博麗霊夢物語   作:はるちぃ

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決心

これは、霊夢が寺子屋に通い始めて少したった時のお話。

 

◆◆◆

 

「紫!紫!幻想郷は、紫がつくったの!?」

霊夢は寺子屋から急いで帰ってきたらしく、息を切らしていた。

「今日の歴史の授業の時に習ったの!紫が世界を2つに分けたんでしょ?すごいね!!!」

上ずった声で言った。

霊奈と紫は顔を見合わせた。

──ついに、この日が来たか。

 

 

◇◇◇

 

一週間ほど前。

時は霊夢がいない午前中、博麗神社にて。

紫は、次の博麗の巫女の選定に入る時期だと、そう霊奈に言った。

「いちばん能力的に適しているのは霊夢だわ。逆に、この年頃の子達の中には、他に適する子がいないの。」

「ああ、それはよく分かっているし、私も霊夢を次の巫女にしたい。ただな...」

「妖怪退治の様子を見せなきゃいけないんだっけ。」

「ああ、そこなんだよ。」

「霊奈の時はどうだったかしら?私もう忘れちゃった。」

「私の時はな、候補が私を含めて3人いたんだ。あるとき紫がその3人に「付いてきなさい。」ってだけ言って、博麗の巫女の妖怪退治の様子を見せたんだ。その後に紫が「あなた達、博麗の巫女になって人里の人間を守る気は無い?」って。他の2人は妖怪退治を見て怯んだから、私がなるしかないって強く思った。博麗の巫女は大切だっていうのを寺子屋で学んでいたしね。だから、人里の家から神社まで通って修行して、12になったときには家を出て修行して、やっと巫女になった。」

「そっか、そうだったわ。...霊夢は妖怪退治の様子を見てどんな反応をするかしらね。」

「そこなんだよ。それに妖怪退治をしているのが自分の母親っていうのもな...」

「まあ、霊夢が自分から聞いてきた時が話すチャンスね。」

「ああ、そうだな。」

紫はおじゃましました〜と言って、スキマの中に入っていった。

 

◇◇◇

 

──今だ、今が話すチャンスだ。

まずは紫から、話し始めた。

「霊夢、そうよ。幻想郷は私がつくったの。幻想郷は、もう1つの「外の世界」と呼んでいるところで、人間に忘れられたものがくる所なのよ。」

「忘れられたもの?」

「そう。幻想郷には人間より妖怪の方が多いでしょう?外の世界はこことは逆に、人間が多くて妖怪はほとんどいないの。」

「妖怪いないの?」

「昔はいたんだけど人間に忘れられちゃったの。だから、忘れられた妖怪は幻想郷に来たのよ。外の世界の人間に忘れられたものが、ね。」

「あー、うーん、まあ、なんとなくわかったかもしれない。」

「霊夢にもいずれ分かるわ。今はなんとなくでいいわよ。」

「うん!」

 

ここからはあなたが話す番と、紫が目で霊奈を促した。

 

「でな、霊夢。紫は幻想郷を作る時、人間と妖怪が同じ幻想郷で暮らせるように、ある役割を作ったんだよ。それが、博麗の巫女だ。博麗の巫女は、簡単に言うと幻想郷の人間の代表みたいなものだね。」

「おかーさんも?」

「ああ、そうだ。」

「悪い妖怪をこらしめるっていうやつは?」

「ああ、それはね、妖怪退治と言って、人里の人を襲ったり襲おうとしたりしている妖怪を退治するんだ。」

「じゃあ、おかーさんは、幻想郷の人を守ってるの?」

「ああ、そうだ。」

「へぇ〜、かっこいいね!!ねえねえおかーさん、霊夢も博麗の巫女になれる?」

 

霊奈と紫はハッとした。

 

「...修行をすればなれるよ。でも、まずはお母さんが妖怪退治をしてるところを見てね。それからほんとに修行をするかどうかを決めてもらうから。分かった?」

「うん!」

 

 

 

