「唸れ、灰猫!」
唸らない。
ビュン、っと剣が振られる。
姿は変わらず、そのままだ。
「やっぱり、使えねー」
「魔力……とも違う物ですね。神秘というよりは、この世界特有の何かを用いるようです」
俺達は手に入ったパチもんの聖剣を調べていた。
フリードが使えたのに、俺には使えない不思議な代物。
まぁ、選ばれたやつしか使えないのが聖剣なのだが、あんなキチガイ神父を選んだとしたらこの聖剣は汚染されてる。
「パチもんだ、これは……だって、エクスカリバーは返却されてるはずたもん」
「伝承通りでしたらね」
セイバーは木に寄り掛かって寝てる奴知らんのか。
あのとき、看取られたセイバーが報われないだろ。
返したと言ったな、あれは嘘だ。
酷いな……そんな事実があったらずっと、彷徨うことになるぞベティ。
「でもさぁ、この聖剣とやらどうする?分解しちゃう?」
「そんな恐れ多い」
「そうですね、自分が間違ってました姐さん」
「姐さん!?ちょ、ちょっとどういうことですか」
いや、なんか自然に……アーシア先輩マジリスペクトっすわ。
っべーわ、まじべーわ!アーシア先輩の拳とか、怖すぎ。
「マスター、ここで面白いお話が」
「嫌な予感」
「どうも、堕天使のコカビエルとやらがこの街をぶっ壊そうとしてるらしいですよ」
「やっぱり!メフィストの面白いは最悪だよ!」
そうだった、堕天使さんが来るんだった。
でも。エクスカリバ―合成するために来るだけじゃないの?。
あれか、ヨン様リスペクトしてるのか?王鍵作る的な奴か。
「うんじゃ、あれか。一応、見に行く?」
「おうよ、ケルトの戦士だろ!気張っていこうぜ」
「兄貴、俺はケルトじゃないよ」
「おぉ、マスター!反逆の同士よ」
「俺、革命家じゃないよ」
なんだかやる気は満々みたいだし、諦めて行くことにした。
マシュにおんぶして、学校まで高速で移動していると生徒会長達がいた。
「せ、生徒会長!?」
「どうして、一般人が……一般人?」
「生徒会長悪魔だったんですか!生徒会も!」
あっ、そうだった。
なんか舌みたいな神器を持ってる奴が生徒会で悪魔やってたわ。
あと、お姉ちゃんが魔王だったわ。
なんで忘れてたんだろ、姉ちゃんのキャラ凄いのに。
「ソーナちゃん?」
「なっ!やっ、何言ってんですか!ぶち殺しますよ」
「心の底からごめんなさい」
思い出してたらつい言ってしまった言葉に、会長が顔を真っ赤にする。
不覚にもときめいてしまったでござる。
いたたた、ごめんマシュ。
「むぅ、先輩は私だけの先輩なんですよ」
「はい」
「自覚して下さい」
そんなマシュに拗ねられる一幕があった物の、俺達は会長が何をしてるのか観察してみた。
ふむ、なんか手からブワってやって結界を張っているようだ。
「会長、中はどうなってるんですか」
「貴方、というか其方の方の格好からしてリアスが言っていた人達ですね」
「何を言ってるんやら」
「厳しいことを言いますが、神器を持っているからといって何か出来るということはありませんよ」
それは会長なりの忠告だったのだろう。
ここまでは良かった、会長がそこでやめたのなら本当に良かった。
「だから、ジッとしてて下さい。良いですか、何もしないで下さい」
「フフフ、フハハハ!汝、行動の自由を奪い、人の尊厳を踏みにじる愛すべき圧制者よ!我は圧制に反逆するぅぅぅ!」
「な、なに!?」
マッチョだ、マッチョが飛んだ。
飛んだマッチョは腰を捻り、空中で結界に向かって拳を振るう。
凄まじい暴風と共に結界は崩壊し、ガラスの割れるような音が響いた。
「な、なななな……」
「うーん、よし行くぞマシュ」
「ま、待ちなさい!どういう状況、なにこれ!?」
何って言えば反逆である。
慌てる生徒会長に説明するのも億劫だったので、俺はその横を通り過ぎる。
校庭、そこにはグレモリー先輩と愉快な仲間達がボロボロになっていた。
転生者君は、ボロボロになりながらも堕天使らしき人と戦っている。
黒い長髪、鋭い目、化物のような口、堕天使っていうより悪魔である。
「むぅ、むむむ……」
「先輩、スパルタクスさんが迷ってます」
「たぶん、どっちを倒せば良いか分からないんだ」
取りあえず逆らってから考えるみたいな思考回路だったんだろ。
