PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

先日も言った通り、テスト期間に入るため今月の更新はこれが最後となります。テストは8月上旬ごろに終わるので、それまで待っていてください。

あとがきの方にGW編の予告を書いたのでそちらの方もどうぞ!更に活動報告に新しいアンケートを行いますので、そちらの方もどうぞ。

そして、新たにお気に入り登録して下さった方・感想を書いてくれた方・評価をつけてくれた方・誤字脱字報告をしてくれた方々、ありがとうございます!読者の皆様の感想や評価、そしてご意見が自分の励みになってます。

読者の皆さんの応援のお陰で
・お気に入り件数が700を突破!
・7/9の日刊ランキングで9位にランクイン!
することが出来ました!

これからも皆さんが楽しめる作品を目指して精進して行きますので、応援よろしくお願いします。

それでは、本編をどうぞ!


#23「Part-time work panic.」

 目覚めると悠はある教室の窓側の席に座っていた。空は夕焼けに染まっているので、おそらく今は夕方だろう。

 

(これはいつぞやイゴールが言っていた過去夢なのか?)

 

 その証拠に体が現実より体が小さくなっていた。見たところ小学生だろうか?胸の名札を見ると、五年生と書かれてあった。五年生と言えばと悠は思い出した。

 

 

 この時から悠は積極的に友達を作ろうとはしなくなった。それは単に親の度々訪れる転勤が原因である。悠の両親は外資系企業に勤めており、何度か転勤を繰り返している。この小学生時代で、長くて2年、最短で半年といった具合に何回も転校した。折角出来た友達も親の転勤で離れ離れになってしまうので、何度も悲しい思いをして両親を困らせたものだ。

 

ーまた同じ思いをするならば、もう友達なんて作らなくていい。

 

 いつしかそう思うようになり、友達を作ろうとは思わなくなり孤立していった。そのことに悠は何も違和感を感じなくなった。自分はいつも孤独なんだからと考えるようになっていった。

 

 

 

「あれ?…君は昨日転校してきた人だよね?まだ帰らないの?」

 

 

 

 窓を見て回想にふけっていると、後ろから声を掛けられた。振り返ってみると、そこに幼げなを顔しているのに関わらず、どこか大人っぽい雰囲気を持った女の子が居た。誰もいない教室で一人黄昏ている悠は見て心配になったのだろう。それに対して、悠は素っ気なく返した。

 

「別に……帰っても、誰も居ないから」

 

 悠の両親は転勤も多ければ帰りも遅い。仕事が忙しいのか家のことは全くしなかったので、家事はいつも悠がやっていた。今の悠が家事スキルが高いのも、きっとこれの影響だろう。

 

「そうなんだ……あ!ねえ!君の家ってどこにあるの?」

 

 話を聞いた少女は少し頬に人差し指を当てて考え込んだと思うと、こんなことを言い出した。

 

「え?」

 

「良かったら一緒に帰らない?実は私も君と同じ転校生で、お父さんとお母さんが仕事で帰ってくるのが遅いんだ。だからさ……私も家に帰っても家族がいないの」

 

 驚いた。まさか自分と同じような境遇の者がいるとは思わなかった。しかし、同情されるのは気に障るので断ろうかと思ったが、この女の子はしっかりと自分の目を見て言っているので断るのは気が引ける。

 

「うん……良いよ」

 

 悠はそう言ってくれたのが嬉しかったのか、女の子は手を合わせて大喜びした。

 

「やった~!ありがとう!!え、え~と…名前は確か…」

 

「…鳴上悠」

 

「そう!鳴上くん!良い名前だよね!」

 

「そ、そうかな……」

 

 そんなこと言われたのはこれが初めてだろう。小学生の女の子らしい笑顔で言われたので、思わずドキッとしてしまう。

 

「じゃあ、今度は私だね!私の名前は…」

 

 しかし、女の子が名前を言おうとした瞬間、突然視界が暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~にこ加入から数日後~

