怪物強盗は好き勝手に生きるそうです   作:アシダカ伍長

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バタフライエフェクトはどこまでも広がる!


第8話:これは敵わないなあ【友】

 「木乃香は魔法って使えるの?」

 

 車両の座席に座り、向かい合う木乃香とXは雑談をしていた。

 今二人がいるのは京都行きの新幹線の中、Xは暇つぶしに取り留めのない思いついたことを聞いていた。

 

 「魔法? 使えたらええなあ」

 

 木乃香も適当に流さずちゃんと話を聞いていた。しかし今の話題は非常にまずいものである。しかし二人に自覚はない。

 

 「へえ、あそこにいてもみんなが使えるわけじゃないんだ」

 「Xは使える人を知っとんの?」

 「ん? たしか……エヴァンジェリンって名前だったっけ?」

 

 少々曖昧な返答だったがその名前を聞いて木乃香はXに顔を寄せてより話を聞く体勢になった。

 

 「うちエヴァちゃんのこと知っとるよ。Xも知り合いだったん?」

 「今日初めて会ったんだけどねー」

 「そうなんか」

 

 いつの間にか、向かい合っていたはずのXと木乃香は隣り合って座っていた。

 

 「(しかし特に裏を持っているわけじゃないのに、木乃香と話しているとついつい色々話したくなっちゃうなあ。木乃香は弥子と違ったタイプの人の中に入ってくるのが上手い人間だ)」

 

 Xは木乃香と言葉を交わすたびにどんどん毒気が無くなっていくような、何か温かいものが入ってくるような気持ちになっていった。そしてよりいっそうの興味が湧いている。これこそが木乃香の本領とでもいえるものだろう。

 

 「Xって変装が得意なんやろ? あれって誰にでもなれるん?」

 

 そう聞いてきた木乃香にXは木乃香の今までの反応を思い出し、

 

 「うんなれるよ、こんな風に」

 

 木乃香の目の前で見せ付けるようにじわじわと木乃香の姿に変わっていった。

 

 「ほんますごいわ~、Xって芸達者なんやな」

 「……芸達者ですますんだ。驚いたりビックリしたりはしないんだ」

 「そんなことないえ~今も驚きっぱなしや」

 

 Xは木乃香のような反応を示す人とは会ったことがなかった。初めて会った時から一貫した反応はアイの時にもなかったものである。初めて正体を知った人はまず驚きや恐怖、否定などを示していたからだ。だが木乃香はその存在にたいして普通の人に対するものと変わりはなかった。明らかな異形であるにも関わらずだ。

 

 「怖いとかそういったものは感じないの? 俺が普通じゃないってのはさすがに分かるよね」

 

 Xは刺々しさを含ませた尋常じゃない雰囲気、さらにあ若干の殺気もにじませて木乃香を威圧しだす。未知の対応をする未知な存在。アイという存在を知ってなお全く知らない対応にXは冷静さを欠きだしていた。

 

 「あーん、そんな怒らんといて。なんて言うんかな? どんな姿になってもXはXやし、怖いとかましてや嫌いやーなんて考えたりせえへ……!!」

 

 Xは木乃香が言い終える前に木乃香の首をつかみ持ち上げていた。この行為に周りの乗客たちもざわめく。

 

 「俺の名前はX、怪盗Xだ。あんたは知らないみたいだけど、怪盗ってのは怪物強盗を略したものだ。これはみんながそう名付けたんだ。そして、そう呼ばれるくらいに俺は怪物で恐怖されているんだ。あんたをこのまま殺すのだって簡単だ」

 

 Xはそう言いきると首から手を離した。木乃香は咳き込みながらその場にへたり込むがXはそれをただ見下ろしている。

 

 「あんたは俺を見て何を感じたのか、何を考えたのか、あんたの言葉で聞かせてよ」

 

 会ってたいした時間もたってないのに木乃香はXを信頼しているようだった。Xは簡単に人を信頼した木乃香を警戒したのだ。そして木乃香が今のXにどんな言葉を発するのか、どんなことを考えていたのかを聞いて判断しようとしている。その言葉しだいでは命を刈ることも考えていた。そしてXは記憶を直接読むことをしないでいた。なぜそうしたのかはXにも分からなかったが。

 

 「Xのことはうちはそんなに知らへん。でも分かることがあるだけや」

 

 木乃香は首をさすりながら優しく微笑みながら話す。

 

 「Xって実はさみしんぼさんで、それにちょっと変わった何も知らへん子なだけなんやろ」

 

 予想外の言葉にXはただ黙って聞くだけである。

 

 「目は口ほどにものを言うゆーてな、Xの目を見てれば簡単や。Xはさみしんぼさん」

 

