真っ白な場所にいた。
目の前には石の扉、その前に黒い輪郭の人型がいる。
そんな人型が、よぉ……なんて片手で手を上げた。
「俺は奴を殺したのか?真っ二つだし、悪魔の生命力でも死んでるはずだが」
「あぁ、此方で魂は回収した」
「それで、俺はどうしてこんなところにいるんだ?」
目の前にいる存在、神の敵対者を自称する俺が悪魔と呼んでいる奴に質問する。
俺ってば、気付かない間に死んでたりするのだろうかと思ってだ。
「奴の死により、歪んだ歴史というか世界は修正された。お前はあの世界には必要ない」
「ど、どういうことだってばよ……」
「つまり、修正が始まるため異物であるお前は消えるので此方に呼ぶことにした」
俺はそーなのかーと事情を知って気のない返事をする。
ってことは、別の世界に行くってことなのだろうか?
「理解が早くて助かる。今頃、バランスの為に神は四苦八苦していることだろう。ジグゾーパズルのピースが一つなくなったような物だからな」
「そういうお前らの事情はいいんで、早くマシュに会いたい。というか、言いたいことがあるんだがどうして種火周回とか素材マラソン出来ないんですかね?おい、あく実装しろよ」
「仕様だ。ゲームのバランスとかシステム通りに反映すると、弱体化するだろうが。実際にいた場合、HPなんてないんだ」
「あと、ガチャを回させろ!石一個で回せるけど一月待てって馬鹿なの?死ぬの?」
「仕様だ。……だが、今回の報酬をやるとしよう」
その言葉とともに、パイプオルガンの音が聞こえてキラキラした光が頭上に発生した。
そして、ゆっくりと金色の板が降りてくる。
「呼符だ」
「おま、神かよ」
「神ではない、殺すぞ」
初めて見た呼符だった。
それが5枚、少なく感じるが貰えるならありがたい。
やったぜ、これでガチャが回せる!
「さて、お前の好きそうに言うならば今回の特異点の人理は修正された。よって、次の特異点に行って貰う」
「おぉ、それっぽい」
「だが私も鬼ではない、選ばしてやろう。ちなみに、悪魔でもないからな」
そう言って、俺の目の前にカードが五枚浮かび上がった。
おっ、これを選べっていう感じですか?
「カッ!ペルソナ!」
「やめろ、握りつぶすな」
ペガー、と光った俺の握りつぶしたカード。
どうやら次の行き先らしい。
「ふむ、中々の良物件だ。だが、時系列がな」
「どこの世界なんだ?」
「まぁ行ってからの楽しみだと思え」
そう言って、悪魔は俺を見て笑った。
ニヤッと、口の形が変わる。
そして、石の扉が左右に開き始めた。
ちょ、なんか見たことあるぞ!
「どうだ、なかなか凝った演出だろう」
「うわー、黒いの出た!いっぱい、来た!目とかいっぱいあるんだけど!か、必ずお前を迎えに来るからな!あぁ、一度やって――」
「いいから早く行け」
最後は顔面を蹴られることで、俺は石の扉、どこかで見覚えあると思ったら真理の扉にぶち込まれた。
最初に感じたのは風だ。
頬に当たる風、周囲に立ちこめる爆風を俺は浴びて顔を顰める。
続いて、差し込んでくる光とそれをバックに佇む少女を見た。
桃色の、それこそ染めているのかと聞きたくなるような髪の、人形のような整った少女だった。
「なるほど、ならば言うしかあるまい。問おう、貴方が俺のマスターか?」
「あんた、誰?」
「君が召喚したにも関わらず、開口一番にそれかね?どうやら、不完全な召喚のせいで記憶が曖昧らしい」
もちろん嘘であるが、細かい説明をしたくないのでアーチャーでロールプレイである。
「おい、ゼロのルイズがまたやったぞ!平民だ!平民を呼び出したぞ!」
「ミスタ・コルベール!やり直しを!もう一回召喚させてください!」
「ミス・ヴァリエール。使い魔の変更はできない。契約を結びなさい」
「むっ……あんた、感謝しなさいよね。貴族にこんなことしてもらえるんだから」
捲し立てる生徒、それと不満を募らせる召喚した少女、もうこの世界がこれだけで分かるだろう。