 

 

「………………」

 

 悠は浮かない顔で朝食を取っていた。別に朝食の出来がよろしくなかったとかそういうのではない。昨日見た過去夢であの時悠に優しくしてくれた少女の名前が思い出せなくてモヤモヤしているのだ。すると、

 

「あら?鳴上くんどうしたの?さっきから黙り込んで。具合でも悪いのかしら?」

 

 そんな悠の様子が心配になったのか一緒に朝食を取っていた菊花(・・)が話しかけてくる。

 

「いえ、そういうことでは……」

 

「ハムッ…ハムッ……きっと疲れて食欲がないんだよ!鳴上先輩、食べられないならそのお魚ちょうだい!!」

 

「お姉ちゃん、鳴上さんの手料理だからってがっつき過ぎ」

 

 現在悠は穂乃果の家『穂むら』で朝食を取っている。何故かというと、昨日ここ『穂むら』でバイトしていたからだ。度重なる出費により陽介たちのお土産を買うお金が足りなかった悠は穂乃果の母の菊花に頼んでバイトさせてもらっているのだ。バイトを頼んだ時、菊花は待ってましたと言わんばかりに快くOKを出してくれたが、その時目が獲物を狙う猛獣のようになっていたのが気になった。

 

 

「昨日あんなに頑張ってたんだから疲れて当然だよ」

 

 雪穂の言う通り、昨日はただのバイトなのに色々とあった。いつもより人が多く来たので接客に追われたり、夜にまた菊花も和菓子講習を受けたりした。お陰で昨日のバイトが終わった後の悠はとても疲れ果てていた。今日も『穂むら』のバイトなので気を引き締めなければ。

 

「鳴上くん、今日の午後は休みなさい」

 

「え?」

 

 突然菊花にそんなことを言われた。一体どういうことだろう?別に働けないというほどではないと菊花に伝えると、菊花は呆れた様子でこう言った。

 

「穂乃果から聞いたのよ。鳴上くん最近頑張り過ぎだって。それなのに昨日はあんなに張り切って……無理し過ぎよ」

 

 確かに。最近悠は【μ‘s】の部室確保やにことのゴタゴタ、テレビの中でのシャドウ戦など色々なことに奮闘した。それにも関わらずこうやってまた働きにいっているのだから、無理してるというのは間違いではないのだが……。

 

「頑張るのは良いけど、無理をしちゃだめよ。それで身体を壊したら元も子もないし、ご両親や雛ちゃんだって心配するわよ。もっと自分の身体に気を遣いなさい」

 

 確かに菊花の言う通り自分の身体への配慮が足りなかったかもしれない。前に陽介にも同じことを言われたなと思いつつ、悠は菊花の言う通り今日の午後は休ませてもらうことにした。

 

「ありがとうございます。お気遣い頂いて」

 

 悠は菊花に感謝の言葉を述べた。何かと雛乃と同じくこの人には頭が上がらない。

 

「何言ってるの。鳴上くんのことを心配するのは当たり前じゃない。将来の義理の息子なんだから……

 

 何か小声で不吉なことを言ったような気がする。それに穂乃果の父が作業している厨房から途轍もない殺気を感じた気もするが、そっとしておこう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、朝食を取った後は早速仕事だ。穂乃果の父が朝早くから仕上げた和菓子を店頭に並べて開店の準備をする。今日も午前中は雪穂と店番だ。

 

「鳴上さん、お母さんが言ってた通り無理しないでくださいね」

 

「ああ、善処するよ」

 

 今日は昨日と同じくお客さんが大勢来た。もうすぐGWなので、帰省する人はお土産でここの和菓子を買いに来たのが目的の人が多いらしい。悠も実は陽介たちのお土産にこの『穂むら』のほのまんを買おうと思ったのだが、その時所持金あまりなかったのでこうしてバイトしているのだ。まあそれ以外に特捜隊の各々に個人で渡すものも考えてはいるのだが。

