怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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バトルの勢いが難しいDEATH


第21話:俺はあんたを赦さない【怒】

 「貴様……貴様貴様貴様あああああああぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 瞬動で刹那は距離を詰め、Xに一息で斬りかかった。

 

 「へぇ」

 

 Xは感嘆の声と共にひょいと気軽に回避した。その一振りは地面に大きな傷跡を残すだけで終わる。

 

 「あんたは何がしたいんだ? 木乃香を苦しめたいのかな?」

 「殺す! 貴様はこの場で私が斬り殺す!」

 

 Xの問いには答えず、刹那は目的のみを言葉にする。Xははぁと溜息をつきながら拳を強く握り締めて構えを取った。

 

 「俺を殺す気で来るなら……何があろうと文句は言えないよ」

 

 Xは両手の拳を硬質化させて気を纏わせる、と同時に刹那は再度Xに斬りかかった。

 単純でまっすぐな工夫のない斬撃にXはつまらなそうにそれを捌く。

 

 「そんなんじゃ百年かけたって俺には当たらないよ」

 

 そう言うとXは次々振るわれる剣閃を素手でそらし続けて、

 

 「がっ!」

 

 作り上げた隙を突き、回し蹴りを刹那に放った。刹那はうめき声とともに吹き飛ばされ体勢を大きく崩す。

 

 「何焦ってるの?」

 

 Xはその隙を見逃しながらゆっくりと、余裕を持って、気楽にしゃべりながら吹き飛ばした刹那を無視して木乃香の方へ視線を向けた。真名は咄嗟に間に割って入りじりじりと後退し距離を開けようと動くが、

 瞬間、不可視の何かが周囲を覆う。それはX、刹那だけでなく木乃香、真名、そして明日菜の五人を同一の空間に閉じ込めることになった。

 

 「これは結界か!」

 「これじゃ逃げ出せないね」

 

 焦る真名を尻目にXは笑みを浮かべていた。

 

 「大丈夫、まだやることが済んでないから。それが済むまでは逃げたりしないよ」

 

 周囲を見渡したXは再度木乃香へ目を向ける。

 

 「っ!! させるかぁ!」

 

 刹那は再度、愚直な突進をもってXに斬りかかる。

 

 「神鳴流奥義! 斬岩剣!!」

 

 だがそれは先ほどと変わらない、まさに焼き直しの一振り。大地を大きくえぐるだけの結果しか残さない。

 

 「さっきも言ったけどそんな大振り」

 「神鳴流奥義!! 百裂桜華斬!!!」

 

 だが刹那も考え無しではなかった。

 相手の動きを限定させ、僅かでも手傷を負わすための回避困難な技を繰り出す。

 

 「ははは、油断したよ」

 

 その結果はXの全身に生まれた赤い染みが示すとおりであった。しかしXは余裕を崩さず刹那との距離をとる。

 

 「凄い技だね。そこまでの技は今まで見たこと無かったよ」

 「黙れ」

 

 両者は互いの実力をこの数瞬でいくらか察した。

 刹那はXを高い身体能力を持ち技能をあえて使わずにいる余裕があると見た。

 対してXは刹那を技能に優れているが自らの全力をあえて使わずにいるが余裕無しと見た。

 

 「は~ぁ、あんたはそんなんで俺に勝てると思ってるの?」

 「黙れ!」

 

 刹那はXの言葉に悪い予感を感じ、瞬動を使い距離を詰め、

 

 「神鳴流奥義! 斬空閃!」

 

 剣閃を飛ばしながら力を溜め、

 

 「斬岩剣!」

 

 剣閃の着弾の後にあわせてXへ直接斬りかかる。

 

 「本気を出せよ。そんなんじゃ、俺には効かない」

 「なっ!」

 

 だがXは素手で刹那の野太刀を掴んでいた。

 

 「本気を出せないのかな?」

 

 Xは野太刀を掴んだままで刹那に殴りかかる。

 

 「くっ!」

 

 刹那は野太刀を一瞬離して回避し野太刀とXに掴みかかる。

 

 「神鳴流奥、ぐっ!」

 

 Xはそれに対し無言で刹那を掴み投げた。

 

 「こ、これは浮き雲」

 「それとも、木乃香がいるから?」

 

