻印だかという上条にとってはよく分からない文字だか図だかが描かれている。

しかも、それらはコピー。

コピーでも魔法の効果が表れるのかよ!

と上条は、現実のいい加減さと不条理加減に走りながらも、ぐわーと頭をガシガシ()く。

魔術師がこれをコンビニでコピーして印刷している様子を頭に浮かべると、上条はこんないい加減なもので殺された日には、死んでも死にきれないとつくづく思った。

しかし、その量。

たかがコピーと言っても侮れない。

今上条が一階から六階までの全ての階を見てきたが、どの階の廊下も今上条がいる六階と同じく床から天井まで魔術を引き起こすためにルーンが描かれた紙がびっしりなのである。

(こんなの一枚一枚()がしていたらキリがないぞ。 それに―――)

上条が後ろを振り返るとイノケンティウスが上条の後ろから追ってきていた。

(もういやーーー何なんですかこの不幸は!)

こんな化物から逃げつつこの魔術を使う為の紙を一枚一枚剥がしていたらあっと言う間に追いつかれて黒焦げにされてしまう。

上条は一枚ずつ剥がすという選択肢を諦め、一度に紙をはがす方法がないか考える。

ついさっき試して分かった事だが、上条が右手で触れるとこの紙はインデックスの服がただの布地に戻ったように紙からインク成分が抜け、抜けたインクが床に垂れ、紙自体は白紙になった。

だからと言って、全部の紙に触っていくなんて言う暇はない。

イノケンティウスから走って逃げつつ、横の壁に触りながら手で触れた紙を無効化するくらいしかできない。

しかし、それでは全体の一割も壊せない。

さきほど、上条は近くにあったルーンを何十枚か壊してみたが、あの炎の巨人は全く意に返していなかった。

つまり、ルーンの刻印がされた紙が一枚でも欠けたら成立しないような魔術ではなく、いくらかの枚数が壊されても問題なく発動するタイプの魔術という事だ。

つまり、この魔術成立に必要な枚数以上の紙はこの炎の巨人をより強化するため、もしくは何枚かが壊されてもそれらの予備として代わりに発動し、即座に魔術を支える為にある事になる。

しかし、そういうことなら何枚の紙を交わせばいいか分かった物ではない。

そこまで考えた上条にイノケンティウスの魔手が迫った。

そう、上条の気がつかない間に膨大な炎が上条のすぐそばまで迫っていたのだ。

とっさに上条は右手を突き出し、防御態勢をとる。

ギャギャギャギャと上条の右手が炎の巨人イノケンティウスの魔術を削り取る音が住人の出払った学生寮に響く。

そして、防御態勢に入った甲斐あってか、イノケンティウスの振り下ろした左腕を防ぐ事が出来た。

しかし、防げたのはイノケンティウスの左腕。

あえて言うなら左腕だけなのだ。

そう、つまりイノケンティウスの右手が空いているのだ。

上条はイノケンティウスを右手以外の部位ではガードできない。

そして、その上条の右手はイノケンティウスの左手を防ぐので精一杯。

つまり、上条にはイノケンティウスの右手を防ぐ事が出来ない。

(嘘だろ、どうしようもない。 なんとか、なんとか、なにか手は!?)

上条が歯を食いしばる。

あんな炎に掴まれたら、上条は死亡する。

そんな死の炎からなる巨人が上条を焼きつくそうとその右手をのばす。

炎の巨人の近くにいる熱量だけで上条は皮膚が焼けるような熱さに(さいな)まれる。

「があああああ、あああああああ」

そして、その炎の巨人の手が上条に触れる。

その直前に、巨大な物体が上条の眼前を凄まじい速度で横切り、イノケンティウスを横合いから吹き飛ばした。

「あ、・・・・・・はッ?」

一瞬で何かが飛んできて、飛んできた何かは上条の目の前の炎の巨人を真横に吹き飛ばし、ちょうどそこにあった部屋の扉をぶち抜き、その部屋の中へイノケンティウスを叩きこんだ。

