マスターなんて者は原則として、ただの魔力タンクだ。
実際ゲームでも戦闘中は、マスター写ってないからな。
カーラマイン名乗る騎士は、剣を構えて様子を覗う。
「ランサー相性は最悪だが、レベル的には大丈夫なはずだ」
「誰に言ってやがる。ふん、こんなの瞬殺よ」
先に動いたのはランサーだ。
早すぎて、俺の目には立ち上る砂埃しか見えない。
ランサーが立っていた場所には砂埃が立ち、そして剣戟の音が響いた。
「ふっ!」
「ぐぐぅ!?」
驚きに目を見開くカーラマイン。
彼女は騎士、故にスピードに自信があったのだろう。
だが、それを凌駕するスピードを兄貴は出していたのだ。
最初に一撃、それを彼女は剣を盾にすることで何とか防いだ。
だが、その威力に身体は地面を滑るように動く。
槍の一突きが彼女を押し出したのだ。
「舐めるなぁ!」
「へっ、気の強い女は好きだぜ!」
カーラマインの剣に火が灯った。
それを彼女は上から振り下ろす。
「そらっ!」
兄貴はそんな上からの剣に槍を横にして防いだ。
そこから、片手側を上に動かし斜めに払うように剣を弾く。
「しまっ!?」
「シッ!」
払われ、剣を頭上に上げた形で後ろに倒れそうになるカーラマイン、それは無防備に腹を出している体勢だ。
だから、兄貴は迷わずその隙を狙った。
赤い槍をクルリと回転させ、その後ろの石突きの部分を深く押し込むように前に突き出す。
結果、彼女はうっという小さな声と共に崩れ落ちた。
「風を纏っていた奴を思い出したぜ」
いつの間にかどこかに転送されたことで、彼女が気絶かなんかで戦闘できない状況に追い込まれたのだと把握する。
やはり、腐っても英霊だ。
十把一絡げの悪魔に遅れを取るわけが無かった。
「マスター!?」
「ッ!」
視界が揺れる。
マシュが、俺の首根っこ掴んで振り回したからだ。
地面に投げ倒された状態で、俺は何が起きたか状況の把握に努めようとした。
何だ、敵か?奇襲されて、もしや上からか?
「おいおい、何の真似だ?」
「フフフ、ハハハ、愛!愛を!」
「イカレて……いや、そうだったな」
マシュの盾ごしに俺は敵を見た。
それは、筋肉モリモリのマッチョマン。
身長221cm、体重165kg、圧制者を愛し、圧制者に愛された男。
スパルタクスであった。
「えぇ、スパルタクス!?スパルタクスなんで!?」
「悪への反逆、素晴らしい。しかし、大義無くして戦いを強いる者、須く圧制者なり!我は圧制からの解放者、圧制者死すべし慈悲はない。華々しく死ぬが良い」
「某主人公のような聖杯戦争に巻き込まれ型の一般人、かつ悪を挫く正義のマスターであれば何とかやっていけるとも言われてるのに!」
知らなかったのか、言われてるだけで型月の設定は変動するって事をな。
騙された、また型月に騙された。
きのこの言葉を真に受ける様では型月厨としてまだ2流だったよ、きのこが言ったわけではないけどな。
「兄貴、頼めるか?」
「生き残るだけの戦いか、生憎そういう経験には慣れっこだぜ。だが、坊主ひとついいか?」
兄貴はそう言って、槍を構えながら首だけを後ろに向け、シャフ度で聞いてきた。
「復活するだろうし、別に倒してしまっても構わねぇだろ?」
「兄貴ぃぃぃぃ!それ、一番ダメな奴だよぉぉぉぉ!」
何言ってるんだよ、死んじゃうよ。
「何かと思ったら仲間割れかい?全く、臣下を導かなくして何が王か」
「ぬ、ぬかったわ。そしてご主人が死ぬと悲しいということが判明した。なのでこれからもアタシを頼るがよい。アタシの命にかえても守るぞ、マスター」
「おう、お前らも来たのか」
そんな不安な俺を神は見捨てなかったのか、ライダーとタマモキャットが近くに来ていた。
いや、神様は死んでるから俺を転生させた悪魔に感謝だわ。
「フハハ、英雄豪傑が揃いも揃って、これほど困難な道があろうものか!素晴らしい、闘争よ!」
「フッ、スマブラで連敗している君が僕に勝てる訳がないですよ」
「……王よ、圧制者よ!今すぐ決着を付ける時!行くぞ圧制者、我が愛を受け入れろ!」
「おい、そんな理由で始めるんじゃねぇよ!」
