PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

いよいよP5Sが発売されましたね!絶対にやります!!

それと、今回後書きの方にバレンタインデーに書いた番外編を投稿しています。ふとダンメモのバレンタインイベントと異世界かるてっと2を見て思いついた内容です。
本当はバレンタインデー当日に出したかったのですが、こっちの都合で止む負えず一週間遅れになってしまいましたが、楽しんで頂けたら幸いです。

改めて、お気に入り登録して下さった方々、本当にありがとうございます!今後ともこの作品を楽しんで頂けたら幸いです。

それでは今年初めの本編をどうぞ!


#91「MAZE OF LIFE 3/3.」

 ふと昔の記憶が蘇ってきた。

 

 

「ねえ、どうしてそこまでするの」

 

 

 それは在りし日のある人との思い出、高校時代の文化祭前日。誰もいない、正確には自分と彼だけの薄暗い教室でのこと。自分は目の前で黙々と看板に絵を描いている彼にそう言っていた。

 元はと言えば、自分のミスを尻ぬぐう形でこんな時間までやらされているのに、何で関係のない彼がここまで付き合ってくれるのだろう。

 

「どうしてって、そんなのお前を放っておけなかったからに決まってるだろ」

 

「えっ?」

 

 ふと呟いたその彼の言葉に思わずぼうっとしていた意識が覚醒した。いきなりこの男は何を言ってるのだろうか。もしや…

 

「また無理して身体壊すまでやり込むんでないかって思ってな。心配で身に来たら、案の定だったな」

 

「……そんな理由」

 

 少しでもドキッとした自分が馬鹿みたいだ。せっかくのトキメキを返して欲しい。だが、そんなやり取りのお陰で少しは気持ちも和らいだ気がする。すると、その時自分の腹の虫がぐうッと鳴らした。

 

「ははは、根詰め過ぎてまだ何も食ってないんだろ? これ食べて元気出せって」

 

 そう言って彼は近くに置いてあった鞄から弁当箱を取り出して自分に渡した。開けてみると、夜食として作ってきたであろうから揚げが詰まっていた。何でこんなものを作ったのかと言いたかったが、空腹のせいか鼻孔をくすぐる香ばしい匂いにやられてしまい、自分は気付くと箸を持ってから揚げを一つ口に頬張っていた。

 

「……美味しい」

 

 口に広がるその味に思わずそんな言葉が出た。彼が料理上手なのは前から知っていたが、今までにないくらい美味しい。何と言うか、このから揚げから優しさが詰まっているように思えるのだ。

 

「お前、その味付け好きだっただろ?」

 

 感嘆とする自分に彼はそう言って笑っていた。だが、その表情はどこかホッと安堵しているように見える。彼は自分のためにこのから揚げを作ってくれたのだ。きっと無理をしているだろう自分を気遣って、好みの味にしてもらって。

 

「お、おいおい…お前、泣いてんのか?」

 

「な…泣いてなんか……ないわよ……………」

 

「まあ、何て言って良いか分からないけど、一人で何でもかんでも抱え込むなよ。俺だって心配するし……みんな、お前が一生懸命頑張ってるの、知ってるからな」

 

「…………」

 

「さあ、早く仕上げて帰ろう。妹も待ってるかもだしな」

 

「…………」

 

 この後、仕切り直して作業を再開したが、この時のことを自分は忘れなかった。

 

 

 

 ああ…今でも覚えている……あの時の優し気な表情が、目の前で自分を心配そうに見つめる青年と重なって見えたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落水さん……!」

 

 

 禍々しい黒い靄が晴れて、ステージに立っていたのは元の姿に戻った落水だった。当人は放心しているのか、何も動くことなくただ佇んでいる。だが、よくよくジッと見ているとそれは違っていたことに気づいた。

 

「ああ……情けない。人の心にズケズケと踏み込んで、勝手に自分たちの事ばかり見せつけて……」

 

 

「学芸会って、タカをくくってたのに…………私が……()()()()()()()()()()……!」

 

 

 その姿に悠たちは目を見開いた。落水はその時、涙を流していた。自分たちに冷たい態度を取って人前で感情をあまり出さないよう案人物が、今ありのままの姿で声を殺しながら泣いている。その涙は恐怖からでもない、心から感動して溢れ出ているものだった。

 落水の涙の理由を悟った悠たちは思わず歓喜した。今までずっと伝わらなかった自分たちの想いが落水にやっと伝わったのだ。泣いている落水の前でそう言うのはあまりよろしくないが、これが喜ばずにいられるだろうか。

