モモンガさんと異形の母   作:belgdol

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今回一部の至高の41人に関して作者の妄想が入ります。
そういうのを避けたい方はこの話はスルーしてくださいませ。


番外編:ティータイム

 最近紅茶の香りを楽しむのに嵌っているモモンガと、香りを味わい終わった後の紅茶を飲むアヴェがモモンガの私室で寛いでいる。

 少々行儀は悪いがベッドの上にティーカップを持ち込んでアヴェの身体にモモンガが寄りかかる形だ。

 

「そういえばアヴェさん」

「はい。なんですか?」

「色々試した結果フレンドリーファイアが解除されてましたよね」

「そうですね」

「じゃ、じゃあこの世界に来た時に胸を触った時負の接触切ってなかったから……」

「それがどうかしましたか?」

「あ、いや。ダメージ入ってたはずなのに全然痛がるそぶりもなかったのでなんでかな、と」

「それは……」

「そ、それは?」

 

 モモンガが表情の出ない骸骨の顔に緊張を走らせる。

 そんなモモンガを包み込むように鎖骨に指を走らせるとアヴェは言った。

 

「あそこで痛がったりしたら拒絶してるみたいじゃないですか、慌てて飲み込みましたよ」

「無、無理してたってことですか?」

「まあ無理の内に入るなら、ですが」

「はあ、俺やらかしちゃってたなー」

「まあまあ、負の接触自体のダメージなんてないよりましな微弱な物じゃないですか」

「それでも!俺は心配なんです!」

「……はい」

「だから、次からは痛かったら痛いって言ってくださいね」

「解りました。ごめんなさいモモンガさん」

 

 アヴェを気遣うモモンガの頬骨にアヴェは謝りながら頬を擦りつけた。

 するとモモンガの背中に六連の巨峰が当たっている。

 

「……わらか」

「どうしましたモモンガさん?」

「アヴェさん、狙ってやってます?」

 

 カタカタと身体を揺らすモモンガに、アヴェはにっこりと微笑んでいった。

 

「当ててるんですよ」

「もー!真面目な話なんですよ!」

 

 憤る、というよりじゃれ合う感覚でモモンガはティーカップのソーサーを持っている手を振り回す。

 その腕をアヴェはソーサーを摘まみ取りながら絡めとる様に腕を絡ませた。

 もちろん、そんなのモモンガがその気になればあっさりひきはがせる程度の力でだ。

 だが、捕まえられたモモンガはなすがままに成る。

 

「……アヴェさんに捕まってるとずっと捕まっていたい気分になるんですよねぇ……」

「ふふ、それも異形の母の効果でしょうか?」

「どういうことです?」

「思うに異形の母ってこの世界に来てからかなり効果の変わったスキルだと思うんですよ。効果範囲とか、色々」

「はあ」

「変わった効果の中に異形種には母親のように思われる効果なんてあったりしたら、面白いと思いません?」

「それは実験で確認したんですか?」

「そういうわけではないんですけど、ナザリックの皆がモモンガさんを含めて優しすぎるのでそうなんじゃないかなって」

「いやナザリックの階層守護者はじめ皆俺達には優しいじゃないですか」

「あはは、じゃあ母親のように思われる効果は気のせいですか」

「気のせいですよー。それにもし仮に母親のように思われてるならそれはアヴェさんの人柄ですよ」

「そうでしょうか?」

「少なくとも俺はお母さんと思ったことはないですけどね……なにせ奥さんですから」

「え。それはゲーム時代からですか」

「……リアルでの顔合わせはしてなくてもずっと二人で話してた仲ですからね」

「ふふ、そうですか。なんだか嬉しいですね」

 

 嬉し気な様子のアヴェ、改めて奥さんなどというと僅かに恥ずかしいのか絡めた腕を引き離す。

 そして声色を変えて話し出す。

 

「あー、そういえばゲーム時代と言えばぷにっと萌えさんは凄かったですよね」

「ぷにっと萌えさんですか?確かにあの人は確かに凄かったですね。私のスキルによる能力値上昇を隠すために皆の武装を調整して倒せないのを乱数かと思わせたり。スキルバレしたらしたでそれを逆手にとってPKの作戦に活かしたり」

