失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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最近イレギュラーサイドの話ばっかりだったので他の陣営の話も投稿してみます。

衛宮切嗣とか遠坂時臣。特に遠坂時臣は世間一般から見ればとんでもなく幸福な環境にいるんですよね・・・。
まあそれもこの聖杯戦争(自業自得)のせいで全てなくなるわけですが。


衛宮切嗣は気づけない。

アイリスフィール・フォン・アインツベルンは聖杯戦争に於ける小聖杯の役割を担うために鋳造されたホムンクルスである。戦争で脱落したサーヴァントの魂はまず彼女の中の小聖杯にくべられ、大聖杯起動の魔力として蓄えられる。

 

「・・・?。」

 

冬の城の中で荷造りをしていた彼女は、自身。正確にはその中にある聖杯の状態に違和感を覚えた。

 

「どうかしたのかい?アイリ。」

 

不意に手を止めたアイリスフィールに夫、衛宮切嗣が声をかける。

わざわざ荷物の整理の手を止めてこちらに歩いてきた夫に心配させてしまっただろうかと苦笑してアイリスフィールは口を開いた。

 

「いいえ。大したことじゃないの。ただ・・・。」

 

言ってよいものか暫し考えたが、やはり隠し事はよくないだろうと素直に事の次第を話し出した。

 

「ただ、もう私の中の聖杯に魔力が送られてきているみたいなの。」

 

その言葉にたいして表情を変えずに切嗣は顎に手をやる。

 

「それは、もう聖杯戦争が始まったということかい?」

 

そうすれば出遅れたことになる。

しかし、聖杯戦争とは七騎のサーヴァントが揃って初めて儀式として成立する大掛かりな術式だ。

故に教会から派遣された監督役によって全騎の召喚が確認されて初めて戦争が成り立つのだ。

どちらかと言えば出遅れたというよりフライングがあったとみるべきだろう。

夫の問いにアイリスフィールは左右に首を振る。

 

「・・・違うみたい。サーヴァントの一騎がくべられたにしては魔力が少なすぎるわ。仮にこれが一騎分だったとすれば七騎分くべても精々小聖杯を起動できるかどうか・・・。」

 

それにこの魔力・・・と悩む妻を前にまた切嗣は考え込む動作をする。

 

「・・・翁に情報の提供を願おうかな。」

 

小さく呟くとともに電話の着信音が鳴る。

ごめん。ちょっと外すよ。と断りを入れて部屋を出ていく夫の姿を見送ってアイリスフィールは胸元に添えた手に力を込めた。

 

ーーー例え、何があっても成功させてみせる。切嗣とイリヤのためにも。

 

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

「何があった。」

 

電話越しに相手・・・おそらく女性であろう声が聞こえる。

 

『・・・間桐家の聖遺物到着及びサーヴァントの召喚を確認しました。聖遺物から裏切りの騎士ランスロットかと推測しましたが、サーヴァントと思われる反応体は妙齢の女性です。常に歌声のようなものを発しており、おそらくクラスはバーサーカーかと。ここ数日、霊体化することなく顕現しています。

 

同じく、遠坂邸のサーヴァントらしき存在を確認。遠坂邸の結界を破り市街へ降下。こちらはキャスターだと思われます。それと、アサシンの脱落を確認。撮影したものがあるのでこちらにつき次第確認してください。以上です。』

 

淡々とした女の語り口に切嗣は無感動にそうかと返す。

 

「わかった。そのまま監視を続けろ。」

 

短い会話の後電話を切る。

 

「さて・・・。」

 

どうしたものかと思いながら切嗣は煙草に火をつける。

 

残るは時計塔のロードと聖堂教会の元代行者言峰綺礼。

そのほかの空枠に不安はあるモノの人物としての言峰綺礼の他に、更にある不安要素に切嗣は思考を進めていく。

 

ーーー何故遠坂はわざわざキャスターを召喚した?

 

遠坂邸に聖遺物が送られて来ていたのは確認済みだ。だが、何故寄りにもよってキャスターなんぞを召喚したのか。遠坂はここ以外に儀式に適した霊地を持っていない。あるにはあるが主だった霊地は青崎が所有している。

そんな貴重な霊地の、それももっとも儀式構造においては適しているであろう自宅をわざわざ戦場にするような愚行をするのだろうか。それなら三大騎士クラス・・・セイバーは切嗣が引いてしまったがアーチャーあたりでも呼べばいいものだろうに。何故、わざわざ聖遺物まで使ってキャスター(アナグマ)を呼んだのか。

今回のアサシンの脱落と魔力の蓄積具合から幻術か何かの類いでの陽動のために呼んだ・・・という考えもないことはないがそれでは最初のそれも一回のみしか効果は無い。そんなハイリスクローリターンな駆け引きを魔術師がするだろうか。

 

そして

 

ーーー間桐雁夜。間桐の家(魔道の家)に生まれながら反発、以後は一般人として生きてきた男。

 

最近間桐に出戻った急造の魔術師。遠坂とそれなりに親交があったようだがそれもここ最近断絶している。

一般人。が故に謎に包まれた人物。こんなのに頼るとは間桐もそれだけ余裕がないのかと思っていた。のだが、英霊をアストラル化させずに顕現させ続けているということは一般人と偽った魔術師の可能性が高くなってきた。ムラは多そうだが。呼び出した女性はきっとランスロットで間違いないだろう。なんせ、騎士王が女性(アレ)だ。

 

ふうっと煙草の煙を吐き出す。

 

ーーー取り敢えず、作戦に変更はない。

 

窓の外の雪の降る寒空を観ながら衛宮切嗣は妻と子を思い浮かべた。

 

「イリヤ・・・アイリ・・・。」

 

そのまま踵を返して立ち去る。

向かう先はこの城の主の下だ。

 

衛宮切嗣は気づかない。否、情報が少なすぎて気づけない。

 

既に此度の聖杯戦争で一騎は脱落とは言えないもののそれに近い形に成っていることも。

 

本来いるべきではないイレギュラーが複数紛れ込んでいるということも。

 

 

 




舞弥さんに関してはもう数ある世界の一つとしか・・・。

事情知ったらきっとアインツベルンもっとカオスになるよなとか思いながら書きました。

そして切嗣さん。・・・あんたセイバーに確認取ったら別人だって気づけただろうね。
しないだろうけど。


閲覧ありがとうございました。
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