 

 そうしているうちに、時計はお昼の時間を指していた。お客の数も大分落ち着いてきたので、悠たちはお昼休みに入ることにした。すると、

 

「あっ!鳴上さん、携帯が鳴ってますよ」

 

 雪穂が机の上に置いてあった悠の携帯が鳴っているのに気づいて知らせてくれた。悠は雪穂にお礼を言って、携帯の画面をチェックする。画面には『クマ』と表示されてあった。

 

「クマから?」

 

 着信が来たのは意外にも八十稲羽にいるクマからだった。クマから電話が来るとは珍しい。とりあえず出てみようと思い、悠は通話ボタンを押した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら?鳴上くん、どこか出かけるの?」

 

「はい。ちょっと買い物ができたので。すぐに戻りますよ」

 

「そう。気を付けてね」

 

 菊花にそう断りを入れて悠は『穂むら』から町へ繰り出した。本当は外に出る予定はなかったのだが、先ほどのクマの電話で町に用事が出きたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~悠とクマの通話記録~

 

『センセイはGWにこっちに帰ってくるクマか?』

 

「ああ。勿論そのつもりだ」

 

『も、もしかして…センセイがプロデュースしてるという【μ‘s】のプリティーちゃんたちも!』

 

「それはまだ分からないけど……クマ、もし高坂やことりに手を出そうとするなら」

 

『め、滅相もないクマ!クマはセンセイが手塩に育てたプリティーちゃんたちに絶対に手は出さないクマ~!!』

 

 悠が低い声で脅すとクマは焦って弁明する。そうは言っても前科がありすぎるので全然信用できない。ここは一応分かったということにしておくが、もし現地で穂乃果やことりたちに手を出したら即刻私刑を執行しよう。

 

「それで、俺に用があるんじゃないのか?」

 

『そ、そうクマ~。大変キョーシュクですが、実はクマはセンセイに頼みがあって、こうやってデンワしたクマよ』

 

 クマから頼みとは…どうせロクなことではないだろうが一応聞いておこう。

 

『センセイはクマたちにお土産を買ってくるクマよね?』

 

「あ、ああ。今お金がないからバイトして、みんなのを選ぶのはこれからだけど…それがどうかしたのか?」

 

『実は…ヨースケのお土産でご指定したのがあるんですが…』

 

「は?」

 

 クマが陽介のお土産の相談?それ以前にお土産とはもらう側が指定するものではないと思うのだが…そう言おうとすると、クマは悠に事情を話し始めた。

 

『ヨースケが昨日、お気に入りのナースさんをママさんに燃やされて、今すんごく落ち込んでいるクマ』

 

「ナース?」

 

『やーねーセンセイ、ご本の話クマよ。お胸がプリ~んとしてて、お尻がポヨ~んと』

 

「よく分かったよ……」

 

 要するに、陽介は健全な男子高校生なら誰しもが持つエ……言い方を変えればオタカラをお母さんに燃やされたらしい。自分は両親が仕事で家にあまり居ないのでそう言ったことは今のところない。しかし、最近はことりがよく出入りしているので、最近見つかりにくい場所に隠したばかりである。そんなことより……

 

「つまり…クマは俺にそれを陽介のお土産として買ってほしいと……」

 

『さっすがセンセイ!その通りクマ!!センセイの居る都会っチューところは、そういうのがいっぱいはずクマよね?可哀そうなヨースケのためにもここは一つお願いしたいクマ』

 

「……………………」

 

 いや、どんな罰ゲームだよとツッコミたい。仮に買ったとしてもお互い傷つくだけだろう。しかし、日頃ジュネスのバイトや仲間のツッコミなどで苦労している陽介の姿を想像すると、何とかしてやりたいと思ったのも事実。

 

「分かったよ…」

 