 

「んだ、オメー泣いてんじゃねえか。ビビらせんなよ」

 

 だが、そんな気分は完二のデリカシーのない発言でぶち壊された。気分を害された女子たちは完二を一斉に非難する。

 

「完二! 大人にそういう事言わないの!」

 

「そうです! せっかく落水さんが分かってくれたって言うのに、それを台無しにするんですか!?」

 

「えっ、いや……そ、それは……」

 

「完二くんにはまずマナーを叩きこむ必要があるわね。この事件が終わったら覚悟しておきなさい」

 

「ええっ!? そんなぁっ!?」

 

「完二くん、ドンマイ」

 

「自業自得です」

 

 現実に帰ったら絵里によるマナー講座を受けさせられると聞いて顔面蒼白になる完二。根は良いのだが、やはりまだ不良としての気質が残っているので、これを機にマナーを叩きこんでもらうべきだろうと慌てふためく後輩を見て思わず苦笑してしまった。

 そんないつも通りというべき特捜隊&μ‘sの光景が広がって、皆に笑顔が広がった。そんな優しい光景につられて泣いていた落水までもすっかり口元に笑みを浮かべていた。

 

「馬鹿な10年を過ごしたものね。1人でいじけて、周りに当たり散らして……周りが憎むなら憎まれてやるって思って、有りっ丈の嫌な自分を演じ続けた……有羽子の書き換えた歌詞まで私が書き換えた様に吹聴して回ったわ……」

 

「落水さん……」

 

「私が間違ってた。謝罪するわ、あなたたちにも有羽子にも……ずっと孤独にいたから、間違えたのかもね」

 

「俺たちの方こそ、すみませんでした。あなたを助ける為とはいえ、色々と失礼なことを……」

 

「いえ、いいのよ。あなたたちは、自分の心をありのままに表現して、それをちゃんと相手に伝える事が出来るって証明してくれた。それだけでも私も……有羽子も救われたわ」

 

「落水さん!」

 

「オッチ―!」

 

 落水から感謝とお褒めの言葉を貰って悠たちは報われたような気分になる。あれだけ伝えることに否定的だった落水からそのような言葉を貰っただけで、これまで自分たちが信じてやってきたことが間違いではなかったと思えたのだ。

 

「あれ……? 身体が」

 

「お、俺も……」

 

 その時、張り詰めた状況から解放された故か、悠と穂乃果の身体が限界を知覚。2人はフラッとバランスを崩してしまい、そのまま地面に倒れそうになる。一瞬反応が遅れて気づいた千枝と海未が慌てて支えようとするが、いち早く2人を受け止めた者がいた。

 

 

「お疲れ、悠・コーハイ」

 

「「マリー(ちゃん)!?」」

 

 

 それはいつの間にかその場にいたマリーだった。突然の登場に周りにいたメンバーは栗をあんぐりとしていたが、当人は気にせずマイペースに行動した。

 

「頑張ったご褒美に膝枕、してあげる。コーハイはウーミーよろしく」

 

「えっ?」

 

「ええっ? マリーちゃん、穂乃果の扱い雑過ぎない?」

 

「うーみーって…私ですか……」

 

 マリーはそう言うと、穂乃果を近くにいた海未に預けると、手馴れたように悠を自分の膝の元へと誘った。いつぞやかこんなことをされた記憶はあるのか、どこか懐かしく心地よく感じてしまう。このまま安眠できそうだと思ったその時、

 

「お兄ちゃ~~~~ん!?」

 

「こ、ことり?」

 

「膝枕だったら、ことりがしてあげるよ。マリーちゃんの膝よりことりの方がフワフワで快適だから」

 

「はあ? 何言ってんの? イモウトはそっちで休んでれば?」

 

「…………………………」

 

「…………………………」

 

 バチッと乙女と乙女の視線がぶつかって火花が散るような音が聞こえた。間に挟まれている悠は冷や汗が止まらない。その光景にまたかと見ていた陽介たちは溜息をついた。

 すると、一緒にその様子を見ていた落水は何を思ったのか、不意にクスッと笑ってこう言った。

 

「フフ、やっぱりあの人の息子ね。こうやって女の子に囲まれて騒いでいたの……思い出すわ」

 

「えっ?」

 

 何気ない今の落水の発言に悠たちは一瞬固まった。今すごく聞き捨てならないことを聞いた気がする。少し聞きづらいが、ここは陽介が代表しておずおずと落水に尋ねてみた。

 

