PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

今回は前回の展開と予告通り、VS陽介です。ここで言っておくと、特捜隊メンバーのペルソナは超覚醒したバージョンで行きます。一応P4Gの後日談という設定なのでその方が良いかなと思ったので。

新たにお気に入り登録して下さった方・感想を書いてくれた方・評価をつけてくれた方・誤字脱字報告をしてくれた方々、ありがとうございます!読者の皆様の感想や評価、そしてご意見が自分の励みになってます。

これからも皆さんが楽しめる作品を目指して精進して行きますので、応援よろしくお願いします。

それでは、本編をどうぞ!


#26「VS Captain Ressentiment!!」

クマ?の発した言葉に、悠は絶句した。それほどクマ?の言葉が彼に衝撃を与えたのだ。

 

「な…菜々子とことりが……どうなってもいい…だと……」

 

クマ?の言葉は、この世界に菜々子とことりが居るということになる。そんなはずはないと悠は思った。菜々子は今は現実で友達と遊んでいるはずだし、ことりに関しては危ないからという理由で穂乃果と一緒にジュネスに置いてきたはずだ。テレビにダイブする前に笑顔で見送ってくれた。もし、クマ?の言ってることが事実だとしたら……

 

 

「あれ?お前知らなかったのか。菜々子ちゃんとことりちゃん、クマと一緒だったぜ」

 

 

陽介は軽い調子のまま、さらっと重要なことを宣った。それを聞いた悠は焦って陽介に問い詰める。

 

「おい陽介!菜々子とことりをどこで見たんだ!」

 

「うおっ!相棒どうしたんだよ。急に弾けんなって」

 

「そっちこそ、何でそんなに平気なんだ!ことりはともかく、菜々子は去年ここでどんな目に遭ったのか知ってるはずだろ!」

 

去年、菜々子はとある人物に誘拐されてこの世界に入れられたことがある。そのせいで、一時体調を崩して危篤状態になったのだ。今は奇跡的に助かって元気に日常を送れているのだが、今でもあの時のことを思い出すと胸が締め付けられる。だというのに陽介は……

 

(いや、落ち着け……落ち着くんだ)

 

考えてみれば陽介に強く当たるのはお門違いだ。陽介はただ、菜々子とことりがクマ?と一緒にいるのを見たと言っただけだ。我ながらこのシスコンぶりには怖くなると悠は思った。

 

「陽介、教えてくれ。菜々子とことりは確実にあのクマ?と一緒に居るんだな?」

 

しかし、陽介は予想に反した反応をした。

 

「はっ?そんな知らねーよ。まぁ多分今でも一緒に居るんじゃないの。それより悠よ、そんなに菜々子ちゃんとことりちゃんが心配なのか?」

 

「何?」

 

「ははは、そんなんだからシスコンとか言われて、気持ち悪がれてるんだぜ」

 

おかしい。何かがおかしいと、募った違和感が一層強くなった。確かに陽介は無神経なことを言ったりはするが、それは気を遣いすぎて裏目が出てしまうのがほとんどだ。こんなあからさまに嫌みを言って楽しそうにする最低なやつじゃない。

 

「お前は……本当に陽介なのか?」

 

「はっ?何言ってんの?どう見ても俺だろうが。というか、この場で一番ヤバいのは悠、お前だろ?」

 

「なんだと?」

 

 

「いつまでもシスコンをこじらせてよ。大体あの子たち、()()()()()()()()()()()?お兄ちゃんとかキモイっての」

 

 

「!!っ」

 

その言葉は悠の心に突き刺さった。言われた内容にもだが、何よりそれを陽介に言われたことが悠にとって痛手だった。

 

「ことりちゃんとかあんな良い子なのに、ブラコンとかありえないだろ?それに俺があの2人を見たのは、結構前だし、もう手遅れだって。去年の菜々子ちゃんの時だって…なっ」

 

「……………」

 

