怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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ちょっと無茶こいてみた



第15話:これこそ関係ないや【二】

 「ふむ、では君が何者であるか話してくれるかね?」

 

 ここは麻帆良学園、学園長室。近右衛門は目の前にいる侵入者として連れてこられた青年に問いかけていた。

 現在この場にいるのは六名、学園長である近右衛門、麻帆良最高峰の戦力高畑、青年の発見者であるガンドルフィーニ、高音、佐倉、そして侵入者としてこの場にいるチャンドラである。

 

 「君の立場は今非常にあやふやでマズイ位置におる。正直に話をしてくれればワシらも君を悪く扱わぬよう努力したい、じゃが身の上をいくらかでも話してくれねばそれもかなわぬ。話してくれぬかの?」

 

 近右衛門としてはこの青年をあまり無下には扱いたくはないのだがだんまりを続けられるとどうしようもでいないのだ。故に、優しくも『話せ』と言っているのだ。

 

 「ほんのちょこっとだけでも構わぬのだがの?」

 

 またしばらく黙ったが。

 

 「オレ、強くなろうとしてたくさん……いや、もう疲れたんだ」

 

 そう言うと身体をよじり手が首に伸びるが、

 

 「ふむ」

 

 近右衛門の無詠唱の拘束呪文で動きを封じられる。

 

 「やはり困ったのう」

 

 近右衛門が困ったと言うのはこの青年が過去のことを話そうとするとふとした切欠で自殺を図るのだ。

 ココに連れてくるまでに三度、自殺を図り発見者の三人は軽く気疲れをしていた。

 侵入者であることは間違いないがココまで来ると何かしらの事故に巻き込まれたのかそれとも何かの囮かと考えてしまう。だが放っておくと自殺してしまうかもしれないため発見者である生徒二人の精神衛生上のために、扱いに困り果てていたのだ。

 カウンセリングも視野に入れているがあまりこんな不安定な人物を多くの人に知られても上手く回せる保証がないので現在様々な方法を近右衛門は考えていた。

 

 「それ以上はやはり話してはくれんかの?」

 

 何も言わずただ押し黙った。

 

 「ふむ」

 

 そういうと近右衛門は立ち上がりチャンドラの頭を二度三度と軽く撫でながら語りかけた。

 

 「うむ、確かチャンドラ君と言ったかの。君には人に言えないような経験をしてきたようじゃのう。じゃが、ワシ……らは味方になりたいのじゃよ」

 

 近右衛門は髭を撫でて続ける。

 

 「君はまだ若い。簡単にその命を捨てて逃げてはならぬ。一旦、この麻帆良で己を見つめなおしてみんかね」

 

 この言葉に聞いていた皆がざわついた。

 

 「君がやれることをしながら、のんびりと探してみるがよい。死に逃げたりせずにの」

 

 そう言うと近右衛門は元の位置に戻り椅子に座り一息ついた。

 だが周囲の人はそれどころではなかったりする。不振人物であるこのチャンドラを近右衛門はまるで引き入れるかのような発言をしたからだ。

 

 「高音君、佐倉君、彼の住居の手配が済むまで一緒にこの麻帆良を案内してくれぬかね。ガンドルフィーニ君は彼の住居の手配を」

 「学園長! いくらなんでも彼は」

 「事情は後ほど説明の機会を設けよう。彼は危険ではない、ワシはそう判断した。不服かの?」

 

 あんまりな発言ではあったが後ほど説明すると言われてしまったうえに、近右衛門からの威圧により押し黙ってしまい三人はしぶしぶと従うことになった。

 

 「わかりました。二人とも彼のことを頼む。くれぐれも、気を抜かないように」

 「心得ておりますガンドルフィーニ先生」

 

 そう言いつつ四人は退出して言った。チャンドラも高音の指示に大人しく従い着いていった。残されているのは近右衛門と高畑である。

 

 「……では学園長、彼は何者ですか?」

 

 高畑はストレートに近右衛門を問いただした。

 

 「ハテのう? 彼は碌に自分のことは話してくれなんだのはタカミチも知っての通りなのじゃが。まあ悪い人間ではなさそうじゃの」

 「あんなに堂々と、記憶を見ていておいてそれですか」

 

 高畑は苦笑いしながら近右衛門を見る。

 

 「本人の承諾なしに記憶を見るのは褒められた行為ではないとタカミチも知ってることじゃろう。周りから信頼される学園長になろうと努力しておるのにそんな疑いを掛けられるとは悲しいのう」

 

 芝居がかったように目元を近右衛門は抑えるが高畑から見たら白々しさしか見えない。

 

 「どの口が……今は言う必要はないということですね、そして悪い人物でもないと」

 

 そう言われた近右衛門はふぉふぉふぉと笑い「当然じゃ」と言ってこれからのチャンドラの扱いに頭をめぐらせた。

 

 

