もうね・・・自分のいたらなさがね・・・もう。
本当にありがとうございます。
さて、今回は新キャラが・・・って何人出すんだ、自分。
ええと、まあそんなわけでいろいろカオスになりつつありますが閲覧よろしくお願いします。
黒い液体は徐々に海を侵食し、その体積を拡げていく。
ーーーAーーーaa
その液体が拡がるにつれ、それに同調するかの如く絶えることなく聞こえてくる歌声のような音も大きくはっきりと輪郭を持ってきた。耳を塞ごうが直接呼びかけるかのように鼓膜を揺らすその音はもはや逃げる場所などないのだという不安と、何かに見守られているかのような奇妙な安心感を同時に与えてくる。
ーーーAaaーーaaaa
歌声がはっきりしてくると何故か戦闘音は少なくなる。さすがにおかしいと思ったアイリスフィールがチャリオットから顔を出すと上陸してきていた海魔の生き残りがずるずると鈍い動きで海へと帰っていくのが見えた。
あまりの急展開にただでさえついていけなかったアイリスフィールは事態が呑み込めず、同じチャリオットに同席している・・・この場合はむしろアイリスフィールが同乗させてもらっているといったほうが正しいのだろうが、二人のうちの少女の方。月城久遠に状況を聞こうと声を掛けた。
「ねえ、そこの貴方。・・・ええとライダーの・・・。」
「マスターじゃないです。・・・取り敢えず久遠でいいですよ。アイリスフィールさん。」
先程までの焦っているような声音とは打って変わって冷静な声音とはにかんだような笑顔で「さっきはお見苦しいところを・・・すみません。」と謝罪する少女にアイリスフィールがきょとんと彼女を見た。
「あら、私自己紹介したかしら?」
その単純な疑問に少女、久遠が苦笑を浮かべる。
「さっきセイバーさんが呼んでたのでそうかなって。すみません。」
「ああいいのよ。どうして名前を知っていたのか純粋に疑問に思っただけだから。・・・ところで貴方、さっきあの白いサーヴァントのことについて説明してくれていたけどあの黒い液体については何か知っていたりとかは「呪いの泥」え?」
「呪いの泥、ですよ。」
先程まで浮かべていた笑顔を消して真剣な、ともして無表情にも見える顔でアイリスフィールから海へ視線を移した久遠はぼそりと「でも、そんなものがどうしてここに・・・というかあのサーヴァントは一体・・・」などとブツブツと呟いていたが余りにも小声で、且つ早口だったためその内容のほとんどはすぐ傍にいたアイリスフィールにすら聞き取ることはできなかった。
「久遠?」
「え?あ、ああ。前に一度見たこと・・・が・・・。」
瞬間。久遠の脳裏にノイズ交じりの場面が浮かび上がる。
ーーー地下。空洞。瓦礫。二人の人影。片方が倒れて。姉さん。どうして。赫。銀色の何かが生えて。誰。だれーーー?
鈍痛と共に遠のいた感覚が戻ってくる。
「っつ。」
「久遠・・・ごめんなさい。なんだか無理をさせてしまったみたいね。」
「い、いえ、そんなことは・・・。」
否定の言葉とは裏腹に身体から発せられる眩暈や吐き気を必死に取り繕う。
敵陣営に弱っていることを悟られまいとする気丈さからくるものではなく、久遠はごく自然にこの目の前にいる白い貴婦人にそんな悲しい顔をしてほしくないという人としての感情からその体調のことを隠し通すことにした。
「・・・本当に、少し立ち眩みがしただけですから。お気になさらず。」
「そう?でも無理はだめよ?」
「はい。」と短く返事を返し、久遠は再び説明すべく口を開く。
「ええと、呪いの泥・・・なんですけど。どこから話したらいいかな・・・私、実は聖杯戦争に参加するの初めてじゃないんです。」
久遠の発言にアイリスフィールは口元に手を遣り、小首を傾げる。それはそうだろう。聖杯戦争というのはそもそもアインツベルン、マキリ、遠坂の三つの家が編み出した術式でありその一部が漏れてしまったとしても到底真似できるものではない。故に久遠が言っているのはこれまでに開催された一次から三次までのどれかということにアイリスフィールの中では絞られるのだが、少なくともアイリスフィールの聖杯としての記録の中に彼女のような人物に該当するような者は存在しなかった。しかし、目の前の少女が嘘をついているようにも見えない。それが更にアイリスフィールを混乱させた。
「・・・残念ながら途中で負けちゃいましたけど。一応私にも役割があったんでそのまま経過を見守ってたんです・・・途中でアクシデントがありまして、その時ですね。あの泥を見たのは。」