 そしてXは投げた刹那へさらに追撃をかけんと拳を握り、振り下ろす。

 それは地面を砕き周囲に衝撃が広げることになった。

 

 「で、何で木乃香を避けてるんだ?」

 

 Xは離れたところで息を荒げている刹那へ語りかける。刹那は幸いにも先ほどの拳からは逃れていた。だが九死に一生を得たことから体力気力を大きく消耗したのだが。

 

 「こんな簡単な質問にも答えられないの?」

 「黙れぇ!」

 

 それは同じことの繰り返し。Xの言葉をさえぎるために距離を詰めて斬りかかる。

 

 「やっぱ逃げてるのか」

 

 Xは向かってきた刹那への迎撃に、同じく突進して返す。

 野太刀を振るうタイミングをずらされ、十分な威力の無い斬撃ではXに通じなかった。

 

 「でもなんで逃げてるんだい? だってあんたは」

 「だ、黙れええええええええぇぇぇぇ!!!」

 

 刹那は至近のXに構わず無理やり構えを取り、

 

 「奥義! 百裂桜華斬!!」

 

 周囲を無差別に斬り裂きXを吹き飛ばすが、

 

 「木乃香のことが大好きじゃないか」

 

 Xは全てを無傷で受け止めていた。その時刹那はようやく気づく、Xの纏う凄まじい量の気に。

 

 「っく! 黙れ!」

 

 刹那は一瞬怯むが即座に気を練る。

 

 「神鳴流奥義! 斬鉄閃!!」

 

 いくらか生まれた距離を生かしてXに対して技を放つ。

 

 「へえ」

 「斬空閃!」

 「で? と、あ、痛~~~」

 

 しかし放たれた二撃共にXの手によって止められる。

 

 「なっ!?」

 

 それは余りにもありえない光景であった。

 

 「なぜ! なぜだ!」

 

 Xの両手は無傷のままであった。だがそれが刹那には信じられなかった。

 先ほどから全ての斬撃が無傷で止められているのだ。それがありえない。確かに考えられないほどの実力差があればそれもありえるだろうが、それほどの実力差があるとは思えないからだ。

 ならば、人の身である以上、無傷はありえない。

 

 「簡単だよ。『竜の鱗』に十分な気があれば、無傷で受け流すことくらいできるってのは実験済みだからね」

 

 そう言って無邪気な笑顔を向けながら、腕の皮膚を突き破って鱗のような物を見せ付ける。その異様さに初めて見る者全てが息をのむ。

 

 「何、者だ」

 

 その問いは当然のものであった。

 

 「そういえば、木乃香以外にはまだ名乗ってなかったかな」

 

 そう言うと通る声で宣言する。

 

 「俺の名前はX。怪盗Xが俺の名だ」

 「怪盗、X」

 「そうだよ。あとはそうだな」

 

 Xは鱗を見せ付けた腕を掲げてそれを元の人の腕に戻す。

 

 「ちょっと変わった人間で木乃香の友達だよ」

 

 その言葉を聞いた刹那は身体を微かに震わせだした。

 

 「ふざけるな……ふざけるな、ふざけるなあああああああ!!」

 

 爆発させた叫びと共に刹那はXに斬りかかる。

 

 「ふざけるな! 貴様が! 化け物が! 何をのたまう!」

 

 刹那は我武者羅に刃を振るうがその全てをXは容易に回避する。

 

 「どう見ても! 貴様は! 化け物だああああ!」

 「いいや、俺はただの人間だ。ちょっと変わってるだけのね」

 

 刹那はXの言葉を必死に否定する。あんな力を持った者を人間とは認めない、認めるわけにはいかないからだ。

 

 「貴様が! 人間なわけが無い! 人では無い!」

 「じゃああんたは何なんだよ?」

 

 その声と共にXは刹那の振るう刃を弾いて拳を胴に打ち込む。刹那はうずくまり多大な隙を作るが、Xはただ距離をとる。

 

 「ほら、答えてみろよ。あんたは、何なんだ?」

 「わ、私は……」

 

 刹那は答えに詰まる。

 

 「俺は人間だ。自信を持って言える」

 

