PERSONA4 THE LOVELIVE 〜番長と歌の女神達〜   作:ぺるクマ!

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閲覧ありがとうございます。ぺるクマ!です。

久しぶりに逆転裁判シリーズを最初からやり直したのですが………アニメで活躍中のゴドー検事が超カッコイイと思いました。

それはともかく、去年の12月から開始したこの【μ`SIC START FOR THE TRUTH】編も今話で最終回です。次回から八十稲羽での夏休み編がスタートしますので、皆さん楽しみにしていてください。あとがきに予告編を載せてます。

そして、お気に入り登録して下さった方、感想を書いてくれた方、最高評価・高評価・評価をつけて下さった方、誤字脱字報告をして下さった方々、本当にありがとうございます!皆さんの応援が自分の励みになっています。

皆さんが楽しめる作品になるように精進していくつもりなので、これからも応援よろしくお願いします。

それでは【μ`SIC START FOR THE TRUTH】の最終話をどうぞ!


#61「This is our miracle.」

――――あの戦いから数日が過ぎた。大事なものを取り返せたが、一方で大事なことを捨ててしまった。でも、それでも自分たちに後悔はない。何故なら………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~学園祭から数日後~

 

 

 

『悠、今回は災難だったよな』

 

「はは……いつものことだ」

 

『いや、極限状態を体験して数日寝こんでたって……普通ありえねえだろ。そんなこと言えるお前はやっぱり別格だよ』

 

「それほどでも」

 

 

 

 学園祭の事件から数日後、昼頃の屋上で寝そべりながら悠は稲羽の陽介と電話していた。それは今回の事件の顛末を伝えるためであるし、あることにお礼を言うためでもあった。

 

 本来ならすぐにでも無事を報告するために連絡するはずだったのだが、度重なる疲労とダメージ、そして一時極限状態に陥ったことによる苦痛で、悠はまる数日眠っていたのだ。目が覚めた時、起きた場所が南家のベッドだったり、その前にいたのが腕を組んでこちらを見降ろしている雛乃だったりして仰天したものだが、そんなことより……

 

 

「陽介、今回はありがとうな。俺たちのために」

 

『それは言いっこなしだろ。悠はともかく穂乃果ちゃんたちも俺たちの仲間なんだから助けるのは当り前だって。それに、礼ならりせに言っとけよ。今回一番頑張ったのはあいつなんだから』

 

「そうだな」

 

 

 この2人は一体何のことを言ってるのか。それは先日、悠が絵里から今回の事件の裏側を聞いたことに起因する。それは穂乃果たちが悠救出のためにテレビの世界に突入する前のこと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~テレビの世界に突入前~

 

 

 穂乃果とにこの喧嘩で部室が険悪な雰囲気に包まれていた中、だれかの携帯の着信音が名響いた。その着信音は花陽の携帯のものだった。

 

「も、もしもし……」

 

 

『花陽ちゃん!悠センパイが誘拐されたって、やっぱり本当だったの!?』

 

 

 恐る恐る出てみると、電話の相手は特捜隊&μ‘sの仲間でアイドル現役復帰を目指して準備中のりせだった。

 

「えっ………それは……」

 

『やっぱり…あのマヨナカテレビは本当だったんだね』

 

 予想外の相手からの電話に花陽は思わず狼狽してしまったが、りせは花陽の声色から全てを察したのか淡々とそう呟いていた。

 

「ま、マヨナカテレビって……りせちゃん、あのマヨナカテレビを見たの?」

 

『うん…………私……昨日夜遅くまで事務所の練習室で自主練してたの。それで休憩がてらにテレビを見ようって思ってみたら、あのマヨナカテレビが映って……まさかとは思ってたけど映るって思ってなかったし、それに……映ってたのが……死にかけてた悠さんだったなんて……』

 

「りせ……ちゃん………」

 

『信じられなかったけど、あの後何回も悠センパイに電話しても出なかったから…………どうしようって……』

 

「……………」

 

 どうやらりせもあのマヨナカテレビをリアルタイムで見ていたらしい。自分たちと同じく悠に好意を寄せている彼女にとっても、どうしていいのか分からなくなる事態なのだろう。しかし、

 

『だから……行って、悠さんを助けに』

 

「えっ?それは……どういう」

 

次の瞬間りせは皆の予想を裏切るとんでもないことを口にした。

 

