若干空気が何名かいますが・・・どうぞよろしくお願いします。
「え、英雄王っ・・・きっさまああああっ」
セイバーが感情任せにふるったであろう拳を魔力で編んだ障壁でいなしたセイバー状態のギルガメッシュは表情を変えないまま、ゆっくりと口を開いた。
「・・・ならば、貴様に何ができるというのだ?女。」
崩れ落ちた桜の亡骸からはいまだ血が滴りおち、ギルガメッシュの衣を汚している。
しかし、そんなのは些末事だとばかりに桜を抱えつつ、自らの姉の身体がいまだ遺る地点へと歩いていく。
尚、その間にセイバーに視線をよこすということは一切なかった。
本来なら一番激情を顕わにしてもおかしくないであろう雁夜すら黙ったまま。ただ、ギルガメッシュのみが口を開く。
「そも、
「尻拭い?尻拭いだとっ」
ランサーが表情を強張らせつつわずかに槍を構えた。
セイバー、ランサー双方ともに武器を構え、アーチャーに至っては手を出すつもりも、助けるつもりもないのかただニヤニヤと笑っている。ハンドラーに至ってはそもそもが論外だ。
「ああ、そうだ。此処は姉上のために我が子が作った舞台だった。・・・少なくともそこな雑種が余計な真似をしてくれなければ今頃は、姉上をここで止めることが・・・一時的とはいえ留めることが出来たというに。」
言って、血溜まりに沈む姉の亡骸に、桜の亡骸を抱かせて、更にそれをギルガメッシュ自身が抱き抱えた。
「遅くなった。・・・今回は此処で幕引きの様だ。また、約束を違えてしまったな。」
ぽそりとギルガメッシュが亡骸に何事かを囁き、その顔についた泥や血を拭い去っていく。
そのあと、心底大切そうにその頬を優しく撫でた。
その様を他のサーヴァントたちとは違い訝しげに様子をうかがっていた衛宮切嗣は此処でやっと違和感に気付く。
(何故、肉体が残っている・・・?)
通常倒されたサーヴァントは血痕などは残るもののその本体は小聖杯、牽いては大聖杯起動のためのエネルギーとして小聖杯にくべられ消滅するのが常である。
(まさか、まだ死んでいないのか)
それは非常に困る。このサーヴァントを潰すために、わざわざアイリスフィール、舞弥に一画ずつ令呪を譲渡し、こうして被害者の振りまでして暗躍していたというのにしぶといにもほどがある。
内心で舌打ちをしつつサインで舞弥に指示を出そうとした際にそれは起こった。
血溜まりの中でウルレシュテムと桜を抱きかかえるギルガメッシュ。不謹慎ではあるが大変絵になる光景だろう。
しかし、ここでハンドラーが首を傾げた。
「・・・おかしい。」
「どうして・・・血が止まらないんだ。」
その一言に再度切嗣を含めた周囲が注目する。
ギルガメッシュの足元に広がる血溜まり。その血は既に成人女性の内容量を遙かに上回る量が現在も流れ続け、それは徐々に、しかし確かに黒く変色してきていた。
そう、まるで海魔戦で見せたあの泥のように。
「ゔっき、り・・ごほっ」
それを皆が確認するより早くアイリスフィールが胸を押さえて倒れこむ。
「アイリっ」
切嗣がよろけつつも駆け寄ろうとするが時すでに遅く、彼女の目や口といった粘膜の間から、ウルレシュテムの泥と同じような何かが溢れ出す。
「あ、主イイイイっ」
咄嗟にランサーがケイネスとソラウの前に立ちふさがり、槍を構えた。
瞬間。
暗い閃光が辺りを包んだ。
◇ ◆ ◇
ウェイバーとライダーが久遠を見つけたとき、彼女は瓦礫の上で一人膝を抱えていた。
へっぴり腰ながらもなんとか瓦礫の上に着地することが出来たウェイバーはそのまま自分の方すら見ようとしない少女に声を掛ける。
「ほら、何やってんだ。さっさと帰るぞ。」
「・・・帰るって、何処に。」
「はあ?決まってんだろう「聖杯戦争?利用してる夫婦のところ?ああ、それとも時計塔?」
「・・・好きになさい。私も勝手にするから。・・・敢えて言うなら、なるべく遠いほうがいいわよ。以上」
いままでと打って変わって無気力な風の彼女にウェイバーはむっとしつつ答えを返した。
「なに他人事みたいに言ってんだ。お前も一緒に行くんだよ。」
「嫌よ、無理よ。というか消えて。今すぐに。」
取り付く島の無いとはこのことかと言わんばかりの拒絶の言葉のオンパレードに気圧されるもウェイバーが諦めずにもう一度口を開こうとする。と、ここで始めて、彼女が質問にこたえる以外の形式で自己主張をした。
