怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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はっはっはっXの原作介入どうしようかな


第11話:麻帆良にはマッドばかりだ【再】

 「ハカセ、調子はどうネ」

 

 そこはとある研究室、語尾に特徴のある少女、超が白衣を纏うマッドサイエンティスト葉加瀬に声をかけていた。

 

 「超さん、無事に治療は終えて今はもう安定しています」

 

 申し訳なさそうな顔をしながら葉加瀬は超に答える。彼女、葉加瀬は今から一ヶ月前に電子ドラッグの影響を受けた茶々丸を調べていたとき、電子ドラッグを見てしまいその影響下に入ってしまったのだ。当初は超が力づくで鎮圧したが後日再び暴走し、葉加瀬が関わる研究棟一棟が壊滅してしまった。そのときも超、茶々丸の手により無理やり拘束したが今度は簡単には収まらず途方に暮れたこともあったのだ。

 ちなみに再び暴走したのは超に止められていた電子ドラッグデータの解析を無断で行い魅入られてしまったのが原因である。自業自得だ。

 

 「それにまだキョージュが作ったワクチンのデータはありますし今後失敗しても大丈夫」

 「まだ懲りてないのカ!!」

 

 そしてその途方に暮れていた超たちに手を貸したのが研究畑の皆々に助言をかけ続ける、皆からキョージュと慕われる人物である。その人物は葉加瀬の症状を見るやいなや瞬く間にワクチンプログラムを組み上げたのだ。

 

 「もちろんこの程度で懲りるわけが」

 「中国に伝わる拷問にはとてもとても口に出せないようなモノがあるのだガ」

 「すみません!」

 

 葉加瀬のまだまだ懲りた気がしない言動に超も堪忍袋の緒は限界に近いようだ。しかし超も本気ではまだ言っていない。ただの脅しである。

 

 「で、冗談はこの辺にして本当に何の問題も無いカ?」

 「あ、そうですね。一応カメラで私の行動を何度か確認しましたけど特に異常は有りませんでしたよ」

 「フム、キョージュの組んだワクチンは完璧と言うわけネ」

 

 葉加瀬の言葉に超は顎に手をあて考え込む。

 

 「(キョージュ、何の変哲もない家庭に育った1988年生まれの男。両親姉、共に平凡、だが彼はまさに天才。思い悩んだ研究者に不意に画期的助言を与えるも彼自身が何か学んでいる様子はなし。ただいくつかのことを調べているだけ)」

 

 ちなみに彼がキョージュと呼ばれるようになったのは博士みたいに研究を続けるのではなく教授みたいに皆に助言をしょっちゅう与えることからハカセに対するキョージュと呼ぶようになったのだ。本人も変に慣れているのか気にしてはいないようである。

 

 「(少々人付き合いの悪いところもあり偏屈と見られることもあるが特に対人関係を拒絶しているわけでは無し。ただ滲ませる雰囲気からハカセと同じマッドサイエンティストの一角であるとも噂されていて秘密のラボには人に言えない研究が! などとも言われていたが……今回の件で笑い話と言えなくなったネ)」

 

 勿論超もキョージュについて過去にいくらか調べたが、未来に名を残せなかった秀才と判断を下したのだ。だが今回の件でその考えは捨てた。集中して手を出しているわけではなかったが、超でも一ヶ月かけて解析、作成に取り組んだが完璧なワクチンプログラムは作れなかったのだ。だがキョージュは一目見て一時間もたたずに完璧なものを作りあげた。

 

 「私の技術すら上回るこの技術。学んでいる様子もないのにどこで手にしたか非常に興味が沸くネ」

 「超さん?」

 「ん? ああ只の独り言ヨ」

 

 超はキョージュに強い興味を抱いていた。どうすればアレほどの助言を与えられるのか、どうすればあれほどの知識を得られるのか。そして、どうしてそれを活かさずほとんど趣味といえるものを調べているのか。

 そして考え込んでいる中、その研究室の扉が開けられた。

 

 「ふむ、見たところハカセに異常は見られないが、君たちみたいな優秀な頭脳の持ち主が私なんぞに何のようかな?」

 

 そう話しながら入ってきたのが彼女たちの話すキョージュと呼ばれる人物である。

 

 「おかげさまで電子ドラッグの影響から抜け出せましたのでお礼でもと思いまして」

 「ククク気にする必要は無い。人助けは趣味と言うかなんと言うか、それよりも興味深い情報を得られただけで十分。役に立って光栄というところだ」

 