それで来てみたら戦いがあり、どちらが劣勢か見極められないのだろう。
「ぐっ、増援か。人間風情が増援とは舐めら――」
「ニィ!圧制者よ、汝を抱擁せん!」
一瞬の出来事だった。
堕天使の奴が喋った瞬間、スパルタクスは飛んだ。
「あ、あれは!」
「知ってるのか、マシュ」
「ハイフライフローです!この間のプロレスでやっていた、フィニッシュムーブ!」
君達、俺が知らない間に何を見ているんだと困惑を隠せないでいると状況は俺なんか関係なしに変る。
「ぐあぁぁぁぁ!」
「フハハハ、テイッ!」
「あ、あれは!」
「今度は何だ」
「アナコンダバイスです、変形の腕極め式袈裟固め!」
堕天使のコカビエルさんから悲鳴が上がった。
スパルタクスが身体に絡みつき、ふんずほぐれずな感じでプロレス技を掛けていたからだ。
「おい、俺も混ぜろ!」
「えっ、ぐげぇ!?」
「ラリアットです、ラリアットですよ先輩!」
「味方、それ味方だよ兄貴!」
なにこれぇ、とハイライトの消えた目でスパルタクスを見ていたら後ろで霊体化を解除した兄貴がその最速のクラスに違わない動きで走り出し、ポカーンとしている転生者君へラリアットを噛ましてしまった。
そのままゴロゴロ転がり吹っ飛ばされる転生者君。
とばっちりである。
「あ、貴方達何しに来たの!」
「グレモリー先輩、いや、その……」
「なんだかんだと聞かれたら!先輩!」
「えっ、答えてあげよう世の情け?」
「世界の平和を守るため、愛と正義の悪を貫くラブリーチャーミーな私は、マシュ・キリエライトです」
「マシュ、口上が微妙に違うよ。世界の破壊を防ぐためが抜けたよ」
「ふざけてないで、真面目にやりなさい!」
グレモリー先輩が髪と同じくらい顔を真っ赤にして怒鳴っていた。
すみません、うちの後輩が早くって感じで呼ぶからつい。
頭を下げながら、心の中で謝罪する。
「おい、何してる!マスター、命令を!早くオーダーだ!」
「分かったよ兄貴、サーチアンドデストロイ。サーチアンドデストロイで」
「取りあえず、ぶっ殺せば良いんだろ!よっしゃ!」
元気良いなぁ、と槍を構える兄貴を見る。
鋭い切っ先からは赤いオーラが陽炎のように出現し、それが宝具を使うという前兆だと分かる光景だった。
知らないオッサンが、なんだアレはなんて言うくらいである。
「喰らうが良い、我が必殺の一撃!ゲイ――」
『Divide! Divide! Divide! Divide! Divide! Divide!』
「誰だ、俺の邪魔をする奴わ!」
声が聞こえた。
まるで機械から聞こえるような声だ。
気配察知から兄貴は上空を睨み付け、魔力の消えた槍を構えながら下手人を見る。
宝具の魔力を何らかの方法で削った下手人、俺はその答えを知っている。
「無様だなコカビエル。アザゼルの羽は常闇のように美しいのに、お前と来たら……」
「がぁぁぁぁ、その声はぁぁぁぁ!」
「フンッ」
白い影が空から光となって落ちてくる。
それはコカビエルを抑えるスパルタクスの元に落ちた。
落ちた光はスパルタクスを吹き飛ばし、そして制止した。
その瞬間、奴の姿が見える。
白い鎧、まるでロボのようなゴツゴツとしたフォルム、その名は白龍皇。
兄貴の宝具を半減の力で発動できない程に魔力を減らした下手人だ。
「シッ!」
「ほぉ」
赤い軌跡が下から上と唸るように描かれる。
それは兄貴の奮う槍の残像だ。
掬い上げるように奮われ、クルリと回し、そこから前に向かって三段突き、流麗な槍の一撃だ。
だが、それを白龍皇は下がりながら拳を振るって相殺した。
「なかなかやるな」
「抜かせ、若造が!」
ば、馬鹿な!今まで一方的だった兄貴と互角、エミヤ並ってことか!?
「名の知れた武人と見るが、今は機会じゃない」
「ぐぅぅぅ……ハァハァ、よくやったぞヴァーリー」
「何か勘違いしているようだな、まぁいい」
「何っ、まさか!」
兄貴から視線を外した白龍皇、彼は先程と同じように光の速さで移動する。
高速移動で、ニヤケているコカビエルの元に向かったのだ。
そのことで、コカビエルが何かに気付くがもう遅い。
白龍皇はそのまま拳を腹部に叩きつけ、空に飛び立ったからだ。
「ア、アザゼルゥゥゥゥゥゥ!」
コカビエルのなんだか残念な叫びが聞こえるのだった。