 

 

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()から、穂乃果ちゃんたちは悠センパイを助けに行って!』

 

 

 

 

「えっ?えっ?」

 

 

 

「「「「「「えええええええええええええええっ!!」」」」」」

 

 

 

 

 りせの発案に皆は素っ頓狂を上げた。一体どういうことなのかと聞くと、りせ淡々と事情を説明した。

 

 

 

 りせは一旦落ち着いて冷静になった後に思考した。あの犯行予告を思い返すと、あの道化師が言っていた"彼とゆかりのある9人"というのは今悠と共に事件を追っている穂乃果たちのことだろう。それにこのタイミングで犯行を行ったということは、間違いなくあの道化師の狙いはμ‘sの学園祭ライブの妨害。何でこんなことをするのか分からないが、大事なライブを妨害されるのは同じアイドルとして許せない。しかし、そうは言っても件の彼女たちは今悠を取るかライブを取るかで揺れ動いていることだろう。

 そのことを想像したりせは彼女たちのために何とかしてあげたいという想いに駆られた。GWで共闘して親睦を深めた自分たちは仲間だ。悠があの時自分を助けてくれたように、今度は自分が悠とあの彼女たちを助けてあげたい。そう思った瞬間、りせの頭にある案が閃いた。

 

 

 

――――自分が助けにいけないのならば……彼女たちが悠を助けてくれると信じて、代わりに時間稼ぎとして自分たちがライブをすればいいのではないか。

 

 

 

 この作戦を思いついたりせは早速稲羽の陽介たち特捜隊とシャドウワーカーの桐条美鶴にその旨を連絡した。最初はとんでもない作戦に仰天したものの、陽介たちは悠と穂乃果たちを助けるためならばと即答でOK。美鶴はGWでは君たちには借りがあるということで快くりせの要求を呑んでくれた。そして、すぐに美鶴は陽介たち特捜隊を自前のヘリコプターで稲羽まで迎えに行き、陽介たちを桐条所有の練習室で楽器の猛特訓させているだという。安心して穂乃果たちを悠の救出に向かわせて、ライブを行わせるために。

 

 

 

 

 

 

「これ……本当………なの?」

 

「あのりせちーが…にこたちのために…………」

 

 りせから聞かされたとんでもない作戦に皆は唖然としてしまった。まさかあの自分たちのためにここまで用意周到に準備していたとは思わなかった。携帯の向こうからギターやドラム、トランペットの音が聞こえてくるのはそのせいかと今更ながら気づいた。しかし、

 

「でも、りせちゃん大丈夫なの?あなた……」

 

『大丈夫大丈夫。井上さんには高熱で休むって言ってるから。それに、私はボーカルじゃなくてベースをやるつもりだよ。ボーカルはラビリスに任せるから。これならバレないでしょ?』

 

「えっ?」

 

『実はね、私も最近ベース弾けるようになったんだ。悠センパイが去年のイベントの時に弾いてたっていうのもあるけど、最近ガールズバンドって流行ってるからね。芸能界でも【パステルパレット】っていう子たちが出てきて勢いに乗ってきてるから負けてらんないし』

 

「いや、それはともかくステージに上がったら一発でバレるでしょ!?あなた国民的アイドルなのよ!!」

 

 そうだ、一年休業していたとはいえ【久慈川りせ】は日本を代表する国民的アイドル。そんな彼女がいきなり音ノ木坂学院のライブに出てきたとなれば騒ぎになるだろう。否、去年稲羽で行われたジュネスライブで起こったあのトラブルのようなことが発生するかもしれない。しかし、当の本人は想定内だったのかさらっと対策を答えた。

 

『もう、絵里ちゃんってば心配しすぎだよ。名前を聞かれてもなるか……ウウンっ!……【澤村遥】って偽名で押し通すし、ちゃんとバレないように変装するってば。最近密かに学んでたんだよね。去年のジュネスイベントのこともあったし、前に悠センパイとデートしたときに花陽ちゃんにバレちゃったからその反省として』

 

「……ハア」

 

 りせの思わぬ発言に一同は眉をひそめた。まさか電話の向こうにいる国民的アイドルにこうもモヤモヤとした感情を抱くことになるとは。それに色々ツッコミたいところがあるが、自分たちが知らないところで悠とデートしていたとは……後でじっくり尋問するべきかと皆は思った。しかし、

