ええ文字数稼ぎみたいなものです
「セキュリティーが働いてないなんて、気を抜きすぎで味気ないなあ」
怪盗Xはある学校の図書室にて本を読み漁っていた。
「う~ん、とりあえずあっちにあったこの初心者用のと、この禁呪が記されている奴をいただけばいいか」
Xがいるのは一般には秘匿されている魔法学校、今までに読み取ってきた記憶から魔法に関する教本を手にしたほうがいいかとイギリスで思い立ち、そして近くにあったこのメルディアナ魔法学校に侵入、本を盗むために物色していたのだ。
「あれ?」
置手紙も残したことでどうどうと今借りている姿のままで出て行こうとした時、視界に小さな影が動くのを見つけたのだ。またそれが子供であると気づくことは簡単だった。そしてその子供が手馴れたように、いくつかの本を取り出しそれを読みふけりだしたことでXはある考えにいたった。
「(そうか、あの子のためにセキュリティーを切っていたのか。わがままを通せるお偉いさんの子どもかな?)」
その考えに到るとXは一応姿は見取ったが興味をなくしその場を後にする。そのままその足で学校を去り、またどこかに消えていった。
時は四月、英雄の子と怪物強盗は出会うことなくすれ違ったりしていたが気づくことは無かった。二人が出会うのはもう少し未来である。
後日、箱に閉じ込められた司書と置手紙が見つかったがXの侵入は秘匿された。英雄の子がいる以上そのような不祥事はおきないのである。
ちなみにこの後、侵入者発見用の結界がありえないほど強化されたのだった。
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京都のとある一軒家。そこで一人の女性はあることで思い悩み、ため息をつきながら縁側に座って考え事をしていた。
彼女の名は天ヶ崎千草、関東魔法協会を、西洋魔法使いを力で持って叩きのめしたい一心で秘密裏に活動を行う強硬派の一人である。理由は昔奪われた両親の復讐、そして今はこの考えに同調してくれる人員を、秘密を守れる口の堅い人員を求めつつ関西呪術協会の上役にばれないように活動していた。活動していたはずだった。
現在千草の元には二人ほど、千草の考えに同調しそれをなすために様々な手を考えてくれる人がいる。風見と鬼島である。そしてこの二人の存在が今、千草を思い悩ませる原因になっているのだ。
「(うちがこないな活動しとんのもあの二人にはバレとった。上役にも見抜いとる奴がおっても不思議やあらへん。もしそうなら、穏健派で固まってる今の上役が妙なことをさせへんために何か手を打ってくるはず……ほんまに上手くいくんやろか。それともあの二人が上役の手の者……)」
千草が考えているのは、今自分の行っている活動が本当に秘密裏に行えているのか? 下手な奴に感づかれていないのか? といったものである。
千草から声をかけたわけでもないのに、二人の人間が協力を申し出てきたのだ。目的に多少の違いはあっても、風見鬼島の両名は自らのことがなせれば関西呪術協会の力でもって関東魔法協会を叩きのめすのに協力すると言い、二人が着た当初に千草はそれを真に受け喜んで迎え入れてしまったのだ。
だが今は先ほど記したとおりではあまりに都合がよく、二人の望みがかなっても、関東魔法協会打倒の際に手を貸してくれないかもしれないと悪い未来を思い浮かべてしまい、そして現在はあの二人が穏健派からの強硬派の妨害をする、もしくは反乱の罪で一網打尽にする刺客ではないかという考えにいたってしまっているのだ。
「(やっぱり復讐なんて上手く行かへんもんなんやろか)」
そして少々ネガティブに物事を捉えてしまいだしていたところ、
「っ! なんや侵入者か?」
千草は結界を超える反応を感知した。
この天ヶ崎の家に張られている結界は感知、隠密性に特化させたものである。どこに張ってあるかわからず、その結界に触れたことすら気づかせない。そして結界に触れた人物のその全てを読み取ることが出来るのである。故に現在この結界の主である千草にはその侵入者の全てを知ることが出来るのだ。それは外見、保有魔力、纏う気の強さ、現在の体調など個人情報である。
「一体何者……アカン!」
故に気づくことが出来た。その侵入者は今まさに死に瀕していると。そして千草はその人物を助けるために全力で駆け出した。というのも、
「人ん家で勝手に死にくさんな!」
このままでは不法侵入者を問答無用で殺害したと捉えられかねない。そしてなぜそこまで過剰に反応したのかと言う探られたらまずいところまで探られかねない。そして今、この家にいるのは千草一人、己で動くしかないのだ。
全力で現場に向かった千草はすぐにその人物を発見した。場所は結界の境界付近、敷地外縁部で生垣に半ば埋まるようにその侵入者は倒れていた。
「え? な、ホンマに生きとんのか!?」
千草がそう思うのも無理も無い状況であった。すさまじい血だまり、四肢どころか五臓六腑さえも無事とは思えないほどグチャグチャで取り返しのつかない損傷。全身がまるで力ずくで引き裂かれたような傷、死体と見間違えるレベルの致命傷である。だが生きている。そして対照的に、半分生垣に埋まっているがほとんど傷の見え無い顔が非現実さを際立たせていた。そのあんまりな光景にしばし千草は呆然とし、
「って、アホか!」
死体と見紛う人の前で何もせずに呆けたのだ。一秒遅れれば助からないかもしれない状況であるというのに。己を叱責しつつ、千草は治療のための符を取り出し倒れている人物に治療を行いだした。ちなみに千草は気づけなかったが比喩無しに体はほぼバラバラ、ただ近くに置いてある、と言って差し支えないものであった。
「ううう、とっておきの治癒符やけど、使わな助かりそうにあらへんな」