どうやら俺は、ゼロ魔の世界に来ているようだった。
『ますたぁ……浮気ですか?』
『必要なことだ。ルーンに関しては興味がある』
『むぅ』
少女、ルイズが近づいてくると俺の身体の内側から声がした。
マシュ達がどうなっているのか、今の俺は状況が把握できてはいない。
聖杯を取り出そうにも、呼び出しには応じずまるで存在しないかのようだ。
俺が困惑していると、首のネクタイを捕まれた。
どうやら、俺は制服で召喚されたらしくネクタイをしていたのだ。
ぐいっと引っ張られて、下から唇にキスされる。
今世でのファーストキスだったのだが、気分は最悪である。
……魔術回路を作るときのような激痛だな。これは常人なら叫ぶレベルだ。
「珍しいルーンだ、書き取らせてください」
「あぁ、構わない」
さて、これが他人に使役される気持ちかと納得する。
これはいわば刷り込みだ。
俺はルイズに対して、従ってやろうと思えるからだ。
さっきまで思ってなかったのに、こういう感情を抱くとは十中八九、このルーンとやらだろう。
兄貴の知ってるルーンとはどうも違うような気もするけどな。
『どうやら、ガンダールヴって意味のようだ。どういう効果だかさっぱりだ』
『兄貴は一文字で何でも出来るもんな。これ単語だから効果の候補がありすぎるわ』
つまり、これってばただの文字?まぁ、世界の設定ってことで俺の知ってるルーンとは違うんだろ。
俺の前々前世というか、最初の世界の力のないルーンから、兄貴のところのように一文字で力のあるルーン、これはハルケギニア式ルーンってことだな。
「行くわよ」
「了解した、マスター」
不機嫌そうな彼女に指示を出され、俺は従い移動することにした。
移動した場所は彼女の部屋だった。
さて、まずは相互認識について確認しよう。
「はぁ、もう寝よう」
「待て待て待て、いきなり脱ぐんじゃないよ」
「はぁ?」
そういうとこだよ、と指摘する前に行動していたルイズを俺は慌てて呼び止める。
アニメの流れとか原作の流れなのか、それとも時代設定なのか知らんがちょっと待てと言いたい。
「まずはマスター、君の認識を改めてもらう。俺のことを犬かなんかだと思ってないか?」
「使い魔なんだから当然でしょ」
「使い魔ではあるが人だ。いや、人権という物が確立されてない時代なのかもしれないが他人に肌を見せるのは淑女としてどうなんだ?犬扱いしても構わないが、後悔するのは君だぞ」
うん、別にストリップしてもええんやで。
あと、アーチャーっぽいな俺、俺的に今のポイント高い。
「くっ、うるさい!ご主人様に逆らうつもり!」
「はぁ……話を聞かないならこうだ。ガンド」
「うげぇ、ゲホッ!?」
俺の指摘に癇癪を起こしたルイズを戒めるために、俺は指からガンドを放った。
さすがにフィンの一撃ほどではないが殴られた程度にはダメージは与えられる。
何が起こったか分からず、そして涙目になって嘔吐いてるルイズに俺は近づき徐に彼女の顔を掴んだ。
「さて、マスター。話し合うつもりがないなら好き勝手させてもらうぞ。犬扱いしてるんだ、狂犬に噛まれたとでも思うか?」
「くっ、離しなさい!」
「ふむ、意志の強さは流石と言うべきか。ただ、俺もマシュと離れているのは我慢できないんだ。お前のしたことは誘拐……いや、此方の都合に巻き込まれたと言うべきか」
本来ならサイトさんが来るはずだが、来ないってことはアレだ。
俺の知識的に、転生者は貴族でもやっているんだろう。
それで俺が代わりに主人公の枠を奪った、みたいな感じだ。
「まぁ、これでも魔術師の端くれなんだ。意思がある方がよかったが、なくても構わない。一番合理的だったのが話し合いによる交渉だったが無理ならしなくてもいい」
「まじゅつし?何それ」
「メイガス、此方で言うなら魔法を使う者だ」
「アンタ、メイジだったの?でも、杖なしで……まさか先住魔法!?」
ふむ、そう来たか。
「とりあえず、交渉する気はあるか?」
「むっ……分かったわよ」