 

 

『………本当は私だって、穂乃果ちゃんと花村先輩たちで悠センパイを助けに行きたいよ』

 

「あっ………」

 

『でも、私が助けに行ったら、あの佐々木ってやつが悠センパイに何をしでかすか分かんない………もしかしたら、悠センパイが死ぬかもしれないから………私は助けに行きたくてもいけない』

 

「りせちゃん………」

 

 

 声色からりせの複雑に絡み合った感情が伝わってくる。彼女だって本当は穂乃果たちのように悠を助けに行きたいが、事情が事情で助けに行けない。それは悠を心から敬愛する彼女にとってどれだけ苦痛だっただろうか。

 

 

『だから、そっちは任せたよ。ちゃんと悠センパイを助けてね』

 

 

 この言葉からりせから自分たちに対する期待を感じた。これは先ほど険悪な雰囲気だった穂乃果たちに決断を下させるのに十分だった。

 

 

「は、はいっ!!」

 

「任せて下さい!」

 

「必ず……必ず悠さんを助けだしますから!」

 

 

 

 こうして、学園祭ライブをりせたちに任せて、穂乃果たちは悠救出のためにテレビの世界に飛び込んでいった訳である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…まさか、陽介たちが代わりにライブしてたなんて思ってなかったな」

 

『ああ……実際大変だったんだぞ。夜中にりせからの電話で叩き起こされて、事情を知ったと思いきやそのままヘリコプターに乗せられて、豪華な練習室で必死にギターの練習してな。でも、時間ギリギリまで練習して間に合いそうになかったからって、ヘリコプターからお前の学校の屋上にリぺリング降下したんだぞ………楽器背負って』

 

「……………………」

 

 話に聞いてはいたが、まさか本当にやっていたとは。これは今回の会場が屋上だから出来たことなので、今更ながらにこのくじ運の悪さに感謝だ。まあ本人が聞いたら怒って邪拳が飛びそうでて、また電柱にぶつけられそうだが。

 

『いきなりあり得ねえ登場したから結構騒がれたけどよ、りせのアドリブとその場にいたエリPって人の無茶苦茶な司会のお陰で何とかなったわ。てか、今思えばあのエリPさんって、何かあのマーガレットさんに似てたような………』

 

「それはともかく、りせは正体バレなかったのか?」

 

『ああ……確かに声で何人かにバレそうになったな。そこは俺たちで適当に誤魔化したど、ヒヤヒヤしたぜ……まあ俺たちでも別人って見間違えるくらい変装してたし、偽名使ってたのが大きかったんだろうけど』

 

「なるほど」

 

『でも、あいつ何故か【鳴上アリア】って名乗ってたけど………アレ大丈夫だったのか?』

 

「……そっとしておこう………」

 

 それを聞いて、悠はりせのことで尋ねると何故かことりたちが不機嫌になる理由を察してしまった。しかし、触れぬ神に祟りなし。追及すると色んな意味で危ない気がする。

 また、作戦のためとはいえ、ヘリコプターからリぺリング降下したり勝手に予定にもないライブを始めたりしてしまったため、事が済んだ後に、危ないやら怪我したらどうするのか、来るなら来るで事前にキチンと連絡しろなどと理事長の雛乃からお叱りを受けて、あまりの気迫に陽介たちのみならず一緒に居合わせた美鶴までも正座してしまったらしい。そして、雛乃から何らかの罰が下されたようだが、それは別の話である。

 

 

 だが、結論から言うと、このりせが考案した作戦は失敗に終わった。

 

 

 りせたちの代理ライブは一応成功したのだが、肝心の穂乃果たちはテレビの世界で数々の激闘を繰り広げて持てる力を使い果たしてしまったため、現実に戻ってきた途端、力尽きたように部室で眠ってしまったのだ。そのためμ‘sのライブを行うことは出来ず、そのまま学園祭は終了してしまった。それもそのはず。黒幕の佐々木竜次のみならず、穂乃果とことりの影までも相手したのだから、今まで以上に疲労が溜まったせいか、いつ倒れてもおかしくなかったのだ。

 

 

 この件について、悠は陽介たちだけでなく改めて穂乃果たちにお礼と共に謝罪の言葉を述べた。いくら自分を助けるためとはいえ、ラブライブ出場がかかっていた大事な学園祭のライブを捨てさせてしまったのだ。