なんとか上条が分かったのは、目の前を大きな何かが通過していき、目の前の炎の巨人を巻き込んで横合いにふっ飛ばしたと言う事だけだった。

しかし、上条が正確に視認できたのはほとんどなく、何かの飛来に巻き込まれた部屋の扉でさえ、いつの間にか無くなっていたように上条には見えた。

何が起こったか分からない上条は取りあえず、巨大な何かが飛んできた方向を見ると神無月が疲労の隠せない顔で、炎弾を避けていた。

今の何かは明らかに上条を助ける意図のある攻撃だった。

つまり、神無月による援護。

それが上条の命を救ったのだ。

しかし、そうはいっても上条に悠長にぼーっとしている時間はない。

吹き飛ばされたイノケンティウスがいつ復活するか分からないのだ。

そのため、上条は急いでその場から距離をとる。

そして、上条は距離をとるとあらためて吹き飛ばされたイノケンティウスの方向を見る。

上条は破壊の跡をよく見ると神無月が何をしたのかが分かった。

飛んできて、イノケンティウスを吹き飛ばし、偶々(たまたま)誰も住んでいなかった部屋に突っ込ませたのはジュースの自動販売機だった。

神無月は上条のピンチを知るや否や、近くの自販機を重力で引き寄せ、それをイノケンティウスに向けて高速で投擲(とうてき)したのである。

もちろん、神無月の能力それ自体はイノケンティウスを倒すと言う観点からは無限にも思える再生能力によって無意味も同然だが、能力で引き寄せたものを直接ぶつけると言う物理的な攻撃では一時的にはあの炎の巨人を吹き飛ばすことが可能だったのである。

いくら、何でもかんでも溶かして焼きつくせる温度のあるイノケンティウスといえど、金属の塊である自動販売機を触れられる前に蒸発させる事は出来なかったのだ。

結果として、イノケンティウスは上条に触れる直前に自動販売機をぶつけられ誰も住んでいない部屋に無理やり叩きこまれたのである。

「有真、マジでナイスですっーーーーー!!!」

「無事ならいいー。 全力でこの魔術を止めてくれればそれでーーー」

遠くからの間延びした言葉を互いに交わしつつ、神無月は炎弾を避け、攻撃し、上条はイノケンティウスが戻ってくるまでに逃げつつ、この魔術を止める為に走る。

 

 

ステイル=マグヌスは焦っていた。

先ほど下から聞こえた轟音の正体については神無月が何をするか見えていたため分かっていた。

神無月がステイルの炎弾を避けつつも自動販売機を浮かせ投擲しようとしたときは流石のステイルも肝が冷えた。

もし、あの自動販売機の目標が自分だったならと。

あんな物を生身の人間がくらえば、一瞬でミンチになっているところだ。

そして、例え投擲対象がステイル自身で無くとも自販機を神無月が階下に向かって投げると言う事はまだ下の階にいる上条が生きている事を指す。

これは、ステイルにとっての大きな問題だった。

たった一回相手にイノケンティウスが触れれば殺せる。

それにも関わらず、いまだにイノケンティウスは上条を捉えきれていない。

それがどれだけのことか分からないステイル=マグヌスではなかった。

例え相手が二人でも、例え炎を防げる者がいても、例え相手が未知の力を使おうとも、それでも焼き払う力を持った魔術がイノケンティウスだ。

それでも倒しきれない敵が、たかだか男子高校生二人だと言うのならば、この学園都市という場所はどれだけの魔窟なのか。

そう考えるとステイルは自分がとんでもないところに来てしまったのではないかと思ってしまう。

実際は偶々(たまたま)ステイルとの相性が悪い能力者にピンポイントで当たったたことが原因だが、それでもその魔術を妨げる力はステイルの魔術師としての自信にダメージを与える。

しかし、それがなんだというのだろう。

そんなことはステイルには関係ない。

ただ、目の前の敵を討つために炎弾を打ち続ける。

そんなステイルの炎弾の嵐の中を神無月は高速で移動して全弾避けきっていた。

「それにしてもッと」

ヒョイッ、ヒョイ(実際はヒョイヒョイという擬音の軽さほど楽ではない)と炎弾を回避しながら神無月は呟く。

「さすがに自販機を地面から引っこ抜くのってかなり疲れるんだな・・・」

さきほど、上条を助ける為にジュースの自動販売機を能力で強引に引き寄せた神無月だったが、予想以上の消耗だった。

さっきの一撃だけで、飛行時間が20分は短くなったであろう感覚が神無月にはある。

神無月としては一刻も早く上条にルーンの刻印とか言う物を壊してもらいたいところだった。

そして、お互い別々に行動し始めてから、互いの行動が分からなくなっていた。

神無月と上条はお互いが見える位置にはいるが、互いの消耗率やルーンの刻印を壊せる目途がついたのかつかないのか、ステイルの足止めの状況などの詳細については分からない。