『およ~!さっすがクマのセンセイクマー!!それじゃあセンセイ、お土産楽しみに待ってるクマ~。【μ‘s】のプリティーちゃんたちにもよろしくお願いクマ~』

 

 そう言うと、クマは機嫌が良さそうに電話を切った。

 

 

~通話記録 終了~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな訳で、悠は苦労人の陽介のために本屋でナースのオタカラを購入した。ちなみに普通の高校生なら他の雑誌などに挟んでオタカラを購入するものだが、悠は【豪傑】級の勇気があるのでそんな小細工などせずに普通にレジに出して購入。店員さんには若干引かれたようだがこの際気にするのは無しだ。とりあえず、これをこのまま『穂むら』に持って帰るのは流石に気が引けるので、一旦家に帰ることにした。

 

 

 

 

 

 しかし、この後悠は思った。この時の俺はどうかしていたとしか思えない…と

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<穂むら>

 

ザアアアアアアアアッ

 

 家に帰ろうと思ったが『穂むら』に家の鍵を置いていたのを思い出して引き返したのだが、途中で雨が降り出してしまった。急いで走ったお陰かあまり濡れはしなかったが、手にオタカラを持っているせいか結構精神的に疲れた。店に入ると、店番をしているらしい割烹着を着た穂乃果が声をかけてきた。

 

「あ!鳴上先輩!お帰り~!雨大丈夫だった?」

 

「ああ、ただいま……」

 

 元気よく出迎えてくれた穂乃果だが、その姿には愕然とするしかなかった。何故なら穂乃果は両手に食べかけのほむまんを持っていからだ。

 

「高坂………つまみ食いしてたのか?」

 

「え!?…いや、これは自分のだよ!自分用だから、お店のやつじゃないから!」

 

「……そこの棚のほむまんが二つほど無くなってるけど」

 

「ハウ!!」

 

 穂乃果は嘘がバレたので、まるで偽証が見抜かれた証人みたいなリアクションを取った。穂乃果は店番をするとよく商品のほむまんをつまみ食いすると雪穂から聞いてはいたが、まさかこんなあからさまにやっているとは思わなかった。すると、穂乃果は顔を真っ青にして悠に泣きついてきた。

 

「お願い!鳴上先輩!!お母さんに言わないで!これバレたらまたお小遣い減らされちゃうから!鳴上先輩の給料に持っていかれちゃうから!」

 

「…………………」

 

 今更だが、穂乃果が泣きつく様はどこかの駄女神に似てきたように見える。というか今聞き捨てならないことを聞いた気がする。どういうことなのか説明を求めようとすると、

 

 

ほ~の~かぁ~?ま~たつまみ食いしてたの?

 

 

 時はすでに遅しというべきか、菊花が店内に現れて穂乃果に鬼のような形相を向けていた。

 

「ヒィ!!」

 

 菊花の存在に気づいたのか穂乃果は顔を真っ青にして悠の後ろに隠れてしまう。菊花の怒りの声に穂乃果のみならず悠も恐怖を覚えた。すると、菊花は悠に気づくと先ほどとは違う柔和な笑みを悠に向ける。

 

「鳴上くん、お帰りなさい」

 

「は…はい……」

 

「あら?顔が疲れてるわね。雨が降ったから大変だったでしょ?少し上の部屋で休んでいいわよ。私は今からこの愚娘に説教するから……」

 

 菊花は穂乃果に目線を向けると、穂乃果は更に震えあがった。

 

「い、嫌だ!お母さんの説教は嫌だ!先輩!助けて!!」

 

 母の説教が嫌なのか穂乃果はまるで捨てられた子犬のような目で悠に懇願する。しかし、悠はすぐさま穂乃果の後ろに回って差し出すように背中を押した。

 

「…どうぞ」

 

「嫌だ~~~!!」

 

 悠はあっさりと穂乃果を菊花に差し出し、巻き込まれないようにと二階へと上がった。後ろから『鳴上先輩のバカ~~!』という悲痛な声が聞こえた気がするが、そっとしておこう……

