「
帰ってきて早々にやったのは神殿作りである。
この学校を作った奴は知っていたのか、それとも都合良く偶然だったのか霊地としてはそれなりの土地であり、神殿を作るのには適していた。
「周囲は石で囲まれているのが望ましい。穴を掘るか」
パラケルススの知識が分かるのか、魔術の使い方から何まで難なくこなせていた。
それこそ、通常なら操ることも出来ないエレメントを絶妙な力加減で操ったりである。
庭先の地面が勝手に捲れ上がるように移動したのは土のエレメントの仕業であった。
勝手に風呂とか召喚されたサイトが作ってたので、大丈夫だ問題ない。
後は勝手に手頃な地下室ができあがるというわけだった。
「悪霊とか放っておくとルイズが勝手に入ってきたときに危ないか。まぁ、たいした物とかないし適当で良いな」
それこそ、士郎の家のように侵入者がいるのが分かる程度にして色々と作業する。
材料はたくさんあるし錬金術も出来る、他にも呪術を使った礼装作りとか忙しい。
手始めに、腕を切断してみるか。水の秘薬ってのをくすねたし、パラケルススの力があれば粗悪品でも余裕だ。
「エレメントって、この世界の魔法に似ているな」
秘薬を併用すれば腕を生やせる程度、差し詰めスクウェアレベルだろうか。
じゃあ、エーテルは虚無ってことかな。
虚無すら使えるって、やっぱり英霊ってすげぇわ。
自分の腕を分解して、色々と弄くり回していたら、天井からポロポロと砂が落ちてきた。
定期的に、ドシンドシンと揺れが続き砂が落ちるのは収まりそうにない。
誰かが上で騒いでいるのだろうか。
「面倒だな」
重い腰を上げて、工房を通り越して神殿レベルの秘密基地から這い出して外に出る。
すると、目の前に巨大なゴーレムがおり、何度も学校を殴っていた。
「あぁ、剣買ったから今日だったか」
そう納得した直後、ゴーレムの右腕当たりが爆発し学校の壁とゴーレムの腕が破壊される。
デッカい穴が開き、あぁルイズがやらかしたと把握した。
さて、容易いことだが捕まえるかどうか。
捕まえなかったら……なんだかんだで出世するな、ルイズが。
よし、今回は見逃すとしよう戦略的な意味でだ。
「俺の出世のために見逃してやろう」
その後、材料を使ってある薬を夜通し制作するのだった。
朝、徹夜明けであくびをしながらルイズの元に来た。
なんでも、臨時休校にして会議をしている教員達に呼ばれたらしい。
目撃者だから話が聞きたいって理由だそうだ。
「どこで何してたのよ」
「秘薬作り」
「秘薬!アンタ、そんな高価な物が作れるの」
「なんのための材料だと思ったんだよ」
四属性すべてのスクウェアレベルであるパラケルススに死角はなかった。
流石アベレージワンである。虚無?知らない子ですね。
会議している場に入ると、入ってきた俺たちを一瞥しただけで大人達はやんのやんの言い争っていた。
「他の者達はどうしていたのですか!?」
「当直は誰だ!」
「体調不良でして」
「良い訳だ!そもそも、ちゃんと見ていたのか!」
そんな場所に、じいさんが遅れてやってくる。
たぶん、コイツが校長。魔法学校の校長はだいたい白い長いひげだから。
「言い争いをしていても仕方なかろう。儂らも強盗に入る輩なんぞ想定していなかった。儂ら全員の落ち度じゃろ」
「ですがオールド・オスマン!」
「幸いフーケの顔を間近で見た者がおる。ミス・ヴァリエール達に話を聞いてからでも遅くはあるまい」
ルイズ達に視線が向かい、それに答える形で知っていることを答える。
デカかったこととか犯人はローブを着た男とか言っていた。
そんな俺達の所に慌てた様子で女性が入ってきた。
マチルダだ、犯人のマチルダである。
「おぉ、ミス・ロングビル。何処に行っておったのじゃ。実は少々厄介な事がおこってのう」
「はい、フーケの事でしたら私も聞き及んでおります。それで、先ほどまで調査をしていたのですが……」
「調査ですと。もしや何か新しい情報を掴めたのですかな?」
「そうですわ。今朝方、起きたら大騒ぎじゃありませんか。そして、宝物庫はこのとおり。すぐに壁にフーケのサインを見つけたので、これが国中の貴族を震え上がらせている大怪盗の仕業と知り、すぐに調査をいたしました」
「仕事が早いの、ミス・ロングビル」
髭を撫でながら校長のオスマンが褒め称える。
うーん、わざとか?それとも本当に分かっていないのか?