「あの、束の事お聞きしますが、落水さん……所々であなたが言ってたあの人ってもしかして……悠の親父さんだったり?」

 

「そうよ。あの人、鳴上くんのお父様とは高校の同級生だったの。誰にでも優しくて困ってる人は見過ごせない人だったから、私もお世話になったわ」

 

「えっ?」

 

「「「ええええええええええっ!?」」」

 

 ここで衝撃の事実。なんと、落水と悠の父親は同級生だったのだ。

 所々で悠を見て何か思いふけっていたり、意味深な発言をしたりといった悠の親族と関りがあることは所々匂わせていたが、まさかそれが悠の父親だったとは予想外だった。

 

「ゆ、悠のお父さんと同級生って…じゃあ、理事長のことも?」

 

「もちろん。妹さん……今は南さんだったかしら? あの人とも知り合いよ。鳴上とよく一緒だったから、付き合ってるんじゃないかってよく疑われてたわ」

 

「「「「ああ……」」」」

 

「えっ? な、何で皆……ことりを見て納得してるの?」

 

「そう言えば、鳴上も重度のシスコンだったわね。南さんに手を出そうとした男子を徹底的に威圧したり、南さんに何かあったらすぐに飛んで行ったり」

 

「「「「………………」」」」

 

「何で皆、俺を見るんだ?」

 

 雛乃もブラコンだったと聞いて納得の表情を浮かべることりと悠を除く一同。果てに悠の父も息子と同じくシスコンだったことを聞いて、やっぱり血は争えないということを実感した。

 

「て、落水さん。じゃあ最初から先輩のことを知ってたってこと?」

 

「……そうね。そのところについてもっと語りたいところ悪いけど、私に文句がある人が来たみたい」

 

 落水はそう言うと、虚空を見つめて目を鋭くさせた。一体どうしたのかと思うと、その答えはすぐに現れた。

 

 

「ダメね、落水さん。まさか貴女までその子たちに毒されてしまったとは言わないでね……? もう何年も本当の自分を否定して、皆の思う自分を演じてきた貴女が……?」

 

 

 突然再びあの声が響いて、反射的に悠たちは落水を守るようにして身構える。だが、そんな必要はなかった。肝心の本人は余裕を取り戻していて、悠たちを押しのけてきっぱりと前に仁王立ちしていた。

 

「フッ……毒された? そうね、毒されたのよ。この子たち、鳴上くんたちにね」

 

「私たちの取引はどうするの? 皆に望まれてきた自分を全て捨てたら、まら同じ痛みを味わうことになるのよ……? そんなこと誰も望むわけ」

 

 

「黙りなさいっ!!」

 

 

 また自分の誘いに丸め込もうと意味深に語り掛ける謎の声だったが、それはピシャリと跳ねのけられた。

 

 

「あなたとの取引は白紙よ! 私はもう妥協はしない。この子たちと共に、たまみもシャドウも、そしてあなたも、一人残らずまとめて救って見せるわ!!」

 

 

 ババンと張りのある声で断言した落水。その姿はまるで映画や漫画に出てくる姉御を連想させた。その逞しくも凛々しい姿に悠たちは思わず背筋を伸ばしてしまった。

 

「や、実際助けんのは俺らなんじゃね?」

 

「そうよ、さっきまで助けられる側だったのに」

 

「何で自分がやってやんよみたいな感じで話してるのか、訳わかんないにゃ」

 

「いいんですよ! というか、聞こえちゃいますから……!」

 

 それとは裏腹に、落水に聞こえないようにそんな小言をいう陽介たち。直斗が慌てて窘めるがバレバレである。

 

「ガッカリね……だったら好きにすればいいわ。あなたはもう用済みよ」

 

 謎の声はそう吐き捨てると、逃げるように気配を消してしまった。

 

「あっ……逃げた!」

 

「また逃げられちゃいましたね」

 

 これで何度目か知らないが、こうやって一方的に逃走していくので未だにあの謎の声の正体が何なのかが掴めていない。落水を助けられたとしてもあの声をこのまま野放しにしたら、また誰かをここの世界に引きずり込まれるだろう。

 

「いいえ、今度こそ逃がさないわ。私はもう覚悟を決めたのよ。有羽子のカリステギアをこんな事に使われて……改めて考えたら腹が立ってきたわよ」

 

「カリステギアって……何が?」

 

「こんな事に使われてって、どういうこと?」

 

「えっ? あなたたち、まさか気づいてないの?」

 