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 とりあえず、穂乃果の無事を祈りながら悠は二階にたどり着く。菊花の言葉に甘えて早速休もうと部屋の襖を開けると

 

 

「ううん……あれもこれもやってるのに全然胸が大きく」

 

 

バタンッ

 

 悠は勢いよく襖を閉める……今のは幻覚だろう。きっとオタカラを買ったせいで疲れてるんだ。何も見てない。決して下着のまま何かの雑誌を読んでいる雪穂の姿など見ていない。そう思い込んで、悠は次の部屋の襖を開ける。

 

 

「貴方の心にラブアローシュート♡みんなありがとう~!!」

 

 

バタンッ

 

………何も見ていない。鏡の前で痛いポーズを取っていた下着姿の海未など見てみない。そうだ、きっと疲れているのだ。早く部屋に入って休まなくては、オタカラの呪いにかかってしまう。悠はそんな意味不明なこと思い、早く休みたい一心からさっさと次の部屋のドアを開けた。

 

「あっ…………」

 

 悠は後悔した。何故部屋に入る前に誰かいるのかチェックしなかったのだと。そして、何故そこが脱衣所であることを確認しなかったのかと。

 

 

 

「な…なな………」

 

 

 

 最後にラスボスがそこにいた。その部屋には雨に降れたのか濡れた服を乾いた服に着替えている最中の花陽が居たのだ。しかも下着は下の方しか履いていない……

 

「な…鳴上…せん…ぱ………い」

 

 花陽は顔を真っ赤にして身体を震わせながらこっちに近づいてきた。

 

「お…落ち着け!これは……」

 

 

見ないでください!!

 

 

 

 

 

ドンッ!!

 

 

 

「「え!?」」

 

 突然何かデカいものがぶつかったような音が響いてきたので、穂乃果と菊花は驚いた。

 

「な、何!」

 

「今のって二階から……」

 

 何かあったのかと思い、穂乃果と菊花は急いで二階へと上がっていく。二階に上がった瞬間、2人は思わぬものを目にしてしまった。そこで二人は目にしたものとは………

 

 

「な、鳴上さん!大丈夫ですか!!」

 

「と、とにかくお医者さんを!」

 

「あ…ああ………」

 

 

 二階の廊下で倒れこんでいる悠とあたふたとしている雪穂と海未、その場であられもない姿でへたり込んでいる花陽の姿だった。もはやカオスとしか言いようがない。

 

 

「貴女たち!さっさと服を着なさい!!」

 

 

 菊花の本気の怒声が『穂むら』全体に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♫~♫♩~♩~ 

 

 

 聞き覚えのあるピアノの音が聞こえてくる。

 

「あら?この時間に入らすとは珍しいわね」

 

 案の定ここは【ベルベットルーム】のようだ。目を開けると、いつも通り全てが群青色に染まっているリムジンの車内のような空間がそこにあった。

 

「ようこそ、ベルベットルームへ。主は今留守にしております」

 

 いつもの席にはこちらを見て微笑むマーガレットが居る。最近は彼女と2人で会うことが多くなっている気がする。あの奇怪な老人はどこへ行ったのだろうか?

 

「先の戦いで迷い人を救っただけでなく【戦車】のアルカナと桃色の【女神の加護】を手に入れたようね。それに、あの迷い人も以前と見間違えるように生き生きとしているようで……ふふふ、流石貴方というべきかしらね」

 

 マーガレットが言っているのはにこのことだろう。確かに彼女の言う通り、にこは自分がやりたいことに打ち込めているせいか初めて会ったときより生き生きとしている。それはとても嬉しいことなのだが……何故か練習でみんなに自分の持ちネタを練習させて、挙句の果てに悠にまでその練習を強要しているのだ。本人曰くマネージャーならこれくらいやって当然だという理由で……

 