悠はもう何も言えなくなった。確かに陽介の言う通り、あの2人は従妹であって本当の兄妹じゃない。だが、そうであったとしても悠にとって、あの2人は本気で自分を慕ってくれて、自分に生きがいを与えてくれた大切な家族だ。たとえシスコンだと言われても、それだけは悠にとっては譲れない。

 

それに、自分の知ってる陽介は決して人の命を軽く見るような人間じゃない。何故なら、去年大切な人を失う辛さを一番味わったのは、他ならぬ陽介だったからだ。大切な人を殺されても、それに背を向けることなく向き合っていた姿勢は、悠も尊敬したものだ。菜々子が入院した時も、陽介は悠の抑えきれない犯人への感情を受け止めてくれた。それらを陽介は忘れてしまったというのか……。

 

 

「構えろ………陽介」

 

 

悠は意を決して、懐からメガネを取り出して装着する。そして、マリーから貰った日本刀を抜刀し、手の平にタロットカードを発現した。

 

「なっ!お前、この大会に参加しないんじゃなかったのかよ!」

 

正直悠は先ほどまでは、この陽介は偽物ではないかと疑っていた。よく漫画である本物がこの場に現れて『そいつは偽物だ!』と叫ぶワンシーンがくるのではないかと思っていた。だが、それはないと確信した。目の前に居るのは紛れもない本物の陽介だ。本物だからこその違和感がある。それならば、やることは一つ。まず何が起こっているのかを知るために、一旦向こうの誘いに乗るしかない。

 

「陽介、お前なら分かってるはずだ。この状況を打開する、最善の方法を。だから…恨みっこ無しで全力で行くぞ」

 

この言葉が本当の陽介に聞こえているかは分からないが、とにかくやるしかない。陽介には悪いが、自分の前で菜々子とことりを侮辱したらどうなるかを、これを見て嘲笑っているであろう犯人に思い知ってもらう。すると、

 

 

『あっれれ~~~?妹のためなら結局相棒と殴り合っちゃうんだ~?まあ、どうでもいいけど。それじゃあ、行っくよ~!リングイーン!』

 

 

刹那、悠と陽介の周りに頭上から4つの柱が降ってきて、2人を囲むように地面に突き刺さった。それに驚愕すると、あの柱は赤く光り始めて一つのリングが完成した。これは何なのかと思ったが、そんなものは気にしてる場合じゃない。目の前の陽介は驚きはしているものの、既にタロットカードを自分の真上に発現させて戦闘態勢に入っていた。

 

 

カッ!

「行くぞ!【イザナギ】!!」

カッ!

「行くぜ!【タケハヤスサノオ】!!」

 

 

2人はタロットカードを砕いてペルソナを召喚すると、目の前の強敵(相棒)に己の武器(ペルソナ)をぶつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

another view(絵里)

 

「あら?今は休憩中かいな」

 

「そのようね。まあ、5月なのにこの暑さはキツイわよ」

 

現在、私と希は渡り廊下の方から運動場を見渡していた。何故かというと、どうやらあちらの生徒会の方でトラブルが起こったらしく、交流会の開始時間が遅くなったからだ。このままこの学校の生徒会室で待ってもよかったのに、せっかくだから校内探索でもしたらどうかという理事長と向こうの先生との提案でそうしてもらっている。

 

それよりも……ここの先生って何て言うか……個性的な人多くないかしら?。職員室に入って分かったけど、妙にケバイ先生とか、ファラオの頭巾っぽいのをしてる先生とか、手にパペットを持って話してる先生とか居たけど……鳴上くん、こんな先生たちに勉強を教えてもらったのね。

 

そんな訳で、私と希は今校舎を探索しようとして、渡り廊下に居る。今は休憩中らしく周りを見ると、飲み物を飲んで談笑している生徒の姿が多く見受けられた。

 

「おー、お疲れさん、長瀬」

 

「何だよ、一条かよ」

 

「んなこと言うなよ。折角大会前の親友を労いに来たってんのに」

 

「余計なお世話だっつの」

 

