怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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やっと……やっと書けた


第3話:俺のいた所のドSはこんなものじゃ【呆】

 一瞬で距離を詰めたXはエヴァンジェリンの腹に一撃を加えんと突きを繰り出す。だがそれは届かない。エヴァンジェリンの効果的なバックステップにより回避される。高速で繰り出された一撃も見切られていれば簡単に回避されるのである。エヴァンジェリンの持つ600年もの戦闘経験は伊達ではない。鉤爪のような獰猛な両手に変化しているがあたらない。

 そしてただ腕をむやみやたらに振り回しているだけの単調な攻撃は見に回ったエヴァンジェリンの前には無意味である。

 次々に連撃を繰り出すが全て回避される。そしてXの攻撃は一分と経たずに終わりを迎えた。

 

 「ふん所詮その程度か」

 

 この一言と共にエヴァンジェリンとXとのやり取りに茶々丸の横槍が入る。

 

 「どうやら期待はずれのようだな。だが貴様はこの私にケンカを売った。楽に死ねると思うなよ」

 

 この一撃で攻防が入れ替わった。

 

 「茶々丸、いたぶれ。まずは手足を動かなくしろ」

 「了解しましたマスター」

 

 Xの攻撃は単純なもの。威力はあるが直線的で予兆も分かりやすい。茶々丸にインプットされてるいる格闘技術を活かし、全身の動きを詳細に見ていれば、攻撃をかわし体を崩し一撃を加えるなど造作も無かった。

 それを繰り返されたXの体に血が滲み出す。

 

 「どうしたんだ侵入者? 私は碌に手を出していないぞ」

 

 Xは目の前の茶々丸を見ていて答えない。

 

 「もういい決めろ茶々丸」

 「了解しましたマスター」

 

 その声と共に茶々丸はXの体を大きく崩す。その隙を突きエヴァンジェリンは魔法を放つ。

 

 「氷神の戦鎚(マレウス・アクィローニス)!!」

 

 魔法薬を消費して放たれた巨大な氷塊は丁度Xの真上に現れる。

 Xを押しつぶさんと放たれたそれは、

 

 「茶々丸何を!」

 

 Xの身代わりなるように動いた茶々丸が受け止めていた。

 

 「何をしている!」

 

 茶々丸は虚空を見つめながら答える。

 

 「マスター! お逃げ下さい!」

 

 その声にはじかれるように茶々丸とXはエヴァンジェリンに肉薄する。

 

 「へぇ。ロボットに電子ドラッグを使うとこうなるんだ」

 

 Xは実に興味深そうに言葉を発する。

 

 「意識ははっきりしている、自我もはっきりしている、たださっき与えた命令を忠実に行う。うーんあんまり好きじゃないなあ。でも人間用だったのを適当に改造した奴だから仕方ないか」

 「ぐ、ぅ、貴様ぁ!」

 

 エヴァンジェリンは一瞬で窮地に立たされた。茶々丸の正確な攻撃とXの思いも寄らぬ一撃を捌ききれないでいる。組み込まれている無駄の無いお手本のような攻撃、思うがままの動物的な攻撃。攻め手が二倍になり繰り返される攻撃が徐々に追い詰めている。

 

 「とりあえず少し見せてよ。自分の中身は分かっているけど観察するのは怪盗Xのライフワークだから、さ!」

 

 そしてXの一撃が腹に突き刺さる。

 

 「ガハッ!!」

 「マスター!」

 

 茶々丸は苦悶の声を聞きながらもエヴァンジェリンを押さえ込む。

 此処に勝負は決し、観察のための準備が始まった。

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

 

 「……マスター申し訳有りません」

 「気にするな。自由意志がなくなっているのはそのちぐはぐさで分かる」

 

 魔法使いと従者が交わす言葉は何の変哲も無い謝罪と赦しだ。ただ従者魔法使いを羽交い絞めにし、魔法使いはただ大人しく目の前で行われていることをため息混じりに見ていた。

 

 「やっぱり肉体的には人と大差はないなぁ。自己修復が俺みたいに少し強いくらいかな。でもそれだけであの魔法? が使えるのはなにかまだ見つけてない理由があるんだよな」

 

 目の前で行われているのは観察。Xはエヴァンジェリンの腹に腕を突き刺し、手の先を目に変えて観察しているのだ。当初は身体の中身の一部を取り出して観察しようとしていたのだが今(・)のエヴァンジェリンでは耐えられない。そのためにこんなサイコちっくな絵面になっている。ちなみに痛覚に関してはXがエヴァンジェリンの痛覚を誤魔化すように腹に腕を突っ込んでいるため問題ない。

 

 「まあやってみれば足りないものはわかるかな」

 

 そう言うとXはエヴァンジェリンを正面からエヴァンジェリンの全身を観察し、

 

 「っ! 気も魔法も微塵も感じさせずに……」

 

 エヴァンジェリンに姿を変えた。

 

 「ふ、う。やっぱり小さい身体になるのは負担がかかるな、でも俺が見た限りあんたと同じにはなれたはずだよ」

 「っ! 私の顔と声を勝手に使うな!」

 

 まったくの瓜二つ。見た目も雰囲気もXは完全にエヴァンジェリンになった。

 

 「たしかこうだったな」

 

 そう言ってXは近くにある木に向かって、

 

 「氷神の戦鎚(マレウス・アクィローニス)!!」

 

 魔法を放った!

 ……放ったはずだった。

 エヴァンジェリンは確かに感じた。魔力の流れを。しかし足りなかった。

 

 「あ、れ」

 

 エヴァンジェリンが使っていた魔法薬が足りなかった。結果起こったのは不発と魔力切れ。Xはその場に倒れて気を失った。

 

 「……判断に迷う有様だな」

 「単純に知識の不足が原因だと思います。しかし今の姿はマスターと見分けをつけることが出来ません。魔法よりも完璧に他人の姿をとっています」

 「ふむ、興味深い。頭は馬鹿だが有り方は破天荒この上なく、そしてこの異常すぎる力か……」

 

 エヴァンジェリンは先ほどまで持っていた殺意を霧散させていた。これはいうなれば子供に本気になって怒るのは大人気ないという意地やプライドに似たもののおかげである。

 

 「ところで茶々丸、いつまで羽交い絞めにしているのだ?」

 「……申し訳有りませんがあの暗示が説かれるまでです」

 

 こうして二人はしばらく互いにある意味拘束されたまま過ごすのであった。

 

  




さて次はおなじみのバルタンだ
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