「ふふふ、それでもあの子は少なくとも貴方と出会ったことによって救われたのでしょう。それは…今まで貴方が救ってきた者たちも同じ」

 

 すると、マーガレットはペルソナ全書を開いてこう語り始めた。

 

 

「貴方は昨年の事件を通して多くの者と絆を育み、救ってきました。あの時の経験はきっとこの先の貴方とあの子たちの旅の手助けになるでしょう。そのことをお忘れにならないようお気を付けください」

 

 マーガレットの話を聞いた悠は首を縦に振った。何故かは分からないが、マーガレットがこういう話をするということは、この先何かあるということなのだろう。すると、マーガレットはペルソナ全書を閉じて悠に微笑んできた。

 

「本当はもっと貴方と世間話をしたいのだけど、あの子たちを待たせたら悪いから今日はここまでね。それでは、またお見えになる時まで…ご機嫌よう」

 

 そうして悠の視界は暗転した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………うっ」

 

 目を開けると、見覚えのあり天井が見えた。体が少しだるい感じがするが、起き上がって辺りを確認しようとすると

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

 

 突然近くに居たらしいことりが泣き顔で悠に抱き着いてきた。

 

「うおっ!…ことり……」

 

「お兄ちゃんが倒れたって聞いたから駆け付けたの!お兄ちゃん、ずっと眠ったままだったから心配したんだよ!ううっ…ううう」

 

「ちょっと、ことり!鳴上先輩は起きたばっかりなんですよ!」

 

「そうよ!とにかく鳴上さんから離れなさい!」

 

 悠に抱き着いたことりを海未と真姫が引き離す。すると、部屋の襖が開いて穂乃果と凛、花陽が入ってきた。

 

「あ!鳴上先輩起きた!!良かった~!」

 

「良かった…良かったよ~!凛ちゃ~~ん!」

 

「か、かよちん…落ち着いてにゃ……苦しい……」

 

 悠の無事を確認して安堵したのか穂乃果と花陽は大喜びして、凛は喜ぶ花陽にヘッドロックを掛けられて苦しそうにしている。

 

「ったく…余計な心配かけるんじゃないわよ、鳴上」

 

 見ると、そんな穂乃果たちの横に先ほどマーガレットとの会話で話題になったにこも居た。話を聞くと、どうやら皆悠が倒れたと聞いて心配になって駆け付けたらしい。悠が気絶した原因になった花陽は焦った顔で悠に必死で謝ったが、悠は自分も悪いと花陽に言い聞かせた。

 

「というか鳴上はちゃんと人が居るのか確認すればよかったじゃない」

 

「うっ……それを言われると………」

 

「まあまあ、いいじゃん!鳴上先輩は無事だったんだからさ」

 

 そんな穂乃果の一言によってこの話は終わり、悠は穂乃果たちに断りを入れてお手洗いに行った。お手洗いで用を足すと、部屋へ戻る途中に上に上がってきた菊花と会った。

 

「あら?鳴上くん、もう起き上がって大丈夫なの?」

 

「は、はい…ご心配をおかけしました」

 

「本当よ。あの子たちも私もかなり心配したんだからね。ことりちゃんなんてこの世の終わりみたいな顔してたし」

 

 菊花の話を聞くと相当心配をかけてしまったようだ。菊花はとりあえず今日の夕飯は自分が作るからそれまで休んでなさいと言ってその場を去っていた。悠は菊花に申し訳ないなと思いつつ、自分の部屋に戻っていく。

 

 部屋の前まで戻ると穂乃果たちの楽し気な話し声が聞こえてきた。穂乃果たちの楽し気な声を聞いていると、悠はフッと笑ってしまった。今の穂乃果たちの雰囲気はまるで去年、ジュネスのフードコートで繰り広げていた仲間との日常を連想させたからだ。さて、自分のこの部屋に入って穂乃果たちの話の輪に入ろうと襖に手を掛ける。