それが不安になり始めた神無月だった。

と、そんな神無月の心を察したかのように神無月の携帯電話に着信が入る。

神無月は携帯をとるとディスプレイを見る。

そこには上条の名前がある。

「もしもし、当麻? そっちの状況はどうなんだ? こっちは体力が危険域に入りそうなんだけど、まだルーンの刻印とか言うやつは見つからない?」

「いや、見つかってはいるんですけどね。 ただ、数が多すぎて破壊しきれないでいる」

「? どういうことだよ?」

「壁やる床やらに何か模様の書かれたコピー用紙がべたべた貼りつけてあるんだけど、炎の巨人に追いかけられながらじゃあ剥がしきれないんだ」

「当麻、ちなみに聞くけど。 何枚くらいある?」

「優に一〇〇〇〇以上、いや一〇〇〇〇〇程度はあると思う」

「・・・・・・どんだけ、暇なんだよアイツは」

そう言いながら、神無月は炎弾を連続して撃ってくるステイル=マグヌスの攻撃を回避しつつ、十万枚以上の紙を寮に貼り付けた人間の顔を見る。

十万枚以上の紙をだれにも見つからず、寮に貼り付けるなんて事は普通出来ない。

できたら奇跡だ。

それもきっと魔術の一種なのだろう。

そして一度張られたルーンの刻印を破壊するのは現段階では至極難しいことだ。

まず、上条が十万枚以上の紙を剥がすことは、走り逃げながらでは不可能だ。

時間が無限にあるならいざ知らず、神無月の飛行していられる時間のリミットが限られている中では上条が走って逃げ回ってルーンの刻印を破壊しきるのは絶対に間に合わない。

つまり、別の方法でルーンの刻印を破壊しきらなければならないのだ。

どうすればいい。

どうすればいい。

神無月は必死に頭をフル回転させる。

一分ほどの沈黙が神無月と上条の間に流れたとき、炎弾を高速で回避しつつ神無月が電話越しに上条にいう。

「なあ、当麻。 寮の廊下を7階から1階まで叩き斬って全部のルーンの刻印ごと押し潰すって言うアイデアはどうだろうか」

「やめてッ! 上条さんごと建物を押しつぶす気ですか!? 面倒くさくなって考えるのを諦めないでください。 君なら出来る!」

「だって、魔術なんてファンタジー、2次元のものだろ? だから2次元にお帰り願おうかと思って」

「物理的に建物を倒壊させて平面にしないでください! 建物ごと押しつぶしても2次元には帰ってくれません! それにインデックスだっているんだぞ」

「大丈夫、インデックスは俺が抱えて飛べば」

「わたくし上条当麻の事は無視ですかッ!?」

「大丈夫、当麻は俺が抱えずとも飛べば」

「紐なしバンジーして助かるような幸運をわたくし上条当麻が持っているとでも!?」

「だって、不幸不幸と言いつつも当麻は、いままでも何だかんだで大丈夫だったからさ。不幸中の幸いに恵まれてるんだな、きっと」

「そんな物に恵まれるくらいなら最初から不幸と遭遇しない方が言いに決まってます! それに今までが大丈夫でも今回大丈夫かどうかなんて分かりません! というか、そんなことを試そうとするなーーーーー!」

「冗談だって、そこまで俺は酷い人間じゃないって」

「じゃあ、どうするんでせう?」

「・・・・・・・・・・・・まあ、なんとかなるよな」

「何も考えていない!?」

神無月の考えた作戦は確かに成功してはいるものの、現実は不確定要素が多く細かいところまで詰め切れていない。

そう、だから最後の一手が詰め切れない。

決定的に勝利を掴むための一手が打てないのだ。

「そう言われても、あのルーンの刻印ってのは数が多すぎで対処しきれねえよ。 あれが貼ってある壁だけ吹き飛ばしていったとしても、多分この寮倒壊(とうかい)するぜ? ったく、何なんだよ。 一匹いたら、三〇匹はいる、アレかっての」

「いや、流石の上条さんでもそこまでは思わない」

「なあ、当麻。 実はそのルーンの刻印ってトイレットペーパーに印刷してあったりしないか? そうすりゃ水かければ、ボロボロになるわけだが?」

「有真、それは魔術を馬鹿にし過ぎでは?」

「だってほら一昔前にトイレットペーパーに模様が描かれているのとかあったろ? あれで一番衝撃的だったのは定規みたく長さが書かれてて、アレの長さが計測できるやつだな。 あれを見たときは、こんなのを考える頭のぶっ飛んだ奴がいるんだなって思ったもんだよ」

