怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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バトルパートむずかしいDeath!


第9話:泥棒したら怒るよね【箱】

 Xが京都に降り立ってから二日後、とある寺に安置してあった仏像が姿を消し変わりに空箱が置いてあるのが発覚した。

 京都に降り立ってから三日後、ある美術館の警備員が木箱の中で縛られているのが発見された。服は奪われておりロープによって亀さん風に縛られていた。それと同時に、同美術館の絵画が一枚失われているのが発覚した。

 京都に降り立ってから一週間後、神戸郊外のとある埠頭の倉庫街にて粉微塵のミンチになって『箱』に詰められた死体が発見される。その数は31人分、31の箱に詰められていた。なお見つかった箱は32箱でありその一つには気絶している男が入れられていた。表向きはただ死体が箱に詰められ、美術品密売組織の一人を逮捕したということだけが報道された。

 そしてこれら全てには名前入りメッセージが残されており、その名前はアルファベットで『Xi』と書かれていた。

 

 

 

~~~

 

 

 

 「魔法による警報装置に全く対応できないのは困ったなあ」

 

 とある空きビルの一室にて仏像、絵画、刀剣、装飾品などの美術品に囲まれた人物、Xがつい先日のことについて思い返していた。

 

 「分かっていても完璧に姿を変えていても、よく理解してない魔力についてはどうしようも出来ないなんてなあ」

 

 思い返していたのは先日とある埠頭にて起きた事件。犯人は勿論この怪盗Xである。偶然耳に入れた情報が盗品の美術品の取引についての情報であったのだ。それはXがその情報を確認しているのを視て知った情報でったのだ。無論彼らが不用意に漏らしていたわけじゃない。魔法による認識阻害により会話は一切もれないように注意していたのだ。偶然ちらりと視られただけで読唇されていたという考えにたどり着けないのは仕方のないことだろう。

 Xはそうして得た後ろ暗い美術品取引の情報を元にいくつか盗んで裏でも名前を知らしめようとしたのだ。そして進入のために手ごろな見張りの姿を借りたのだが、魔力をまねることができていなかったために、警報装置に反応し埠頭にいた31人との戦闘、否一方的な殺戮になってしまったのだ。

 

 「でも『気』のほうはなんとなくだけど使えるようになったからもう少し観察すればいつか魔力もまねることが出来るかな?」

 

 Xはまだまだ初心者レベルだが僅かなりとも『気』を扱うことが出来ていた。先の殺戮で何人もの気の使い手を視ており、また武芸に秀でたものは無意識に『気』を使えたりするということから何人もの人間を観察し己の物としているXが『気』を扱えるようになるのは自然である。

 

 「まあ魔法使いよりも気の使い手の方が”強かった”し魔力はそのうち真似れる程度に覚えれば良いや」

 

 そう言うとXは自分の両手を枕にして寝転がりこれからどうしようかと考えていた。ちなみにXが魔法使いより気の使い手を強かったと言っているのは死に様にあった。障壁に守られた普通の肉体と、気で強化された肉体、どっちのほうが頑丈かの違いだけであった。その程度にしか見られなかったのは今回襲われた奴らの連度が低かったのが理由である。

 

 「次はどうしようかなあ、海外でも『怪盗X』の名前を前と同じくらいに売りたいし何ヶ月か海外に出ようかな」

 

 Xが考えているのは『怪盗X』のネームバリューである。この京都周辺で活動している間に、この世界はかつて自分が犯罪を犯していたところとは違う、『怪盗X』の名が全く知られていないところであると知ったからである。そしてどうしてそうなったのかと理由を調べるより『怪盗X』の名前を知らしめることに主眼を置いたのだ。だけどXはここでいつもと違うやり方をとっていた。

 とりえず箱は置いておく、何かしたときは置手紙をする、無闇に人は殺さない、の三つである。

 これは友達と一方的に言ってきた木乃香の『先に手を出したらいけない』と注意されたことを守るためである。普通に気絶させたりはしているのでせいぜい殺さない程度のゆるい誓いであるがXがコレを守っていることは驚くべきことである。じっくりとばらして観察する必要がないから細かく砕くのをサボっているだけとも取れるが。

 

