怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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時間かかりすぎ見たました


第17話:天職って奴なのかな【助】

 「チャンドラさん。あっちに商店街が広がっててたいていの物は揃うんですよ!」

 「……そうなんだ」

 

 麻帆良の街に色黒の青年を先導しながら明るい声色で説明をする少女たちがいた。時刻は夕方にさしかかろうかという頃、少しずつ街を行く人が増えだしてこようとしていた。

 

 「あちらは桜通りに続いてまして春にはとても美しい光景が広がっています」

 「……そうなんだ」

 

 二人の少女は名何度も話しかけてはいるが当の青年はおざなりな返事しかせず、生気の抜けた表情でただ追従しているだけである。 

 

 「……あ、あっちのはずれにあるお店はケーキが美味しいと話題なんですよ!」

 「……そうなんだ」

 

 何度目かになるか分からない説明にもやはり変わらず青年は平坦な口調で答える。

 

 

 「……そちらのほうは工学部の研究棟が広がっています。最近は麻帆良の二大マッドが手を組んだなど物騒な話題が有りましたし、用事がなければ近づかないほうが賢明ですよ」

 「……そうなんだ」

 

 やはり変わらぬ平坦な口調。

 

 「「……」」

 「もー! 何なんですかチャンドラさんは!」

 

 色黒の青年チャンドラの繰り返される平坦な相槌に彼を押し付けられることになっていた少女、佐倉愛衣はついに限界が来た。

 

 「さっきから何を言っても『そうなんだ』だけで、私たちと会話になってないじゃないですか! チャンドラさんは一体何を考えてるんですか!」

 「ちょっとメイっ」

 「それにあったばっかりの時に何度も何度も死のうとして、そんなの見せつけ」

 「メイ!」

 

 熱くなって愛衣の発した言葉を高音は無理やり止めさせる。だがとき既に遅く愛衣のチャンドラへの不満は一通り出し切っていた。高音の言葉にはっとした愛衣はばつの悪そうな表情で高音の陰に隠れるように身を引いた。

 

 「申し訳有りませんチャンドラさん。愛衣が失礼なことを言って。」

 「……ごめんなさい」

 

 高音の言葉に愛衣はしゅんとした表情でチャンドラに謝罪した。

 

 「ですがチャンドラさんにも省みる点はございます」

 

 そう言うと高音はチャンドラの正面に向き直った。

 

 「まず、あのような受け答えでは誰だって不愉快になります」

 

 高音はふうとため息をついて疲れをみせる。

 

 「そして理由も話さずあなたは何度も自殺を試みて……正直迷惑以外の何者でもありません!」

 

 この言葉に聞いていただけの二人はただあただ唖然とした。

 

 「お、お姉さま一体何を、むぐ」

 

 真っ先に我に返りすぐさま言葉を発した愛衣であったがすぐさま高音にその口をふさがれた。

 

 「話せない理由と言うのもたいしたことのない情けない理由なのでしょう。うじうじした今のあなたの姿を見れば簡単に予想がつきます」

 

 腰に手を当てながらやれやれといった風を見せ付ける高音にチャンドラは少しむっとした。

 

 「そんなんじゃあない。あの方への恩を返すために、迷惑をかけるわけにはいけないからこそ、俺は死ぬ必要があったんだ。こんなとこでヌクヌクしてるあんたらには分んないかもしれないけどさ」

 

 強い言葉でチャンドラは高音に言い返した。

 

 「そうですね。私には死のうとする人のことなんて分かりません。けど死ぬことが恩返しになるわけが無いことは分かります」

 

 チャンドラの言葉を高音は涼しい顔で否定しだした。

 

 「どんな恩であろうとそれを命で返すなんて間違ってます。それは別の形で互いが幸せになるように返すもの。決して命をささげる理由になるものではないと私は思います」

 「俺が生きるための柱にできたし、信じることが出来て、俺は……確かに救われたんだよ!」

 「生きるための力になってくれた人のために命を捨てるなんて本末転倒とは思いませんか?」

 

 即座にに否定し続ける高音にチャンドラは苛立ち始めていた。ちなみに愛衣は二人の傍で口を挟めずただおろおろと見ていることしか出来ないでいた。

 

 「あの方に命を捧げるのは……」

 「命を捨てるです。間違った言葉は使わないようにしたほうがよろしいですよ」

 

 二人の間に険悪な空気が満ちだし、

 

 「も、もう! お姉さまもチャンドラさんも止めてください!」

 

 それに耐え切れなくなった愛衣が割って入った。

 

 「ちょっと、メイは引っ込んでいなさい。私はこの方にまだまだ言うことが有ります」

 「俺だってここまで言われたら引っ込む気は無い!」

 

 しかし二人とも意に介さずに一触即発なまでに緊張が高まる。

 一切話を聞いてくれず、そして今まさに互いが手を出さんと言うところまできたために愛衣はもう何をしても二人を止めようと、

 

 「『オソウジダイスキ(ファウオル・プールガンディ)』」

 

 必殺を放つことに決めた。ちなみに目をぐるぐると回していたため混乱していたのは確実であるが。

 

 「ちょっ! ちょっとメイ止めなさい!」

 

 高音はそれに気づき声を発するが、

 