それから数日後、神社に妖怪退治の依頼が来た。

寺子屋はもうすぐ終わる。

霊夢を連れていくにはちょうどよかった。

青い空が広がり、太陽が眩しく光っている。

ただ、霊奈の表情だけが重かった。

「霊奈。そんなに緊張してどうしたのよ。」

「ああ、うん。まあな...。」

スキマから身を乗り出した紫は、霊奈が妖怪退治の準備する様子をじっと見ていた。

霊奈の目には不安が宿っていた。

「…霊奈、霊夢はそんな子じゃないわ。きっと大丈夫。あなたのことを怖がったり、博麗の巫女になるのをやめたりなんかしない。きっと、何か感じ取ってくれるはずよ。」

「ああ、そうだといいんだがな。」

「とりあえず、あなたはなんにも考えずに、いつも通りやってきなさい。ありのままを見せるのが、今日のあなたの役割よ。」

「...分かった。ありがとう、紫。頑張ってくる。」

紫は、やっといつもの顔に戻った霊奈を見て、少し笑った。

「じゃあ、霊夢を迎えに行ってくるから、あなたは直接向かいなさい。」

紫はひらひらと手を振ってスキマに入った。

 

 

 

 

人里には異様な空気が張り詰めていた。

妖怪が、人里の門を開けようとしていたのだ。

それを人里の男達が必死になって食い止めていた。

それはもちろん、門から遠い寺子屋にまで伝わっていた。

慧音は、子供たちにずっと教室にいるように言うと、どこかへ行ってしまった。

こわいよ〜

死んじゃうのかな

どうなっちゃうの

おとうさん!!おかあさん!!

教室からいろんな声が聞こえてくる。

霊夢は、この前霊奈と紫に言われたことを思い出し、教室を飛び出した!

──おかーさんは、いま、妖怪退治をしに来るはず。

ぜったい見なきゃ!

霊夢は自分の感覚を頼りに、妖怪がいそうな方へ走っていった。

途中の大人達の制止の声も聞かず、無我夢中で走った。

そして、、、スキマに落ちた。

 

「いったぁ!って、紫?ここどこ?」

「ここはスキマの中よ。」

「出して!おかーさんの妖怪退治を見に行くの!」

「分かってるわ。でも、ここから見た方が安全なのよ。」

霊夢はきょとんとしていたが、スキマの一部が開かれるとすぐ理解した。

そこからは、霊力と殺気を帯びた母親がものすごいスピードで飛んでいるのが見えた。

 

 

 

 

霊奈はまず、人里の中から門の所に行った。

そこには門を必死に止めている男達がいた。

「遅くなって申し訳ありません。ただ今妖怪を門から離しますので、まだ門は押さえておくようにお願いが致します。」

と言い捨てて、霊奈は飛んで門の外へ行った。

そして空から妖怪をひきつけ、人里から離した。

──妖力の量からしてこいつは低級妖怪だろう。

でも、こいつはガタイがいい。

吹っ飛ばされたら危ないな。

睨み合う中、先に動いたのは妖怪の方だった。

霊奈に向かってまっすぐ突進してくる。

それを霊奈はターンで交わすと同時に蹴りをいれた。

妖怪は土煙をあげながら吹っ飛んだ。

ただ、これで終わらないのが妖怪退治。

土煙の中から、明らかに殺傷能力のある妖力の弾がいくつも飛んできた。

──甘いな、妖怪よ。

霊奈は、その決して少なくない弾の間をするすると抜け、霊力の弾を妖怪めがけて打ち込んだ。

霊奈の高密度で殺意を持った霊力の弾をよけられる妖怪はそこら辺にはいない。

妖怪は、逃げることも出来ず、まともに霊奈の弾をくらった。

辺りには2度目の土煙があがった。

 

 

 

 

「...おかーさん、かっこいい......」

霊夢はふと、呟いた。

いつもの遊びとは違い、真剣なおかーさんから放たれる霊力の弾は、強くて美しかった。

土煙の中、堂々とたっているおかーさん、かっこよかった。

 

でも、やがて土煙が晴れたとき、霊夢は見てしまった。

堂々と立つおかーさんの向こうで、血を流して倒れている妖怪を。

 

 

 

 

霊奈は、妖怪が確実に死んだことを確認すると、静かに手を合わせた。

「霊奈、お疲れ様。よく頑張ったわ。ありがとう。」

紫が霊夢を連れて霊奈のところに来た。

霊奈と紫は、深くえぐれたところに妖怪を埋め、何事も無かったかのように周りを元の状態に戻した。

 