「有真さん、炎弾避けまくっている割に余裕綽々ッすね、マジぱねえっす」

「いや、実は会話に気を取られて髪の毛の先に炎弾がちょこっとかすって1cmくらいチリチリになった」

「!? こいつバカだ!」

「うるせえ、いいんだよ、ちょっとくらい。 そっちこそ、炎の巨人に追われているくせに俺に突っ込む余裕があるじゃんか」

「いや、余裕はねえよ。 突っ込まずにはいられないだけで」

「お前もほとほとバカだよな」

「そうですね。 俺たちは馬鹿ですね。 ってなわけでお馬鹿な上条さんはそろそろ体力の限界な訳ですが、何か良い手はないのか?」

「・・・・・・当麻、スプリンクラーは動くかどうか分かるか?」

「スプリンクラー? あれって確か、一階に管制システムがあったよな、俺は今四階だか

らすぐにはいけない。 有真の方で確認出来ないか?」

「逆に聞くが、俺がこの場を離れて当麻を炎の巨人から守れない時間があってもいいのか?」

「それはちょっと、・・・いや、かなり困ります」

「だろ? だから、俺は動けないんでよろしく!」

「って、いや、そもそもスプリンクラーをどうするんだよ。 さっきルーンの刻印の描かれた紙がトイレットペーパーじゃないから水をかけてもあまり意味がないって話をしたばかりだった気がするのですが?」

「いや、少し考えてみたんだが、コピー紙自体は破れたり溶けたりはしないだろうが、インクは滲んだり、流れたりするんじゃないかと思ってな。 いくらコピー機で複製してるものをベースに発動している魔術って言っても、それはきちんとした模様が描かれているから動いているんであって、少しでも滲んだり、掠れたり、傷ついたりすれば、その刻印とやらは機能しなくなる気がするんだが当麻はどう思う?」

「・・・良い考えかもしれない、いや、今考えつく中じゃ一番まともなアイデアだと思う」

「じゃあ、一階まで、当麻が、当麻がLet’s Go!」

「ああ、もうわかった。 分かりました。 2度言われなくてもやります。 やらせていただきますよ! そのかわり援護はしっかりやってくれよ!」

「了解了解、まかせろい」

そして、二人の通話が終了し、神無月はひとり呟く。

「さーて、当麻がスプリンクラー稼働させるまで回避と援護今まで以上に頑張りますか。 頼むから途中で尽きるなよ俺の能力」

 

 

一向に撃ち落とす事の出来ないことに業を煮やしたのか神無月に対するステイルの攻撃が一段と激しくなる一方で、上条は全力疾走だった。

「うおおおおおおおお、何で重油のようなドロドロの体なのにあんなに動きがはやいんですかーーーー!? 普通こう言う敵はすばやさのパラメータが低いのが当たり前なのでは!? あれか、はぐれメ○ルのようなものなのか! たしかにあれは素早さのパラメータが結構高かった気がするけども、でもHPが無限のはぐれメ○ルなんてどうしようもねえ、そのすばやさを活かしてさっさと逃げ出してくれよ! 確かに倒したら経験値は多そうだけども!」

なんていう一人突っ込みをしながら上条は4階から1階に向かって全力でダッシュしていた。

しかし、ただ階段を下りる訳ではない。

その体に骨のように壊れると動けなくなるような箇所がある訳ではないイノケンティウスは階段から落ちる事で階下に降りることが出来る。

よって、上条が真っ直ぐ階段を一階まで駆け降りると落ちてきたイノケンティウスに焼き殺される。

そうならないため、上条は途中の階にわざわざ立ち寄り、廊下を突っ切り廊下の反対端にある階段で次の階に下りるという時間稼ぎを行いながら1階を目指していたのだった。

「まったく、廊下の両端に階段がなかったら詰んでるところじゃないですかーっ! なんで俺は不良だったり、ビリビリだったり、炎の巨人だったりに追いかけまわされる青春を送らなきゃアア嗚呼嗚呼嗚呼!!」

理不尽な青春に付いて思考を巡らせている間にもイノケンティウスが上条に高速で接近してきて悲鳴を上げる上条。

もちろん上条も足を止めている訳ではないのだが、常に全力ダッシュで逃げ続けられる訳もなく、走るペースが遅くなるのは当然なのだが、炎の巨人はそんなことを待ってくれるほど心優しくはなく、かなりの速度で上条を追いかけてくる。

こうして上条の青春は何かから逃げることに浪費される。

「くっそー、やはり俺の青春はなにかまちがってるーーーーーー」

 

 

