色々悩みましたけど投稿
これはXが31人もの人を箱詰めにした日から二日後、関西呪術協会の手によるX襲撃の前日のことである。関西呪術協会にある人物の捕縛、無力化をするという話が挙がっていた。無論その人物は怪盗Xのことである。この話が上がったのには勿論理由がある。埠頭で起きた『31人殺し』である。
犯罪者であるとはいえ魔法関係者である者達が31人も殺害されたのだ。その凶悪、危険性が高いと判断しても不思議ではない。さらにまだ一般人には犠牲者は出ていないが怪盗Xは美術品泥棒であるのだ。いつか一般人に犠牲者が出ると考えられる。故にその前に怪盗Xに対処しようという話になったのだ。
そして、実力の無いものは無駄な犠牲になる、無力化、つまり殺害するのにも躊躇しない人物、そして支援のための優秀な術者、これらを考慮して、木尾、土門、水沢、火野、金串の五名がすぐに動くことが出来るものの中で選ばれることになったのだ。無論コレはこのときに即応可能な勝ち目があると判断された五人であり、日が経てばより戦力は増強される予定であった。
そしてその翌日、不幸なことにすぐに怪盗Xの潜伏場所が特定されてしまい、さらに相手は単独犯であることも確定してしまった。これらの不幸が重なることで彼らは怪盗Xへ襲撃してしまったのだ。
結果は壊滅。
結果、怪盗Xは捕縛失敗、そして逃走。美術品は六点回収、うち二点に甚大な破損。死者四名、軽傷一名。という無残な結果になってしまったのだ。関西呪術協会内部では人的被害によりいくらかの混乱や、騒動の種がうまれることになる。
なおこの事件の後、怪盗Xは海外に活動を移した。そして怪盗Xについての情報は魔法使いたちのネットワークに流れることになる。そして『立派な魔法使い』を目指す者達に何度も襲撃されることになるのだがそのことごとくを返り討ち、何人もの犠牲者を出しいくつもの『箱』が作られるだけに終わった。
顔、年齢、性別などの個人につながる情報は一切無く、ただ残虐性だけが流れることになった。誰も正体を知らず、知ったものは赤い箱に詰められる。これは裏の世界でのみ流れた情報である。なぜなら怪盗Xは一般人には追い詰められず、追い詰めたものは魔法関係者であり、惨殺されている。魔法秘匿の観点からどうしても残虐性は表に出せないでいるのだ。
結果、表では神出鬼没の悪戯好きな『怪盗X』として名は広まり、裏では『怪物強盗』の異名を持つ100万ドルの賞金首となったのであった。
ちなみにただ一人、Xの顔を見て生きている人物である金串は同僚の死に様を知って二度と関わらないように、絶対にXに逢うことがないようにと一切を語らずに関西呪術協会を去っていった。
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その日、関西呪術協会に「怪盗X」討伐のための部隊を編成して欲しいと協会上層部への上申が行われていた。
「くそ! あの事なかれ主義が! 臆病者が!」
そして、その上申に関わっていた、いや率先して意見を取りまとめていた男が怒りをあらわに協会本部から出てきた。その様子から好ましい回答は得られなかったということが伺える。
「やっぱりダメでしたか風見さん」
その怒り心頭の男、風見の姿に結果を理解して残念そうに、おそらく風見と同年代と思われる男はため息をついた。
「ああ! あの詠春の野郎が危険だからと手出し禁止を厳命しているからだとよ!」
「さすがに長を呼び捨てにするのは」
「仲間が殺されているのに仇を討つ気概も無い奴なんか呼び捨てで十分だ!」
風見は相当に頭に来ているようでひたすら愚痴をもらす。
「お前だって木尾のおやじを殺されて黙ってるなんて出来ないだろ!」
「まあそのとおりですけど」
「なのにあの詠春の野郎! 何が大戦の英雄だ! 腐れ魔法使いの犬でしかないんだ!」
ひたすら風見は悪態を言い続ける。
「それは言いすぎで飛躍しすぎじゃ」
「うるせえ鬼島! もう本当に愛想が尽きた!」
彼がここまで怒っているのは詠春の怪盗Xへの対応がやや消極的であるのが原因だ。しかしそれも五人を返り討ちに出来る実力、さらに降伏した者へは一応手は出していないというう俺に触れるなと言う無言の圧力を感じたが故だ。積極的に敵対すべきではないと判断した詠春はそれほど責められるものではないだろう。だがこのような反発も抑えるべく手を回しきれていないのはお粗末だが。
「でも風見さん。だからといって出奔するわけにはいかないでしょう。それをやっちゃうのはさすがに不義理が過ぎますし」
「ああ分かっているよ! 仲間がやられて黙り続ける長についていくのはなと思っているだけだ。せいぜいが愚痴るだけだ」
一通り言いたいことを言って少しずつ風見は落ち着いた。だがこの風見の意見はこの関西呪術協会の人間が抱いている少なくない意見である。
「でもなあ、土門は殺された、金串も再起不能の心傷を負って二度とこちら側にくることはない。それに鬼島も諦めてはいないんだろ? 怪盗Xへの報復を。それを良しとしないような現長へも憤りを感じているんだろ」
「当然でしょ。だから風見さんに着いているんですから。でもコレがダメですと、穏便な手じゃ時間がかかりすぎると私は思いまして」
鬼島は一呼吸置いて
「風見さんには伝えておきますが、私はこれからクーデターを起こすつもりです」
とんでもない爆弾をぶちまけた。さすがに風見もこの言葉にはあっけに取られた。