 いつの間にか木乃香は座りなおしてXを見ていた。

 

 「なんでも分かるわけやあらへんけどな、Xはまだ子供なんや。なーんもわからへんから何やってもしゃーなしや。きっとだれも叱ってくれへんかったんやろ」

 

 この木乃香の見解は正しい。Xは記憶もなく世間を自分勝手に動き回っていたのだから。アイもXを躾ける気なんぞ無く、その正体を知りたがっていたが故になんでもやらせていたのだ。

 

 「聞いた話なんやけどなー、子供は自分を見て欲しい時はイタズラばっかするんやてー」

 「……俺がやってたのはそのイタズラだって言いたいの?」

 「せやー」

 

 Xはやや呆れたような表情になるが木乃香は気にせず続ける。

 

 「それにXとはもう友達やし、せやから何があっても嫌ったり怖がったりせーへんよ」

 

 Xはこの言葉にふと考えをめぐらす。

 

 「(友達か、アイとは全然違うなあ。俺を見て最初からこんなことを本気で思って、言ってくるなんてなあ)」

 

 心からの言葉だとXは簡単に読み取った。自身ことを簡単に受け入れる木乃香にXは不思議な気持ちになっていた。そして木乃香には力で勝っていてもそれ以外ではどうにも勝てそうにないと思ってしまった。

 

 「ふうん……分かったよ木乃香の考えはもう十分だよ。もうへんなことはする気は無いから」

 

 Xはあーあと疲れたように背もたれに身体を預けて天井を見上げた。すると、

 

 「せや、X~てい!」

 

 と、どこから取り出したのか金槌でXの頭を叩く。

 

 「手を出したらまずゴメンナサイや、特に先に手を出したらあかんよ」

 

 そう言って木乃香はXに指導した。Xは特に痛みは無かったが呆けてしまった。

 

 「(ゴメンナサイか、アイには一度も言わなかったなあ。でもこんなふうに注意されたのは初めてだ。アイには怪盗キャラとして動けとは注意されたけど)」

 

 Xは木乃香をじっと見返した。木乃香は変わらない笑顔のままである。

 

 「わかったよ。木乃香、首絞めてごめんなさい」

 

 Xはそう言って頭を下げた。

 

 「うんええよ」

 

 こうして木乃香とのやり取りは一旦落ち着いた。結局Xは終始、木乃香に手玉に取られたような気持ちになっていた。なんの力も無い木乃香だがXは敵わないとも思っていた。だがXは不思議とそれを受け入れている。

 それはもしかしたら今は欠けている『怪盗X』に必要な『I』にいつかつながるかもしれないがそれは誰もわからなかった。

 でもそこはX、受け入れても木乃香にやられっぱなしでいられない。Xはこんどは木乃香の心に潜む暗い部分に触れることにした。

 

 「そういえば木乃香は刹那と何かあったの?友達なんだよね?」

 

 Xは詳しく知らないがコレは木乃香の弱点であることは分かっていた。そしてそれは「正しく、木乃香の明るい笑顔に影が差した。

 

 「あははー色々となー」

 

 木乃香は答えずにただあははと笑うだけであった。Xはその反応だけで木乃香も自分と同じ人間であると確認でき満足した。

 

 「ふーん」

 

 そして興味を持った。木乃香の触れて欲しくない部分に。X自身を受けいれることができもた木乃香にも消極的になることがあることに。そしてそれを知りたいとも。しかし、

 

 「(無理やり視るのは……木乃香にはやりたくないなあ)」

 

 Xのことを知っている人ならば驚愕するようなことを考えていた。それはXが木乃香をアイやネウロみたいな特別な存在と見たことが理由であった。

 

 「(まあいいか、木乃香の弱みも見れたし)」

 

 Xはそれだけで満足したようである。木乃香を過剰に苦しめるつもりは無いのだ。それでもいつかは知りたいとは考えている。

 

 「木乃香を嫌う人なんてそんなにいないと思うけどねーもっと積極的になってみれば?」

 

 Xはよっぽどのことが萎えれば回り道を面倒くさがる。それ故に特別なことがなければまっすぐに突き進むのだ。それゆえのXなりの助言をかけたのだ。

 

 「せやなー……うちもうちょいがんばってみるわ」

 「あはは、やぱり何かあったんだー」

 「あははー何やろなー」

 

 互いに笑いながらはぐらかしてこの会話は終わった。

 そしていつの間にか新幹線はちょうど京都に到着していた。二人は外に向かいながら、

 

 「それにしても京都か、俺全く覚えてないんだよな。来たことはあると思うけど」

 

 Xは京都で何をしようかと考えていた。Xがは京都のことはほとんど覚えていない。興味はないしその辺りの管理はアイが行っていたからだ。

 