 しかし、穂乃果たちはそんなことは気にしてないし、後悔などしていなかった。例えラブライブ出場がかかった大事なライブを捨てたとしてもと、一番大事な"仲間"を取り返すことができたのだから。それを聞いた悠は思わず再び頭を下げてありがとうと何度も言った。

 

 

 

 

 

『そう言えば、お前を誘拐したっていうその佐々木ってやつはどうなったんだよ。結局桐条さんのところに引き渡したんだろ?』

 

「ああ…実は………」

 

 

 陽介が今回の事件の黒幕である佐々木竜次のことを聞いてきたので、悠はその話について報告することにした。

 

 

 あの佐々木とのやり取りを終えた後、いつの間にか目の前に現れた皆月が佐々木を気絶させて、そのまま連行して現実へと連れて帰ってしまった。いずれ万全な状態で万全なおまえに仕返しをしてやるから覚悟しておけと悠に言い残して。その無粋な態度に穂乃果たちは憤慨したが、悠は思わずフッと笑みを浮かべていた。

 

 そして、佐々木の身柄はシャドウワーカーの元に引き渡され、部隊長の美鶴を主導に取り調べが行われたらしい。だが、直接取調べをした美鶴から話を聞いたところ、佐々木は奇妙なことを言いだしたらしい。その供述は以下の通り。

 

 

――――自分がμ‘sに恨みを持っていたのは確かで彼女たちを陥れようと画策したのは事実だが、"テレビの世界"や"サーカス"、"シャドウ"など身に覚えはない。それにあの学園祭の時に何をしていたのかと言われても、まるで頭に靄がかかったように思い出せない。

 

 

 つまり、佐々木はあの事件発生時前後における記憶がなくなっているということだった。

 

 

 

 

 

「何だよそれ……記憶がないって、何か信用できねえな。とぼけてるようにしか思えねえよ」

 

「ああ…………でも、俺もあいつのことに関しては少し引っかかってることがあるんだ」

 

 

 悠が引っかかってるのはあの悠を襲った交通事故を本当にあの佐々木が仕組んだものだったのかということだ。あの男の人だけで今回の計画を実行出来たのかというのもあるが、自分の記憶が正しければ、悠を襲ったあの赤コートの人物の声が佐々木のものとは違う気がするのだ。

 まあ、まだ取り調べは始まったばかりなので真相はこれから明らかになるだろう。今は美鶴からの連絡を待つしかない。今自分にできることは待つことだけだ。

 

 

 

 

 それと報告することがもう一つある。

 

 

「悠くん、これからは()()()()()()()()()

 

「えっ?……住む?……えっ?」

 

 

 南家で目が覚めて腕組する雛乃に慄いて正座してしまった時、悠は開口一番に雛乃にそう告げられた。

 

「今まで入院しようが部室で寝落ちしてようが悠くんのためだと思って、一人暮らしを黙認してきたけど、もう我慢の限界です。兄さんたちもまた海外出張が決まったって言ってたし、そんな状況で悠くんを一人にさせるのは見過ごせません!だから、今度からウチに住みなさい」

 

「えっ?」

 

 後から聞いたところ、どうやら本当に悠の両親はまた海外出張が決まったらしい。そこで、悠の両親の間でまた稲羽の堂島に悠を預けようかという話があったらしいが、それに雛乃が待ったをかけて、今度は自分の家で預かると言い出したのだとか。しかし、この提案に悠の父は何故かやめておけと渋ったらしいが、それでも引き下がらない雛乃は懸命な説得とありとあらゆる手を使って最終的にOKということになったらしい。

 

 

 

『それでお前、今度から雛乃さんのところに世話になることになってことか?』

 

「ああ……別に一人暮らしは苦痛じゃないし、逆に叔母さんに迷惑かけるんじゃないかって言ったんだけどな………というか、もう引っ越しが済んだ後で俺の部屋が出来てた」

 

『……………………』

 

 しかし、今回の一件は雛乃が悠を自宅へと同居させることを決意させるのに十分過ぎた案件だったようだ。今からそちらに引っ越しというのも迷惑なのではないかと思ったが、雛乃自身はそう思っていないらしい。むしろ、やっと悠と本格的に共同生活ができると喜んでいた。もちろんことりも同意見で、そんな2人の反応を見ると、何故かこそばゆく感じて断る方が悪い様に思ってしまった。

