失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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菓子の道

玉座に座るウルレシュテムの手元に、小鳥が1羽滑り込んでくる。

 

「・・・ああ、来たんですね。」

 

来客を報せにきた小鳥を指先で軽く撫でると小鳥をクルリと自身の方向・・・正確には自身の両目と視線が合うよう持ち上げる。

 

「さてはて、可愛い可愛い愛し子たちは今頃順調に回廊辺りまで来ているくらいですかね。」

 

クスリと笑って鳥に着けていた特性のレンズを視る。

このレンズは監視カメラと同じ様なものであり、いちいち千里眼使うのめんどくさいなと思ったウルレシュテムが自作したものである。

いちいち現在(いま)未来(さき)を選択からの視る範囲をーーとかやってられるかと前回のデバカメから学んだ結果である。

 

鳥の瞳の中の映像が安定する。

しかし、ピントを合わせた謁見の間付近の回廊には誰もいない。

おかしいと思ったウルレシュテムは更にピントを拡大してみたが何か薄茶色の何かが点々と落ちている以外はただ回廊が映っているだけだ。

 

「・・・?何でしょう、これ。」

 

見に覚えのない茶色の物体にウルレシュテムは小首を傾げつつ、客人を探す。

見つけたのは全く別方向に位置する厨房付近の回廊であった。

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

「・・・本当に此方であっているのだろうな。」

 

怪訝そうに辺りを見回すギルガメッシュに屈託のない笑顔でエルキドゥは答えた。

 

「うん。懐かしい匂いがするんだ。だから、たぶん。」

 

聞いてギルガメッシュもスンと空気を嗅ぐ。

確かに何処かで嗅いだことのある芳しい匂いが、何処からともなく漂ってきているようで強ち間違いというわけでもないらしい。

 

だが・・・。

 

「これは姉上の匂いではないのではないか?」

 

この甘い匂いは懐かしさこそあるものの遠い記憶の中の姉のものとは違う匂いに首を傾げる。

 

「うーん・・・僕の森での思い出の中にかなり深く刻まれているみたいなんだけど・・・。」

 

スンスンと匂いを嗅ぎながらある扉の前で立ち止まった友にまさかと思いギルガメッシュが口を開いた。

 

「おい、その匂いとはまさか・・・」

 

明らかに王がいるとは思えないその拙い造りの扉を蹴破り中に侵入するエルキドゥ。なにも蹴破る必要はなかったのではないかと無惨にも散らばった扉の破片を見るが今更である。

 

「あ、これかあ。」

 

言ってエルキドゥが満面の笑みを浮かべる。

二人が侵入した場所は厨房。

気になっていた匂いはプレートにのせられた焼き菓子であった。

 

エルキドゥは厨房に入っていくとおもむろに菓子に手を伸ばした。

が、伸ばした先にあった菓子は風切り音と共に消える。

 

「・・・?」

 

不思議に思い、今度はギルガメッシュもそれとなく手を伸ばしてみる。やはり消えた。

 

そんなことを繰り返している内にとうとう菓子は最後の一つになる。今まで一つも取れていないせいか二人ともこのお菓子の取り合い紛いの出来事に既に臨戦態勢に入っていた。早すぎである。

 

二人は目配せを合図に一斉に菓子に飛び掛かる。

しかし、またも菓子は無くなった。

 

ショックを隠しきれない二人の耳にかつかつと何かのあたる音が響く。

辺りを見回すと流しのすぐ側のふちに変わった配色の小鳥が一羽止まり先程の菓子を啄むべく、足で菓子を固定しているところだった。

おそらく、運ぶには大きすぎて長距離は無理だと判断し、近場で食べることにしたのだろう。

 

「ああああっ」

 

それを見たエルキドゥが叫ぶ。

 

「それ僕のお菓子っ・・・。」

 

いや、おまえのじゃねーから。

この時鳥のレンズ越しに見ていたウルレシュテムと先程まで同じように菓子の取り合いに参加していたギルガメッシュの心の声が重なった。

 

エルキドゥはそのまま鳥の方に向かって突っ込んでいく。おい、お前は博愛精神の塊じゃなかったのか。

小鳥は菓子の1/3を犠牲に軽やかな羽ばたきで避けたが、エルキドゥの叩いた部分はながしごと潰れ、半壊していた。

小鳥はそのまま厨房の窓を抜け屋外へ脱出する。

 

「逃がさないよ」

 

エルキドゥはその窓のある壁を拳でぶち抜いて鳥を追いかける。小鳥が屋内に入れば、またそこの壁をぶち抜いて中へ入ってくる。ギルガメッシュはただそのあとを歩いていく。その繰り返しだ。

 

闘うための舞台としてこの城を用意したはずが、焼き菓子一つのために使用前から穴だらけになり風通しが良くなっていく様にウルレシュテムは複雑な思いで映像をみていた。

 

「あ、ギル。ちょっと待っててね。もう少しで君にも美味しい焼鳥を渡せそうだから。」

 

焼鳥?ギルガメッシュの頭に疑問符が浮かんだ。

 

「焼き菓子ではなく、か?」

 

「え?あれは僕のだよ?」

1枚だけだし、仕方ないよね。

にこりと緑髪の麗人は笑った。

 

「え?」/「え?」

 

ほぼ同時に走り出す。

 

走る。

 

走る。

 

 

途中で妙な足場を踏み、眼前をペンデュラムが通りすぎて行こうが走る。

 

走る。

 

途中でよくわからないなんか合成獣みたいなやつがいたが気にせず「「邪魔だっ」」という息ピッタリの掛け声と蹴りで容赦なく踏み潰して走る。

 

 

走る。

そして、遂に辿り着いた。

点々と続く食べ滓(菓子の道)に。

その奥には扉が一つ。

 

「「おおおおっ」」

 

もう体力も残り僅かな二人は揃って床をスライディングしていく。もうなにがなんだかわからないが、菓子のためである。この時二人は自分たちが何故ここに来たのかすら忘れていた。

急に目の前の扉が開く。

扉の先には菓子ではないが彼らの追い求める人の姿があった。

 

しかし、ここで問題が一つ。

彼らは今彼女の方にスライディングしていっている。

スピードがつきすぎて止まれない。結局二人はそのままの勢いで突っ込んでいった。片方は向こう側の壁へ。もう片方は目の前の人物の裾の中に。

 

「っ」

 

小さく狼狽えたような声をあげてその人物、ウルレシュテムがすっと足を避ける。

そして起き上がる弟。

微妙な沈黙が流れた。

 

「ギーールーー?」

 

そこに、この世のものとは思えない悪鬼のごとき形相のエルキドゥが現れる。瓦礫の一部が突き刺さっていたりして只でさえ血塗れだったのが更にとんでもないことになっていた。かくいうギルガメッシュも血塗れだがエルキドゥほどではない。

 

「・・・取り敢えず。お風呂ですね。」

 

困った様に微笑んでウルレシュテムは言った。

 

ギルガメッシュにとっては実に10年ぶりとなるその笑顔はあの頃と同じ、慈愛に満ち溢れたものだった。




このあともれなくギルガメッシュはエルキドゥにぼこぼこにされるでしょう。
この時代はおそらくはいていないのでしょうが、一応主人公は内側にハイレグっぽいのを着ていたため見ましたが見えてません。

今回も観覧ありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします。
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