 怪しく笑っているが特に彼が何かたくらんでいるわけではない。

 ちなみについつい漏れてしまうだけなのだが、優秀さとその笑い方と合わさり、ハカセと並ぶ麻帆良二大マッドとコッソリと呼ばれる理由になっている。

 

 「でもさすがキョージュと呼ばれているだけはあるネ。あの電子ドラッグのワクチンプログラムを少し症状を見るだけであっという間に組んでしまうのだかラ。私も御教授願いたいネ。この私すらも越えるその知識を」

 

 超はキョージュを賞賛しつつも不穏な空気を持たせて語りかける。

 

 「アレだけの観察ではワクチンプログラムは普通作れないヨ。少なくともキョージュは電子ドラッグはあの日が初見ではなかったハズ。どこで知ったか教えて欲しいネ」

 「なるほど、矢張りと言うかハカセの診察は口実で私自身に用があったわけか」

 

 超は強い視線を向けつつもキョージュはそれをヤレヤレと受け流す。

 

 「優秀な脳を持つ君たちにこの状況では誤魔化しは通用すまい。詳しくは言う気はないが知っていたかとの問いには肯定しよう。確かに私は以前から電子ドラッグを知っていた」

 

 キョージュは特に困った表情はせずにむしろ楽しそうに笑う。

 

 「……キョージュはこの知識を、技術を脳科学をどこで誰に学んダ。あのプログラムを組むには数世代先の専門の知識を持ってなければ不可能、私達も専門家ではなかったから完璧なものは組めなかったというのニ」

 

 これは彼の技術が、この時代では完全なオーバーテクノロジーであると理解していたが故の質問だ。

 

 「ふむ、私が独力で手にしたとは考えていないのか?」

 「だとしたら参考にしたものを教えて欲しいヨ。ゼロからたかだか十数年でここまでいたれたなら今の技術者は皆無能の集団ネ」

 

 この言葉には強い思い、敵意が含まれていた。あの電子ドラッグは使えばその人本人の考えを大なり小なり無視した行動をとらせてしまう。人の意を無視した邪道で外道で非道な代物であると超は見ていた。故に、それを知っていたキョージュも唾棄すべき外道の可能性があるとみてここまで追求するのだ。視線のぶつかり合いは数瞬続いた。

 

 「私は君たちのことを碌に知らない。故にまだ、話すことは出来ない。だが荒唐無稽な代物ではあるとは伝えよう。これだけで今日のところはご勘弁願いたいのだが」

 

 この言葉に超も敵意を収めた。無論警戒は続けているが簡単に話すわけが無いと最初から分かってはいたからに他ならない。逆に今の自分の秘密をたずねられても答えることなどしないからだ。それほどまでにあの電子ドラッグの知識は危険なものなのだ。

 

 「では別のことを聞かせてくれないカ?」

 

 超は不敵な笑みを浮かべてキョージュに語りかける。キョージュは黙って言葉の続きを促した。

 

 「死者の蘇生技術、時間移動技術、多重世界論、ずいぶん節操も無く夢想的なことを調べているネ。生き返らせたい人でもいるのカ? 過去に戻ってやり直したいのカ? ありえたかもしれない別の都合のいい可能性を知りたいのカ?……キョージュ、いや英輔。一体何を考えているネ。いくら調べても英輔がこれほどの知識を得たのか分からないし、こんな夢幻にだけ興味を向けているのかも分からなイ。しかし譲れない何かがあるのだけは私だから理解できるヨ」

 

 この問いかけにキョージュこと英輔はただ押し黙った。

 

 「……まあイイヨ。また次の機会に教えてくれればネ」

 「次の機会?」

 「うんそうネ。今ここにはいないけど茶々丸に異常がないかキョージュの見解が欲しいネ」

 「ククク、あそこまで私の奥に踏み込もうとしながらあっけらかんと、……いつか気が向いたらで構わんかね?」

 「いつでもいいヨ。特別に24時間365日入れるように設定してあげるネ」

 「そうだな、私も君たちに今までに無い興味を持ったことだし、君たちの事を良く知ってからになるがな」

 

 こうして行われた秘密裏の話し合いは静かに終わったが、これからしばらくして『麻帆良の二大マッドサイエンティストが手を組んだ』と噂が流れる。そしてこれから始まる何事かに麻帆良の一部ではひたすら恐怖(実験の被害とかに)することになった。

 