 

『でも、いいじゃねえか。雛乃さんもお前のことが心配で言ってくれたんだろ?堂島さんといい雛乃さんといい、お前は恵まれてるよ』

 

「………そうだな」

 

 陽介の言う通り、雛乃の提案にどこか嬉しいと思っている自分がいる。

 正直これから本格的に受験モードに入っていく生活を一人でこなすのは正直厳しいと思っていた。その度にことりと雛乃に鳴上家に来てもらうのは悪いと思っていたし、それに……仕事に追われて両親が家にいることが少なかった環境で育った悠にとって、帰ったら温かく迎えてくれる家族がいる家庭というものを心から望んでいたのだから。

 

『てか、何でお前の親父さんは雛乃さんにお前を預けるのを渋ったんだ?今更だけど、去年お前を預けるのだって雛乃さんのところでも良かったはずだろ?』

 

「なんか……俺を叔母さんの元に置いておくと危ないからって父さんが言ってたけど………」

 

『はあ?…』

 

 後にネコさんから聞くことになるのだが、悠の父が雛乃の元に悠を預けることを避けたのはどうやらネコさんたちの学生時代に起こったことが原因らしい。しかし、いったい何があったのかを聞くと、父がどこか遠い目をし始めたので、そっとしておいた。

 

 

 

 

 

『まっ、学園祭のことは残念だったけど……お前が無事でよかったぜ。あとで、みんなに電話しとけよ。里中や完二だって、お前のこと心配してたんだからな』

 

「そうする」

 

『ていうか、今度こっちに帰ってくんだろ?もうすぐ夏休みだし』

 

 しばらく重たい話が続いたのを気遣ったのか、陽介が流れるように話題を変えてくれた。そう言えば、そろそろ夏休みだ。GWで約束した通り、今年も稲羽で夏休みを過ごす予定だったのを思い出す。

 

「ああ……もちろん穂乃果たちも一緒だ。今度は陽介や里中、菜々子たちと一緒に海に行きたいってさ」

 

『よっしゃあっ!今度の夏は刺激的な夏になりそうだな、相棒』

 

「確かに」

 

 陽介の言葉に悠は躊躇なく同意した。去年は特捜隊メンバーと共に楽しく過ごした夏だったが、今年はそれに加えて直斗に穂乃果たちμ‘s、そして一緒に過ごしたいと美鶴にお願いしているラビリスや風花もいる。これは以前よりも華やかな夏になるに違いない。夏休みはもう少し先だが、悠の心は陽介よ同じく色んな意味でワクワクしていた。

 

『やっぱ夏と言えば、海と祭りと花火は欠かせないよな。こっちで里中やクマ公たちと一緒に計画練ってるから、楽しみにしてくれよな、相棒』

 

「ああ、任せたぞ、相棒」

 

『おうっ!じゃあ、()()()()()()()。それじゃ』

 

 陽介との通話を切ったあと、悠はぼうっと青い空を眺めていた。

 一先ず、学園祭を舞台に佐々木竜次を中心に起こった事件は幕を閉じた。まだ多くの謎が残ったままだが、今は考えるのはよそう。久しぶりに相棒と会話したせいか、どこか心地良くなった悠はふと瞼を閉じて眠ってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああっ!!悠さん、こんなところにいたっ!!」

 

 

 

 屋上のドアがバンっと開いた音がしたので、悠の意識が突然覚醒した。見てみると、ドアのところにいたのは穂乃果だった。何故か学園祭ライブで着る予定だった衣装を着ているし、心なしかどこか膨れっ面をしてる。

 

「あれ?穂乃果か。どうしたんだ?」

 

「どうしたんだ………じゃないよっ!もうすぐ始まるよっ!!」

 

「えっ……あっ」

 

 すっかり忘れていた。そう言えば今日は午後からアレがあるのだった。陽介との通話で忘れていた。携帯を確認すると、知らぬ間にμ‘sメンバー全員からの着信があった。特に希からの着信が多い。まずい、この調子だと希はかなり怒っていることだろうから、またネッチョリを食らうことになる。悠は思わず空を仰いでしまった。

 

「まずい……希に叱られる………何か機嫌を取る方法を考えないと……」

 