 

 

 

 しかし、このとき悠は忘れていた。今の状況で隠さなければならなかったオタカラの事を

 

 

 

「あれ?この本は何でしょう?」

 

 部屋の襖に手を掛けた途端、海未のそんな声が聞こえてきた。何か嫌な予感がして部屋に入ってみると、海未が部屋の隅に袋からはみ出ている本を見つけて中身を確認しているところだった。悠はその本を見て顔が一気に青ざめる。

 

「!!ま、待て!園田!それは…………」

 

 悠はそれを見て止めようとしたが遅かった。

 

「…………………」

 

「う、海未?どうしたのよ……」

 

 海未は本を見た瞬間、顔を真っ赤にして身体を震わせ始めたので、にこは心配になって声をかける。

 

「は……は……………ハレンチです!!」

 

「ぐふっ!!」

 

 海未は本の内容が許容範囲を超えていたのか、その本を謝ってにこに思いっきりぶつけてしまった。海未から重い一撃を食らったにこは気絶してしまい、その拍子でその本がことりの手に着地してしまった。悠はこの時、ヤバいと思ったがもう遅い。案の定ことりはその本の内容に目を通した瞬間、ことりの目のハイライトが消してこちらを向いてきた。

 

 

お兄ちゃん?これは何かな?

 

 

 ことりの手には『×××ナース、夜の看護 DX』と書かれた本が一冊。それを見た悠は冷や汗が止まらない。それは今日陽介のお土産として買ったオタカラであったからだ。

 

「そ、それは……」

 

「ふふふ、お兄ちゃん……ことりが居るのにこんなもの買うなんて……」

 

 悠は思案する。その本は八十稲羽の相棒へのお土産だと言ったところで信じてもらえるだろうか?いや絶対にない。ならどうすれば……しかし、ことりは無慈悲にも悠が答えを示す前に判決を下した。

 

 

「とりあえず、お兄ちゃんが洗濯機や布団の下とか使わなくなった参考書の表紙を被せて本棚の奥とかに隠してるこういう本全部燃やそうかな。お兄ちゃんにはことりが居るから、こんなの必要ないしね♪」

 

 

 何かオシオキが待っていると思っていたら、トンでもないことを言い出した。いやしかし、それよりも……

 

「どうしてそれを………」

 

「ふふふ♪ことりが知らないとでも思ったの?……まぁお兄ちゃんも男の子だし、見て見ぬふりをしようかなって思ってたけど……ね…」

 

 我が従妹ながら恐ろしい。どうやら悠が想像してたよりも早く悠のオタカラの場所を把握してたようだ。もっと見つかりにくいところにするべきだったか……

 

 辺りを見渡すと、穂乃果と凛の微妙に引きつってる顔、真姫のジト目が痛い。何とか助けを求めようとも、にこはまだ気絶しており海未は真っ赤になってエンスト中、花陽は悠のオタカラを見て顔を真っ赤にしているため、助けを求めることが出来ない。四面楚歌とはこの事を言うのではなかろうか。そう思っているうちにことりがトドメを刺した。

 

「お兄ちゃん?何かいうことある?」

 

 悠は打つ手なしと判断し、ことりたちに頭を下げた。

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 後日、悠の隠し持っていたオタカラはことりの手によって処分され、学校で落ち込んでいる悠の姿が確認された。更に【μ's】のメンバーの一部には将来ナースになろうかと画策し始めた者が居るとか居ないとか。結局悠も相棒と同じ目に遭うことになり、改めて悠は決意した。

 

 

(稲羽に帰ったら絶対クマをシバき倒す!)