 

~~~

 

 

 「(ここはどこでしょう?)」

 

 一人の少女が立っていた。その少女とは絡繰茶々丸、場所は桜通りといわれる場所。周りには誰一人おらず茶々丸だけであった。

 

 「(一体何が……ここに来る前に何をしていたのか思い出せません。異常事態! マスターはどこに!)」

 

 茶々丸はこの桜通りに来る前、来るときのことを思い出せないでいた。これはすさまじい異常事態、従者である茶々丸はマスターであるエヴァンジェリンンの身を案じ周囲の状況を探った。

 

 「(人の気配が全く有りません。時間は……午後二時前後、探査範囲に誰もいない確率は限りなく低い、隔離されていると見るべきですね)」

 

 太陽の位置から現在時を推定し、まだ昼過ぎであるにも関わらず探査可能な範囲に誰もいないことから自分一人だけが攻撃を受けていると判断した。

 

 「(時間をかけるのはまずいですね。すぐに術者を排除しなければ)」

 

 そう考えた茶々丸は高速で移動しながら何かしらの反応を探った。

 

 「(近くの校舎にも同じく反応無し。範囲を広げるべきですね、商店街の……! 反応あり!)」

 

 そして情報を得た茶々丸は罠の可能性を考えながらも現状では情報不足が過ぎるため情報を得るためにもその人物の元に行かねばならなくなった。

 

 「(私と同じ立場の人物でしょうか? これほど広い範囲に人気がないならばその可能性もありえますね)」

 

 様々な可能性を考えながらその人物が視認できる位置まで移動する。そのあいだその人物は一切動きを見せなかった。しかし気を失っているわけでもない。ちゃんと直立していると茶々丸は分かっていた。敵である可能性を考えて物陰からその人物が確認できる位置まで地上を移動することを決めて素早く距離を詰めていく。

 

 「(見知らぬ人物ですね)」

 

 茶々丸は見つからないように背後からその人物を確認したが今までのデータに該当する可能性がある人物は皆無。

 

 「(仕留めて情報を吐かせるのがいいでしょう)」

 

 そういった思考にたどり着き、物陰に潜みながら一息で拘束可能な位置まで移動を始める

 

ブブブ……ブブ…………

 

 何かが歪む音がしたが茶々丸には感知できなかった。

 

 茶々丸は少しずつ距離をつめ、あともう少しで目標としたところにいけると物陰に潜み、

 

 「えっ!?」

 

 突然跳ね上がったスパイクボールが胸部に突き刺さった。

 

 「罠……やられ……!」

 

 続いて上から壁が崩れて降り注ぐ。レンガの雨にあっという間に茶々丸は埋もれていく。レンガの雨もやみ何とか這い出そうともがくが重大なダメージを負ったために這い出ることはできないでいた。

 

 「今の私ではこのフィールドを少しいじくるしか出来ない。虚ろで弱い存在です」

 

 茶々丸にある人物が話しかける。それはさっきまで茶々丸が狙い定めていた人物である。

 

 「戦闘用であるあなたを取り込まなければ今後苦戦することになり得ますので最初のターゲットに選ばせて頂きました」

 

 ブブブと周囲の景色が一瞬歪んだ。

 

 「何の奇跡か偶然か私には分かりませんが、ほとんどを失っている不完全な私を完全に近づけるために、申し訳有りませんがあなたには犠牲になって頂きます」

 

 茶々丸は顔を蒼白に変えてその人物を見上げる。その姿は女性、しかしその存在は希薄に見えた。

 

 「さようなら」

 

 その言葉と共に茶々丸はコンピュータのバグのように崩れ、ポリゴンが砕けるように散ってその女性の伸ばされた手に飲み込まれていった。

 

 

~~~

 

 

 「茶々丸どうした?」

 

 声をかけたのはエヴァンジェリンである。今まで普通に歩いていた茶々丸が一瞬足を止めたのが理由である。

 

 「いえ、何でも有りません」

 「そうか、何も無いならいいが、何か少しでも異常があったら素直に言うんだぞ」

 

 エヴァンジェリンはそう言ってまた歩き出した。だが茶々丸は一瞬何かしらの違和感を覚えたのだ。何かを失ったような。即座に確認をしたが異常は見つからずつい何もなしと答えてしまったのだ。

 

 「(次のメンテナンスの時にハカセに一応話しておきましょう)」

 

 そう考えた茶々丸はエヴァンジェリンに付き従って桜通りを歩いていった。

 

 

 

―――茶々丸戦闘用プログラムに微小な損傷が発生しました




茶々丸中心に事件は起きていきます

でも教授ってこんな喋りで良いんでしょうか!
……おかしかったら優しく指摘を!
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