「おおい当麻、まだ一回まで降り切れないのか早くしてくれないとこっちの体力も持たない!」

神無月はステイルの放つ炎弾を回避しながら携帯に向かって叫ぶ。

『もうすぐだから、ちょっとまってくださいー! こっちだって、炎の巨人においかけられつづけたくなんてないに決まってんでしょーが。 追いかけられるんだったら、かわいい女の子にしてほしい上条さんなのですが!』

「当麻は美琴とかに追いかけられてるじゃん」

『ビリビリはこの炎の巨人と同じで追いつかれたら死ぬ可能性大なので遠慮しておきます』

「まあ、言わんとしてる事は分かッ・・・ッつーーーー、痛ッてーーー」

『どうした有真!』

「いやなんでもない」

『なんでもなくはないだろ。 炎弾でも食らったのか?』

「いや、そうじゃない。 大丈夫だから気にすんな。 それより急いでくれ頼む」

『・・・分かった』

大丈夫と言った神無月であったが、そろそろ飛行の限界だった。

そして、その原因はエネルギー切れだけではなかった。

神無月の飛行は2つの重力制御によって成り立っている。

一つは体を浮かせる力。

これは重力制御により地球の重力に対して反発する力、つまり反重力を使っている。

あまりに大きすぎる反重力を使うと体が宇宙まで吹っ飛ぶのでそのあたりは、重力と反重力とでバランスをとりつつある一定の高さを維持している。

そして飛行を制御するもう一つの重力制御は、空中で動く為の力である。

単純に重力と反重力の制御で、ある程度の高さで体を維持するだけなら飛行とは言わない。

それはただの浮遊だ。

空中で自在に動き回ってこそ飛行と言える。

神無月が飛行を行う仕組みは浮遊状態で自分の体の動かしたい方向に重力で体を吸い寄せる力を発生させる。また同時に体を動かしたい方向とは逆に反重力で体を遠ざけようとする斥力を生み出し、その2つの力が合わさる事で移動するのである。

しかし、これには体に負荷が掛かる。

ただ移動目的で使うだけならば何の問題もないが、今回は使用目的が戦闘である。

しかも、高速で炎弾を避けるのである。

その際に体は重力によってあらゆる方向に力を急激にかけて回避を行わなければならない。

特に手足と頭部は体の中心から遠いところにあるため力のモーメントの関係でより負荷が大きくなる。

無理に引っ張られる体は高速移動と急停止により負荷を免れない。

自動車事故でも急停止した際に車内の人間が車外に放り出されたり、首を鞭打ちになったりするように急停止時の力は大きい。

そんなことを無理やり神無月は行っているのである。

体にダメージがない訳がなかった。

炎弾をくらえばダメージ、炎弾を避けてもダメージ。

これではジリ貧は確定だった。

重力制御もいつまで続けられるか分からない今、神無月は焦りつつも上条との通話状態の切れた携帯を見ながら切実に思う。

「本当に早く頼むぜ・・・」

 

 

「うぉっしゃ――――! なんとか着いた!」

なんとかイノケンティウスの猛攻を避けつつ上条は一階に辿りついた。

あとは火災時の非常用スプリンクラーの管制盤を操作して水を出すだけ。

しかし、スプリンクラーの管制盤は寮に住む学生がすぐに触れるようなところにはない。

どこにあるかと言えば管理人室の中だった。

この男子用学生寮には一応管理人がいる。

綺麗な管理人のお姉さんなどという上条のストライクゾーンを現実世界がくみ取ってくれる訳もなく管理人は普通のおっさんだ。

しかも管理人室には当然のように鍵が掛かっていた。

「ちくしょう。現実は上条さんに甘くない」

ただ一つラッキーだった事と言えば、ちょうど管理人も他の学生同様不在だったことだ。

それはつまり、最悪ドアもしくはガラスをぶっ壊して突入しても目撃者0でスプリンクラーの管制盤を操作できると言う事だ。

とはいっても、ドアを壊すだけの時間を炎の巨人は待ってくれたりはしない。

つまり選択肢は一つ、来客用の応対に設けられた管理人室の窓口のガラスを割って侵入することだった。

そうしてガラスを割ろうとしている上条のすぐ近くにドゴォオオンと言う音が降ってきた。

「だあぁああ、来るのが早すぎる! 粘性の液体チックな体のくせにどんだけ重量があるんですか!」

イノケンティウスは一階のコンクリート床を落ちることで踏み砕き上条を追ってきた。

とっさにイノケンティウスから離れる上条だったが、同時に管理人室は遠のく。

進路をイノケンティウスに阻まれているわけではないが、現状では上条が管理人室に近づこうとするとイノケンティウスとの距離はどうしても近づいてしまう。

ダッシュして管理人室の窓口のガラスに飛び込むことも考える上条だったが、失敗して管理人室に飛び込めなかった場合、体勢を崩したところにイノケンティウスに攻撃を仕掛けられる可能性が高い、そんなリスクを考えると危険な賭けになる。