 その宣言と共に背中に真っ白な翼を作り上げた。

 その光景と共にXは嗜虐的な笑みを浮かべ、刹那はただただ呆然とする。

 

 「俺は人間だ。でも、あんたは自分をこう思ってるんだ……『化け物』と」

 

  鱗を生み出した腕、白い翼をつけた背、コレを持つXは自らを人間と言い、何の変哲も無い刹那を化け物と評した。

 

 「木乃香は人間だ。化け物はお呼びじゃない」

 

 この言葉を発した瞬間、刹那の纏う空気が変わる。

 

 「だ、まれ……黙れ、黙れ、黙れ! 黙れええええ!」

 

 刹那は近くに落ちていた太刀を拾い、二刀でもってXに斬りかかる。

 

 「奥義! 斬岩剣、二連!!!」

 

 それは二刀による連撃。しかもこのとき莫大な量の気を消費して威力をただの片手とは比べ物にならないほどに上げていた。

 

 「うっ!」

 

 Xであっても準備無しに連撃を全てかわしきることは出来ない。また、威力が桁違いになっているため受け流すことも出来ない。

 刹那はついに十分な一撃をXに与えたのだ。Xの表情が痛みにより若干歪む。しかしすぐにXは距離をとりカウンターを狙った。

 

 「貴様のような奴に! 分かるわけが無い! 斬空閃!」

 「あっ」

 

 Xは飛んでくる斬撃に間抜けな声をだし、慌ててそれをかわす。だが、

 

 「斬岩剣!」

 

 刹那は一気に距離を詰めて斬りかかって来ていた。しかし紙一重でXはそれを両手で受け止める。

 

 「っ! 二連!!」

 

 だが刹那は即座にもう一方の太刀を振るいXを斬った。だが浅い。普段刹那が使っている野太刀より短い太刀であるため距離を見誤ったのだ。

 Xは即座に距離をとる。だが刹那は気を限界まで消耗してしまい動けないでいる。さらにそれだけでなく無理をしたため息を限界まで荒げ、膝を笑わせていた。

 

 「そう、だ。私、は、はっ、化け物だぁ!」

 

 だが刹那は刹那は翼を解放して力を無理やり捻り出した。

 

 「斬空鉄閃!!」

 

 二刀から二つの技を同時に繰り出す。結果広大な範囲を襲う遠距離攻撃にXは影響圏から我武者羅に退避する。

 

 「斬岩剣! 交差ぁ!」

 

 しかしその動きも見逃さずに、刹那は解放して跳ね上げた力を存分に使い、距離を詰めて斬りかかっていた。

 同時に放つ一刀と同等の威力を保たせた二撃。だがXはかわせないと気づくと傷をいとわずに両手でそれを掴み取る。動きが止まるのを見て鮮血が舞いながらもXは不敵な笑みを浮かべた。

 

 「はぁっ!!」

 

 だがそれも一瞬。刹那は即座に普段の一刀に持ち替え、全力でXの片腕を斬り飛ばす。

 

 「ふぅん」

 「百裂桜華斬!!」

 

 Xは暢気な声を上げながら全身を刻まれた。

 

 「化け物だから木乃香を悲しませるの?」

 「違う!」

 

 Xは血にまみれながらも距離をとろうとするが、刹那はそれに追いすがる。

 

 「お嬢様は! こんな私に! 優しくしてくれた!」

 

 刹那は幾度も太刀を振るうがそれはどれもがXの首を狙っていた。それにより速さ、鋭さが増した刹那の剣から完全に逃れるには大きく回避する必要が生まれていた。

 

 「それが! 何も! 知らなかったからだとは! 理解している!」

 

 刹那の野太刀を握る力がいっそう強まる。

 

 「でも! それで! 私は! 救われたんだ!! 雷鳴剣!!!!!」

 

 帯電した刃が掠り、Xはその身を一瞬硬直させた。

 

 「お嬢様の平穏を守るために、私は……傍にいてはいけないんだぁ!!」

 

 刹那はXの身体に素早く斬撃を加えXを吹き飛ばす。

 血が舞う。

 だが刹那はまだ止まらなかった。

 Xは片手に持ったままになっていた太刀を刹那に投げつけて手を自由にする、が刹那はそれを弾いて空に跳ね上げ飛翔すると二刀を構えた。

 