ふと見ると、そこには部活動生らしき2人の男子が話しているのが見えた。片方はユニフォームから察するとバスケ部、もう片方はサッカー部といったところね。2人はあんな会話をしながらも仲よさそうで、心から部活を楽しんでいるように見えた。部活か……

 

「エリチも部活したかったん?」

 

「何よ…希」

 

「あの男の子たちを見てる目が鳴上くんと高坂さんたちを見てる目と同じやったから、そうなんちゃうかなっと思って」

 

「………そんな訳ないじゃない」

 

希にはそう言ったけど、指摘されたことは的を得ていた。実のところ、私はあの2人や運動場で部活に励んでいる生徒を見て、羨ましいと思った。癪だけど、私が鳴上くんや高坂さんたちに抱いてる気持ちはこんな風なのだろう。私もあんなことが無ければ、今頃彼らや鳴上くんたちのようにあんな青春を……って考えるだけ無駄ね。もう今更……

 

「あっ、一条先輩と長瀬先輩、お疲れ様です!」

 

すると、あの2人の元にトロンボーンを手にした背の低い女の子が駆け寄ってきた。察するにあの子はあの2人の後輩なのだろう。違う部活の人たちが集まるだなんて光景は珍しいわね。でも、あんな小さい子がトロンボーンだなんて、失礼だけど意外だわ。

 

「おー、松永か。お前も連休なのに部活か?」

 

「はい!私たち吹奏楽部も大会近いですし。それよりお二人とも、今日は鳴上先輩が帰ってくる日ってご存知でしたか?」

 

え?今あの子、鳴上って言った?もしかしてあの子、鳴上くんの後輩なの?じゃあ、鳴上くんはこっちでは吹奏楽部に入ってたのかしら?

 

「あー!そういやそうだった!!まいったなぁ、夕方まで部活だし……」

 

「何、鳴上だって都会から帰ってきたんだから疲れてるだろ。今日はゆっくり休ましてやろう」

 

「それもそうだな。あいつとは万全の状態でまたバスケしたいし」

 

「私もまた鳴上先輩にトロンボーン聴いてほしいです」

 

え?…あの人たちも鳴上くんの友達!?しかも、バスケって……鳴上くんバスケ部にも入ってたの!?吹奏楽部とバスケ部を兼部してて、あの成績って……鳴上くんって本当に何者なのよ……

 

「ねぇ、少しお話してええか?」

 

私が改めて鳴上くんのスペックの高さに驚愕していると、希があの3人に声をかけている姿が……って希!いつの間に。突然話しかけられたから3人ともびっくりしてるけど。

 

「うおっ!!スッゲェ美人!…って、その制服はうちの学校のじゃないよな」

 

「うん。ウチは鳴上くんと東京から来たもんやからな」

 

「東京からか……って鳴上って言ったか!じゃあアンタ、都会の鳴上の友人なのか?」

 

「こんな綺麗な人がお友達だなんて……鳴上先輩すごいです」

 

「いや~ウチと鳴上くんは友達やないよ」

 

「え?」

 

何故か上手く打ち解けてるわね。私と違って希はコミュニケーション能力が高いから、こう知らない人と話せるんだけど。そこは少しだけ羨ましいところね。って希は何を言って……

 

 

「ウチは、鳴上くんの………彼女や」

 

 

「「「はっ?」」」

 

その希が放った言葉に私も彼らも思考が停止した。今…希はなんて言った?

 

 

「去年はウチの彼氏がお世話になりました」

 

 

「「「…………えええええええええ!!」」」

 

「の……希ぃーーーー!何言ってるのよ~~~~~~!?」

 

まずい!希の言葉を真に受けたのか、あの3人絶対誤解してる!早く誤解を解かないと!!私はこれ以上あの3人に勘違いされないように全速力で駆け出した。

 

 

 

another view(絵里)out

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「風の吹くままよ!!タケハヤスサノオ!」

 

「ふっ!イザナギ!」

 