その帰り道。

「霊夢、あなたには自分の母親が妖怪を殺したようにみえたかもしれない。確かに結果的には殺してしまった。でもね、一方で、多くの人間を救っているのよ。あなたも今日、人里に妖怪が攻めてくる恐怖を体感したはず。霊奈は人里を守ったのよ。」

「それにな、霊夢。人間を傷つけたり殺したりしない妖怪となら、仲良くしてもいいんだ。紫だって、藍だって、橙だって、今日のやつと同じ妖怪。でも、私達を襲わないだろ。そういう妖怪となら仲良くしてもいいし、人間と同じように守ってあげてもいいんだ。」

「まあ、一週間後に決めなさい。よーく考えるのよ。巫女になるかならないか。」

「うん。分かった。」

霊夢はただ呆然と飛んでいた。

 

 

 

 

1週間後。

 

結局、けーね先生に聞けなかったな。

忙しそうだったもん。

 

.....「巫女になるかならないか。」か。

おかーさんの戦ってるところは、初めて見たけどかっこよかった。

でも...

寺子屋にいた時の恐怖や、人里の男達が必死で門を押さえている姿や、血を流して倒れてる妖怪の姿が目の前を通り過ぎていく。

確かに、博麗の巫女は人を守ったんだ。

人を守れるのはすごくかっこいいと思う。

でもさ、だからって妖怪を傷つけてもいいのかなぁ。

 

やっぱり、聞いてみよう!

霊夢は寺子屋へ急いで戻った。

 

ちょうど休み時間になったとき、霊夢は思い切って先生のところに行った。

「せ...先生!あの!ええと、その、聞きたいことが、あるんです、けど...」

「ん?どうした?なんでもいいよ、話してごらん。」

先生の声はいつもよりも優しかった。安心した。

忙しいからって突き放されるかと思った。

「えっと.....博麗の巫女は.....本当に良いんですか?」

「え?」

あーだめだ。うまく言えない。

「えっと、人を守るためなら、妖怪を殺してもいいのは、良いんですか?悪く、ないんですか?」

先生は私の目をじっと見ている。

そして、全てを察してくれた。

「霊夢、幻想郷の妖怪には2つの決まりがある。1つは、幻想郷中に悪い影響を及ぼすことをしないこと。もう1つは、人里の中の人間を襲わないこと。そして、この決まりを守れなかったものは、博麗の巫女に退治される。」

「.....」

「つまりだな、妖怪は決まりを守らないと、博麗の巫女に傷つけられるか殺されるんだ。博麗の巫女は、なんにも悪くない。悪いのは、決まりを守らなかった妖怪なんだ。この前のだって、殺された妖怪は人里に入ろうとしたから、博麗の巫女に退治されちゃったんだよ。」

「あー、あー!なるほど!」

そうか、そうだったのか。

妖怪には決まりがあったのか。

なんにも悪いことしてないのに、ただ本能で動いただけなのに、なんで博麗の巫女に殺されなきゃいけないんだろう。

1週間ずっとそう考えてた。

でも、なあんだ、簡単なことだった。

決まりがあったのか。

だったらもう、

…1週間、私はなんでこんなことで悩んでいたんだろ。

霊夢は、ふっと心が軽くなった。

「先生、ありがとうございます!」

霊夢はいそいで家に帰った。

 

 

 

 

「おかーさんただいまー!」

「あ、霊夢、おかえり。」

「あ、紫もただいま!」

「おかえりなさい。」

「霊夢、座って。」

博麗神社の居間には、大人と妖怪と小さな少女。

「霊夢、考えてきた?」

「うん。あのね、霊夢ね、色々考えたんだけどね、」

「…」

緊張した空気。

「博麗の巫女、なろうと思う!人を、守りたい!良い妖怪とは仲良くするけど、ダメなことはダメって言わなきゃ!」

「それが霊夢の答えなんだね。分かった。じゃあ、明日から紫と一緒に頑張ろうか。」

「うん!」

「霊夢、今の言葉、忘れちゃダメよ。」

「うん!」

 

 

 

 

次の日から、霊夢の巫女修行が始まりました。

霊夢はひたむきに努力して、どんどん成長していきましたとさ。




こんにちは、はるちぃです。

今回は少し長めでしたが、お読みくださりありがとうございました!

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