「起動せよ、デルフリンガー!」
「いや、とっくのとうに動いてるだろうが」
ガシーンガシーンと動く全身鎧、その背には赤いマントが、その右手には赤い槍が、その左手には赤い盾が装備されていた。
もちろん、カラーリングは赤、鎧は赤である。
錬金と素材と骨董品による神秘で製造した礼装の塊である。
「飛び道具を無効にするマント、鯨の骨から作った投げたら戻るゲイボルグもどき、触れると反発する盾。取りあえず急造だが作ってみた」
「あぁ、ぼくのかんがえたさいきょうのデルフリンガーとか言いながら作ってたな」
「負けられると困るからな」
ルイズの側にいるため、髭を殺すタイミングがないかもしれない。
アサシンが手に入ってれば、話は違っていただろうがな。
なので、俺がルイズとアルビオンに行く間にデルフリンガーに戦って貰おうという算段だ。
「大丈夫、当社比で三倍は早いから。赤いから早い」
「どこ調べだよ」
「だからその早さで瞬殺してくれ」
地下室から出て、ルイズ達の元に向かうとなんかモグラがルイズを襲っていた。
そっとしておこう、人の趣味はそれぞれだしな。
「なに見てんのよ!ご主人様を助けなさいよ、ひゃん!だ、だめ!」
「おぉ、ヴェルダンデ……いいぞ、もっとやれ!」
「ギーシュ、覚えてなさいよ!」
ギーシュ、その趣味は中々業が深いぞ。
そのとき、不思議なことが起こった。
いや、普通に風と吹き飛ばされただけなんだけどね。
「誰だ!?」
「失礼、僕の婚約者が襲われていたようだったのでね」
気障ったらしく前髪をファサっとする髭が、グリフォンに乗って下りてきた。
噂に名高い、ロリコンである。
「僕はワルド、女王陛下の魔法衛士隊グリフォン隊の隊長をさせて頂いてる。姫殿下の命によって君達を守らせてもらおう。よろしく頼むよ」
「ソースは?女王陛下の命令ってソースは?」
「ソース?」
「おま、実は裏切っててアルビオンで色々やろうとかしてないだろうな!本当に、命令されたのか?」
「……極秘任務ゆえ形に残すことは出来ない。僕の言葉を信じて貰うしか無い」
一瞬、俺の方を睨み付けるように見たのはヤバいと思ったからだろうか。
コイツ何を知ってるって思わせるの楽しすぎ、全部である。
さて、煽るだけ煽ったがルイズの追撃が来て普通に着いてくることになった。
「さぁ、行こうかルイズ」
「でも、みんなが」
「何、ゆっくり飛ぶさ」
ワルドはグリフォンにルイズを乗せながら飛び立った。
さて、俺も行くとするか。
「ちょっと待て、いつの間に着替えたんだ。というか、なんでスカート……」
「仕様だ」
「あと、その馬?馬って言うか鳥、もしかしてペガサスなのか?」
「仕様だ」
行くぜ、ベルレフォーン!
『乗り物扱い、どうして私だけ』
「プークスクス、グリフォンとか遅いっすね」
「なっ、ハイヤ!」
「で、ちょっと早くなったからって何です?早さが足らんなぁ」
「ねぇ、なんでスカートなの?」
「仕様だ!」
スカートは女子だけじゃねぇから、伝統的な服だから!
細かいことは気にするんじゃねぇよ!
グリフォンとペガサスのデッドヒートの後、港町であるラ・ロシェールの入り口付近に着いた。
サクサク進んでいくが、確か襲撃があったはずである。
「敵襲だ!」
「なっ、どうやら野盗のようだ」
「見てもいないのに判断できるとは天才か」
「……これでも風のスクウェアだからね。耳には自信があるんだ」
お、おう。
だから、何だというのだろうか。
野盗が矢などを打ってきており、どうやら崖の上にいることが分かった。
崖ごと攻撃しようか……んっ、アレはなんだ?
