失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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雁夜おじさんって割とZEROの中じゃ動機とかいろんなところがああ、一般人だなと思います。・・・いや、一般人なんだけれどもね。

よく魔術の家系に生まれてこんな(ダメ人間かもだけど)真っ当な感性にそだったもんだ。

実はこの人が一番異様だったりして・・・無いか。


間桐雁夜は自覚する。

「ぐぎゃああああっ」

今までに聞いたことがないような臓硯の絶叫が響き渡る。

その身体はみるみるうちに崩れ、大量の蟲に変わってゆく。

あまりの出来事に雁夜は愕然とする。

化け物だ化け物だとずっと思ってきた人間が、実は本物の化け物(蟲の群)だったとは誰も思いもしないだろう。

 

ーーーずっと、狂っていると。化け物だと思っていた。けど。

 

けれどそれはあくまで一般人(自分)とは違う魔術師(・・・)だからこそ、あんな醜悪な魔術を平気で行使していたからこそだった。

 

ーーーけど、それが、なんだ?

 

目の前の蟲の群は翁の形を成そうとしては何かに弾かれた様に崩れ、もう一度と繰り返している。

知らず、雁夜の目からは水・・・涙が流れ出していた。

胸の内で悔しさと情けなさと遣る瀬無さと・・・様々な感情が綯交ぜになり、泣いているのに笑っているという奇妙な表情を作り上げる。

 

「は、はは。」

 

雁夜の口から出たのは、乾いた笑いだった。

 

ーーーこんなの、こんなのを恐れて俺は。

 

突然辺りが暗くなる。

 

頭に過った明確なイメージーーー微笑む遠坂葵(最愛の人)。だだし、その隣には自分ではなく遠坂時臣がいた。

こんな家に生まれた自分では駄目だと思って身を引いた。幸せになってほしかった人。

二人の周りにはまだ笑顔だった桜と凛が手を振っている。

瞬きをすると葵の表情が暗いものに変わる。

 

「雁夜君・・・桜をお願いね。」

 

ーーー託された。あの子を、桜ちゃんを・・・守るって。

 

ボロボロとジグソーパズルの様に家族の像が崩れていく。

残ったのは桜のみ。振り向いた彼女は、紫の髪に同色の目。その目に光はなく、僅かな表情すらない。

 

「誰も、私を助けてくれなかった。」

 

言い切った桜の手にはナイフが握られている。

 

ーーー桜・・・ちゃん。

 

俯いてナイフをぎゅっと握る。

そんな痛々しい少女に手を伸ばそうとしたとき、唐突に少女は顔を上げた。

その顔は間桐に入る前。遠坂だったときの笑顔だった。

 

「でも、もういいの。」

 

ーーーえ・・・?

 

おかしい、なにかがおかしい。

幸せそうなのに、決定的に何かが違う。

遠坂/間桐桜という少女はこんなにもーーーこんなにも昏い/明るい顔で笑う子供だっただろうか。

 

(わたし)知ってるよ。なんでこの家に来たのかも、どうして誰も助けてくれないのかも。」

 

言って殊更に笑みを深くする。

 

「いらない子だったんだよね。(わたし)。だって、遠坂さんのところには凛さん(姉さん)がいるし。おじさんだって・・・。」

 

ーーー違う、違うよ。桜ちゃん。時臣(お父さん)はともかく俺はっ。

 

「おじさんだって、大好きなお母様(葵さん)のためにする。お人好し(点数稼ぎ)だもんね。」

 

ーーー・・・。

 

違うと言いかけて、沈黙する。葵の頼みで桜を助ける。()のために時臣(伴侶)を殺す。

点と点を線で結ぶ。今まで繋がっていたはずのそれは最早まったくもって別の方向を向いているのだと、ようやく思い至った。

結局は、そう。

 

ーーーそうか、俺は。

 

結局はーーー間桐雁夜という人間は間桐桜という少女を視てはいなかった。

彼の中で桜はあくまでも遠坂葵の娘。遠坂桜だった。

つまるところ、彼が価値を見出し、奮起していたのは桜個人にではなく遠坂葵に連なり、彼女に少なからず影響を与えるもの。道具としてであったのだ。

 

桜が背を向けて走っていく。

雁夜はその背中を追いかけることなく、見送った。

 

 

ーーーなんだ、なんだ。そうだったのか。俺。

 

 

ただただ、自分の欲しかった当たり前(幸福)を享受している時臣が憎くて。

 

ただただ、葵に自分を視てほしかった。悲劇(彼女)のヒーローになりたかっただけだった。

 

 

ずるずると雁夜はその場にへたり込む。

 

 

ーーーーごめん。

 

ーーーーーごめんよ。桜ちゃん。

 

謝り続ける。

それは少女に捧げられたものなのかは雁夜の中でさえ釈然としていない。

それでも、雁夜は謝り続ける。

すまなかったと。延々と。

暗闇の中でただ一人。

彼の胸元には、いつの間にか少女の持っていたナイフが突き刺さっていた。

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

「戻らないね。ママ。」

 

しゃがみ込んで蟲を観察していた桜がぽつりと呟いた。

 

ーーーAaaaaaaaaaa 『戻りませんね』

 

傍から見たらひたすら歌っている女性に対して少女が一方的に話しかけている図に見えるのだが、この二人はラインが繋がっていることもあって普通に会話が成立しているため双方ともに気付いていない。

 

現在二人は蟲蔵に来ていた。

目の前にはなんかよくわからないばらける蟲の塊に、おじさんらしき人が倒れている。

桜曰くこの蟲の塊がおじいさまとやららしいのだがウルレシュテムにはどうしてもただの蟲の群にしか見えない。

 

ーーーAaaaaaaaa『おじいさまはもう戻ることはできないと思うのでこの食事はそこのおじさんとやらにあげましょう。』

 

たぶんさっき適当に放った即席投擲宝具(笑)のせいだがまさかこんな面倒になると思わなかったウルレシュテムは取り合えず臓硯を放置することにした。

ちなみにこの即席宝具。攻撃用ではなく、使用された者を本来の姿に戻すというものである。

・・・作ったのが神秘の色濃い神代のウルレシュテムなので神秘の薄い今を生きる現代人にどれぐらいの影響が出るのか、そもそも耐えられるのかは定かではなかったが。 

 

「おじさん。おじさん。」

 

桜がおじさんを揺さぶる。・・・実は死んでいたとか・・・はないか。さすがに。

 

うっと短く呻いてうっすらと目を開けたおじさんとやらは

桜を認識した途端。彼女に泣きながら抱き着いた。

号泣である。鼻水や涎もお構いなしだ。汚い。

 

「ごめんよおおおお。ごめんよぼお。ざぐらじゃん。」

 

桜もウルレシュテムも終始困った様子で男が泣き止むのを待つことにした。

 




突然大の大人がぎゃん泣きしたら引きますよね。

というわけで雁夜さん回でした。
おそらく爺が復活することはもうないでしょう。
主人公の最初から最後までの爺への認識が蟲なので人に戻す気は更々ないでしょうし。
これから扱いが蟲のまま定着して・・・きっと食事は昆虫ゼリーとかになるんだぜ・・・。


閲覧ありがとうございます。

お気に入りの件数も、感想もこんなに増えて・・・本当にありがとうございます。
これを糧にこれからも頑張ります。
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