大剣と手裏剣がぶつかる音が響き渡るリング内。陽介のペルソナ【タケハヤスサノオ】が放った疾風属性の攻撃を悠の【イザナギ】は紙一重に躱した。決闘開始のリングが鳴ってから、悠は陽介の攻撃を躱しては攻撃を加えて、防がれるという繰り返しだった。

 

『あれれ~?シスコン番長どうした~!?そんな調子じゃ妹たちは救えないぞ~~!そのままぶちのめしちゃえ!キャプテン・ルサンチマン!』

 

上のモニターからりせの煽りとヤジが飛び交ってくる。このりせ、実況であるが故か隙を見てはこちらを煽ってくる。差し詰め【煽りせちー】と呼ぶべきか。しかし、悠はそんな煽りを気にせずに目の前の戦況を見定める。今は一進一退の攻防に持ち込んでいるが、明らかにこっちが不利だ。陽介は相変わらず速さで勝負しているので、こっちはついて行くのに精一杯。しかも陽介の覚醒したペルソナ【タケハヤスサノオ】は【イザナギ】にとって属性的に相性が悪い。このままではジリ貧だ。この状況を打開する一手があるとすれば……

 

「おいおい相棒、らしくねぇな。お前はペルソナをチェンジできるはずだろ?こんな貧相なイザナギで何やってるんだよ?」

 

お次は陽介がこちらを煽ってきた。そうだ、悠には他のペルソナ使いには無い【ワイルド】の力、ペルソナを幾つも所持できる力がある。その力を使えば、タケハヤスサノオと相性の良いペルソナを出せるだろう。だが……

 

『無駄無駄~!だって先輩、力封じられてチェンジが出来ないんだもんね~♪キャハハッ』

 

「おっと、そうだったな。チェンジの出来ない悠なんて、雑魚と変わりねえ!」

 

モニターのりせからの解説が入り、陽介は余裕と言った表情を見せた。りせの言う通り、悠は東京で何者かの手によって、八十稲羽で培ってきたものを全部封じられている。以前の力さえあれば、目の前のタケハヤスサノオを簡単に倒すことが出来るだろうが、今のままではどうしようもない。そうこうしているうちに、タケハヤスサノオの突風攻撃がイザナギに炸裂してしまった。

 

「ぐっ!」

 

「っしゃあ!隙あり!!」

 

陽介はここぞとばかりに猛烈な攻撃のラッシュを放った。そして、イザナギは上空に舞い上がり、その瞬間地面に叩きつけられた。そのダメージは悠にもフィードバックし、悠は膝をついてしまった。イザナギは辛うじて立ってはいるが、大剣で身体を支えている状態でどう見ても虫の息だった。悠もフィードバックで来た痛みのせいか、手にしている日本刀で身体を支えている。その様子を見たモニターのりせは邪悪な笑みを浮かべる。

 

『あ~あ、シスコン番長もこれで終わりか~♪なんか悠先輩には幻滅しちゃったな~。じゃあ、さっさと終わらせちゃえ♪キャプテン・ルサンチマン!』

 

「こいつで終わりだ!くたばれ!相棒!!」

 

これでトドメとばかりに、タケハヤスサノオは最大の攻撃をイザナギに繰り出した。攻撃の規模は台風並みなので、食らえば一溜りもないだろう。これで終わる。誰もがそう思った。悠は膝をついたまま動けずその場で………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ニヤリと笑って、何かを呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゴオオオオオオオツ

 

タケハヤスサノオの攻撃が決まって辺りに土煙が発生した瞬間、陽介は勝利を確信した。手負いの悠があの大技を食らって立てる訳がない。やがて煙が晴れて陽介の目に入ってきたのは

 

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()姿()だった。

 

 

 

 

 

「なっ!!」

 

陽介えぇぇぇ!