戦いが始まった。
ライダー、バーサーカー、ランサー対スパルタクスだ。
あの、宝具の使用だけは控えてね。あと、フェニックス倒したら、説得するから頑張って。
「行きましょう先輩、クーフーリンさんの犠牲は無駄には出来ません」
「あぁ、そうだな」
「おい勝手に殺すな、この人でなし!」
俺は彼らを背に、校舎へと侵入した。
校舎へと侵入してから、悪魔とはエンカウントしなかった。
慢心故に一人で迎え撃つ気か、まったく慢心していいのは王様だけだぞ。
「ほぉ、来たかと思ったら人間、貴様か」
「ライザー」
生徒会室を開けた途端、椅子に座ったまま不敵な笑みを浮かべたライザーが待ち構えていた。
「まさか貴様――」
「マシュ、防御任せた」
イメージしろ、イメージするのは常に最強の自分。
心臓にナイフを突き刺すように、魔術回路を起動する。
肉体を強化し、そして投げる。
「何のつも――」
「悪魔め、慢心したな!」
当初の予定と違うが、俺だって自衛の手段ぐらい用意していた。
投擲により、いくつかの宝石を生徒会室にぶちまかれる。
ライザーは、ある意味理解の及ばない行動に一瞬だけ硬直する、それは好機だった。
「起動!」
俺がマシュの背後で身構えた瞬間、生徒会室が轟音を立てながら炎上した。
それは、一週間の間に霊地から集めた魔力を加工、蓄積、そして作成した宝石による魔術だ。
「貴様ぁぁぁぁ!」
「よし良いぞ、逃げるぞマシュ」
人間にコケにされた悪魔は、俺を追い掛けるだろう。
それこそが、俺の狙いだとも知らずにだ。
案の定、ライザーは生徒会室から飛び出した。
その顔は怒りに満ちており、どっかの先生みたいである。
「ただでは殺さ――」
「コンテンダーを喰らえ」
強化なしでは反動で撃てなさそうな巨大な銃をライザー向けて発砲する。
発砲後、装填し、また発砲する。
「どこを狙っている、こんな――」
「後ろだ、ライザー」
飛来した銃弾は難なく避けられ、無駄撃ちかと思われた。
その銃弾が軌道を変えて、背後からライザーを撃つまではそう思われていた。
「ガッ!?」
「祝福された銀の追尾機能付き魔弾だ。祝福はアーシア先輩、魔弾は俺の指を使っている」
「がぁぁぁぁ、この俺が痛いだと!ぐぅぅぅぅ」
流石に不死殺しなんて持ってないから殺すことは出来ないだろう。
だが、殺せなくてもやりようはある。
ライザーはその危険度を理解し、翼を出して逃げ出そうとする。
だが、ここは室内。
逃げる場所など無かった。
「ぐあぁぁぁぁぁ!消えろ!」
「対処法に気付いたか」
いくつかの被弾の後に、炎を全身から発することで銃弾を溶かすという方法を編み出した。
蒸発してしまえば、銃弾も追い掛けることは出来ない。
だが、銃弾を警戒していつまでも炎を出し続ける魔力が残っているのか?
「調子に乗るなよ人間!」
「マシュ、任せた」
「女を矢面に立たせて恥ずか――」
「主よ、恵みの御業のうちにわたしを導き、まっすぐにあなたの道を歩ませてください。わたしを陥れようとする者がいます」
「その言葉は、ぐぅぅぅ!」
「やぁぁぁ!」
ライザーが前に出てきた瞬間、マシュの攻撃のタイミングで俺は聖書を読んだ。
銃弾だけではない、聖書という装備も立派な武器なのだ。
頭を抱えるライザー、それを躊躇無くマシュが盾で殴った。
「人間を舐めるなよ。喰らえ、聖水アタック!」
「ぐあぁぁぁぁ!殺ず、殺しでやるぅぅぅ」
ペットボトルを投げ、その中身をライザーにぶっかけた。
すると硫酸でも浴びたかのように皮膚が焼け爛れる。
悔しいでしょうねぇ、でもやめない。
「どうだ聖なる攻撃は、マシュの盾には十字架がある。さしものお前も不死身とは言え悪魔だからなぁ!」
この日のために、聖なる道具を幾つ作ったと思っているのやら。
次は黒鍵だ、吸血鬼ではないのが悔やまれるが十字架であるのに意味がある。
「離せ、離せクソ女ぁぁぁ!」
「無駄です、今なら貴方の攻撃は通じません」
「無敵スキルが切れる前にやってしまおうか」
さて、お前に教えてやろう。
不死身の弱点、死ねない苦痛という奴をだ。