しかも、この作戦には上条だけでなく神無月はもちろんインデックスの命も掛かっているのだ、迂闊な事は出来ない。

なんとか隙をついて管理人室に飛び込み、スプリンクラーを作動させなければならないが良い手段がなかなか思いつかない。

さらにこの状況は上条にとって不利な場所だった。

ここは寮の玄関にあたる管理人室前、ここに住む全寮生のポストやエレベーターのあるロビーがある。それはつまり他の階とは異なりこのスペースだけは周りを壁に囲まれている。つまり、神無月の飛行地点から死角になっているということだった。

かといって逃げる訳にもいかない。

「どうしたらいいかわかんねえけど、とりあえずあの窓ガラスさえ割っちまえば管理人室に飛びこむ障害はなくなるよな」

上条は周囲に視線を巡らせ、窓を一撃で割れるような鈍器を探す。

だが、そんな上条をイノケンティウスは待ってくれるはずはない。

摂氏三〇〇〇度を超える炎の腕が上条を潰すために振り下ろされる。

「っつあ、っぶねええ」

炎の巨人の腕をすり抜けるように上条は巨人の横を走り抜ける。

上条を捕らえそこなったイノケンティウスの腕はジョワアアアアと言う音を立てて上条の立っていた後ろにあった寮生の郵便受けをドロドロに溶かした。

「ってえ、明らかに俺の部屋に割り振られているであろう郵便受けを溶かしやがった。 なんで、俺の郵便受けを狙い澄ましたかのように焼き尽くしてんだこのクソ巨人はッ!」

とりあえずムカついた上条は目の前の炎の巨人の背中に向かって固く握った右手を叩きつけると、イノケンティウスが再生する前に近くにあった消火器を掴むと管理人室の窓に叩きこみ、割れた窓の中に飛び込んだ。

 

 

『ジイイイイイイイイイイイイイイイイイ』

そんな音が飛行中の神無月の顔に笑みを浮かばせる。

作戦成功の音が同時にスプリンクラーからの水をステイル=マグヌスに撒き散らす。

「さすが、当麻。 とりあえず作戦成功ってわけか。 あとは―――」

そう、あとはルーンの刻印とやらがどれだけの時間で使いものにならなくなるか。

「こんなときに笑えるだなんて君は戦っていると楽しくなってしまうタイプの人間かい?」

上条の作戦成功に笑みを浮かべた神無月に、水でビシュ濡れにされてキレそうになっているステイルが炎弾を投げながら問いかける。

「いや、俺は出来るならのんびりとクーラーの効いた部屋でハーゲン○ッツでも食いながらゴロゴロしているような毎日を過ごしたい平和主義者ですがね。 分かるか、そんな俺が夕方になってもまだ熱中症になりそうな暑さの中で限界まで能力を使わされている今の気持ちがよ?」

「そうか、ならさっさとそこから落ちるか、こっちで僕に燃やされるかしたらどうだい? あっという間に何も感じなくなると思うがね?」

「ケッ、嫌だね、そんな痛いか熱いかの二択はよ。 テメエこそ、さっさとインデックスを置いて家に帰ってくれねえか? 晩飯に遅れるとママに怒られるんじゃねえのかよ?」

そんな言葉の応酬に二人ともこめかみに青筋を立てて、視線の火花を飛ばす。

「黙って聞いてれば、少し調子に乗りすぎじゃないかな」

「てめえがいつ黙ってたんだよ、ちったあ今までテメエが言った事を思い返して見やがれ」

「減らない口だな君は、炎弾でも叩きこんだらその口は少しは静かになるのかい? それとも煙草のサービスもいるかい、灰皿くらいには君のそのうるさい口も役に立つかもしれないんじゃないかい」

「うるせえ、テメエこそ重力弾でも喰らって『めり込んでる人』って新作アートになってろ。気が向いたら口か尻に花でも活けてやるよ。 まあ、趣味の悪いオブジェにしか見えないだろうがな」