「ド、ドラゴーン!」
「なんでこんな所に!」
グレネードみたいな呼びかけと同時に、野盗の慌てる声がする。
あれ、あのドラゴンなんか見たことあるぞ。
「おーい、みんなー、おーい!」
「ねぇ、あれって」
「ギーシュだな」
ドラゴンに乗ったギーシュが此方に手を振っていた。
その後ろには、タバサとキュルケがいる。
「な、なんでアンタ達!」
「みんなが先に行くから乗せて貰ったんだ」
「……成り行き」
「面白そうだったからタバサに頼んだのよ」
ふーむ、まぁアニメでも来ていたし修正力って奴なのだろうか。
まぁ時間も夕方から夜になったし、良い頃合いだろう。
俺達は宿に泊まることになった。
「なぁルイズ、なんで泊まったりするんだ?」
「アルビオンまでは船で行くの。グリフォンじゃ、距離がありすぎて飛び続けられないわ」
「あぁ、だから今は待つしか無いんだ」
「ペガサスで行けるけど」
「えっ?」
「えっ?」
「い、いや、それは空賊が出ると聞いたから危ないだろう。だからグリフォンで行こうと思わなかったんだ。本気を出せば僕のグリフォンだってアルビオンまでいけるからね」
何故か張り合ってきたワルドを一瞥して、デルフリンガーはいつ来るんだと思案する。
どうせまた呼び寄せて、半数が目的地に辿り着けば良いとか言うのである。
翌日、人が寝ているのにワルドが何やら言ってたがシカトして寝た。
夕方になり、飲もうぜとギーシュが起こしに来てようやく起床する。
ルイズはなんかソワソワしてるが、なんかあったのだろう知らんけど。
「……伏せて」
タバサが小さな声で言葉を発した瞬間、宿が爆発した。
否、爆発と見間違うほどの勢いで壁が吹き飛んだのだ。
「な、何だ!?」
「これ、フーケのゴーレム!」
俺達の前に巨大な土の拳があった。
それは、土塊の人形の拳だ。
「大変だ。このままではマズい、二手に分かれよう」
「そんな、あんなのに勝てる訳がないじゃないですか!」
「すまない、これも女王陛下のためだ。私とルイズでアルビオンに向かう、君たちはすまないが足止めを頼む。半数が辿り着けば君達の犠牲は無駄にはならない」
ワルドはきっと裏で計画通り、そう思っていただろう。
ここまでは、上手くいっていた。
「きゃぁぁぁぁ!?」
「なんだ、ゴーレムが崩れていくぞ!」
フーケらしき女の悲鳴が聞こえ、ゴーレムが崩れ落ちる。
そして、砂埃が当たりに立ちこめ、黒い影が見えた。
「な、なんだあれは!」
「人よ、人影だわ!」
ガシャンガシャン、と足音を鳴らして赤い鎧を着た騎士が現れた。
「邪魔すんじゃ無いよ!」
フーケが呪文を唱えたのだろう。
だが、その呪文によって発生した巨大な土の手は、鎧に触れた瞬間に土へと戻る。
「魔法が」
「…………」
鎧騎士が、無言で槍を投げれば野盗の群れが串刺しにされる。
そして、槍は手元に戻りその血を地面に滴らせた。
「どういうことだ、どうなってる!」
「まぁこの状況になるまえから、どういうことってなってたけどな」
フーケが不利を察して逃げようとするのを一瞥して、鎧騎士は俺達に槍を向けた。
「どうやら、私達を助けてくれた訳じゃなさそうね」
「……空洞」
「えっ?どういうこと、タバサ」
「中に誰もいない」
タバサの発言にキュルケが戸惑う。
その隙に、ワルドはルイズを連れて裏口から逃げ出した。
「やべっ、お前ら任せた」
「ふぅ、やれやれ。ここは足止めしようじゃ無いか。僕達は置いて、先に……もういない」
「無駄口禁止」
「そうよギーシュ、集中しなさい!」
逃げ出したワルドを追いつつ、宝具だけを限定展開する。
そこには、厳かな装飾の弓矢があった。
「使い魔君う――」
急に、背後の離れた場所に気配が発生した。
だが俺は玄人、玄人は慌てない。
「――しろ、だ……えっ?」
「うっ……馬鹿な」
仮面を付けた男が矢に貫かれ、崩れ落ちる。
偏在だったからか、途中で消えやがった。
「どうした、笑えよワルド」
「き、君が無事でよかったよ」
引き攣る笑顔のワルドと、俺達は桟橋から船に乗り込んだ。