怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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第32話:あせり【時】

 「情報規制はかけているカ?」

 

 超は現在隠しておいた非殺傷性の装備の準備を行いながら、パソコンに向かう葉加瀬に確認のための声をかける。

 

 「いいえ。ロボ研から既に情報が拡散して手の打ち用はありませんでした。ただ茶々丸に関しては完全に秘匿しています」

 

 葉加瀬の答えに超は胸を撫で下ろす。この件がエヴァンジェリンに知れたらどのような行動に出るかと想像する。

 最悪はキョージュの命にもかかわりうるのだ。

 

 「そうなんですよ、しかも状況から何者かに連れ去られた以外にありえませんのでエヴァンジェリンさんが知ったら確実にキョージュの犯行だとみられるでしょうし……」 時間的余裕も人手もなし。

 だがそれでもどういうわけか超の表情は獰猛な笑みを浮かべたままだ。

 

 「超さん、どうしたんですか?」

 「もとよりキョージュには制限は多いヨ。時間もさることながら場所、機材、どれも容易に準備できるものではないネ。ならばキョージュが目的を達成できうる現在の居場所の特定は難しくないヨ」

 

 超の言葉に葉加瀬ははっと気が付くと同じように深い笑みを返した。

 

 「特定を急ぎます……五分できめましょう」

 

 そういう葉加瀬は素早く麻帆良全域の隠密作業と盗電、そしてそれらが可能な最も遠い地下空洞を調べる。

 

 ようは物事は単純なタイムアタックなのだ。

 超が気づきキョージュの行為を止めるまでにキョージュが決着をつけるか。はたまたエヴァンジェリンに全てを終わらされるか。

 すべて時間の問題であり時間こそが問題だったのだ。

 

 「超さん! 機材搬入、電力の確保が可能な最も長い地下道を特定しました!」

 「ハカセも装備を整えるネ。キョージュと茶々丸以外サーチアンドデストロイで行くヨ!」

 

 

~~~~~~

 

 

 

 「制圧、完了」

 

 ついに超の研究室を掌握し全ての武装、戦闘技術を我が物とした。

 

 最後の砦、茶々丸の人格の根幹のある場所、エヴンジェリン邸。

 【それ】は最後の制圧にかからんとし、

 

 「っ!」

 

 突如無機質な形状の攻性プログラムに襲われた。

 そしてそれは一体だけではない。次々と沸きだし【それ】を取り囲む。

 しかし表情に焦りは見えない。

 

 「なるほど」

 

 その呟きと同時に攻性プログラムが同士討ちを行なった。

 瞬く間にプログラムが崩壊し消え去っていく。

 

 「バグが産まれたようですね」

 「いいや。ワクチンだよ。」

 

 今まで『それ』が見たことのない人物がそこにはいた。

 外見年齢二十代後半、肉体的には決して屈強とはいえない研究者の雰囲気を出す青年。

 

 「茶々丸君にこんなバグが発生していたとは驚きだ」

 

 かつて0と1の世界を掌握した電人の姿そのままで、『それ』の前に姿でHALが立っていた。

 

 「いったいあなたは……」

 

 突然の出現に【それ】は生まれて初めて狼狽えるという反応を示す。

 現在外部からの干渉を完全に断っており、仮に無理やり干渉しようものならすぐに察知が可能であったはずだからだ。

 

 「単純な話だ」

 

 HALは【それ】との距離を詰めだした。

 

 「『0と1の世界』を君より習熟しているにすぎん」

 

 その言葉と共に世界の色がHALを中心に変わり始める。

 それは【それ】の干渉の及ばなくなったことを示すものであった。

 

 「さて、茶々丸君の中から早急に消えてもらおう」

 

 その言葉と共に、【それ】は周囲を十体もの攻性プログラムに囲まれていた。

 とっさに退避しつついくつもの防壁を構成する。

 本来であればあらゆる攻撃手段を完全に防ぎきれる強度であったはずなのだが、襲い来るプログラムがまるで紙のように切り刻んでいく。

 明らかに並みの組み方の攻性プログラムではないのだ。

 レベルではなく次元が違う質である。

 

 「逃げる防ぐだけでは時間の問題だよ」

 

 しかしHALの言葉に【それ】は一切動揺を示さなかった。

 【それ】はそれを観察し予定調和のように自身が攻性プログラムを作り出す。

 ちょうど茶々丸の持つ射撃、近接戦闘のプログラムを組み込む形で。

 

 「では反撃をしましょう」

 

 生み出したのは百にも及ぶ茶々丸をかたどった攻性プログラム。

 半数がHALの生み出したプログラムを破壊、残りがHALの身柄を押さえんと急襲する。

 HALの生み出したプログラムを圧倒する物量であった。

 

 「残念だ……」

 

 その光景にHALはポツリとつぶやく。

 

 「すでにこの世界は戦闘力による攻防ではなく陣取りによる攻防になっているのだよ」

 

 【それ】側が破壊したHALのプログラムが、その周囲の世界の色を書き換えていく。

 【それ】は即座に距離を取るが、自ら作り上げたプログラムは崩壊し、世界に解けていった。

 

 「さて、君は今どれほどの領域を支配している? 99%か? 98%か? そのすべてを奪おう。 君が支配していい領域ではないのだから」

 

 

 

 

~~~~~~

 

 

 

 「右前方側道より三体来ます!」

 「弾幕で足止めたのむヨ!」

 

 人気のないはずの地下水道にて金属音と爆音銃声が轟いていた。

 明らかな戦闘音。その戦火の中心に超とハカセはいた。

 両者共に動きやすい服装、そしてハカセは様々なマジックアームを駆使しつつ多脚戦車とでもいうべきものに乗って火器管制を行い、超は前衛として襲い来るタナカさんシリーズを破壊していた。

 ハカセがメイン火力、超がその穴を埋めるという構成である。

 

 「見事に大当たりだたけどキョージュは容赦がないネ!」

 「でもタナカさん完全に時間稼ぎの捨て駒ですよ。しかも駆動系の諸問題が完璧に改善されてますし」

 

 二人がキョージュの潜伏場所としてあたりをつけた地下水道は少し進んだところでタナカさんシリーズによる足止めが始まったのだ。

 そのおかげで地下水道の攻略は遅々として進んでいない。

 しかしだからと言って止まりはしないのがこの二人であったが、その表情には焦りが終始消えはしなかった。

 

 

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