 

陽介は驚いて防御しようとするが、それは遅かった。(イザナギ)は振りかぶった拳を思いっきり陽介(タケハヤスサノオ)の顔面に叩きこんだ。それはまるで、悠と陽介の思い出深いあの時を再現するかのように……

 

「ぐはっ!」

 

陽介は悠のパンチの勢いに耐え切れずに倒れこむ。そこからモニターのりせがテンカウントと始めたが、そこから陽介が起き上がることはなかった。

 

 

『K.O!!まさかまさかの大逆転!!この勝負、悠先輩の勝利ーー!さっすが悠先輩!惚れ直したぞ~♥』

 

りせのコールで周りの観客が悠の勝利を祝うかのように大歓声を上げた。しかし、悠はそれに喜ぶことなく黙って膝をついたままであった。それは陽介から受けた痛みからではなく、無力感からだ。勝利したのは良いが、倒した相手が大事な相棒なので素直に喜べない。

 

 

『しかし、どういうことだ~?花村先輩のあの攻撃を受けて立ち上がれるはずないのに~?早速今のシーンをリプレイしてますが、土煙が邪魔で確認できません!』

 

先ほど、悠が陽介の特大の攻撃をどう防いだのかが気になるのか、モニターのりせは先ほどのシーンを画面にリプレイさせた。どこから撮ったのか気にはなるが、今更だろう。

 

画面には土煙で悠が何をやったのかは分からないが、種明かしをすると答えは単純だ。悠はあのタケハヤスサノオの大技を食らう瞬間に()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。リャナンシーは疾風属性に耐性があるので、タケハヤスサノオの攻撃を食らっても耐えられる。そして、土煙が発生した瞬間にリャナンシーの回復魔法で痛みを緩和して、ペルソナをイザナギに戻しと同時に陽介も元へ走っていった。そうすることで、先ほどのシーンに続いたわけである。

 

悠は最初からこの時を狙っていたのだ。わざとチェンジが出来ない芝居を装い、隙を作って強烈な一撃を加える。チェンジが出来るなら他にも方法があっただろうが、この方法を取ったのは、かつて陽介が自分に言った言葉を思い出したのがキッカケだった。

 

 

 

 

 

 

ーお前がもし道を間違った時には、今度は俺がぶん殴ってても止めてやるよ。例えどんなに地の果ての、真っ暗な場所までだってな。それが相棒ってもんだろ?

 

 

 

 

 

 

あの言葉を言われた時、表情に出してなかったが自分にこんなことを言ってくれる親友が出来たものだと心の底から嬉しかった。だが、同時に陽介にも同じことが起こったのなら自分もどこに行こうが、ぶん殴ってても止めようと心に誓ったものだ。無謀で自己満足であったとしても、今がその時だとこの作戦を実行した。結果として上手く行ったが、これ以外にも策はあっただろうと今更ながら思う。どこまで行っても、自分たちは殴り合う方が合っているかもしれないと悠は心の中でそう思った。

 

しかし、そんな悠の心境を汚すかのように、悪意に満ちた陽気な声がモニターから聞こえてきた。

 

 

『ぶっはは~!センセイお見事クマ~!決着の付け方はこちらが求めてないものクマだったけどね~~』

 

 

すると、また頭上のモニターにクマ?が映りだした。クマ?の言葉にカチンと来たが、悠は冷静を保ったまま、厳しい口調でクマ?に問いかけた。

 

「おい……こんなことをまだ続ける気か?」

 

『ハア~?そんなの当たり前でしょうが!大体何のためにセンセイたちを……って何!?』

 

当然クマ?は何か焦った様子で、モニターから姿を消した。かなり焦っている様子だったので、何かあったのだろう。少し時間が経つと、再びクマ?の姿がモニターに映りだした。

 

『チッ……あの小娘どもが……まあいい。それよりもセンセイ?言っておくと、ナナちゃんとことりちゃんのことが知りたいなら、ここまで来てみんしゃい』

 

「何?どういうことだ?」

 

『プププ、急いだほうが良いと思うクマよ?それじゃっ!』

 

悠が待てと言うのを待たずに、意味深なことを言い残してクマ?は画面から消えた。あの言い方からして、やはり菜々子やことりはこちらに来ているのだろう。考えたくもないが、そうとしか捉えられない。それに、何やらあちらでトラブルが起きたようだが、何があったのだろう?

