「ぐすっ・・・すまないな。みっともないところを。」
桜ちゃんもごめんね。と雁野は桜の頭を撫でた。
当の桜本人はそれよりも雁野の涙やら鼻水やら涎やらのついた服が気になって仕方ないようだ。
ーーAaaaaa『いいえ。気にしてませんよ。』
ウルレシュテムは気遣いの言葉をかける・・・が。
「?すまない。何を言っているのかわからない。」
「気にしなくていいって、おじさん。」
歌声にしか聴こえない声に混乱する雁野に桜が通訳する。
こころなし雁夜から距離をとっているが、おそらくは第二撃が来た時にすぐに対処できるようになのだろう。
「あ、そうなんだ。ありがとう桜ちゃん。・・・ええと、その、なんだ。」
ーーAaaaaaaaa 『ウルレシュテム。クラスはバーサーカーです。』
「・・・ママ。クラスはバーサーカーなんだって。」
桜からの通訳とともにウルレシュテムはたおやかに微笑みながらお辞儀をする。
さながら貴族の様に様になっているその所作を受けて雁夜は改めて、女・・・改め
ーーーあ、あれ?
あの時、蟲蔵の暗闇の中ということもあってか巨大な角の様なものを頭上に浮遊させた女怪だとばかり思っていた。・・・のだが・・・。
ー足。銀の具足に覆われている。
ー胴。白を基調としたドレス染みたシンプルな装いに所々鎧が付属している。横は紐で複数個所結ばれているだけの割と際どい恰好だ。合間からは白い肌と豊満な横胸が見える。
ー顔。月並みな言い方だが血が凍るような美しさとでもいうものだろうか。しかし、全体的な女性的、母性的な雰囲気も相まって柔らかい。なんだろう。例えるなら氷より淡雪の様な儚い美しい貌だ。
ー頭。蟲蔵で見た巨大な浮遊物などどこにもなく混じり気の無い白雪の如き髪があるだけだ。
ー聲。先程から歌声しか聞いていないが美声。なんかこう、安心する。
ー全体。聖母の様な穏やかにして包容力に溢れた美しい女性。まるでそう、葵さんの様な・・・。
ーーー葵さん?いやいや葵さんは時臣と・・・いやでも目の前にいるのは?え?葵さん型サーヴァント?あれ?
顔も声も何もかも違うのだろうが雁夜の脳は目の前の
ーーーまあ、何はともあれあの臓硯を倒して桜ちゃんを助けてくれた恩人であることにかわりは無いか。
「ええと、バーサーカー。俺は間桐雁夜。よろしく。」
ーーAaaaaaaa『よろしくお願いします。雁夜。』
こうして、一時崩壊していたバーサーカー陣営が再構築された。
尚、この時に自身の恐怖よりも母の身の安全を優先させようと間に割り込んだ間桐桜の思考は強ち間違いという訳でもないことをここで記しておく。
◇ ◆ ◇
「お嬢ちゃん。迷子?よかったら俺、親御さん探すの手伝おうか?」
人の好さそうな笑みを浮かべて男が少女の方に手を伸ばす。
反対、ポケット付近の方にある空いている手には意識操作用の腕輪が握られてる。
がしりと、しっかりと目の前の少女の肩を掴み、そのアクセサリーを装着しようとしたその時。
ーーAaaaaaaaa『てめえ。
周りには歌としか認識されていないが敬語すら外れたウルレシュテムが男ーー連続殺人犯。雨生龍之介の横っ面を殴った。
思い切り、何のためらいもなく。サーヴァントのステータスとしてのAランク相当の筋力で。
ウルレシュテムの、言いえて妙だがモンスターペアレントアタックがもろで入ったであろう龍之介はがっという声とともにゴロゴロと路地の更に奥に転がっていく。
「あ、ママ。」
ごめんなさい。と言って桜はウルレシュテムの服・・・正確には雁夜から借りている服だが、の裾を握る。
ーーーAaaaaaaa『いいえ。桜が無事でよかった。』
ウルレシュテムは桜の状態を確認してほっと息をつくと微笑んだ。
「桜ちゃん。バーサーカー。よかったっ、探したよ」
少し息を切らしながら雁夜が走ってくる。
合流した三人はそのまま龍之介の転がっていった先の路地とは別の方へと談笑しながら歩き去った。
「っだ・・・んな・・・て、撤退。しっよう。あの女の子とお姉さん。惜しいけど、今は、無理・・・かも。」
龍之介が倒れこんだまま虚空へと話しかける。
「ええ、これがおしまいではない。今は一時隠れ家に戻って休息をとりましょう。龍之介。」
良い作品を作るためには英気を養うのも必要なことです。言葉とともに奇怪な風貌の大男が現れる。
男の名はジル・ド・レェ。
この第四次聖杯戦争に召喚された
大男ーージルは龍之介を抱えるとゆっくりとした足取りでその場を後にした。
◇ ◆ ◇
素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。
ーーー
降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。閉じよ(みたせ)。
繰り返すつどに五度。
ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ
誓いを此処に。
我は常世総ての善と成る者、
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、
抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!
紅い少女が詠唱を終えると同時にふっと周りを照らしていた蝋の火が一瞬消失する。
途端に輝き出した水面が次第に波紋を描き始める。
ザバンっと音を立てて水柱とともに何者かが水面に出現した。
「なんだ、召喚早々にずぶ濡れとは・・・私は相当マスター運が悪いらしい。」
しかし、やれやれといった具合に発言した男はマスターの顔を見るなり僅かに目を見開いた。
対する少女は内心少し残念に思いながらも態度には出さずただ目の前のサーヴァントを見遣る。
「っ・・・一応、確認しよう。君が、私のマスターか?」
「ああ、そうだ。俺が、お前のマスターだ。」
かくして、赤の少女はサーヴァントを手に入れた。
ー意図せずして
モンスターペアレントアタックっ。・・・改めウルレシュテムのぐーぱん。
筋力Aの攻撃・・・シャレになりませんね。うん。
まあ、本当はもっと複雑なので純粋にAと言う訳ではないのですが。