 「私のいる場に! お嬢様を! 近づけさせるわけには! いけない! 知らせる! わけには! いけない! 守るために! 私は! 私はぁぁぁ!!!」

 

 手の出し様の無い上空で刹那は力を溜め、Xはただ黙ってそれを待つ。

 

 「双刀! 雷鳴剣!!!」

 

 そして、急降下して電撃を纏う二刀をXに振るい斬り刻んだ。Xはゆっくりと身体を傾けていく。

 

 「うち、かて……このちゃんと」

 「ほら」

 

 かすれた声での刹那の呟きにXは何の気なしに答え、

 

 「それが本音だよね」

 

 いつの間にか体勢を直したXは刹那の顔面を殴りつけ、さらに木乃香のいる位置の近くにまで届くように蹴り飛ばした。

 

 「あんたも木乃香が大好きなら、秘密なんか作らなきゃ一緒にいれたのに」

 

 木乃香の足元に倒れた刹那はその言葉に怒りを滲ませる。

 

 「黙れ! そんなの! できるわけが無い! 許されるわけが無い!」

 

 刹那は身体を起こして斬りかかろうとするがろくに力が入らず、全身に激痛がめぐった。どうやら先ほどまでの無茶がたたり、今反動が来ているようだ。そして背の翼も消えている。

 

 「そんなの気にしなければ良かったのに」

 

 Xの何の気なしの言葉に刹那はひたすら怒りが溢れる。しかし身体が動かせないためもどかしさばかりがつのっていた。

 

 「私は化け物なんだ! お嬢様と! 違う!」

 「へぇ、何が違うんだ? あんたは何を見てそう判断したんだ?」

 

 Xは刹那に近づきながら話しかける。

 

 「木乃香はあんたの何を見てたと思ったんだ?」

 

 刹那を足元に見下ろすまで近づいていた。

 

 「俺も驚いたけど、木乃香は外身なんかよりも、中身を大切にするんだ」

 

 Xは静かに語りかける。

 

 「俺は自分を人間だと思ってる。でも俺の外身はどう見ても化け物だ。誰が見てもそう言うよ。でも、木乃香だけは違った。今までたくさんの人間に会ってきたけど、ただ一人、木乃香だけは違ったんだ」

 

 Xは溜息を一度つく。

 

 「木乃香が中身を大切にしているのに、友達だったら気づかないと」

 

 Xはそう言い終えるともういいのか近くの木にもたれかかり誰かに視線を向けた。

 

 「せっちゃん!」

 

 X以外は驚く。木乃香は刹那の傍に駆け寄り、腰を下ろしおずおずと膝枕をした。

 

 「せっちゃん……」

 

 再び刹那の名を呼んだ木乃香の目には涙が溜まっていた。

 

 「ごめんな、せっちゃん。うち、せっちゃんが悩んでたの何も知らんかった。せっちゃんが、苦しんでたのに、何も知らんと、自分勝手に、せっちゃんを、傷つけてた」

 

 木乃香は声を震わせ、申し訳なさそうに話しかけていた。

 

 「でも、うち、それでも、せっちゃんと、友達で、いたいんよ」

 

 木乃香は何とか笑顔を作るが涙は溢れ続けている。

 

 「なにがどうなっても、かまへん。せっちゃんがうちを嫌いでも、うちはせっちゃんが、大好きや。せっちゃん、今まで、傷つけて、ごめん、うちを、許して」

 

 木乃香は必死に、心から、今まで刹那の心に気づけなかったことを謝罪した。

 

 「そんな! このちゃんを嫌いになんてならへん! 許すも何も、うちが、今までこのちゃんを信じられんと、嘘ばっか吐いて! 逃げてばっかで!……ごめん、このちゃん」

 「うちは気にしてへんよ。また、昔みたいに、一緒に、いてくれるだけで」

 「このちゃん……」

 「せっちゃん、また明日、一緒に麻帆良祭、回らへん?」

 「このちゃん……うん」

 

 安らかな笑顔で木乃香と刹那は友達としての約束を交わした。

 その中で、非常に非っっっっっっっっ常に居心地が悪そうにしている二人がいた。

 