こともなげにさらりと役割やらアクシデントやらと言っている久遠の話を聞きつつアイリスフィールは頭の中を整理していく。
仮に、
「・・・実はそこの聖杯。欠陥品だったんですよ。聖杯どころか霊地そのものが汚染されてて、で、無色の魔力の代わりに溜まってたのがあの泥だったわけです。ほんとにもう最後まで勝ち残ってたセイバー組はちょっとかわいそうでした。結局、セイバーのマスターがそうゆうのの除去が得意な人だったんで最終的な仕事は全部その人がしてくれたんですけど・・・確かあの時はサーヴァントが一体残っただけであとは全員手遅れ・・・というかいなくなりましたね。確か。」
「そ、そう。」
言われた結果にアイリスフィールの背中に冷たいものが走る。今まで自分も夫も、そしてアインツベルンも儀式が成功することだけを考えて、成功することが
「(イリヤ・・・。)」
もし、もしも何らかのアクシデントがあって
もしも最初から先程の話の中であったように何らかのことが原因で聖杯が
もしも・・・儀式が失敗して
知らず、アイリスフィールは口元に添えた手に更にもう片方の手を添え、震えていた。
どうすればいい。どれが本当で何を信じればいいのか。自分たちは本当に正しい道を歩んでいるのか。
そんな様子のアイリスフィールを余所に無感動に久遠が「動きました。」と目の前の光景をアイリスフィールに伝える。
はっとしたアイリスフィールが海に意識を向けた時には親に当たる海魔を包囲するかのように拡がる呪いの泥と、そこに向かっていく分離した夥しい海魔の群れだった。
ーーーAaaaaaaaaaaaaaaa
既にかなりはっきり聞こえるようになっていた歌声がより大きく響く。この音がするたびに海魔の群れが動くところを見るに泥に向かってというよりこの歌声に釣られてというほうがしっくりくるのかもしれない。
ーーーい・・で。
ーーーおいで。
ーーーかえっておいで。
ーーー還っておいで。
ーーーさあ、この母の元に。
ーーーーーー還っておいでーーーーーー
歌声がはっきりとした音声に変わる。と、久遠は自然と一歩前に踏み出している自らの足に気づいた。
このままあと数歩歩けばチャリオットから落ちてしまうのだが何故か向こうの泥に行かなくては、否。行きたいと彼女の本能的な部分が告げているようで、理性で理解していてもずりずりと足が海に向かって前に出る。
ーーーーか え っ て お い でーーーー
ふと周囲を見るとサーヴァントもマスターも一般人、動物でさえ皆一歩、また一歩とふらふらと頼りなさげに海を、泥を目指して歩いている。
このままではまずいと久遠が思ったとほぼ同時にざぼっという音とともに親の海魔の周辺の水が根こそぎ消失し、上澄みすらない純粋な泥がその消失した部分を補うかの如く満たしていく。
その泥は明らかに他の海水とは違う動きを見せており、海魔に向かって波が立っている。その波は徐々に大きくなり、最終的に海魔の全長より大きくなるとまるで巨大な手か口のようになった泥が海魔を包み込むように呑み込んだ。
ーーー
その声と共に海魔は完全に泥に飲み込まれ姿を消す。
正しく一飲みにされたそれは例え異常なまでの再生能力を持った海魔であっても足掻くことすらできず、一瞬で無に還った。
一同がほっとしたのもつかの間。今度はまだ泥の範囲内に入っていなかった海魔の群れが陸地を目指して進行してくる。どうやら生存に必要な魔力を得るために生き物の血肉を求めているらしい。
防戦に徹していたサーヴァントたちがもう一度武器を構えなおす。
しかし、ウルレシュテムもこれで全て獲ることが出来たとは思っていない。故に、彼女も
ざぷざぷと小さな何かが海・・・ではなく泥から顔を出すと一気に飛び出てくる。それは一匹・・・否。一羽二羽どころではなく数えきれないほどの大群となって、一斉に港に向かって飛んできた。
そのうちの一羽が勢い余ってチャリオットまで突進してくる。結果見事にぶつかって落下。その一羽はすんでのところで久遠に抱えられた。
「・・・かわいい。」
その正体は灰色の羽毛に赤い瞳の手のひら大の小鳥であった。
小鳥たちは一斉に上陸した海魔に向かっていくと一匹につき数羽掛かりで啄み始めた。
しかし、このままやられるほど海魔も脆弱ではなかったらしくならばと言わんばかりに近くの個体と融合して巨大化する。が、この小鳥たちも伊達にウルレシュテムと共に神代を生き抜いてきた訳ではない。
ある一羽がぴいぴいという鳴き方をやめたかと思うと突如ぎょろろろという奇妙な鳴き声を出し始める。そして、その一羽に続きまた一羽また一羽と同じ鳴き方を始めたのだ。