 

辺りを見渡して見ると、さっきまで歓声を上げていた学生たちは姿を消していた。しかし、あれは学生ではない。悠は対戦中にチラッと学生たちを観察したが、あれは人間ではなく人間の形をしたものに見えた。おそらくあれらはシャドウに違いない。それにさっきまで自分たちを囲っていたリングも跡形もなく消えていた。少し疲れているのか、上空に何か光るものが校舎の上空に消えていったのは気のせいだろうか?気にはなるが、それより目の前の相棒の状態を確認することを優先した。

 

 

「陽介、大丈夫か?」

 

倒れている陽介に近寄り、肩を貸して起き上がらせる。殴った頬が腫れていて少々痛そうだが、その以外には大したケガはない。悠は良かったと心の中で安堵した。しかし、当の本人は怒り心頭といった様子であった。

 

「痛って……って悠!お前もうちょっと加減しろよ!久々にお前のパンチ食らったけど、死にそうなくらい重かったぞ!殺す気か!」

 

「それはお互い様だろ……加減なんてする余裕なんてなかったし」

 

作戦が上手く行ったとは言え、陽介もこちらに容赦なしに攻撃していたので手を抜いていたらやられていただろう。

 

「つーか!つーかですよ!ナースナースってうるせっつの!俺の頭の中、ナースばっかじゃねぇっつの!しまいには、ことりちゃんにナースの恰好をさせて迫る気かって…俺はそんな変態じゃありませんっ!!」

 

「俺がそんなこと言う訳ないだろ……」

 

そんなこと言った覚えもないし言うはずがない。それより、ことりのナース姿について詳しく……

 

 

「はっ!?メッチャ言ってただろ!いきなりそっちの好みにダメ出しとか、どんだけドSだよ!東京でそんな属性を身に着けてしまったのか!?というか………………ナース好きで何か悪いんですか!?

 

 

陽介の悲痛の叫びは後方の校舎に大きく木霊した。何というか、これ以上にない思い切った開き直りだった。これがもし誰かに見られていたら黒歴史ものだろう。しかし、

 

「ちょっ、ちょっと待て!一旦落ち着こう!」

 

何か陽介の叫びを聞いて何か引っかかったので、興奮する陽介を落ち着けさせて、決闘前にお互い何を言われたのかを確認してみた。結果、互いの話は全く食い違っていた。どうやら、陽介は悠にナース好きの性癖について散々罵られていたらしい。陽介はテンションに任せて具体的な例を出そうとしていたが、悠は強い口調で制止した。その方がお互いのためだし、先ほどことりを例に出されたので、十分傷ついた。しかし、これで一つ気づいたことがある。

 

「陽介、菜々子とことりがこっちに来ているのは本当か?」

 

「な、何!?嘘だろ!?」

 

予想通り、陽介は先ほどの無関心な態度が嘘のように絶句していた。これは本気で菜々子とことりの身を案じている様子だった。とりあえず、これではっきりした。陽介は自分の意志で喋っていたのではない。方法は分からないが、第三者が陽介に喋らせていたのだ。そう言えば、先ほどあのクマ?は知りたければここに来いと言っていた。おそらくその第三者があのクマ?だろう。もしかしたら、あの煽りせちーもクマ?に喋らされているだけかもしれない。やはりあのクマ?を潰すしかないのかと心の中で思ったその時、

 

 

「鳴上せんぱ~~い!!」

 

 

ふと聞き覚えのある声が聞こえてきたので、校舎の方から誰かがこちらに向かって走ってくるのが見えた。

 

 

「「高坂っ!(穂乃果ちゃんっ!)」」

 

 

こちらに走って来たのは誰であろう、八十神高校の制服を着た穂乃果だった。一瞬偽物かと思って日本刀を構えようとしたが、穂乃果が2人の元に駆け寄る方が早く、穂乃果は悠に抱き着いて泣きべそをかいた。

 

