「あ、母さん。ちょっと待ってて。この蓋が閉まればおしまいだから。」
「・・・エルキドゥそのお菓子はおいていきなさい。」
「えー」
「おいていきなさい。」
「あ、はい。」
神々の森の木からちょろまかした木で作った器の中に並々と注がれた水が揺れる。
エルキドゥがギルガメッシュの元に出立してしまったため現在この小屋の中にいるのはウルレシュテムただ一人。
彼女は現在焼き菓子を片手に、もう片方の手に先ほどの木の器を持って千里眼で遠見を行っていた。
でばが・・・エルキドゥとギルガメッシュの対決が気になったためである。
断じてデバガメなどではない。例えその姿がぱっと見映画館の観客のようでも。
決して、デバガメではない。
焼き菓子をつまみながら彼女は言う。
「残念でしたねーイシュタル。
もちろん認めませんが。
言って次の焼き菓子に手を伸ばした。
◇ ◆ ◇
「アイツもうそろそろで到着するわよ。」
天舟に乗ったイシュタルが広場に到着すると金髪の青年・・・ギルガメッシュがそうかと短く返事を返す。素っ気ない返事とは裏腹に彼は混乱していた。
姉上のこども、姉上の子供。
きっと幼い頃の姉上そっくりの愛らしい童なのだろうな・・・。
これで我もおじさ・・・いや、そんな、この歳でそれは・・・ええい、意地でも兄上と呼ぶよう教え込まねば。
・・・割と斜め上の方向に。
「来たわよっ」
鋭いイシュタルの声に意識を引き戻されたギルガメッシュが気配を感じて横に逸れる。
と、先ほどまでギルガメッシュのいた地点に巨大な何かが突っ込んできた。
「よけられた・・・君が、ギルガメッシュ?」
地面にめり込んだ両腕を引き抜くとギルガメッシュの方に向き直ったそれは衣服らしきものこそ身に纏ってはいるもののおおよそ人とは違った外見をしていた。
澱んだ緑色の衣服がその巨体の殆どを覆っており、露出している部分は腕と頭部。そして背中らしきところから伸びる無数の突起物。
頭部にはこれまた巨大な隻眼が爛々と輝き、口は歯が剥き出しになって、長く赤い舌が垂れ下がっている。
さっきまでの胸の高鳴りを「あ、違ったわ」という落胆と共に消し去った。
「おい。主人はどうした?落としてきたのか?」
結果、ギルガメッシュはきっと姉上の子は振り落とされてしまったのだろう。で、乗り物だけこちらに来たのだ、きっと。と勝手に結論づける。
「?僕が君を戒めに来た、前女王ウルレシュテムの子。エルキドゥだけど?」
しかし、現実というものは残酷であった。
「・・・え?」
「え?」
ギルガメッシュがぎぎぎっとぎこちない動作で隣を浮遊するイシュタルを見る。
その眼にはちょくちょく見に行ってるお前ならわかるだろ。否定してくれ。という哀願が込められていた。
が、イシュタルは内心でドッキリ大成功の如くほくそ笑みつつ首を振った。
「現実よ。目の前のこの子が正真正銘、お子さんよ。」
悲しげな顔で追い打ちをかける。
ギルガメッシュは絶叫した。
膝から崩れ落ち、両手を地面につける。
「なんでええええ!?なんであの美人な姉上からこんな人型どころか物体Xみたいなのがうまれるのおおっ姉上の要素一片たりとも入ってないっていうかもはや人ですらないじゃんッどういうことですか姉上ええええっ。」
まあ貰い物の粘土とそこら辺の泥で作りましたから。かわいいでしょ?