そこに新たに泥から排出された数羽の鳥が嘴に何かを咥えてやってくる。と、その何かを鳴いている仲間の口に放り込んだ。
「ギャギョオオオオオオオッ」
放り込まれた個体が次々と始祖鳥を思わせるフォルムの怪鳥に姿を変えていく。
始祖鳥とは言ったもののサイズがまず違う。この鳥たち一羽につき大きさが大型トラックぐらいある。
この時点でやばいのだが更に現代の鳥には必要ないであろう立派な(鋭い)歯が嘴から覗いている。・・・この鳥たちの歯はサメの様とでもいうのだろうか・・・鋭い歯が隙間なく並んでいた。
翼・・・手羽先の先端は鋭い鉤爪になっており、それ以外の個所は大量の羽毛で覆われ余裕で飛ぶことが出来そうだ。
脚・・・こちらも恐ろしく頑丈そうなつくりの足で、現存する鳥類の中だとおそらくヒクイドリに近いような気がする。ただし大きさも爪も(略
最早小鳥でも鳥でもない、TORIである。
とんでもねえ進化を遂げた鳥たちが先程まで数羽で一匹を啄んでいた海魔を一羽で貪り喰っていく。
地獄絵図というかここだけ軽く時代朔行紛いの出来事が起きている。
流石に魔術師といえどこれは見ていられなかったらしく皆一様に顔を背け、口を覆っていた。
そこに上の方から何か繭のような球体がゆっくりと降ってきたかと思うと、それがシュルシュルと解け、中からウルレシュテムと大勢の人々・・・大部分は子供であった。が出てくる。
近くにいたTORIの頭を撫でながら「これでいいんですよね?」と聞いたのだが返事が返ってくることはなく、しばらくしてから桜のみが「ママってすごいんだね。私も頑張らないと」と言って雁夜が泣いた。
◇ ◆ ◇
ダンッというテーブルを乱暴にたたく音が静寂の漂う空間を震わせる。
「おのれ・・・ランサーのやつめ、混乱に乗じて仕留めて来いと言ったというに・・・教会も教会だっ何故こんな異常事態だというのに調査もしない?すべて後手に回っているではないかっ」
ケイネスが苛立だし気に頭を抱える。
これだから異教徒狩りと神秘の秘匿にしか頭のいかない輩はっなどとブツブツと文句を言っているとコツリとヒール独特の硬質な音とともにソラウが入室する。
「起きてしまったことは仕方ないわ。それより頼みの綱だった教会がこんな体たらくでこれからあなたはどうしようというのかしら?こんな些細なことにわざわざディルムッドまで使って・・・。」
ディルムッドがいないせいかいつにも増して冷徹な視線がケイネスを射抜く。
「・・・まさか、ここまで教会が頼りにならないとは思ってもみなかった。とりあえずランサーが帰還次第今の工房は転居する必要がある。君は・・・。」
「言い訳はいいわ。行き当たりばったりはもうたくさん。やっぱり頼れるのは彼だけよ。」
大袈裟に溜息を吐いたソラウはそのまま部屋を退出する。
彼女が退出した後、ケイネスも溜息を吐く。
動かない教会。不安要素にそれを決定づけるに値する材料。魅了の解けない婚約者。
ケイネスはそんな増えていく問題に頭を痛める。
ーーーこんな時に彼女がいてくれたら少しは楽だったろうに。
時計塔に在籍している教え子の一人で魔術師の当主のスペアとして育てられたにも関わらずケイネスの補助業務すらやってのける生徒。
容姿は婚約者に少し似ていて、赤毛のーーー。
「名前は確かーーー何だったか。」
こんなことなら意地を張らずにつれてくるべきだった・・・。
正確には意地ではなくソラウに対する見栄なのだが、減らないどころか増えていく悩み事にケイネスは再度頭を抱えた。
◇ ◆ ◇
ところ変わってイギリス。某空港にて
いかにも重そうなキャリーケースにこれまた重そうなボストンバックを幾つか手に持った女性が飛行機の予定を確認していた。背格好からして女性だということはわかるが肝心の顔は長い赤毛に覆われよく見えない。
「・・・ええと。日本行きの便は・・・あった。」
搭乗口へと歩を進めると女性の髪が揺れて顔が現れる。
「待っていてくださいね先生。今行きますから。」
現れたその顔はソラウ・ヌゥザレ・ソフィアリと瓜二つであった。
・・・というわけで一行が海魔を討伐している間にケイネスさんに不穏な影が・・・?
みたいな回であったわけですが・・・。
うん、まあ今回はそれよりも鳥の超進化が個人的には・・・。
あんなにかわいかったのにね・・・あ、ヒクイドリはかわいいですよ。よろしければ検索してみてください。
それでは閲覧ありがとうございました。