「ですです。頭の造りが違うって感じでしたよね」

「そうですねー。当時からぷにっと萌えさんのリアルは気になってたんですけど。モモンガさんは何か聞いてます?」

「いや、俺も結局詳しくは教えてもらえなかったですね」

「古来の戦術・戦略の教養があるからなんとなくアーコロジーの上層に住んでる人かしら?とは思っていましたけれど」

「でもウルベルトさんに突っかかられることはなかったんですよね。人当たりもいいし立案した作戦を自然に皆に納得させる人でした」

「モモンガさんは色々ぷにっと萌えさんに教えてもらってましたよね」

「ええ、ぷにっと萌えさんにはPvPにおける戦術のイロハを教えてもらいました。主に知識面で」

「実技はたっち・みーさんとウルベルトさんですよね。私が加入した時には落ち着いてましたけど、お二人のどちらが教えるのに向いてるか競争になってたりしたんじゃないですか?」

「あ、解りますか」

「あのお二人は大体そんな感じですものね」

 

 二人、顔を合わせて笑う。

 アヴェは笑顔だがモモンガは恐ろし気な骨の顔の顎をカクカクさせるだけだったが。

 

「ですねぇ……懐かしいな」

「懐かしいですね……」

「こんな話、ゲーム時代はここまでしみじみとはしませんでしたよね」

「ええ、もっと軽い感じで……またひょっとすると復帰してくれたらまたあんなプレイ、こんなプレイできるのに、っていう流れになりましたよね」

「アヴェさん」

「はい」

「やっぱり……アヴェさんが隣に居てくれてもユグドラシルが終わっちゃったのは寂しいです……」

「そうですね……ここはユグドラシルじゃないですから」

「未知の世界に自分とナザリックのNPC達、そして拠点だけで移動してたらと思うと……沈静化が働くくらい怖いですよ。今はちょっと、アンデッドのこの身が有難いです」

「私も自分だけだったらと思うと凄く怖いですね。多分ナザリックの中を一歩も出られなかったと思います」

「俺も動いたとしてももっと慎重に、疑い深くなってたと思いますよ。そして寂しかったと思います」

「そうですね、寂しいは悲しい……もっと切実に居なくなってしまった皆さんの影を追っていたかもしれませんね」

「ですね。正直、アヴェさんが居てくれるお陰でこうも思えるんです」

「え?」

「リアルの都合がある皆を巻き込まなくて済んでよかった、とか。いや、でもヘロヘロさんはあの様子だと巻き込んじゃった方が良かったのかなぁ、ははは」

「異常な体重増加にお薬も増えてるんですっけ……ヘロヘロさんもあと少し残っていたらこちらにきていたんでしょうか」

「かもしれませんねー。それで一日スパ・ナザリック漬けとか」

「ありそうですね。ヘロヘロさんがヘニョヘニョさんになってたかもしれません」

「巻き込めるなら巻き込んだ方が良さそうだったのはヘロヘロさんとして、絶対に巻き込めないのはたっち・みーさんですよね」

「ご家族がいらっしゃいますからね……」

「るし★ふぁーさんなんかは状況をエンジョイしそうですが」

「もしかしたら真面目なるし★ふぁーさんっていう珍しいものが見れたかもしれませんね」

「いや……るし★ふぁーさんならこの状況でも何かやらかす可能性が……」

「モモンガさんってるし★ふぁーさんにはあたりが強いですよね?」

「そりゃさんざんやらかされましたから。警戒するくらいは当然です」

「でも嫌いではないんですよね?」

「まぁそうです。ちょっとおふざけが行き過ぎるのは苦手でしたけど、るし★ふぁーさんはある意味もっともナザリックを盛り上げてくれた人ですからね」

「私はあんまりるし★ふぁーさんのいたずらの目標にされたことはないんですよね。だからいつもは眺めてるばかりで」

「あ、もしかしてアヴェさんがるし★ふぁーさんのいたずらで面白そうにしてたのって」

「割と楽しんでました。ふふふ。仲間にいれてもらえてるんだなって思っていたので」

「そういう見方もあるかぁ……ちょっと斬新でした」

 

 そこでモモンガがはっと一息入れて身体をアヴェから話す。

 そしてティーカップをアヴェに渡すと言った。

 

「なんだか懐かしい話をしてるうちに紅茶、冷めちゃいましたね」

「あら、本当だわ」

「淹れなおします?」

「折角楽しくお話しした証ですから、戴きますよ」

「そうですか?じゃあどうぞ」

 

 モモンガが差し出した冷めた紅茶をアヴェは一息に飲み干す。

 そして傍に控えていた一般メイドにカップとソーサーを渡す。

 これはある日のティータイムの話。


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