並みの符では助かりそうに無いと気づいた千草は仕方なしに高名な術者が作った高価な治癒符を使い出した。その選択、倒れている人物には幸運であった。この人物ほどの致命傷であったなら本来助からない。その傷を見た多くの人も救命を諦めるのが普通である。だが千草は治療を行った。しかも効果の高い符を使用してまで。本来なら無駄でしかなかったがこの人物も普通ではなかった。
異常なまでに強力な細胞を全身に埋め込んでいたのだ。そしてそれが治癒され、千切れているところが繋がり、足りないところはその細胞が変異して補い、細胞自身の生命力の高さからその人物本来の細胞も次々成り換わり、傷の無かった頭部以外全てが強力な細胞に置き換わり命の危機を乗り越えた。
「は~なんとか助かったみたいやな」
勿論千草がそんなことが起きていたなどとは思わない。ただ単に全身の傷がふさがったと思っただけである。
一息ついた千草はその倒れている人物をじっくりと観察した。見たところまだ三十には届かないであろう若い男性、日本人ではない外見、美形と称せる綺麗な顔、千草は見たことも無い人物である。
「不運にも妖魔に襲われた観光客ってところやろか? まあ目え覚ましたら軽く事情聞いてそのあとは協会に届ければええか」
そういいながら千草は式神を呼び出しその男を運ぶように命令を出す。
「まあ、不運やったなあ。襲ったであろう妖魔も気になるしいろいろ話し聞かせてもらうで色男さん」
そう言いながら千草と男を運ぶ式神は歩いていった。
だが千草が言った不運なんてとんでもない。この男が助かったのは幸運の連続があったからなのだがそれはだれも知ることは無い。
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その日、麻帆良に緊張が走った。
「ふむ、結界を越える反応がのう」
「はい学園長、それは確かです。以前の侵入者の時と非常に酷似しております」
「人員は向かわせておるのかの?」
「はい勿論です。ガンドルフィーニさん以下三名で向かわせています。その他は各地の警備、待機要員として振り分けています」
「ふむご苦労じゃったの」
この麻帆良の最高権力者、近衛近右衛門はつい先ほど感知した侵入者に対する報告を明石教授から受けていた。
「現在結界の方に異常は見られません。侵入者はおそらく一名でほぼ確定と見られます」
「ふむ、ならば侵入者への対処が済めば警戒は解除でよいのう」
「どれほどの実力者かわかりません。高畑先生の不在が痛いです」
「何、麻帆良には優秀な魔法使いが多くおる。不安に感じる必要はない」
現在麻帆良には関係者全員に厳戒態勢がしかれている。前回の侵入者と同じ方法で進入してきたが故のものだ。そして前回の雪辱を果たすかのごとく、今回こそは確実に捕らえようと実行部隊の面々は感知地点周辺に出払っているのだ。
「今度こそは面と向かって会話がしたいのう」
「……直接話されるおつもりですか?」
「無論じゃ。まあ相手の対応次第では諦めるがの」
そして多くの人手が出払っているのは近右衛門の逃がさず殺さず捕縛せよという命令が下されているからだ。それだけならば普段と大差ないことなのだがその侵入者と直接話したいとも言っているのだ。
故に話が出来る程度の完全な無力化、逃走の完全防止、周囲へ気づかせない情報操作など余計な手間が増えてしまっているのだ。ただ捕まえるだけなら生きてさえいればいいので楽なのだが。
「じゃがガンドルフィーニ先生達ならちゃんとしてくれるとわしは信じておるでの」
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「ガンドルフィーニ先生、まもなくです」
「分かった高音君。ここからは速度を落とす、警戒は十分にし、慎重な行動を心がけてくれ」
麻帆良の外縁の森の上空を三つの影が飛んでいた。ガンドルフィーニ、高音・D・グッドマン、佐倉愛衣の三人である。
「もちろん心得ていますわガンドルフィーニ先生」
「私もちゃんとやれますよ」
ガンドルフィーニの言葉に答える二人、現在この麻帆良への侵入者の捕縛のためにその現場へと向かっている最中である。
彼らに課されているのは侵入者の捕縛であるが手におえなかったらすぐに引くようにも言い含められている。無茶をする様な緊急事態とまではまだ言えないからだ。先ほどのガンドルフィーニの言葉はその意味も含まれている。
「なら結構だ。重大な任務だ、いざという時の私の背中は任せるよ」
この言葉にいっそう気を引き締めて目的地に向かって行った。
空を飛びしばらくして目的の場所が近づくとガンドルフィーニの指示により空を飛ぶのをやめて地上から現場に近づくことになった。
直前に観測班に連絡したところ未だに動きが無いとのことで何か異常なことが起きていないかと思ったガンドルフィーニは二人に指示を出して可能な限り早く移動することにした。
「あれは……」
三人がたどり着いたところには回りよりふた周りほど大きな木の根元で横たわる少年、いや青年とも見える人物を発見した。
寝ているわけではない、しっかりと目を開けて空を見ているのだから。もっとも、
「君! 大丈夫か!」
片目に木の枝が突き刺さっていたのだが。
「大丈夫、なんでもないよ」
質問に即座にそう答えると目をつぶってそのまま眠りだした。どうしたものかと三人は寝っ転がるその青年を見ていると。
「名前だけでも教えてくださいよー」
愛衣がそう尋ねると青年は目を開けて質問をした愛衣を見つめた。
「あ、私の名前は佐倉愛衣です。あなたの名前はなんと言うんですか?」
この質問に、
「ヴァ……チャンドラ。チャンドラ・アスカ・ルジュナワラ」
一瞬詰まり言い直して答えた。そしてそう言うと再び安らかに眠っていった。
無害そうだが考えが分からない、て三人はこの人どうしようとこれからの対応に頭を悩ませた。
チー坊の性格を掴みきれているとは言えない!
復習せねば