 「も、もうお姉さまもチャンドラさんも……」

 「これまずくないの?」

 「ちょっと! すぐに止めなさ……」

 

 チャンドラは危険を感じ、高音は何が起きるか察したが時既に遅し、

 

 「止めてください! 『全体・武装解除(アド・スンマム・エクサルマティオー)!』

 

 二人の衣服を消し飛ばした。

 

 

 

~~~

 

 

 「ごめんなさい……」

 

 地面に頭をこすりつけながら謝罪するのは愛衣。さきほど魔法を使って二人を止めたのだがその直後烈火のごとく激怒した高音により折檻を受け今は既に落ち着きを取り戻し借りてきた猫のように小さくなっている。そして全体・武装解除を受けた高音とチャンドラは互いに愛衣にすぐさま調達させたジャージに着替えていた。ちなみにチャンドラは羞恥にまみれた高音の一撃を受けているが何の問題も無く立っている。

 

 「あとチャンドラさん」

 「ああ、俺もムキになっちゃったよ。もう、今は無意味なことなのに、なあ」

 

 うやむやになったのだがそれでよかったと二人は納得していた。

 

 「愛衣ちゃんだっけ? ほら立ってよ。俺は気にしてないし高音さんも許してくれ」

 「いいえ許しませんよ! 軽々しく魔法を使うなんて未熟な証拠です! そんなのでは『立派な魔法使い』になるなんて到底」

 

 高音の説教に愛衣は涙目になりながらも大人しく聞き、しばらくしてようやく解放された。

 

 「ふぅ、今日はこれくらいにしておきます。今後注意なさい。メイ、分かりましたか?」

 「はぁい……分かりましたお姉さま」

 

 しゅんとしながらも愛衣はしっかりと高音に返事をした。それに満足したのか頷きながら高音はチャンドラへ顔を向けた。

 

 「先ほどは私も言い過ぎていました。申し訳有りません。ですがあなたも今後は態度を改めてくださいね!」

 

 謝罪しながらも注意を忘れない高音にチャンドラは苦笑しながら、

 

 「こっちこそ……未だに変なことを考えていたよ。あの方の傍にいるために強くなるなんて……疲れるだけだと気づかせてもらっていたのに……」

 

 遠くを見たチャンドラに二人ともが軽くは無い事情があることをしっかりと認識した。

 

 「ん? あれ。あの桜の木って」

 

 ふと、チャンドラは目に入った一本の桜の木に気がついた。

 

 「へ? 何ですかチャンドラさん?」

 「桜、ですか?」

 

 チャンドラの言葉に二人ともが似た反応をしてその視線の先を見た。

 

 「ああ、あれですか。いつからか分かりかねますが……確か枯れてしまったと私は聞いてます」

 「そういえばあの木だけは桜の花がついてなかったかなぁ」

 

 ふたりの言葉に「そうなの?」といってその桜の木の根元に向かっていった。

 置いていかれた二人も根元まで来ると確かにこの木は枯れていると再認識した。

 

 「この木だけ枝に何にもついてなくて寂しそうですね」

 

 愛衣はその幹を撫でながらポツリと呟いた。

 

 「このまま腐ると突然倒れたりして危険な目に合う人がでかねませんね」

 

 高音はこのまま放置する危険性を考えた。

 

 「すぐに伝えて処理したほうが」

 「必要ないよ」

 

 高音は安全を考えた対応をしようとしたがチャンドラに止められる。

 

 「……どうするつもりですか?」

 

 高音はチャンドラの雰囲気が変化したのを敏感に感じ取った。

 

 「処理するってのはこの木を切るってことだろ?」

 「はい、まず間違いなくそうするでしょう」

 

 高音は真剣な言葉に丁寧に答える。

 

 「だったら必要ない」

 「……どうしてですか?」

 

 これは高音にとって当然の質問であった。遠い未来ではあるが起こり得る危険は忘れないうちに、出来るならば速やかに排除すべきであるからだ。

 

 「この子は……まだ頑張れるから」

 

 そう言ってチャンドラは優しく木の幹を撫でた。

 

 「今から処置する。一週間もすればまたこの子も自分を取り戻すよ」

 

 そう言うとチャンドラは道具の準備でもするのかその場を離れていった。

 

 「わわ、チャンドラさ~ん。待って下さいよ」

 

 愛衣の間延びした声を聞きながら、高音は一体何をするのかとチャンドラの背を追いかけていった。

 

 

 

~~~

 

 

 「わわわ、お姉さま! あの枝の先に!」

 

 一週間後、先の桜の木の根元で元気に声を出す少女愛衣が指を刺しながら高音に声を掛けていた。

 

 「確かに、葉ですね」

 

 その枝先にはまだ一枚だけであったが緑の生き生きとした葉が付いていた。

 チャンドラも己の成果に満足げな笑みを浮かべていた。

 

 「どう見ても枯れていましたのに、どういった魔法ですか?」

 

 高音は微笑みながらチャンドラに問いかけた。

 

 「う~ん、昔からの知恵、母さんの教え……かな」

 

 チャンドラはこの地にて己が出来ること、そしてやりたいことを見つけたような気がした。




次話はすぐに!
原作前年麻帆良祭!……予定
この話は必要だったんですよホント……
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