怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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かなり苦労しました


第13話:ダメだったけど【遊】

 「俺は使えないのかあ」

 

 一冊の本を右手に、古びた杖を左手に持ったXはとある廃屋にてうんうんうなりながら何度目かの挑戦を行っていた。

 

 「ぷらくてびぎなる、あーるですかっと……」

 

 そう唱えたXの杖の少し先に線香よりも僅かな光が現れたかと思うとふらつきその場に座り込んだ。

 

 「やっぱり初心者用のでこれじゃ諦めたほうがいいや」

 

 Xのこの症状、魔力切れの前兆である。

 

 「十分に休んで最初の一回目でこれじゃあなあ。魔力がほぼ無いってことだよなあ」

 

 Xはこの二週間のことを振り返りそう結論を出した。魔法の本を盗み出してから魔法を使おうとXは練習を重ねていたのだ。最初は何も無く不発だった。そしてあるとき突然、呪文を唱えた後気絶してしまったのだ。

 そしてその時から呪文を唱えるたびに気絶してしまいそしてあるとき気絶寸前で耐えることが出来た。そしてその時杖の先に僅かな光を見てある仮説にいたった。自身の魔力容量が極端に少ないのではないかと。それこそ初心者の入門レベルの魔法一発で枯渇するくらいに。そして今回気絶しなかったのは、何度も何度も魔力を空にすることで容量が増えて気絶寸前で耐えれたのだ。

 ちなみに手に持っている本は盗んだ初心者用の教本であるが内容は全て覚えているためただの雰囲気作りのために持っているだけである。

 

 「まぁいいか。それより久しぶりの日本だしさっそく何か盗もうかな」

 

 Xは日本に戻っていた。魔法の教本を盗んだ後、その足で日本へ向かったのだ。理由はなんとなくであるが。

 そして日本に向かう途中で盗んだ本を読み込み、結果先ほどの結果につながったのだ。ここまで魔法の適性がないのも珍しいが、一応Xは一通りの魔法の知識を持つことができていた。ただ本で読んだ知識であるがそれだけでも十分だとXは納得しているので問題はなさそうだ。

 

 「今回は前みたいに拠点ばれはさせないように慎重にならないとなあ。簡単にばれちゃうと侮られちゃうし」

 

 Xがいるのは活動を開始した地、京都である。もちろん前回とは違うところを拠点にしている。さすがに前回の拠点に戻る気にはならなかった。そこまで適当ではないというわけだ。

 そしてXは持っていた教本をその辺に放り出して美術館のパンフレットをパラパラと見だした。

 

 「それに平均的なレベルの奴等は大した事ないのは分かったから積極的に見取る意味もないしなー。わざわざ殺すのも処理が面倒臭いしばれないようにこっそりと盗もう」

 

 Xは数ヶ月に及び盗み、そして戦闘を数多くこなしてきた。その結果多くの未知の技術を見取ったが、どれも似たり寄ったりな錬度であったため見飽きており、相手をしても得るものがないために至った結論である。相手なんかしてられないと。もっとも、

 

 「今回はこれを盗むとして……そうだ、久しぶりの日本だし予告状でも出そうかな」

 

 このような気まぐれな提案をする以上、現場での戦闘は避けられるはずもなかった。

 

 

