怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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ようやく投稿、戦闘難しいDeath


第14話:本気みたいだ【戦】

 「くらえ!」

 「えい」

 

 対峙していた二人は互いに右拳を示し合わせたかのように同時に振るいぶつける。だが小太郎は競り負け、引いて態勢を整えた。そしてなぜかXは競り勝てたのにもかかわらず同じように距離を取った。

 

 「や、やるやないか……」

 

 息を荒げながら小太郎は目の前にいるXをにらみつける。そして自然と苦笑いを浮かべていた。

 Xはただ黙って両手を力強く何度か握りなおした。

 

 「こんなもの? だったら拍子抜けだな」

 

 Xは一息で距離を詰めて右腕を振り回した。むろん小太郎はそれを回避しそれに合わせ反撃の連打をを試みる、がXは涼しい顔で回避を続けた。そしてその中で発生した隙を狙い、小太郎に突きを放つ。

 だが読んでいたのか直感によるものか小太郎はそれも回避、Xは回避されたことで大きくバランスを崩した。

 

 「隙ありや! 狼牙双掌打!」

 

 Xの空振った左腕、その影に隠れるように低い姿勢から小太郎は攻撃を繰り出す。普通ならこの攻撃には反応できない。確実に命中するタイミングである。

 だがXは反応した。全力で前へ駆け抜けて回避しきったのだ。

 二人は再び距離をとって向き合った。

 

 「へえ、意外と反応はいいんだね。ちょっと驚いたよ」

 「はん、余裕や!(正直このままじゃあかん! 全て見切られとるし!)」

 

 Xは不適に笑うが小太郎は半笑いだ。

 そして、Xは一気に間合いを詰めて拳を振るう。

 

 「っが!」

 

 小太郎は回避は無理と判断し全力で受けようと構えをとるが、

 

 「あああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 耐えられず吹き飛ばされ、その勢いのまま壁に叩きつけられそれを破壊した。周囲には瓦礫のかけらが飛び散る。

 

 「ふーん」

 

 Xは破壊された壁による土ぼこりに包まれながら、

 

 「バレバレだよ」

 

 小太郎を叩きつけた位置まで突っ込みその場に拳をたたきつけ、

 

 「ちいっ!」

 

 小太郎を追い出した。

 

 「ほら」

 

 そして何の気なしにXは手刀を振るう。

 

 「ぐぅ!」

 

 そして小太郎の顔面を切り裂く。それにより出血し、小太郎の視界を徐々にふさぎだした。それを見たXはしまったという表情に変わる。

 

 「あーあ失敗したなあ……これじゃああんたの戦力が下がっちゃうよ。でもどーせたいして変わらないか」

 

 Xは落胆したこと隠しもせずに小太郎に言葉を放った。

 

 「ならなあ、これならどうや!」

 

 小太郎は血を散らしながらも全力でXに向かう。そして黒い影、否黒犬を無数に呼び出しXを囲むように飛び掛る。

 

 「どや! これは避けれんやろ!」

 

 そして小太郎は気を集中させながらまっすぐXに突っ込む。

 

 「覚悟せいやあああああああ!」

 

 小太郎はココが正念場とばかりに気合をこめる。

 

 「確かによけれそうにないや」

 

 そしてXはそう呟き、

 

 「でも迎撃は出来るよ」

 

 そう言うとXは迫り来る小太郎と黒犬に向けて殺気を飛ばす。だが全くひるまない。

 

 「やってみいやあ!」

 

 黒犬と小太郎の特攻がXに迫る。Xはその様子をしっかりと観察していた。

 同時にXに迫っているようだが僅かに、コンマ数秒の誤差がある。Xは自らの攻撃が届く範囲を定めそれに入ったものから迎撃しようと決めた。コンマ数秒差の同時攻撃の迎撃など普通なら不可能だがXならば可能である。

 Xはいつものまま、静かにその全てを迎え撃とうと拳を放ったが、

 

 「あ」

 

 Xの拍子の抜けたこえが響く。小太郎は自らに向かう拳をかわしXの迎撃方向から外れたのだ。さすがにXも、このときに三百六十度の迎撃は不可能であった。正面から来ると見定めたからこそ迎撃可能と見たのだ。

 そして小太郎の一撃がXの胴にめり込む。

 

 「どや! 俺を舐めとったんが運の尽きや!」

 

 見事な一撃、完璧に決まっていた。

 

 「へえ」

 

 だが、

 

 「骨に少しヒビが入ったみたいだ」

 

 Xは倒れない。

 

 「俺の攻撃をよける際にこめてた気を僅かに散らしたね。それが失敗だよ」

 