 「でもコレどうしよう」

 

 海外進出を考えて一つ問題に上がったのが盗品の処理である。美術品も一度十分に観察すればもう興味はないので適当に置いてってもいいのだがそうするのは怪盗キャラとしてセーフかと考えてしまったのだ。

 売り払ってしまおうにもこの自分が活動していたのとは違う世界であるため販売ルートも分からないので扱いに困っていたのだ。

 

 「うーんもういいやとりあえず寝よっと」

 

 そしてついに考えるのを放棄して美術品を布団や枕にして眠ってしまった。諌めたり突っ込んだりしてくれる人がいないためその行動の適当さがだんだん出てきてしまっているのである。

 

 Xが目を覚ましたのは言うなれば草木も眠る丑三つ時、最も一般人の動きのなくなる裏の世界のゴールデンタイムである。Xが目を覚ました理由はある臭いを、空気の変化を感じたからである。それは今まさに獲物を仕留めんとする気配。Xは完全に逃げ場なく狙われているのだ。

 

 「(四……五……五人かあ)」

 

 Xは今自分を狙っている人物の気配を数えた。その数は五人。左右の壁の向こうに一人ずつ、部屋本来の入り口に二人、そしてXより窓に近い位置の天井に一人である。

 

 「(狩りの準備が整うまで俺に気づかせないなんてすごいなあ。そして天井にいる奴は五人のかで一番気配が薄い、あいつが指揮官かな)」

 

 Xは冷静に自分の状況を確認した。どう動いても一戦は確実、警察の手の者とは思えない気配の消し方、人員の配置から壁や天井などものともしない力を持っていると推測し冷たい笑みを浮かべる。そしていつでも迎撃ができるように手を刃のような鉤爪に変えていく。

 

「(アイがいないとはいえよく俺の居場所が分かったなあ。それなりには注意はしてたんだけど、これも魔法を使ったのかな?)」

 

 真実は単純に潜伏可能な場所の虱潰しであるがXは知る由もない。そしてXはなかなか動きを見せないことに次第にじれだして、

 

 「来ないなら俺から行こうか?」

 

 そう声を出して立ち上がる。待ち構えている敵に十分に聞こえる大きさの声で宣言する。

 十秒ほど待っても何の反応もなく宣言どおりXが動こうとしたとき、

 

 「神鳴流奥義斬岩剣!」

 

 天井をぶち破って一人の和装で中年の男がXに斬りかかってきた。

 

 「へえ、凄い力だなあ。電子ドラッグによる人形とは質が違う」

 

 Xは何の気なしに語りかけながら素手で振り下ろされた刃を受け止める。若干刃が手に食い込み、血が薄らと滲んだようだが一切気にしていない。

 だが襲撃者はそんなことより不意打ちをあっさりと受け止められていることに驚愕していた。ほぼ無傷で受け止めるのは完全に想定外であったのだ。

 だがすぐに援護のために周囲に隠れていた者が一斉に襲い掛かる。左右の壁を斬り崩して二人が、入り口からも一人一足飛びで距離を詰める。もう一人は数枚の符をXを囲むように飛ばしている。

 

 「クソ!」

 

 先制攻撃を仕掛けた男は剣がXに完全に掴み取られておりどうしようもなくなっていた。ならばと剣を手放し仲間への布石のためにXを投げにかかる。

 

 「浮雲・旋一線!」

 「まだまだだね」

 

 Xは目の前の男の腹を殴った。それは特に気をこめたわけじゃない単純な力によるものであったがXのほぼ全力の一撃。男はくの字になって吹っ飛んでいき入り口近くの壁に叩きつけられた。

 

 「木尾さん!」

 「ぐっ! 金串、だ、大丈夫だ」

 

 声をかけたのは入り口付近にて待機していたまだ若い女性、金串であった。

 木尾はとっさに後ろに飛ぶことでいくらかの威力をそいだのだが、それでも内臓へのダメージはかなりの物であるようで血を吐きながらその場に膝を付いている。

 一瞬で一人が戦闘不能になったため入り口から飛び出した男はXと距離をとり後ろの木尾と術者である金串の間に立つ。

 

 「「神鳴流奥義斬岩剣!」」

 

 左右から襲い掛かる二人は同時に奥義を放つ。

 

 「ガァッ!」

 「火野!」

 

 Xは特に焦る様子もなく右側の男に全力で飛び込んだ。回避と攻撃のためである。そして素早く顔胸腹の三箇所に必殺の攻撃を行う。

 

 「ギッ! ガハッ! グボッ!」

 

 顔面を潰さんと、心臓を突き破らんと放たれた突きは紙一重両手を犠牲にして防ぐことができたが最後の腹へのなぎ払いは防ぎきれず内蔵をこぼすことになりそのままその場に崩れた。

 