サイト達がいないと逃げられたりする状況になることだから分かってなさそうだな。
「で、結果は?」
「はい。フーケの居所がわかりました」
その言葉に、一同が沸き立つ。
そしてミス・ロングビルの説明によると、近くの森の廃屋に入っていった黒ずくめのローブの男を仕事に出ていた農民が見たらしい。
「そこは近いのかね?」
「はい、およそ半日です」
「よろしい。では、誰に行ってもらおうか」
「ちょっといいですか」
俺は手を上げて、その言葉に待ったを掛けた。
何だね君は、なんて制止の声も聞こえるが無視である。
「俺の質問に答えろ」
「……はい?」
「やはり、ダメか」
軽く俺は目を通してミス・ロングビルに暗示を掛けたが失敗した。
やはり、半人前ということだからかそれとも相手の実力が高いからか。
「マチルダ、この名前に聞き覚えは?」
「……知らない名前ですね」
「動揺してもダメか、やっぱりこれの出番だろう」
そう言って、俺は懐から薬瓶を取り出した。
流石に、さっきから何やってるんだという雰囲気に咳払いを一つして校長が質問してきた。
「ミス・ヴァリエールの使い魔君。その薬は、いったい何なのかね?」
「真実薬だ。もっとも模造品で嘘が吐けなくなる程度だがな」
「そんな物を取り出して、何をしようと思うのかね?」
「そこの女、俺がフーケだと疑っているミス・ロングビルに飲んでもらう」
俺の発言にフーケだと、何を馬鹿なと周囲がざわめき立つ。
流石にルイズもヤバいと思ったのか、俺の服を引っ張って抗議する。
「アンタ、何したいのよ!すいません、オールド・オスマン」
「邪魔をするな。質問に正直に答えるだけだ、問題ないだろ?」
「お断りします。その効果が本当かどうか、疑わしいですから」
ハッ、爪が甘かったなと言わんばかりにミス・ロングビルが断ってきた。
むむむ、やりおるわ。
しかし、犯人は秘書で間違いないのでここはどうにかしたいのだがな。
「よし、ルイズこれを飲め」
「はぁ!?」
「抵抗されて壊されても良いように予備はあるからな」
「ちょ、嫌に決まってフガガガ!?」
よしよし、飲んだな。
じゃあ何を聞こうかな、うーん。
「コルベールはハゲじゃないと思ってる」
「ハゲに決まってるでしょ!あぁ、違うんです!先生、私はハゲだと思ってますけど、なんで!?先生がハゲって言いたいのにハゲって言ってる!」
「失敬な!これは剃っているのだ!」
いやいや、それは嘘だろと一同の視線が集まる。
うむ、嘘を吐こうとしても吐けないだろう。
「さぁ、飲むんだ」
「く、口裏を合わせたとしか思えませんわ。えぇ、私を陥れようとしているのでしょ」
「ミス・ロングビル?」
「気分が悪いですね。こんなに屈辱な思いをしたのは初めてです!こんな所にいられるか!」
怒った振りをして、逃げだそうとするミス・ロングビルに俺は薬を投げつけた。
すまない、経口摂取じゃなくてもいいんだこれ。
「何するんだクソガキ!」
「そっちが素だな、さぁ白状しろフーケ!」
「私はフーケじゃないよ、マチルダオブサウスゴータだ……よ……貴様ッ!」
すべての嘘が暴かれた結果、取り繕った口調も偽名も白日の下に晒される。
どういうことだと、ここに来ても状況が分かっていない奴らの前で彼女は早かった。
「クソッタレが!」
「待て!」
窓に向かって彼女は走って行き、そのまま外に向かって飛び降りたのだ。
慌てて窓に近づけば、地面を杖で柔らかくしたのか難なく着地したミス・ロングビルが泥だらけで逃走していた。
「奴を捕らえるんじゃ!本当に、フーケじゃった!」
「なんだって、誰が行くというのだ!」
「こういうときこそ、オールドオスマンが」
「またやってるのか。無能どもめ」
こういう展開があるから、普通は一緒に回収までしに行ってから捕まえるのか。
俺は自分の失策を反省して、窓から飛び降りた。
残念だったな、身体強化した魔術師からは逃げられない。
「なっ、化け物か!?」
「とおぅ!」
「ふぎゃ!?」
走っていたミス・ロングビルに向かって飛び込み、そのまま両足を掴んだ。
結果、彼女は顔面から地面に転ぶ。痛そうである。
「クソが、離しな!」
「黒か、大人だな」
「ッ!コイツ、殺す!」
杖を取り出したところで、俺は腕力の力だけで彼女を放り投げた。
強化された腕力に出来ないことはないのだ。
「キャッ!?」
「杖を使う前に肉弾戦が出来ないとは、それでも魔術師か」
「そんな野蛮なのがメイジな訳ないでしょ!」
「オラァ!」
このあと腹パンして、連行した。