 落水の言ってることがよく分からなかったので、悠は正直に首を縦に振った。その反応に落水は信じられないと言わんばかりに溜息をついた。

 

「呆れたものね……あなたたちそれでもプロ? あだだけ何度も聞かされてそんなことも分からないの?」

 

「いや、俺らプロじゃねえし」

 

 その時、ステージの中央に光の幕が下りて、いつもの楽屋セーフルームのドアが現れた。だが、そのドアは今までもものと違って重々しい雰囲気が漂っていた。

 

「むおっ! またドアが出たクマよ! ほんと、どこにでも出るクマね~」

 

「略して、どこでもド」

 

「略さんでいいっ!!」

 

「今までのドアとは違うわね……これは、マシンルームのドアだわ」

 

「マシンルーム?」

 

「収録や編集に使うブースの様なものよ。あなたたち学生でいうところの放送室みたいなものかしら。見た目から今までと同じタクラプロのものよ」

 

「ああ、言われてみれば確かにそうかも……でも、放送室って」

 

「……………」

 

 落水からの解説になるほどと納得した。この部屋がマシンルーム……収録や編集に使う部屋だということは、この部屋にこの世界の根幹に関することがあるのは間違いない。

 だが、放送室と聞いて悠と穂乃果は微妙な表情になる。前のP-1Grand Prixでも黒幕が居座っていたのは同じ放送室だったので、悠と穂乃果は何故か縁を感じてしまった。

 

「……うん、大丈夫。一応ペルソナで確認してみたけど、この中はシャドウとかいないし大丈夫みたい」

 

「分かった、ひとまず中に入ろう。ここに俺たちが求めている答えがあるはずだ」

 

 

 悠に促されて一同はマシンルームのドアを開いて中へと入る。

 

 

 案の定、悠の予測通りそこには悠たちが求めるこの世界の秘密に関わるものがあった。

 

 

 

To be continuded Next Scene.




<番外編>
~Happy Valentineday?~


 これは、とある世界線でのお話。この時、この世界にてバレンタインの日が訪れていた。

 バレンタインデー…それは毎年2月14日に行われる異性が気になる異性にチョコを送る日である。元々269年にローマ皇帝の迫害下で殉教した聖ウァレンティヌスに由来する記念日だと言われているが、現在では好意のある異性に花束や贈り物を渡すという風習となっている。
 そしてこの日本、1958年頃からとある製菓会社の陰謀から始まったとされているバレンタインデーは、貰ったチョコの数で男子がモテる男か非モテなのかと選別されるという全く度し難い日なのである。


 そんな日の朝、悠は携帯の画面を見つめていた。


『お、お兄ちゃん…放課後にコペンハーゲンに来てくれないかな?』
『悠さん、放課後…うちに来てくれない?」
『悠さん、渡したいものがあるので放課後に私のところに来てくれませんか?』
『あの…渡したいものがあるので、放課後アルパカ小屋に来てくれませんか?』
『凛も渡したいものがあるから、放課後来てほしいにゃ!』
『悠さん、放課後うちの病院に来てくれませんか?』
『悠、こころとここあが渡したいものがあるそうだから、うちに来なさい』
『亜里沙が渡したいものがあるそうだから、今日うちに来てくれないかしら?』
『悠くん、今日神社に来てくれへん?』


 上記のお誘いメールから察する通り、我らが主人公、鳴上悠はモテる側である。その証拠に登校中にファンだという女子中学生からチョコを貰い、学内ではクラスはもちろんのこと、他クラスの女子からもチョコを貰って、紙袋がパンパンになるくらいの大きさになっていた。
 当然悠に会いに来た穂乃果たちからジト目でジ~ッと見られた。ついでに嫉妬の恨みが籠った野郎どもの視線も。


 そして、放課後…男子たちが意味もなく教室に居残ったり校内とウロウロとしている最中、悠は先に誰の元に向かった方がいいのかと携帯を見ながら悩んでいた。正直最愛の従妹であることりのところへ行きたいものなのだが、かといって希や真姫たちも無視するわけにはいかない。すると、

「ね、ねえ…鳴上くん。正門で鳴上くんのことを呼んでる人たちがいるんだけど」

「えっ?」

 見てみると、本当に正門には顔見知りがいた。シャドウワーカーの伊織と真田である。正直この日にこのタイミングであの2人が自分を訪ねてきたことに嫌な予感がするが、とりあえず話を聞いてみようと悠は正門に向かった。


