失敗作だけど白い特等みたいになれたらいいなー   作:九十九夜

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ディルムッドの撤退、乱入者来たれり。

戦闘とは、対等な、はたまたはそれ以上の相手と行うことによって成立する行為だ。

 

しかし、今この場で行われているのは果たして戦闘と言えるのだろうか。

 

こんなーーーあまりにも一方的な、虐殺一歩手前の行為を。

 

 

 

 

 

あれからまず最初に、英雄王ギルガメッシュと名乗った男の片腕がなくなった。

少し遅れて血が噴き出す。余程切り口が綺麗だったのか、まるでシャワーの様に勢いよく噴き出すそれを、俺を含めこの場の全員が唖然と眺めていた。

 

いつの間にかギルガメッシュの片腕を奪ったであろう女人が、後方・・・コンテナの端で歌っていた。その片手には剣を、もう片方には先程切り取ったであろう甲冑の着いた腕を持って。

 

 

ーーーAaaaaaaaaaa

 

 

悲し気な、けれど優しいその歌声は、姿はきっと。他者を惹きつけるのだろう。

こんな状態でなければ。

先のセイバーとの決闘では高揚感が全てにおいて勝っていた。が、これはなんだ?

 

冷や汗が顔を伝う、全身が、本能が逃げろと警告する。

それなのに肝心の足はまるで縫い付けられたかのように動かない。

どうするか思考している最中に頭に声が飛んできた。

 

ーー撤退だ。ランサー。

 

主人の声が聞こえる。

先程までのセイバーの首級を取れと言っていた声とは違う静かなものだ。

 

「は、しかしセイバーが・・・。」

 

ーーもうよい。手傷ぐらいは負わせられたのだろう?ともかく戻ってこい。

 

そして、私を連れてこの場を離脱しろ。という言葉を最後に回線が切れる。

動かない首を無理矢理セイバーの方へと動かすと目が合う。

セイバーが先に離脱しろと言わんばかりに顎を反対側へと動かした。

彼女が剣を構え直すと同時にびゅうっと風が鳴り、一閃剣を振るうと途端に地面が削れ砂埃が煙幕の様に立ち上る。

 

「っすまない。セイバー、恩に着る。」

 

ふっと小さく笑ったセイバーを見て、地面を強く蹴るとそのまま駆けだした。

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

本拠地兼工房と化しているホテルに戻ってからランサーのマスター・・・ケイネス・エルメロイ・アーチボルトはひとつ息をつくと部屋に入っていく。

 

「あら、思いのほか早かったのね。それで、なにか収穫はあったのかしら?ケイネス。」

 

冷たい口調で答える婚約者ソラウ・ヌゥザレ・ソフィアリにああ、と短く返答する。

その様子にほんの少し目を見開いたソラウはそう、とこちらも短く返事を返し次の句を待った。

 

「・・・落伍者が参加するなどと言うからどのようなものかと思っていたが。」

 

最初は、恨み節でも語っているような重苦しくも激情を秘めた風体で話す。

 

「何が落伍者だっ。あんなっあんなものを使役させておいてっ」

 

言葉を荒たげたケイネスが失礼と言って再度息を吐くと今度こそソラウの方を向いた。

 

「ソラウ、君には一旦この街を離れてもらう。」

 

突然の提案にソラウはぎょっとするとそのままケイネスを氷の如き眼差しで睨んだ。

 

「嫌よ。絶対に嫌。だってディルムッドがいないじゃない。彼が一緒じゃなきゃ嫌。」

 

頼む、聞き分けてくれ、絶対に嫌という応酬が続く。

しばらく続いたそれに終止符を打ったのはケイネスだった。

 

「・・・わかった。そんなに提案を聞き入れられないなら教会に行こう。」

 

その言葉にソラウの氷のような眼差しに更に侮蔑の色が入る。

 

「・・・今度は令呪の返却でもするの?それなら「いいや、違う。」?」

 

「私は抗議と情報提供に行くのだよ。ソラウ。」

 

ーーーー星の内海を映す赤の瞳に、大地を象徴する一対の大角。私の予想が正しければ・・・あれは。

 

まだなにか言い足りなさそうなソラウをそのままにケイネスは一つの確信を心の中で反芻する。

 