 

~~~

 

 

 

 時間は深夜、場所はとある美術館。人気がなくて当然のその場所で二つの影が動いていた。場所が場所だけに警備の人間であるならば極々自然であるのだがその影達は一切明りを付けずに歩いていたのだ。異常である。これにはもちろん理由がある。そしてそうしても問題がない備えをしているのだ。

 彼らがしているのは警備である。この美術館に収められている一体の木像がある人物に盗られないように警備をしているのだ。言うまでもなくその人物とは怪盗Xである。

 この美術館に送られた一枚の予告状。それを知った美術館の職員の一人が依頼した警備なのだ。そしてそれはもちろん魔法関係者による警備である。

 そして何回目かになる定時報告を行っていた。

 

 『結界には異常は見られない。中の様子はどうだ』

 「こちらも問題ない。何があっても確実に対応できる。そっちも見逃すなよ」

 『天ヶ崎特製の感知結界の符を使っている。見逃しはしない』

 「はははそうだな。これで守りきれれば怪盗Xに一矢報いれるな。本当なら戦闘で報いたかったが」

 

 かなりの時間変化のない巡回を行っていたため注意力が下がっていた。ゆえについつい雑談に興じてしまっていた。怪盗Xが示した時間まで間があるのも要因の一つである。

 

 「なんやごちゃごちゃ何度も何度も話して、怪盗Xはホンマに来るんか?」

 

 そしてそれを遮るようにこの場に不釣り合いな服装の少年が声をあげた。

 

 「……ちっ、報告は以上だ引き続き巡回を行う」

 「なんや喧嘩か? 売るなら買うで?」

 

 その少年の服装は学ランであった。昼間ならこの場にいてもぎりぎりセーフかもしれないが深夜にいるのは明らかに変である。もっともその隣にいる和装の青年も対外浮いた服装であるが。

 

 「ただの定時報告だ。お前は言われたとおり怪盗Xが出た時の足止めだ」

 「ふん! それが気に食わんのや。俺は足止めだけやのうて仕留めることもできんで!」

 

 これは実に五度目になる言い合いである。今回の美術館警備の人員が発表され、作戦が決まってから事あるごとにこの少年は「俺が怪盗Xを倒す」と言ってはばからなかったのだ。

 

 「雇われは雇い主に従っていればいいんだ」

 「……ふん」

 

 こうしてまた沈黙に包まれる。

 そして何もないまま怪盗Xの予告した時刻に近づいた。

 

 「間もなく時間やろ? 予告されたモンの近くに行った方がええんやないか?」

 「言われずともわかっている」

 

 これまで何度も繰り返されて険悪になりかけていたが、怪盗Xの予告した時間が近づいたため互いに気を引き締めていた。

 

 「なんや術がかけてあんやろ? 俺は詳しくあらへんしまかせたで。警戒は任せとき」

 「だからわかっている!、あまり頑丈ではないが一応強力な結界だ。無理やりこじ開けられてはいない!」

 

 そして、彼が本物であるかの確認をするために結界に手を伸ばした時、

 

 『侵入者の感有り! 日輪、犬上! 警戒しろ!』

 

 今回の件のリーダーから焦った声が響いた。この声にかなりせっぱつまっていることはわかる。そして目標の近くにて警戒をしていた二人の素へ黒い影が向かった。

 

 「怪盗ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ! Xぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」

 

 いくつか仕掛けられていた攻性の罠にかかったのかいくらかダメージを負いすすけているように二人は見えた。

 そしてボロボロな学ランを翻しながら、犬上小太郎は日輪の近くで構える己の姿をとる人物、怪盗Xを蹴り飛ばし、

 

 「いきなり変なとこに閉じ込めやがって、一気に勝負決めたるで!」

 

 攻撃の構えをとる。だが目の前で行えわれたことに火輪は思考が追い付かず呆けていた。

 

 「くらえ! 狗音爆砕拳!」

 

 黒い何かをまとわせた拳を叩き付ける。Xは一撃をもろに食らい、吹き飛び、そのまま壁に激突した。

 

 「嘗めんのもたいがいにせえっちゅうこっちゃ!」

 

 無茶なことをしたため小太郎はたった一撃で息が上がっている。全力で警戒を突破、これは簡単なものではないのだ。

 

 「どうや怪盗X! さっきは不意打ちでやられたが正面からなら俺は負けへんで! 正々堂々正面からガチンコ勝負や!」

 

 この宣言に日輪はようやく意識を戻し、目の前にいる両者を交互に見た。

 

 「すごいよ」

 

 聞こえてきたのはこの場にいる二人共に聞いたことのない声であった。

 

 「俺が戻るまでは気絶してると踏んだんだけどだいぶ頑丈なんだね」

 「せやな、でも俺をなめんなってとこや」

 

 しかし小太郎は気後れせずにその声に応答する。

 

 「いいよ、特別に勝負してやるよ。俺だって強いんだよ」

 

 そしてXはいつもとどこか違う空気を醸していた。喜色をうかべたXは学ランのままであるが定めた自分の姿に戻っていた。

 

 「人とは少し違うみたいだね。存分に君のすべてを見せてもらうよ」

 

 あきらかに攻勢にXは傾いていた。実際、一度捕らえた相手に反撃されて若干悔しがっているだけである。

 ちなみに日輪は美術品の避難、部屋を結界で出入り制限を行うという影仕事を行っていた。




さて次回は本格戦闘だ
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