 

~~~

 

 

 

 『ん……う~~ん』

 

 京都にある一軒家の一室にて一人の男が目を覚まし、大きく伸びをしていた。

 和風な寝巻きに身を包み男は何か違和感を感じているのか身体を起こした状態でほぐすように全身を動かしていた。

 

 『(ここはどこだ? 見たことないとこだし……全く記憶にないな)』

 

 まず彼が疑問に思ったのは現在見知らぬ場所で目を覚ましたと言うことだ。そして次に考えたのは

 

 『ボクって誰だっけ?』

 

 己に関することであった。

 

 『困った、これは困ったなあ。自分のことを思い出せないなんて……記憶喪失か、それじゃあ見覚えがないのも納得だな』

 

 彼はそう結論付けた。

 そして彼はこの一室に自分につながるものが何かないかと家捜しを始めた。といっても碌に物がないためにたいした成果など出るわけもなかったが。

 

 『まあ待ってれば誰か来てくれるだろうしゆっくり待つか』

 

 そう呟くと彼は布団に横になって一眠りしだした。やはり病み上がりで疲れているのだろう。安らかに眠りだした。

 

 

 

 しばらくすると遠くで何か言い争うような声がして目を覚ました。 

 

 『お、きたかな』

 

 そうして彼はその声がする方へと向かって歩き出した。

 

 「ああもうやかましい……うちかてあんなんなるんわ予想外やったちゅうねん」

 

 さっきまでかかっていた電話を切ってぶつぶつ愚痴っているのは千草である。それはつい先日起きたXについてのことであった。Xを動きを止めるために前線に出てしまったこと、結果Xの目の前で無防備を晒したことについて風見と鬼島がうるさく言ってきたのだ。曰く護衛もつけずにそんなに簡単に前線に出るなと言うものだ。それは実に全うな千草の身を安じたものなのだが、あの時は実力者が内部に強行突破したということで即応できる術者が足りなかったのだ。

 仕方なく周囲警戒の監修をしていて余力十分であの場で一番の実力者である千草が動くことになったのだが不用意に動かないで欲しいと何度も何度も言われて辟易してきているのだ。

 

 「ああ……もう! こないなったんもあの狗族のボンが下手こいたんがそもそもの始まりやないか……」

 

 再びブツブツと愚痴りながら千草は部屋の中をうろうろとしだした。

 

 『失礼、突然ですが自分の身に何があったのかお聞かせいただけないで、しょう、か……』

 

 突然ふすまを開けてキラキラと擬音が着きそうな笑顔で、そして呆然とした表情に変えてその男は千草に話しかけてきた。

 

 「っ!!」

 

 千草はとっさに距離をとって構えた、がすぐに構えを解く。その男には見覚えがあった。一室を占拠する意識不明だった色男である。

 

 「なんや、目え覚ましたんか。ん、まあ何言ってるかは知らへんけど、説明がほしいんやろなあ」

 

 千草は頭をかきながら気分転換ついでに男に近づいていく。

 

 「ん~~傷はやっぱりもう問題なさそうやな。説明したるさかい、こっちにきいや」

 

 千草は男の手を持ってとりあえず別の部屋に連れて行く。

 

 「まあ色々不安もあるやろうけどって言葉わからへんか」

 「いえいえ、言葉は十分理解してますよ」

 

 千草の独り言な自問自答に流暢な日本語で語りかける。

 

 「なんや日本語分かるんか。せやったら話が早くて助かるわ。とりあず色々聞きたいこと、説明したいことがあるんで大人しくしとってえな」

 

 そう言うと接客に使うであろう部屋に男を連れて行きイスに座らせた。

 

 「あ、まずお一つ言わせてもらってもいいですか」

 

 まず口火を切ったのは男のほうであった。

 

 「ん~まええか、基本うちから説明したる、簡潔に頼むで」

 「ええ、まず名前を聞かせていただいてもいいですか?」

 

 この言葉にそういえば名乗ってなかったなあと千草は思い返した。

 

 「せやなあ忘れとったわ。うちは天ヶ崎千草、この家の者や。であんたの名前は?」

 

 この問いに男はふむふむと頷いてまっすぐ千草を見た。

 

 「天ヶ崎千草さん……」

 「なんや?」

 

 なんだか変な雰囲気を千草は感じ取った。

 そしてその男はすくりと立ち上がり、

 

 「あなたに何か運命のようなものを、いえ定めを感じました! 名前も何も思い出せませんがあなたに惚れこみました!」

 

 そういうと千草に飛び込むようにハグしてきた。

 

 「わかります、あなたにはどこか不思議な美しさを感じます。そうです、きっとボクは」

 「なにさらすんじゃ! こんボケがああああああああ!」

 

 千草はとっさに符を取り出して召還した式で男を押しつぶした。

 

 「ゲフゥ!」

 

 男はあっさりと潰されてその場にのされた。

 

 「はぁ、たくなんやこんボケは」

 

 気絶した男を見下ろす千草は何かめんどくさいものを抱え込んだと重く大きいため息をついた。




ご都合主義ですねはいわかってます
穏便に済ませるのに記憶喪失からの一目惚れで済ませました
突っ込みうけるのは覚悟してますがご容赦を
いやいきなりの殺戮モード入られると色々困るんでそれはまた後ほどのお楽しみで
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