ーーーーこの聖杯戦争は、聖杯はおそらく正しく機能していない。

 

 

何処かで破綻しているのだ、と。

 

 

 

 

  ◇ ◆ ◇

 

 

 

「アイリスフィールっ。」

 

セイバーは姿勢をそのままに後方にいたマスター役のアイリスフィールに声を掛ける。

 

「セイバー、撤退しましょう。」

 

アイリスフィールも態勢をそのままにセイバーに声を掛ける。

 

が、そこに電撃が落ちた。

 

「っ」「きゃあああっ」

 

幸い直撃はしなかったものの衝撃に地面が揺れる。

 

ーーーーしまったっ。

 

セイバーは砂埃が晴れていくのを見て内心歯噛みする。

おそらく敵は今頃ギルガメッシュを葬って次の獲物を探しているはずだ。それに、もう一度さっきの様に小細工が通用する相手とも思えない。

セイバーは剣を握る手に力を込めた。

 

ーーーーイチかバチか。

 

(歌声)に接近せんと足に力を籠めるセイバー。

そこに笑い声が降ってきた。

 

「ふははははっ魔力の反応が集結していたから様子見程度にと立ち寄ってみれば・・・桜、あたりの様だぞこれは。」

 

笑い声の方をみてみるとこれまたコンテナの所に一人の男が立っていた。

その顔をみてセイバーは混乱する。おそらくアイリスフィールも。否、この倉庫街に集まっている全員が驚きの表情をしている事だろう。なんせ、その男は装いこそ現代のスーツだが顔は先程腕を持っていかれたギルガメッシュに酷似していたのだから。・・・肩に年端もいかぬ少女を乗せているあたりロリコンに見えなくもないがこの際黙っていた方が吉である。そのままコンテナから飛び降りると一直線にある人物・・・バーサーカーの元へと走り寄る。

 

「姉上っ。」「ママッ。」

 

例え辺り一面血の海になっていようが、その姉上/ママが返り血を浴びて真っ赤になっていようがお構いなしに突っ込んでいく。正体不明の男に至ってはギルガメッシュの胴を平気で踏みつけていった。

 

感動の再会からの抱擁。一瞬驚いたらしかったがバーサーカーの頬も緩み、涙を誘う。血塗れだけれど。

 

桜と呼ばれた少女をぎゅうっと抱きしめたバーサーカーは何事かを少女に言う。

 

歌声にしか聞き取れないその声を何故か少女は理解できるらしくううん。いいのと返答している。

 

「でも、私、またママとお買い物がしたいな。」

 

いじらしい少女の頼みに、さっきまでの気迫はどこへやら。

バーサーカーは美しい微笑みを浮かべている。

そして、肝心の乱入者の男はバーサーカーの胸元あたりに顔を埋めたまま身動き一つしない。

・・・いや、よく見れば小さく震えていた。スンスンと鼻をすする音やらが聞こえてくるあたり泣いているようだ。そんな男の頭をポンポンと撫でるとさあ帰るかと言わんばかりに惨状はそのままにどこぞへと消えていった。

バーサーカーの着衣の端を握りしめつつもう片方の腕で俯いた顔をひたすらにのごう男とそんな男に「お兄さん大丈夫?飴舐める?」と気遣いを見せる少女。いろいろ濃いメンツが退場した後は沈黙がその場を支配する。

 

 

尚、この後動けるものが全員去った後取り残されたギルガメッシュは、たまたま通り掛かった操縦者(ハンドラー)の使い魔に面白いものとして回収されたのだが気づいたのは初戦からサーヴァントが殺されかけてあたふたしている遠坂家の当主のみだったりする。




zero見ててこれ、普通に正攻法で争ってたらケイネス先生勝つんじゃね?と思った結果書いた回です。切嗣さんがいなきゃたぶん死ぬことはまずなかったでしょうし。
いや、英雄王がいる時点で終わったも同然なんでしょうけどね。
英雄王がいなくて、マスターに切嗣さんがいなければな・・・あ、でも主従仲が悪いと(震え)。
己ギルは生前姉ちゃんにいろいろとんでもないことしてて(子供の件とか)申し訳なさとか溢れんばかりの愛情(いろいろ)のせいでSAN値がやばい。
そのあたりはまた今度解説編に置こうかと思っています。

閲覧ありがとうございました。
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