「うわ~ん!!鳴上せんぱーい!怖かったよーーー!」

 

突然の穂乃果の登場に2人は困惑した。何故ここに穂乃果が居るのだろうか?まさか、

 

「お、おい悠、こいつは……」

 

「いや、この高坂は本物だ」

 

陽介はこの穂乃果は偽者ではないかと言おうとしたが、悠ははっきりとそう断言した。この悠を抱きしめる腕の強さや温かさ、そしてこの裏表を感じさせない純粋な感情表現は間違いなく本物の穂乃果だった。

 

「高坂、何でここに。ことりと一緒にジュネスで待ってたんじゃないのか?」

 

悠の言う通り、穂乃果とことりはペルソナを持ってないので、ジュネスでの待機していたはずだ。すると、穂乃果は顔を上げて事情を説明しようとするが、

 

「え、え、あの、それは…その!」

 

何か怖い目に遭ったのか、少しパニックになっていた。

 

「落ち着け。一旦深呼吸だ」

 

「う、うん。スゥ~……ハァ~……って違うの!穂乃果たち()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

 

「「え?」」

 

穂乃果はみんながテレビに入ったのを確認した後、やることもなかった2人は穂乃果の発案で興味本位でテレビを近づいて行ったらしい。すると、背後から声を掛けられたので振り返ってみた瞬間に、背中を押されてテレビの中に入ってしまったというのだ。そして、気づいたら見知らぬ学校の放送室らしき部屋にことりと一緒にいたらしい。その時には既に、服装も八十神高校のものに変わっていたとか。

 

「そこに……穂乃果たちの他に、あのマヨナカテレビに映ってたクマさんと、久慈川りせが居たの……クマさんが何かテレビに向かって話してる最中に、久慈川さんが穂乃果たちを逃がそうとしてくれたんだけど…途中でクマさんに気づかれて………穂乃果は何とか逃げ切れたけど………ことりちゃんはクマさんに捕まっちゃって……穂乃果どうしたら分からなくて……」

 

その後は必死に校舎を走り回って、誰かを探していた最中に外から陽介の大声に気づいて、正門付近に居た悠と陽介を発見したということらしい。

 

穂乃果の報告を聞いて、悠と陽介は顔を見合わせた。穂乃果とことりを落としたのは何者か、また何故2人を落としたのかは分からない。だが、ペルソナを持たない穂乃果とことりをテレビに落とせたということは、その人物はペルソナ能力を持っているということは確実だろう。

 

「厄介なことになってきたな。これって足立や生田目のような俺たちの他にペルソナ能力を持ってるやつが関わってるってことだろ?」

 

「ああ……でも、りせと高坂のお陰で分かったことがある」

 

さっきクマ?の元でトラブルが起きた様子だったが、その時りせが穂乃果たちを逃がそうとしたときのことだったのだろう。りせの機転と穂乃果の必死の逃走のお陰でクマ?の居場所が判明した。穂乃果の証言からすると、クマ?居場所は放送室だ。居場所が判明したので、後はそこに乗り込むだけだと思ったその時、

 

 

「あんたたち!何とかグランプリの参加者やね?」

 

 

今度は聞き覚えのない誰かの声が聞こえてきた。どこからかと辺りを見渡すと、校舎の方からこちらに何者かが向かってきているのが見えた。

 

「「誰だ!」」

 

悠と陽介は少女の登場に驚きながらも穂乃果を守るようにして、ペルソナを召喚する態勢に入った。

 

 

「な、なんやアンタたち。何か分からんけど、女の子に暴力を振るおうとするとか、男として恥ずかしくないん?」

 

 

現れたのは水色の長い髪のポニーテールで頭にカチューシャのような飾りを着けている少女だった。驚いたことに、その少女は何と八十神高校の制服を身に着けている。少女は悠と陽介の気迫に多少たじろいだものの、言葉には気強さが残っていた。この少女はどうやらシャドウではなく本物の人間、そしてペルソナ使いとしての雰囲気がなかったので、悠と陽介は臨戦態勢を解いた。