「もういい、もういいのよ。もうすべて終わったの。だから、私に構わないで。」
「お前は終わったと思っても僕は終わってない・・・ていうか、放っとけるかよ。そんなフラフラで。ほら」
差し出されたウェイバーの手は思い切り振り払われた。
次いで、悲鳴じみた怒号。
「もういいって、構わないでってっいってるでしょうっもうっ放っておいてよっ。」
そんな平行線の会話を今まで黙って聞いていたライダーははあっと息を吐くと、怒鳴った。
「いつまでも甘えるなよ。小娘っ。」
「良いか。余らは人間だ、自棄になってもいい。後悔してもよい。拒絶してもよい。だが、己を真に思いやり手を伸ばす者をないがしろにするのはやめろ。・・・人は一人では生きていけん。もしそれを覆して一人で生きていけるなんぞというやつは既に人ではなく化け物だ。・・・そんな風に命を腐らせていくというのなら、いっそここで余が摘み取ってやろうか。」
ひとしきり言いたいことを言ったらしきライダーはもう一度溜息を吐くと「後はお前の仕事だ坊主。余はこのあたりの状況を確認してくる。」と言って戦車で駆けて行ってしまった。
こんな状況に一人で置いて行かれるのかよ!?と内心で慌てふためいていたウェイバーが身を乗り出そうとしたとき、不意に裾を引かれた。
見ると、久遠が裾の方をこれでもかというほど力を込めて摘まんでいた。
「すまなかったって」
ぽつりと久遠が呟いた。
「許さなくていいって。ただ、生きていてくれって」
「ああ、」
自然とウェイバーが相槌を入れる。
その後も少女はぽつぽつと語っていく。
「少し、せつなそうに、仕方ないなって顔で笑って」
「ああ」
「わたし、殺すつもりでいったのに、独り相撲、みたい、で」
「ああ」
「わた、わたしっわたしは・・どう、すればよかったのよ」
「・・・」
「みんな、みんな、私に何かを言って残していくのっ。」
「・・・」
「ひ、人の気持ちも知らないで、勝手に消えてっこんなに苦しいのにっ」
「そっか」
「きらい、嫌い嫌い嫌いっみんな嫌い。」
「うん」
「お願い。お願いだから、おいて・・・か、ないでっ。
一人にしないで。
傍にいて。同情だっていいの、だから・・・お願い・・・します。傍にいて・・・ください。」
「・・・馬鹿だなあ。」
久遠の背中に腕を回し、背中をあやす様にさすってやる。
「お前は危なっかしいから、仕方ないから僕が面倒見ててやるよ。
ライダーの戦車が見えるとウェイバーは腰を上げて、ボロボロと泣いている少女に手を差し出した。
その手は弾かれることなく今度こそ固く握られていた。
◇ ◆ ◇
暗い閃光の後、そこは泥の海と化していた。
ーーーAaaaaaaaaaaa
一面に歌声が響き渡る。
目を開けた切嗣は状況を確認する。
どうやらランサー陣営は最初の一撃で何処かへ吹き飛ばされたらしく、サーヴァントもマスター、関係者の姿もない。というよりいまだ姿が見えるのはアーチャーとセイバーと自分のみである。
(っついったい何が・・・。)
無機物の聖杯が光を放っている。つまるところこれで小聖杯は起動したわけだが、その聖杯を守るかのように周囲を囲う泥のせいで奪取は困難を極めるだろうことは既に確定しているとみるべきか。
「ほう、なにやら懐かしいと思っていたがあの女怪よりにもよって母神の化生かなにかであったか。」
唯一感心したように声を上げるギルガメッシュに若干の苛立ちを感じつつ切嗣は固有時制御を発現させる。
が、その瞬間巨大な何か、見えないものが頭上を掠めていった。
それはまるで巨大なこん棒か何かのように周囲の木々をなぎ倒し、遠方の町までを一撫で、否。一薙ぎし消える。
森の向こうの町からは火の手が上がっているのがわかった。
(・・・聖杯さえあれば)
そう思って固有時制御をフル活用し一気に駆け抜けていく。
そして、聖杯は目前に迫った。
しかし、これで勝てると思っていた切嗣は此処で絶望することとなる。
何故ならその厄介な泥は、間違いなく聖杯から生成されていたのだから。
嘘だ。
しかし、そんな感情とは切り離された理性が口を勝手に動かした。
「セイバー。令呪を三画用いて勅命とする。---聖杯をーーー。」
そして、それとほぼ同時に泥から何かが二つ。出てくる。
「破壊しろ。」/「
巨大な腕を模したそれは、無慈悲にもその場にいた者たちを
ーーー我が
大丈夫。次が最終回です!!←?