「むう………もうっ!早く行くよっ!!早くしないと海未ちゃんと希ちゃんに怒られちゃうから!」

 

「お、おい…」

 

 穂乃果は更に膨れっ面になってそう言うと、悠の手を引っ張って屋上から連れだした。穂乃果が強引なのはいつものことだが、どうも様子が以前と違って見える。心なしか、悠が希のことを口にした途端に不機嫌になったように感じたのだが、気のせいだろうかと悠は引っ張られながらそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 屋上を出て階段を駆け下りて中庭へ。穂乃果に引っ張られてどんどん校内を駆け抜けていく。急がないと遅れてしまう。すると、ふと穂乃果が足を止めた。どうしたのだろうかと思っていると、穂乃果は悠の方を振り返ってこんなことを言ってきた。

 

 

「ありがとう、悠さん。穂乃果たちと出会ってくれて」

 

 

 思いがけない言葉を掛けられて、悠は呆気に取られてしまった。ポカンとする悠を見て、穂乃果は焦ってすぐに言葉を続けた。

 

「この間の事件で、あの佐々木って人を見て思ったの。もし悠さんに出会ってなかったら、私もああなってたのかなって………私だけじゃなくて、海未ちゃんやことりちゃん、花陽ちゃんに凛ちゃん、真姫ちゃんやにこちゃん、絵里ちゃんと希ちゃんも…………だから、本当にありがとう。今日…こうしていられるのだって………」

 

 良い言葉が思いつかないのか、何とか言葉を紡ごうとする穂乃果。悠はそんな穂乃果の様子に肩を竦めると、穂乃果の頭をポンと撫でた。

 

「えっ?………悠さん?」

 

「穂乃果、俺こそ穂乃果たちに出会って良かったと思ってる。穂乃果たちがいなかったら、今ここに俺はいなかったかもしれない。それに、もし穂乃果に会っていなかったら、俺は稲羽でしか居場所がないやつになっていたかもしれない。だから、俺からも言わせてくれ」

 

 悠はそう言うと、穂乃果の頭から手をどけて、真っすぐに穂乃果の目を見据えた。

 

 

 

「ありがとう、穂乃果。俺と出会ってくれて」

 

 

 

「悠さん……」

 

 悠からそんな言葉を掛けられた穂乃果の顔が真っ赤に染まった。

 

「さあ行こう。早くいかないとみんなに怒られるからな」

 

「………もうっ!怒られたら悠さんのせいだからね!」

 

「はは、そうだったな」

 

 そんな軽口を叩きながら再び走りだす悠と穂乃果。悠の背中を追いながら穂乃果は気付かれないように頬を赤らめながらふと呟いた。

 

 

 

「………きだよ。悠さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 気づけばすでに2人は"講堂"と書かれてある建物の前に立っていた。2人は顔を合わせて頷きあうと、一緒に講堂の扉を開ける。

 

 

 

 

 

 

ワアアアアアアアアアアァァァ!!

 

 

 

 

 

 

 講堂に入ると、そこにはたくさんの生徒で溢れかえっていた。そして、ドアから悠と穂乃果が登場したのを見て、歓声を上げる。そう、今日はあの事件で行えなかった学園祭ライブを行う日なのだ。何故こうなったのかと言うと、それは陽介たち代理ライブ終了間際のこと。

 

 あの学園祭ライブの終了前に、司会をしていたエリザベスが観客に向かって数日後にまたライブをやると勝手に告知したらしい。部外者が勝手に言い出したこととはいえ、既に不特定多数の耳に入ってしまったのでは無下にすることは出来ない上、とある事情でライブが出来なかった悠たちのためならばと、講堂の使用が許可され、ライブを開催することが出来た訳だ。

 

 これに対してエリザベス曰く、"言ってしまえばこっちのもの。これぞまさに既成事実でございます"とのこと。表現が色々と問題アリだが、この際そっとしておこう。彼女のお陰でまたライブを行うことが出来たのだから。まさか、学園祭ライブを行えなかった自分たちに今日こんなにたくさんの人が来てくれるとは思わなかった。これはりせたちの代理ライブのお陰だろう。

 