神無月とステイル=マグヌスは互いに人を殺しかねない笑みをぶつけた。

「いいだろう、ここまで僕を虚仮にした奴はいない」

「こっちの台詞だ、今すぐ畳んでやるよ」

そして二人の視線が閾値(しきいち)を超えた。

それが何の閾値かは聞くまでもなかった。

「燃え尽きろッ、極東のサルが!」「潰れろッ、ロン毛似非(えせ)神父!」

ステイル=マグヌスは今まで放っていた手のひらサイズの炎弾ではなく直径3m位の炎弾を、神無月もステイルの放った炎弾と同じくらいに巨大な重力弾を投げつけ、互いの攻撃は空中で激突した。

ゴガァアアアアアンというガス爆発でも起きたかのような音と衝撃が辺りに響き渡り周囲に火の粉と重力弾の欠片を撒き散らした。

そして高所故の強い風が爆煙を押し流し、神無月とステイルは再び視線に火花を乗せる。

「チッ、互角かよ、壁に全身めり込ませようとしたのに相殺されたか」

「僕も君をレアやミディアムじゃない、ウェルダン位には焼いてやろうと思ったんだけどね。 でも、まあ君もそろそろ限界だろう。 いい加減諦めたらどうだい。 そもそも君たちはあの子のために命をかける理由があるのかい? まだ知り合って、一日と経っていない、云わばほとんど他人だろう? そんな見ず知らずの人間のために君たちは自分の命を危険にさらすのかい、僕には理解できないね」

「だろうな、分かってもらおうなんて思わねえよ。 ただな、インデックスは俺たちを巻き込まないために危険を冒してまでここに来た。 俺たちのために自分の命を危険に晒したんだ。 そこまでされておいて自分の命が危なくなったら尻尾を巻いて逃げる? 冗談じゃねえ、命を懸けられたら、命を懸けて返す。 助けようとしてくれたなら、助けかえそうと最後まで頑張る、当然だろうが」

「そうか、限界に近いその体でも引く気はないんだね」

「当たり前だ、そもそもそいつが切られたのは俺の身内の右手が原因とも言えるしな、それに知り合ってまだ一日も経っていない他人とか言ってたがよ、誰しも最初は知り合いでも何でもないとこから始まるもんだろうが、ここで俺たちが逃げたらそれこそ本当に出合って一日も経たない人間で終わっちまうだろうが」

魔術師はふうと溜息を吐いた。

「なら仕方ない、見せてもらうよ君の命が燃え尽きる瞬間を」

その時だった、この場に相応しくない『ピンポーン』というエレベーターの間の抜けたようなに音がしたのは。

ステイル=マグヌスは今7階に辿りついたエレベーターを見る。

この建物の人間は全員で払っていることを確認済みだ。

もちろん、それは敵対している少年二人とインデックスを除けば、の話だ。

つまり、それは目の前で飛行している少年とこの階に倒れているインデックスを除けば一人しかいない、しかしそれはステイル=マグヌスにとっては信じられないことだった。

なぜなら、あの黒髪のツンツンしている少年には破壊されても即時再生し敵を焼き尽くすイノケンティウスを向かわせていたのだから。そしてその少年が今ここに来られると言う事はイノケンティウスを退けた事を意味しているからだ。

基本的に現実は上条当麻に厳しい。

ほぼ毎日彼に降りかかる不幸。

しかし、現実の厳しさは彼だけのものではなかった。

そうそれは今のステイル=マグヌスにこそ言えた。

なぜならステイル=マグヌスには開かれるエレベーターの扉の隙間から、右手を握りしめ悠然と立つ黒髪の少年の姿が見えたのだから。

 

上条当麻がそこにいた。

 

「馬鹿な、いったいどうやってイノケンティウスの追撃を逃れたんだ!? あれは鉄の壁だろうと鋼鉄の柱だろうと溶かして一直線に標的を狙う三〇〇〇度の炎の塊だぞ!」

上条は一歩、また一歩とステイルに向かって歩みを進めながら答える。

「分かんねえか? 今、テメエの頭の上から降ってきてるもんが?」

「馬鹿な! 三〇〇〇度の炎だぞ。 こんな程度で鎮火するものか!」

「当たり前だろ? んな事(はな)から狙ってねえよ」

上条の隣に降り立った神無月がステイルから視線をそらさずに言う。

「インデックスがルーンの刻印を潰さなきゃ、この炎の巨人は倒せないとか何とか言ってたからな。 その刻印とやらをこのスプリンクラーで洗い流したって寸法だよ」

ステイル=マグヌスも気がつく、紙は水に弱い、そんなこと小学生だって知っている。

それでも自分の切り札がこんな簡単にやられるとは信じられない。

信じたくない、だから、

「――――『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

叫んだ瞬間、上条と神無月の背後のエレベーターを溶かすように炎の巨人が現れる。

その体にスプリンクラーの水滴が落ちるたびにシュウシュウと水の蒸発する音がする。

「は、はは、はははははは、驚いたよ、君たちは戦闘のセンスの天才だね。だけど、経験が足りてないかな、コピー用紙ってのはトイレットペーパーじゃないんだよ。たかが水で濡れたくらいで溶けてしまうほど弱くはないんだよ!―――――『魔女狩りの王(イノケンティウス)』奴らを殺せ」