 

 

 

 とりあえずクマのお土産はみんなのよりランクをダウンしてやると悠は心に決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 薄暗い部屋の中、少年は寝転がってブツブツと呟いていた。

 

「っはは…やっとだ………やっと僕の望みが叶う……」

 

 しばらくそんなことを呟きながらニヤニヤしていたが、突然顔を歪めて乱暴に立ち上がり、腰に差していた刀を抜刀して近くにあったテレビを切り裂いた。それでは飽き足らず、切り裂いたテレビだけでなく周りのものを八つ当たりするように壊し始めた。

 

 

「ハァ…ハァ………」

 

 八つ当たりを終えると上を見上げ、そこに映る月を見ながらこう言った。

 

「あいつは俺と同じ匂いがするのに……目障りだ。僕は一人になりたいのに…………必ず消してやる。ゆっくりと…殺してやる。くくくく……はははははははは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 また別の場所では、誰も居ないとある教室に一人の少女が眠りから目を覚ましていた。

 

「うう……ウチは寝とったんかいな。春から生徒会長に任命されたんに……情けないなぁ」

 

 そう言うと、少女は思いっきり伸びをして席を立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 彼・彼女らが動くその時、新たな事件の影が悠たちに迫ろうとしていた。そのことを本人たちはまだ知る由もなかった。

 

 

ーto be continuded




Next Chapter






「また会えた…お帰り。ずっと忘れてなかったよ」






八十稲羽を離れてから数か月後……GWを利用して、悠は叔母の雛乃と【μ`s】の皆と共に再び八十稲羽に帰ってきた。久しぶりに触れる八十稲羽の空気と久しぶりに会う仲間と家族に悠は心が躍っていた。

「お帰り!お兄ちゃん!!」
「久しぶりだな!相棒!!」
「鳴上くーん!久しぶり~!」

雛乃と穂乃果たちに仲間を紹介して親睦を深めつつ、久しぶりの八十稲羽での休日を満喫しようとした。だが………







ー雨の夜に映る高校生同士の決死の格闘番組……そこで負けたものは、翌朝死体となって発見されるー








『P-1グランプリの開幕クマー!!』


突如『決死の格闘ショウ』と名打たれた番組が流れ出したマヨナカテレビ。普段と装いの違うクマの姿。勝手な肩書きと共に紹介される特捜隊メンバーと【μ‘s】のメンバーたち。これを境にほのぼのとするはずだった休日が激変する。







「それでは新たな仲間を迎えると同時に、ここに八十稲羽特別捜査隊再結成を宣言します!」


意味不明のマヨナカテレビが流れて翌日、陽介や穂乃果たちと共に特別捜査隊を再結成した悠たち。相次ぐ仲間の失踪とテレビの中を調査していたクマの音信不通。不審に思った悠たちはテレビの中にダイブすることを決意する。しかし、そこで待ち受けていたのは…………













「んフフフフフ、やっときたクマね~」
「ごちゃごちゃ言ってないで、さっさと戦わんか~い!」

悠たちに決闘をするように煽る『クマ総統』と名乗る『クマ』















「お兄ちゃんなんてキモイんだよ」
「貴方の勝手な行動に振り回される私たちのことも考えてよ」
「鳴上先輩が居なくなれば良いんですよね……」

強要される突然変わり果てた仲間たちとの望まない決闘。














「早くこの騒ぎを撤収しい。こんなグランプリ、生徒会は認めへんよ」

戦いの最中で出会った八十神高校生徒会長を名乗る一人の少女。













「君が鳴上悠か……」
「誰ですか?貴女は……」

悠のことを知る謎のペルソナ使いたち。















そして……

「やぁ、久しぶりだね。悠くん」

赤い霧と共に現れた、ここには居ないはずの人物。















これは『クマ』が用意した悪ふざけなのか?
そうでなかったとすれば『クマ総統』とは何者なのか?
P-1グランプリの真の目的とは?




真実を掴むため、悠たちは仲間を信じてぶつけ合う!果たして悠たちはこの事件の真相にたどり着けるのか!?


絆のチカラが試される新たな物語の幕が上がる。



間章【THE ULTIMATE IN MAYONAKA WORLD】

2017年8月開始予定


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