 それにしても…こうしてみるとファーストライブのことを思い出す。あの時は3人しかいなかった講堂だったが、今はこうして満員で自分たちのパフォーマンスを心待ちにしている。それが感慨深く感じたのか、穂乃果はうっすらと目に涙を浮かべて、悠はフッと口角を上げた。

 

 

 誰かが言っていた。"奇跡は起こるのではない、起こすからこそ奇跡"なのだと。今まさに、自分たちはその奇跡を目撃しているのかもしれない。しかし、それは偶々起こったものなのではない。穂乃果の純粋な想いを始まりとして陽介とりせたちが繋いだ……特捜隊&μ‘sのみんなで起こした奇跡だ。

 

 

「お~いっ!穂乃果ちゃ~ん!お兄ちゃ~ん!!」

 

 

 自分たちを呼ぶ声がしたので見てみると、ステージでは自分たちに手を振ってスタンバイしていることりたちの姿があった。みんな穂乃果と同じく学園祭ライブの衣装を身に着けている。

 

 

「早くして下さい!皆さん待ってたんですよ!」

 

「もう!来るのが遅すぎますよ!」

 

「やっと来たにゃ~!」

 

「全く……悠さんったら………」

 

「ちゃっちゃとしなさいよ!」

 

「悠!遅刻したことについては後でお説教よ!」

 

「穂乃果ちゃんも一緒やで~」

 

 

 他のメンバーも自分たちを呼んでいる。どうやら皆も悠の到着を待っていたようだ。後でこっぴどく叱られそうだが、そんなことは気にしないでおこう。

 

「穂乃果、行くか」

 

 隣で涙ぐむ穂乃果に声を掛けると、穂乃果は頷きながら涙を拭く。そして、

 

 

 

「うん!行こうっ!悠さん!!」

 

「ああ、ショータイムだっ!!」

 

 

 

 悠と穂乃果はそう言うと、共にステージに向かって駆け出した。そしてその日、音ノ木坂学院の講堂にてライブが終わるまで歓声が鳴り止むことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<???>

 

 

「…………あ~あ、久しぶりにウニかウナギが食べたいなぁ……出所したら高級なやつを奢ってくれるように悠くんに言質取っとくんだったなぁ…………まあ出所できるかなんて分からないけど」

 

 

 拘置場のかび臭い畳に四肢を投げ出し、足立透はそんなことを呟いて大きな欠伸をした。自分の起訴がようやく決まり、面倒なことが終わったという解放感と先日の夢で起こったかのような一件を終わらせた達成感を嚙みしめているのだ。

 

 

 昨年自分は自分で課したゲームに負けた。

 クソみたいな世の中に耐えていた自分に突然与えられた”特別な力”……それがゲームの始まりだった。つまらない仕事、腐り切った社会。それらを全部ぶっ壊せば自分の望む世界が創れる。あの皆月少年みたいなことを考えていて、空っぽの心を満たすかのように夢中でゲームを楽しんだ。

 

 しかし、あの去年の冬の日、鳴上悠率いる特捜隊に全てを暴かれて抵抗した挙句に敗北。ゲームオーバー。その後に自分に残されたのは"確かな体験"と"現実のルール"だった。

 

 "現実のルール"……当然ゲームにはルールがあり、自分は"犯した罪を償う"というそのルールに従って警察に捕まった。だから、あのGWの事件でそのルールを壊されそうになった故に、不本意ながらも自分はあの忌々しい特捜隊に協力した。こんな自分でもその"ルール"を壊されるのは矜持が許さなかった。ただそれだけだった。

 

 

 それにしてもここまで長かったと足立は思った。GWでの尋問の最中にあのP-1Grand Prixに巻き込まれたお陰で留置場内で謎の大怪我を負ったことになり、厄介な精神鑑定などで長かった拘束期間が更に延長してしまった。思い返すとうんざりしてしまうが、今の足立の頭の中でモヤモヤしているのは別のことにあった。

 

 

「本気で人を好きになったことがあるのか……か。そんなの……」

 

 

 そう、先の戦いであのことりという少女に聞かれた【本気で人を好きになったことがあるのか?】という問いについてだ。

 

 正直バカらしいことだと思った。学生時代は親が厳しく勉強しかさせてもらえなかったため、好きな人はおろか、あの特捜隊の少年少女たちのように一緒に遊びに行くような友人などいなかった。元から1人でいるのが好きな性分だったし、それを寂しいなどとは思わなかった。