 Xは小太郎に笑顔を向け、目にも写らぬ最速の拳を顔面に叩き込んだ。小太郎は吹き飛び床を転がる。

 小太郎は息を荒げて床に這いつくばりながらXを見上げた。

 

 「で、あんたはいつまで隠してるんだい。それとも、本気を出さずに負ける気?」

 

 Xは静かに小太郎に語りかけた。

 

 「へ、せやな。出し惜しみは無しや!」

 

 そう言った小太郎はその姿を変える。

 

 狼男

 

 まさにそう言える姿へと変えていった。

 

 「狼男? へぇ、ネウロみたいに本来の姿があったんだ」

 

 Xは明らかに笑顔で、嬉しそうに小太郎に話しかける。

 

 「少しちゃうな。俺は狗族と人間のハーフや!」

 

 そして互いに視線を交わす。

 

 「へへへ、悪いけど俺はもう限界や。だから、一撃や! 一撃で決めさせてもらうで!」

 

 そういって小太郎は構えを取る。

 

 「これがオレの全力や! 受けれるもんなら受けてみいや!」

 

 小太郎は己の拳に全ての力を溜め込む。そしてXもそこまで言われて黙ってはいない。

 

 「ならその全力を迎え打つよ」

 

 Xは小太郎のこめている気の量を見て始めて構えをとった。

 そして一瞬静まった。二人の距離はたった数メートル。

 

 「はああああああああ!」

 

 先に動いたのは小太郎。溜め込んだ気が渦巻きだした。それと同時に黒犬を呼び出し己の拳に纏わせる。

 

 「来いよ」

 

 Xの言葉に小太郎は反応した。

 

 「言われんでも……わかっとるわああああああ!」

 

 互いに同時に一歩踏み出し、拳を突き出しぶつけ合った。それは開戦時と同じ。

 そしてこの勝負は長引くことなく一瞬で決まる。決着などそのようなものだ。

 

 「ああああああああああ………………」

 

 小太郎は巻き直しの如く吹き飛び敗北した。小太郎は力尽きたのかうつ伏せで倒れたままだ。

 

 「よくやったよ」

 

 そう告げたのはXである。

 

 「俺の右腕が血まみれだ。あんたがやったんだよ、でも死んじゃって……はいないか。思ってたより頑丈なんだね」

 

 Xの右腕は皮膚が破れ肉が裂け血が流れ出していたのだ。

 

 「あんた……名前はなんて言ったっけ? 聞こえてないかあ」

 

 この問いを聞いて目を覚ましたのか小太郎は首だけを起こした。

 

 「へへ、舐めんな……俺は犬上小太郎、次は負けへんで、X!」

 

 そういい終えると本当に力尽きて気絶した。Xは楽しそうに、そしてその姿を見て満足そうに頷いて、

 

 「拘束術式! 発動!」

 

 Xの足元に魔法陣が浮かびその身を拘束された。

 

 「魔力拘束効果なし! 気の封印、二割にまで封印完了! さらに拘束を続けます!」

 

 それを行っていたのは小太郎と一緒にいた術者。Xと小太郎が戦闘している間に念入りに術を張っていたのだ。

 

 「よく引きつけた! あとは任せろ!」

 

 さらに拘束を続ける。

 

 「あとは後詰が来るまで」

 「あーあやられちゃったなあ」

 

 捕縛されながらXは呟く。

 

 「あんたは俺を捕まえたいみたいだね」

 

 この言葉に術者は何の反応も示さない。

 

 「でも……」

 

 Xは大きく身体を沈ませる。

 

 「この程度じゃ……」

 「ば、馬鹿な!」

 

 拘束術に歪みが、亀裂が入る。それは単純な力技。

 

 「気は! 封じられているんだぞ!」

 「ああ、俺が、全力で、力をこめてるだけだ、よ!」

 

 そして拘束術式が崩壊をはじめる。

 

 「で、あんたはどうする気?」

 「封じるだけや」

 

 そこに飛び込んできたのは一人の妙齢の女性その手には符が握られている。

 

 「縛られとき!」

 

 そして放った符はXを強く拘束する。しかし強力である分持続力は無さそうではあるが。

 

 「まずは時間稼ぎ、その間に本命や!」

 

 そしてその女性は壊れかけた術式を利用して強固な封印をXに施す。

 

 「ふう、これで仕舞いや。怪盗X、捕縛完了」

 

 女性は額の汗を拭う動作をしてそう告げた。

 

 「天ヶ崎さん! 何でこんな前線に!」

 「さっき何者かに包囲網が突破されたって話があったやないか。せやからココまで出張って来たんやけど、まあ間違いやなかったみたいやなあ」

 