 

「すまない、驚かせるつもりはなかったんだ」

 

「本当にすんません。シャドウか犯人かと思ったんで」

 

悠と陽介は驚かしてしまうことに対して少女に頭を下げて謝罪した。少女は2人の謝罪を気にすることなく、逆に諭すようにこう言った。

 

「すまないちゃうよ。ウチやから良かったけど、他の人にやったらどないしとったん?というか、シャドウか犯人って何言うてはるの?」

 

悠と陽介は少女の言葉にウっとなった。状況が状況でもあるが、彼女の言う通りだったので反論できない。見た目に反して喋り方が関西弁、というか京訛りだが、悠はまるで希に怒られているような気分になった。

 

「それよりアンタたち、生徒会の許可得んと、こんなことしたらあかんやろ」

 

「「「えっ?生徒会?」」」

 

 

「さあ、さっさと観念して他の仲間集めて解散しいや!生徒会はこんなグランプリ認めへんよ!今すぐこのグランプリは中止や!」

 

 

少女は悠たちに向かって力強くそう言い放った。思わずひれ伏したくなるような覇気を感じたが、それどころではない。生徒会かどうとかは知らないが、この少女は悠たちがP-1グランプリを引き起こした張本人と思い込んでいるようだ。早くその誤解を解かなくては。

 

「ま、待ってくれ!話を聞いてくれ!俺たちは」

 

 

 

 

ドオオオンッ!

 

 

 

悠が少女に事情を説明しようとしたところで、どこからか爆発音が聞こえてきた。突然のことに一同は慌てたが、少女は爆発音がしたであろう方向に目を向けた。

 

「あそこは体育館かいな!次から次へと……アンタ達はそこで待っとき!」

 

少女は恨めしそうにそう呟くと、悠たちにそう言い残して体育館の方へ駆けだした。

 

「ま、待って!」

 

「っち、しゃあねえ!俺たちも行くぜ、相棒!」

 

「ああ!」

 

おそらく体育館では誰かが戦闘をしているだろう。あのクマ?の差し金かは知らないが、丸腰でその場に飛び込むには危険すぎる。悠と陽介、そして穂乃果は少女を止めようと体育館に向かって走り出した。が、

 

 

「どへっ!」

 

 

突如、さっきとは別の音…人が何かに思いっきりぶつかったような大きな音と陽介の情けない声がした。悠と穂乃果が振り向くと、そこには見えない壁ににぶつかったように倒れこんでいる陽介の姿があった。

 

「な…なんじゃこりゃ……………」

 

「よ、陽介さん!?どうしたの!」

 

悠はその様子を見て、あのクマ?の言っていたことを思い出した。『この大会は勝者以外は進めない』。どうやらこのエリアには勝者しか進めない見えない壁があるらしく、負けた方はここからは出られない仕掛けになっているようだ。

 

「お、俺はここまでのようだ……相棒、穂乃果ちゃんを連れてあの子を追ってくれ……無茶はするなよ………」

 

陽介はそれを思い出したのか、陽介は倒れこみながらも悠と穂乃果にサムズアップしてそう告げた。まるでよくある映画のワンシーンのようでカッコいいのだが、鼻血を出している状態なので全てが台無しだった。

 

「ああ、お前の犠牲は無駄にはしない。行くぞ!高坂」

 

「うん………陽介さん、さようなら!!」

 

陽介の言葉に頷き、悠と穂乃果はさっきの少女を追って体育館へと向かった。陽介の弔い合戦のために……

 

 

「って俺死んでないからーーー!!」

 

背後に相棒の悲痛の叫びが聞こえた気がしたが、そっとしておこう。

 

 

ーto be continuded

 




Next Chapter

「急がないと!」

「アンタ何のつもりなん!?」

『ムホホ……センセイったら、悔しそうクマねぇ~』

『嘘つきヤローに興味はないクマ!』

「いつもいつも貴方は………」


「必ず報いは受けてもらう。覚悟しておけ」


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