 「龍宮さん、どうする?」

 「黙ってるしかあるまい」

 

 急展開にただただ静かにしているしか出来ない。完全に二人の世界が生まれていたのだ。

 

 「あーよかった」

 

 木乃香と刹那が静かになったのを見て、Xは傷口をさすりながら転がっていた片腕を拾い、二人に近づいていった。

 

 「怪盗、X!」

 

 その姿を見た刹那は再び怒りに表情を歪ませた。

 

 「俺の名前はさっき言ったけど、あんたの名前を聞いてないよ? 教えて?」

 「貴様に名乗る必要があるか!」

 

 Xの軽い言葉に刹那は怒りを向ける。

 

 「えー、だって俺は木乃香の友達であんたは木乃香の友達で」

 「だからどうした! 私は! 貴様を許しはしない! お嬢様をさらったのを! 忘れたとは言わせん!」

 

 刹那はろくに身体を動かせないが十分に大きな怒声を放っている。

 

 「せっかく痛い目をみてまで木乃香のためにキャラじゃないことまでしたのにな~」

 「それがどうした! 礼でも言われると思ったのか!」

 

 Xの言葉にひたすら怒りをぶつける。

 

 「覚悟しておけ! 私が必ず貴様を斬」

 「そんな怪我してまでありがとーなーXー」

 「お、お嬢様!?」

 

 Xに対して敵意を向ける刹那であるが木乃香の素直さに戸惑いを見せる。

 

 「うん、別にいいよ。俺が好きでやったことだし」

 「でもホンマに大丈夫なん?」

 「大丈夫だよ。全身の神経を電撃で焼かれたときに比べたら全然」

 「あははーそれやったらそうやなー」

 

 談笑する二人を見て刹那も戸惑う。そしてXに違和感を覚えた。

 

 「貴様、何で平気なんだ?」

 

 そう、刹那の全力を何度もその身に受けているにもかかわらずXは今現在まったくそれを感じさせないのだ。

 

 「それはそうだよ。中身にはほとんど通ってないし、ある程度はもう回復したからね」

 

 その言葉に刹那は呆然とした。つまりXには自分の全力が通じていなかったことになるからだ。

 

 「……斬る」

 「せ、せっちゃん!?」

 

 刹那は痛む身体を叱咤し野太刀を杖にして立ち上がり、そしてXに刃を向ける。

 

 「斬る! 私は貴様を斬る! 私は! お嬢様の護衛として今まで生きてきた! お嬢様をさらった貴様を! 必ず斬る!!」

 

 膝が笑っているがXはその刹那の宣言を聞いて笑みを浮かべた。

 

 「めんどくさいなぁ」

 「黙れ!」

 

 Xは面倒だと言いながらも笑みを浮かべたままである。そしてある言葉を思い浮かべて、

 

 「進化か……」

 

 ぼそりとXは呟いた。

 

 「じゃあもっと強くなりなよ。今のあんたじゃ、俺の全力に耐えられるとは思えないから」

 「あたり、まえだ!」

 

 そう言うと刹那はその場に崩れ落ちた。すでに限界を突破していたのだから当然である。

 

 「せっちゃん!」

 

 木乃香は焦りを見せるが刹那は安らかに眠っているだけと気づきすぐに安堵した。

 

 「木乃香~」

 「なんやX~」

 

 Xの緩い言葉に木乃香が反応したとき、

 

 

パリン

 

 

 何かが砕ける音と共に大量の殺気がXに降り注いだ。

 

 「怪盗Xは僕が受け持つ! 皆は生徒を!」

 

 そう言葉を発した中年の男、高畑はポケットに手を突っ込みながらXに相対した。

 

 「がっ! ぐぅ!」

 

 直後、不可視の何かに弾かれるようにXが体を崩したたらを踏む。

 それによって生まれた隙を、高畑は逃さない。

 

 「右手に気、左手に魔力、合成!」

 

 そして準備を整えXを狙う。

 そして生まれる凄まじい殺気。Xはそのすべてを見ながら回避動作が間に合わないと悟る。

 

 「まずい!」

 「豪殺居合拳!!!」

 

 そうして放たれる究極技法からの必殺。

 砕けた結界の中で轟音が響き渡った。




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