 

 しかし、あの少女からそう聞かれた時、自分はNOと言い切れなかった。あれは一体何故だろうか。それがどうも引っかかっているのだ。思考の海に入ろうかと思っていると遮るかのように足音が聞こえてきた。

 

 

「おい、面会だ」

 

「ええっ!!絶対堂島さんでしょ……」

 

 

 現れた刑務官から告げられたことに足立はそんな声を上げてしまった。"面会"と聞いてすぐにあの人物………元上司の堂島遼太郎が会いに来たのだと悟ったのだ。

 この前本人から『近いうちに会いに行く』という手紙が届いたときからこうなることは察していたが、それにしては早過ぎる。まるで堂島に拘留所で待ち構えられてまんまと捕まった気分になり、足立はうんざりだと言わんばかりに溜息を吐いた。

 

「今更会ってどうするんだよ……モノ好きだよね、あの人も」

 

 あの事件で堂島との関係は終わったと思っていたのに、何故こうして会いに来たのか。犯罪を起こした部下など会いたくないはずだろうに。聞けば堂島は犯罪者である自分をバカにした刑事にキレて掴みかかったとそうだが、全くもって物好きとしか思えない人だ。

 

「どうした?会うのか、会わんのか?」

 

「……………」

 

 どうせ拒否したって無駄だろう。何故なら、あの人の諦めの悪さとしつこさは誰よりも自分がよく知っているのだから。足立は重い腰を上げて立ち上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おう……お前、前より太ったんじゃないのか?」

 

「堂島さんのシゴキに比べたら塀の中の方がマシですから」

 

「なんだと、おい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 久しぶりの再会でそんなやり取りをすると、不貞腐れたように目尻にしわを寄せて呆れたように元上司の堂島は笑った。それに釣られて元部下の自分も口角が上がってしまった。それがくすぐったくて堂島に気づかれないように俯いた。

 

 捨てた筈なのに捨てられない。切ったはずなのに切られてない。これだから人との繋がりは厄介だ。だが、その厄介なものに本当はどこか安心している自分が居る。

 

 

(ははは………あの子の質問……考える必要ないじゃない)

 

 

 あの子のように異性ではないけれど…自分はあの家族が好きだったのかもしれない。こんな自分を気にかけて受け入れてくれたこの人やあの子を。それ故に割り込んできた彼のことを良く思っていなかったのだろう。でも、あの少年のこともどこか信頼してしまう自分もいて憎むに憎み切れなかった。それだから、あの時に手を貸してしまったのだ。

 

 

(全く……やれやれだね)

 

 

 思わずそう呟いた独り言は夏の到来を知らせるかのように鳴く蝉の音に溶けていった。

 

 

 

 

 

 

【μ`SIC START FOR THE TRUTH】

ーfinー




Next Chapter

















照りつける太陽
耳に響く蝉のざわめき
一年前とは違う活気あふれる商店街




そして、





「「「「お帰りっ!!」」」」」






自分を待ってくれた家族と仲間たち。






今年も…稲羽の夏がやってきた!!






特捜隊メンバーに加え、東京から訪れたμ‘sの少女たち。長い夏休みの中、彼ら彼女らに数々のイベントが巻き起こる。



「海だっ!!」

「ポロってる――――――っ!!」

「やろうぜ!密着計画のリベンジを!」

「100km行軍ですかっ!?」

「お兄ちゃんとりせちゃんがお忍びデートっ!?」

「なんじゃそりゃあぁぁぁぁぁっ!!」

「ぶ、物体X…………………」



騒がしくも楽しい日々が続く最中、新たな出会いが悠を待ち受ける。



「鳴上くんが知らない女の子と一緒にいる?」

「悠……モテすぎ…………」

「あ、あれって………」






そして、







「実は………みんなに話があるの」









りせから発せられる仲間たちへのお願い。それは特捜隊&μ‘sを次の戦いへ誘う啓示であった。









次章に繋がる物語。特捜隊&μ‘sたちの忘れられない夏が始まる。






PERSONA4 THE LOVELIVE 最新章

【Let`s summer vacation in Yasoinaba】

2018年11月末 スタート予定










and











修羅場、極まる。






【鳴上悠】と【雨宮蓮】が下した決断とは。






【PERSONAQ2 Anniversary】11/28結果発表。
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