「「ギブミー! チョコォォォ!!」」


 正門を訪れるとすぐに2人は両手を差し出して腰を90度に曲げたと思いきや、大声でそんなことを宣った。

「えっ?」

「頼む! お前がもらったチョコを俺らに分けてくれ!」

「はあっ!? ちょっと一体どういうことですか?」

「富める者が貧しいものにチョコを分け与える。それがこの世界の理想だろ!? だから、頼む! 俺たちにお前のチョコを分けてくれ!!」

「いや、あなたは共産主義の回し者ですか……伊織さん、どういう?」

「お、俺っちだってこんなことやりたかねえよ! けど、俺っちだって、チョコが欲しいんだ!!」

「え、ええ……」

 詳しく聞くと、どうやら2人は美鶴や風花たちからチョコを貰えると思っていたらしいが、何故か貰えず、逆にチョコを要求したらみっともないとズバッと斬り捨てられたらしい。
 それで懲りたらよかったものの、どうしても女の子からチョコを貰いたい2人は街中でナンパの如く今のようにチョコを要求したらしいが、結果は言わずもがな。

「…つまり、女の子から貰えなかったから、せめて数でバカにされないようにたくさん持ってる俺から恵んでもらおうと?」

「「……………ギブミーチョコ」」

「図星なんですね。でも」

「「ギブミーチョコ!」」

「いや、だからそんなこと言ったって」

「「ギブミー! チョコォォォォ!!」」

「何でそこまでしてチョコが欲しいんですか!?」

 まずい、周りの目が…男二人が男にギブミーチョコと頼み込んでいるこの状況に、周囲にいる学校の生徒やら主婦らしきご婦人やらがひそひそ声が聞こえてくる。

「そうだぁっ! 鳴上、俺たちにもチョコを分けろ!」
「モテ男は非モテにチョコを恵むべきだぁっ!」
「チョコを貰えないので苦しむのはもうたくさんなんだぁっ!!」
「ギブミーチョコ!」

 果てには、伊織と真田に同調してしまった同級生たちも参戦してしまう始末。既に正門の状況はカオスと化してしまった。 

(このままじゃ…まずい!)

 事が大きくなる前に逃げるしかないと、悠は逃走を決めた。


「あっ!? アイツ、逃げやがった!」

「まずい! 美鶴の所に逃げ込む気だ! お前ら、全員であいつを捕まえろ!!」


「「「オオオオオオオオオオオオっ!!」」」


 この日、悠はもらったチョコを野郎共から死守する鬼ごっこが始まった。


 結局、悠のバレンタインは“ギブミーチョコ”と叫び続ける伊織と真田、音ノ木坂学院男子生徒たちに町中を追いかけ回されて、散々な日となった。
 最終的にはその場を目撃したラビリスが峰打ちとゴム弾を使って救助してくれた。だが、その時点で既に時間は夜になっていた。
 更に、運が良いのか悪いのか、ラビリスから報告を受けた美鶴が“迷惑をかけてすまない、もう夜遅いからお詫びの印に泊まってくれ”と断るに断れない美鶴からの申し出があり、それを受けてしまった。


 この時、悠は穂乃果たちとの約束などすっかり忘れており、当然そのツケは回ってきた。


「悠さん、何で昨日来てくれなかったの?」
「聞けば、昨日はラビリスと一緒に居たとか?」
「お兄ちゃん…酷いよ! ことりよりラビリスちゃんを選ぶなんて!」
「一言でも言ってくれたら、良かったのに……」
「何で、何でラビリスなんだにゃ!?」
「しかも、そのまま桐条家にお持ち帰りしたなんて……イミワカンナイ!」
「アンタ、本当に最低ね! こころとここあを泣かせた罪は重いわよ!」
「私たちとは、遊びだったのね」
「悠くん…そんなにウチの再教育を受けたいんやなぁ……」


「え、ええっと……」


 翌日、朝早く桐条グループから帰宅した悠。帰宅して早々、玄関で待ち伏せしていた穂乃果たちに囲まれてしまった。
 話が色々脚色されているので何とか事情を説明しようにも、全然聞いてもらえなさそうな雰囲気だったため冷や汗が止まらない。黙り続ける悠にしびれを切らしたのか、奥で成り行きを見守っていた雛乃が代表して最終警告を出した。

「悠くん、いつまで黙ってるの? ハッキリしなさい」



「……チョコは欲しいです」



 その瞬間、悠の視界は真っ暗になった。




To be continuded White day.
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