 「そうなんか、やったらうちが色々案内しよか?」

 

 木乃香はいつもどおりの雰囲気に戻っておりXに提案した。

 

 「うーんそうだな、それじゃお願いするよ木乃香」

 

 Xは木乃香の提案に賛成した。Xは断る気にならなかったのだ。木乃香の好意が素直に嬉しかったからである。そして木乃香は友達想いである。さみしんぼと評したXと一緒にいてあげようという好意から提案したのだ。

 こうして、Xと木乃香の京都旅行は、

 

 「こんばんわこのか君、ずいぶんと探したよ」

 

 担任の高畑がホームに現れることによって終わりとなった。

 

 「え? あ、高畑先生こんばんわ」

 

 木乃香は高畑の出現に一瞬驚いたのだがすぐに挨拶を返した。

 

 「X~この人は高畑先生ゆうてうちの担任の、あれ? X~」

 

 木乃香はに高畑を紹介しようとしたのだが近くにいたはずのXがいなくなっておりどこに行ったのかと周りを見渡しながら呼びかけた。

 

 「見つかっちゃったなあ。あんたとやりあうのは構わないけどここでやりあうと目立っちゃうし何より木乃香に迷惑をかけちゃう。一旦この場は逃げることにするよ」

 

 Xはいつの間にか新幹線の上に飛び乗っており、そこから高畑を見下ろしながら声をかける。

 

 「じゃあね木乃香、次にあった時を楽しみにしてるよ」

 

 Xはそう言ってその場から姿を消した。高畑は秘匿の観点からこの場での無力化、捕縛は不可能と判断しており木乃香の保護だけを考えて大人しくXを見逃した。

 

 「……このか君、それじゃあ麻帆良に帰ろう。学園長もお冠だったよ」

 

 高畑は今の木乃香の言動から自らの意志でXと行動を共にしていたと判断した。そしてそれは間違ってはおらず、木乃香はバツの悪そうな顔をした。

 

 「えっと、おじーちゃんやっぱ怒ってるん?」

 「随分とね」

 

 この返しに木乃香は少し汗を流しながら笑って誤魔化そうとしたが、高畑は木乃香とXはかなり親しい関係になっていると内心驚いていてそれどころではなかった。

 

 「このか君はどうしてXと一緒に京都まで来たのかな?」

 

 高畑は一応最低限確認しておきたいことを気お会い問いただした。

 

 「え、うーんXがさみしんぼさんやったから、一緒に遊ぼうと思ったんやけど、麻帆良はなんか行きたくなさそうやったし京都に興味を持ったみたいやからつい……高畑先生ごめんなさい」

 

 木乃香は自分が迷惑かけていたと自覚しているため素直に謝った。高畑はそれには何も答えず近右衛門に連絡してそのまま麻帆良にとんぼ返りとなった。

 こうして近衛木乃香誘拐事件は静かに幕を下ろしたのだった。

 

 

 

~~~

 

 

 

 「関東魔法協会で木乃香お嬢様に関する問題が起きていたのか?」

 

 京都に降り立った一人の男が東京行きの新幹線に乗り込む二人、高畑と木乃香を見てそう呟いた。

 

 「さっきまで木乃香お嬢様と一緒にいた少年と高畑との間にはなにか不穏な空気をかもしていたのも無関係ではないだろうし」

 

 この男はさっきまでXと木乃香の乗っていたのと同じ新幹線、同じ車両に乗っていたのだ。とある個人的な用事で東京に出ており、そして偶然Xと木乃香を見つけたのだ。

 

 「(車内でお嬢様と不審な少年は談笑していたかと思うと突然殺気と共にお嬢様に手を出したり、そう思ったら再び談笑したりとどういった関係なのか全く分からなかった)」

 

 そしてこの男は車内でのやり取りはあまり聞けていなかったが、さっきまでの駅のホームでの会話は多少は聞こえていた。

 

 「(関東の最高戦力の一角の高畑が無断でこちら側の領域に入って着たことからも公にしたくない何か問題が起こりそれを解決しに単騎乗り込んだと見るべき)」

 

 そしてすぐに退散したとこの男は読んだ。

 その後このことは上に情報として上げるべきであると判断してこの男は関西呪術協会に今回のことを報告した。そしてこれにより関西呪術協会は関東魔法協会に説明を求めたが「事実無根」とその全てを黙殺し、何も語らなかった。結果東西の関係はより悪化することになったが両組織の長の尽力により武力衝突にまでは発展することなく収束することになるが緊張感は高まったままになってしまうのであった。




X京都入り、このちゃん無双でした

次回からはついにXが!
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