直情的が過ぎる風見についているだけあって、鬼島も十分に感情を優先する人物であるのだ。故に、この上申が上手く行かなかったときのことも考えていた。確実に、死んだ人が蔑ろにされることがないように。
「おい何言ってんだ貴様は! それこそ不義理の極みだろうが!」
「今のままの協会をほうっておくほうこそ不義理ですよ。これは今の体制を変えるために、関西呪術協会の未来のために今やらなきゃいけないことです」
力強く言い切る鬼島に風見は何も言い返せずため息を漏らすだけしか出来なかった。言い切った風見はもう覚悟は決めたと強い意思がその目に光っていた。
「あー、つかそれ俺に宣言していいのかよ。クーデターなんざ秘密裏に事を進めるもんだろ?」
「風見さんなら最悪でも傍観、良ければ参加してくれると見てますから」
この言葉に「そこまで信頼すんな気持ち悪い」と頭を掻きながら風見はうんうんうなって考え込んだ。
「ったく。まあ俺だって今の協会には不満が溢れてんだ。協力してやんよ」
「っ! 本当に賛同してくれるとは実は思ってませんでした」
「おいてめえ!」
「信頼にこたえた俺の信頼を返せ!」と悪態をつきながらも風見は顔に笑みを浮かべていた。これからやるのは革命。失敗したらただの反乱、悪者、賊軍である。二人は覚悟を決めた。二人とも大切な関西呪術協会の未来のためになると信じてクーデターを起こすと。
「でもまだ私と風見さんの二人だけですけどね」
「やっぱりかよ。でも人手は必要だろどう考えても。少数精鋭でもあの詠春に対抗するにはせめて術者が一人は必要……あ」
「まあ名は知られてますよね。脇や詰めが甘いですけどまず確実に引きこめる人材に心当たりが」
「天ヶ崎のか」
「その通り」
二人はまだ何の計画もない。だが時間をかけつつも可能な限り早く事を起こすだろう。一年前後で。
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「龍宮、今日も頼まれてくれないか?」
そう声を掛けられたのは龍宮真名。麻帆良に通う学生であり裏に関わる凄腕のスナイパーである。
「もちろん払うものは払う。いつもどおりそれで構わないだろう」
「……ああ、大丈夫だ問題ない」
真名はルームメイトであり、同じく裏に関わる刹那に決まりごとのように依頼が行われていた。これはこの一ヶ月何度も行われたやり取りであり、何度も刹那の仕事である近衛木乃香の護衛の代打を請け負っているのだ。この依頼は刹那が同じ神鳴流の剣士であり格上の強さを持つ葛葉刀子に師事してもらえるときに行われている。
真名はこのやり取りをし始めてからもう一ヶ月になると思い返しため息をついた。今までこんな依頼はよっぽどなことがない限りは行われなかった。確か一度はあったかなと思い出せるくらいである。だがこの一ヶ月は違う。刀子の都合がつく限り、その度に真名に依頼を行っているのだ。
「(原因は考えるまでもなく一ヶ月前の侵入者のせいだろうな)」
真名は一ヶ月前のことを思い返す。
その日、真名は特に予定もなく、ただ適当にぶらつき暇をもてあましていたのだ。そしてそこに舞い込んできた侵入者の報とそれに対する緊急依頼である。真名は暇つぶしと小遣い稼ぎに受けたが数時間後に何の説明もなく依頼は終了させられた。もちろん真名は不審に思ったが下手に首を突っ込まないのがこの世界での長生きの常識である。しかしその時に刹那は医務室に運び込まれ、一時的に精神が不安定なっていたのだ。それだけで侵入者との戦闘と敗北があったのは真名には容易に想像できた。
少しして刹那は落ち着きを取り戻したがそれからひたすら剣の腕を磨きだした。今までも腕を磨いてはいたが今は常軌を逸しすぎている。真名は分かっていても何も言わなかった。それはルームメイトである真名に刹那の様子を見てケアをして欲しいと頼まれていたからだ。
その一環として剣の腕を磨くのは敗北したことを忘れるためにも必要なことだと、真名も当初は無償で木乃香の護衛を受けていたのだが、週六は多すぎた。それが二週間も続いたときつい、『これから護衛の代わりは有料だ只では受けれない』といってしまったのが真名の失敗、本当に支払ってきたのだ。真名も有料であるといってしまった。つまり金を払えば請け負うといったのと同じだ。今回の刹那のケアにおいては学園から金は出ている。二重契約で受け取るわけには行かないのだが言ってしまった手前引っ込めることが出来ない。さすがに失言だったと後悔したがもう遅い。真名は後で学園長経由で返そうと受け取った金は別にすることにして刹那からの依頼を受けるようにした。
ちなみにこの一ヶ月、刀子はすさまじい勢いで機嫌が悪くなった。一説には付き合えそうな男性と結局上手く行かなくなったとか何とかと。真実なら刹那の修行に付き合わされた影響であろう。面倒見が良かったのが災いした形である。
「(しかしどうしたものか、こんな無茶な修行続けても近いうちに潰れてしまう。口で言っても聞きやしないし、外見も荒んできているのが分かる)」
何度話し合っても刹那は変わらないのだ。ここまでくるとただ侵入者に負けただけとは到底思えなかった。しかし追求するわけにも行かない。
「(最近ずいぶんとこのかが積極的に刹那に接しようとしているからそれに期待するほかないか)」
真名は本日何度目にかになるため息をつきながら相棒の準備を終えて木乃香の護衛に向かうことにした。
一年後くらいの西の戦力が強化されます
刹那の戦力が強化されます