魔女狩りの王(イノケンティウス)』はその高温の腕を振り回し、

 

「邪魔だ」

 

上条の裏拳気味の右手によって粉々に砕かれた。

普段なら即時再生するはずの体も元にもどらない。

「はッ!?」

目の前の出来ごとを理解できないステイル=マグヌスの口からは間の抜けた声が漏れた。

「バ、馬鹿な、僕のルーンはまだ死んでいないのに!」

そんな焦りを隠しきれないステイルに神無月が告げる。

「さっきも言っただろ、洗い流したって。 テメエが勝手に意味を穿き違えてたみたいだから、きちんと言ってやるが、俺はコピー用紙に描かれた模様を、インクを洗い流したって言ったんだ。 まあ、それでも完全ではなかったみたいだがな」

言いつつ、神無月は上条の手で砕け散ってそれでもモゾモゾと芋虫のように動く、炎の巨人の残骸を憐れむように眺める。

しかし、その残骸すらも今までは物ともしていなかったスプリンクラーの水によって一つまた一つと鎮火して消えていく。

「いのけんてぃうす、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

叫ぶ魔術師の声は虚しく、世界は彼の願いを聞き入れない。

「さあて、今度こそ」

神無月と上条が一歩魔術師に向かって歩みを進める。

「『魔女狩りの王(イノケンティウス)』、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』、『魔女狩りの王(イノケンティウス)』!」

狂ったように叫ぶ魔術師を睨みつけ、二人は駆けだす。

魔術師はそれでも抗おうと炎弾を打ち出した時のように右の掌を二人に向かって突き出すが、炎の巨人はおろか炎弾すらも出ることはなかった。

神無月と上条はついに魔術師の懐に飛び込み、左足で地面を支え、右足の蹴りだす威力に乗せて右拳を突き出す。

何の変哲もないただの右拳。

いまや何の魔術も使えない魔術師と力を使い果たした超能力者、もとよりなんの力も持たない無能力者の戦いの終結は、なんの力も宿らない右拳を振り抜く事によって決まった。

振り抜かれた二つの拳は魔術師の顔面を捉え、背の高い魔術師を縦に回転させるほどの威力を伴って、突き刺さり、魔術師の意識を今度こそ完全に刈り取った。

こうして、日没とともに一人の魔術師の意識は二人の高校生によって沈められたのだった。

 

 

 

 

 

 




後書きコーナー

作者:というわけで始まりました後書きコーナーさて今回のお便りはと、
えーとなになに「一話書くのに時間かけすぎだろ、もっとはやく上げろ」さんのお便り。
「一話書くのに今回はどれだけ時間かけてんだ、遅すぎだろ!」

作者:今回の09話書くのに時間かけすぎちゃいましたね。
半年ぶりくらいに一話書き終わったんでどんだけスローペースなんだよっていわれても返す言葉もないです。

美琴:というか今回の09話に一度も私が登場してないんだけど、どういうこと!

作者:いや、それは仕方ないんですよ。あくまで、今回は魔術よりの話だったんですから。たぶん、次の話、いや、次の次の話くらいには出番が・・・あったかな。

美琴:ちょっと待てコラア! どんだけあたしの出番がないの!

神無月:まあ、落ち着けって美琴。 そのうちお前の出番も回ってくるから。

美琴:今回活躍しまくってたアンタにだけは言われたくない!

作者:さーて、来週のヒロインさんは、

小萌先生:はーい先生なのです。
 ・小萌侵入される
 ・小萌魔術を使う
 ・白井助けられる
 の3本なのです。また見てくださいね。
 じゃんけんポン。
 うふふふふ
ってどういうことですか!?

美琴:というか黒子の出番はあるのにあたしの出番はないの!?

作者:まあ、この後書きコーナーって出番のなかった美琴さん救済の意味もあったんで。
というか本気で次話、第10話 一部屋限りの幻想曲 ~fantasie~、でも出番ないと思うんで・・・

美琴:本当にここしか出番がないんだ(´A`。)グスン














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