千里眼で見ているウルレシュテムが、焼き菓子をつまみながら言う。
当たり前の如くギルガメッシュには全く届いていない。
「あの、さ。僕からも一つ質問。いいかな?」
いきなり膝をついて、おそらく自分を貶す言葉を吐き出した好敵手(予定)に若干、否ドン引きしつつエルキドゥが訊ねる。
「聞いてたのと印象が違うんだけど。いつもこうなのかい?」
絶賛暴走タイムのギルガメッシュを放置してかわりにイシュタルが答える。
「いいえ?今はコレだけど普段はもっとかしこまった礼儀正しい奴よ。」
「そ、そう・・・。」
「でも最近は専らこの状態ね。周囲が嫁取り合戦ならぬ婿取り合戦よろしく放っておかないらしくて、女性恐怖症になってしまったらしいわ。で、無駄好きの見栄っ張りでジャイアニズム溢れる、いいとこなしと言っても過言じゃないけど対人関係に関してはまだ傷の浅いコイツが出てきてるって訳。」
イシュタルの解説に納得しつつ、かなり貶しの入った内容を味方(曲がりなりにも女神だが)に言われている好敵手を見る。
エルキドゥの眼には若干の哀れみが浮かんでいた。
「ええい、その眼をやめよ汚物。なんだその周囲に理解者が一人もいないなんて・・・ボッチ乙みたいな眼はっ」
戻ってきたギルガメッシュがエルキドゥに怒鳴る。
「お、汚物?せ、せめて怪物とか・・・。」
予想外の自身の呼び名にエルキドゥは絶句し、一拍おいてから訂正を要求する。
「ふん、貴様なんぞ汚物で充分だ。俺は断じてお前が姉上から生まれたなど認めん。貴様を倒して我は姉上に、そして姉上の子に会いに行くのだ、そこをどけ汚物。邪魔立てすれば・・・わかっておろうな?」
さっきまでとは打って変わった不遜な態度のギルガメッシュに今度はエルキドゥがキレた。
「さっきから聞いてたら汚物汚物って・・・それに僕は正真正銘彼女から作られた、彼女の子だ。君にとやかく言われる筋合いはない。いい好敵手になるだろうとか言われたけれどもういい。君は今から好敵手ではなく殲滅対象だ。」
どちらともなく地面を蹴った。
終盤間際に手持ちの粘土の量が少なくなって殻を維持できなくなったエルキドゥが巨大な袋(母からちょろまかしてきたおやつ入り)と共にその本体を晒しギルガメッシュが驚愕したりとか
そもそも、なぜこんな花嫁を奪うなんて言う迷惑極まりないことをするのか問うた際
「うん?暇つぶしだが?あれ自体はあまり楽しくないのだが周りがうるさいのでな。一番めんどくさくなさげな所から手を付けて黙らせようか、とな。」
というとんでも発言に、遠見でキレたウルレシュテムがこれが世のため人のためと言わんばかりにギルガメッシュ目掛けて光線の雨を降らせたりとか
念話でエルキドゥに「遠慮なく徹底的にやってくれて結構ですよ。特に下半身。この際使い物にならなくなっても可です。」と指示?のようなものがあったり
・・・といった具合にカオスを更に黒い何かで煮詰めて合成事故起こしたみたいな戦闘の結果。
気づけば周りは更地になっていた。
住民はイシュタル・・・ではなく、彼女に仕えている神殿関係者の手によって既に別の場所へ避難させられていたが到底住めるようなところではなくなってしまっている。
そんな荒れ地の真ん中でエルキドゥ、ギルガメッシュ両名は双方大の字になって倒れこみ和解。
エルキドゥのちょろまかしてきたお手製のお菓子を二人して貪り食うという展開にウルレシュテムは首を傾げた。
あれ?叙事詩と違くね?と。・・・エルキドゥあれほど言ったのに・・・覚えとけよという恨み言と共に。
久方ぶりの姉の料理に、涙目になりながら食べているギルガメッシュ。
そして、そんな彼を今度は優し気なまなざしで頭をなでるエルキドゥ。
傍から見れば友人というより兄弟のようであった。
この光景をほほえましげに見ていたイシュタルは思う。
ギルガメッシュの髪についているお菓子の屑のこというべきかしら。
エルキドゥは汚物呼ばわりをわりと根に持っていた。
エルキドゥの持ってきていたお菓子は観賞途中にお菓子が切れないよう焼いておいた予備でした。
久々にお気に入りの数を確認したら腰ぬかしそうになりました。
ご指摘、ご感想を送ってくださりました方々も
ありがとうございます。
まさかここまで見てくださる方がいらっしゃるとは思わなかったもので・・・
これからも頑張っていきたいと思いますのでどうぞこれからもよろしくお願いします。