 彼女、天ヶ崎千草がこのタイミングで現れたのは、先ほど小太郎が無理やり突破したことによって生じた異常事態に対処するためであった。そしてそれは丁度良くXを捕獲することにつなげれれたのだ。

 

 「ふふん、力ずくで破ろうとしても無駄やで、それはうちがつい最近改良したばかりのもんや。解き方はまだうちしか知れへん。諦めとったほうがええで」

 

 千草は拘束されてからも無理やり破ろうとしているXに優しく諭す。

 

 「へえ、本当に凄いや、力も上手く出せないし、お姉さんは凄いね」

 「おだてても手心は加えんで、あんたには色々罰を受けてももらわなあきまへん。まあ生きて出られるとは考えんほうがええで」

 「うーん捕まったままじゃつまらないから逃げたいんだけど」

 

 Xは緊張感もなく目の前の千草に視線を向けて話しかける。千草も特に気にせず雑談をしている。完全に形勢は千草に傾いたのだ。

 

 「逃がしはせえへんで、あんたに殺されて恨みをもった奴もおるんやからなあ」

 

 千草はXを決して逃がす気、自由にする気はなかった。このXを関西呪術協会に送れば上手い具合に人手を得る機会を作れる可能性があるからだ。

 

 「送る準備はどうや、まだ掛かりそうなんか?」

 

 千草はどれほどこのXを拘束しておけばいいのか時間を確かめた。さすがに時間が掛かりすぎると実戦であまり試していない術であるだけにどのような不具合が起きるか分からないからだ。

 

 「後十分ほどで可能になるかと」

 「意外と短いなあ、ほな後始末にもう人員割いてええで、その程度なら余裕や」

 

 千草の宣言に徐々に集まりだした人を、このたびの戦闘で生じた被害の後始末に回らせた。かなり派手にやらかしたので意外とごまかしのための時間的余裕はないのだ。

 

 「ねえねえ、えーと天ヶ崎千草? だっけ?」

 「ん、何や?」

 

 暢気な声でXは千草に声を掛けた。

 

 「また遊ぼうって小太郎に言っておいて」

 「残念やけどそんな機会はあらへんで、最良で一生幽閉、世界中で出してる被害的にまず処刑やろうしなあ」

 

 千草はXの言葉に正直に自分の意見を述べた。

 

 「ここで逃げれば大した事ないよ。これさえ解けば」

 

 そしてXは軽く身体を動かし、

 

 「どうとでもできるんだから」

 

 拘束を解いた。

 

 「っ! 何や! 何で解けんねん! こんな簡単に解析して解ける奴なんか世界中探したっておらんはずや!」

 

 うろたえながらも千草はすぐに構えてXに向き直る。千草の狼狽は仕方のないことだ。力ずくで破るなら拘束されるわけがない、正直に解くにしても解析だけでもまだ時間は掛かるし何よりそ(・)れ(・)に気づけない作りではないからだ。

 千草はすぐに解かれた術式の解析をしたが、それはまるで凄腕の泥棒に綺麗にピッキングされたのではなく自分しか持ってない、知らないマスターキーで解かれたかのようであった。他社が未知の術式を解けば少なからず違和感は残る。だがこれにはそれが皆無なのだ。千草が今うろたえているのはそれが理由だ。

 

 「でも千草は知っているんでしょ、これの解き方を、今千草はこの術式のことばっかり考えてたし簡単だったよ。もうすぐ人が来るみたいだしじゃーね」

 

 そう言ってXはその場を後にした。目の前の人物がいなくなったことで千草は力が抜けてその場にへたり込んだ。

 

 「そればっかり考えていたから簡単……ははは、人が考えとることが読めんなら、裏をかけへんやないか……だからって、次はやられへんで覚悟しときや」

 

 千草は再びXと合間見えたときには同じ鉄は踏まないと心に誓った。

 そしてそのすぐ後に来た人員に事の顛末を説明すことになりさらにXを捕らえかけた新しい術式の説明改良に奔走することになるのだった。

 

 

~~~

 

 

 「危なかったなあ、もう少しで捕まるところだった」

 

 Xは今逃げてきた美術館を遠くに見ながらポツリと呟いた。

 

 「今までのままじゃまた同じ失敗をするかもしれないしなあ。この腕もやられちゃったし、もう少し強く、もう少し頑丈になろうかな」

 

 Xは完全に捕まえられかけたことで少し、ほんの少しだけ悔しいと感じていた。そして、どんなふうに強く頑丈になろうかと考え出した。

 

 「うーん、とりあえずこの腕を直しながら考えようかな」

 

 そういってXは目立つ位置から姿を消した。




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