 「「神鳴流奥義斬空閃!」」

 

 二人の剣士は即座に並び立ち、二本の剣閃をXの無防備な背中に向けて襲い掛かる。一瞬で一人を仕留めたXだがさすがにこれへの反応は間に合わなかった。

 

 「な!」

 

 確かに背中に剣閃は刻まれ腕にも余波により大きく刻まれる。たがそれはほとんど意味を成さなかった。わずかに血が滲む程度、無防備であってもその程度しか傷を負わせれなかったことに言葉を失った。

 

 「水沢! 土門!」

 

 数瞬呆けていた二人が木尾の声に気を取り戻したとき、目の前に何かが飛来してきていた。壁からXに斬りかかった男、水沢はギリギリの回避を行えたが直線上に木尾と金串がいるため土門は飛来物を斬り飛ばした。

 

 「そうすると思ったよお姉さん」

 

 Xは土門に投げた飛来物の陰に隠れて距離を詰めていた。剣を振るっていたために動きたくても動けなくなっていた。Xはそのまま土門に飛びつき、

 

 「やめ、い……ぎぃ、あ、ぎゃあああああああ!…………ごふ」

 

 力づくで抱きしめた。バキバキと骨を砕く音が響く。土門は口から血を吐いてその場に倒れた。

 このときまだ立っているのは水沢と金串だけ。木尾は金串による応急処置はされているが既に戦力としてほぼ役に立たない。Xは腕の傷を見せ付け、それが蠢きながらふさがっていった。

 

 「怪物、か」

 

 それに反応を示したのは木尾だけであった。

 

 「そう、俺は怪物強盗Xだ。あんたの感想は間違っちゃいないよ」

 

 Xはこの言葉と共に禍々しい気配を三人に飛ばす。このとき、まだ無傷だった水沢と金串は勝ち目が無いと怯えを浮かべていた。

 

 「うるああああ!!!」

 

 その瞬間木尾は気勢を上げてXの足元の剣を掴みXに斬りかかった。

 

 「水沢! 金串! 火野と土門を連れて撤退し協会に報告しろ! 安心しろ、時間は俺が稼ぐ!」

 

 木尾の刃をXは素手で容易に受け止めるがすぐに木尾は連携を繋げてXに反撃の隙を与えないようにしXを離れた場所に誘導する。

 二人は一瞬迷ったがすぐに倒れている火野と土門を連れて逃走を開始する。二人とも瀕死の重傷である。土門は全身骨折、内臓も傷ついているだろうし火野は内臓がこぼれている。だが二人ともまだ息がある。普段の修行のおかげであろう。

 そしてなぜか金属を打ち合うような音が響くがそれを無視して水沢、金串の二人は全力で走り出すが、

 

 「逃がさないよ」

 

 Xの静かな宣言が二人の耳に入った。その場に止まり声のするほうへ顔を向けると、木尾の背から腕が生えていた。それは丁度心臓の裏側、木尾は力なくXの腕に身体を預けていた。

 

 「あんたらから俺に襲い掛かって来たんだ。気もかなり扱えるみたいだし存分に視せてもらうよ」

 

 Xは木尾から腕を引き抜き血まみれの腕を見せつけながら目の前の水沢と金串に迫る。水沢は恐怖で震えながらか弱く剣を構えその剣をXに向けて振り上げる。

 そしてそれは振り下ろされる前にXに頭を潰された。

 薄い笑みを浮かべながらXは残された金串に迫る。

 そして折れた。

 

 「ごめんな、さい……許して……下さい。見逃して、下さい……死にたくないです」

 

 恐怖に負け、許しをこうて、命乞いをした。絶望さは変わらない。助かる可能性などわく訳がない。

 

 「えー」

 

 だがXは凄く残念そうな声を上げた。それにより殺意の満ちる空間はがらりと変わった。

 

 「あーあわかったよ、許すよ」

 

 Xはそう言って背を向けた。

 

 「でも俺は謝らないよ。先に手を出したのはあんたらだ」

 

 Xはそう言って転がっている二人と一つを持ってその場を去っていった。残された金串は何も分からずただその場にへたり込んだ。殺意をなくしたのは何でだろうと自問した。命乞いをしたから助けてくれたのかとも考えたが何も答えは出なかった。

 そして遠くから聞こえてくる何かが砕ける音と水が滴るような音を聞いて、それがなんであるかと考えて金串はその場で意識を失った。

 朝になっても戻らない五人を探しに来た関西呪術協会の面々は、気絶した金串と転がる美術品、そして四つの粉々になった人間を詰めた『箱』だけを発見した。




丸くなってもXはXなんですよ
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