「なんのつもりかしら人間、この程度」
そう言って、彼女さんは飛んで回避する。
あぁ、ゲイボルグは当たらない。
「俺の攻撃は終わりじゃ無いぜ」
「なん……だと!?」
「何を言って……ゴフッ!?」
口から血を流し、困惑する彼女さん。
ドクドクと胸から血が噴き出す。
肺にまで到達した血が、口から零れたのだろう。
「確かに、私は避けたはず……」
「心臓を抉られて、なお生きてるとはしぶとい奴だ」
おまいう、とツッコミを入れながら俺は考察する。
避けられた、だが心臓は抉られている。
つまりどういうことか、それは恐らく因果逆転現象だろう。
投げる、当たる、心臓が抉れた。
ではなくて、心臓が抉れた、何故なら投げたから、つまり投げれば抉れる。
と、こんな風にゲイボルグの因果を操作したのだろう。
一種の呪い、投げれば相手は死ぬである。
「開幕宝具ブッパとか、兄貴やべぇっすわ」
「それより坊主、身体の方は大丈夫か?」
「えっ?ぐへぇぇぇ!」
聞き返すと同時に、俺の身体が前のめりに倒れる。
い、痛い痛い!意識あるんですけど!
「あぁ、やっぱり魔力の使いすぎか」
「お、おのれ……自害させてやる」
「や、やめろよぉ!令呪あんだから、冗談でもやめろよ!」
か、身体が動かない。
これはフリーズを使ったクズマさんのような感じなんだろうか。
「人間、風情が……」
「人外風情が、失せな!」
いつの間にか手元に戻っていた槍でランサーが彼女さんの首を切断する。
あぁ、グロイよあっちも地面に倒れてるから目と目が合ってるんですけど。
その時、不思議な事が起こった。
なんと、彼女さんの身体が消えていきそして黒い羽になったのだ。
「えぇぇぇぇぇぇ!?」
「マスター、何かに使えるかもしれません」
「ほぉほぉ、素材ゲットですなぁ」
キャスター組が嬉々としてその羽を回収する。
そんなゲームじゃないんだから、素材とか出るわけ無いだろ。
あれ……じゃあ種火も素材も手に入らないからレベル上げからスキル上げ霊基再臨も出来ないの!?
じゃあガチャしか出来ないって事かよ!ストーリーとガチャだけでマラソン出来ないって!
「マシュ、ごめんな。俺はお前に種付け出来ない」
「ッ!?先輩最低です!」
「うん?……あっ、違うそういう意味じゃ無い」
種付け、それは種火をたくさん喰わせること。
決して卑猥な意味ではない、でも羞恥に染まったマシュも可愛いです。
下ネタダメ系女子って、あざといけどいいね!
「そこまでよ!」
「誰だァ!」
ほのぼのしていた空間に何者かが現れる。
同時に、兄貴が凄い勢いで戦闘態勢に入った。
怖いよ、士郎が逃げ出す訳だよ。
「ヒッ、あ、貴方達!こ、ここがグレモリーの領地って、分かってて」
「先輩大変です、クーフーリンさんが女の子を泣かせてます」
「ランサーが泣かした、この人でなし」
「その体勢で元気だな、おうおう」
「や、やめろー!蹴るんじゃ無ーい」
ランサーの抗議を身に受けながら、今更ながらこれが原作イベントだと気付いた。
あれだ、主人公が殺されちゃう奴だ。
ってことはアレは堕天使でレイナ―レって奴なんだろう。
すまない、現実だとコスプレにしか見えないしピンと来なかった。
「あー、取りあえずマシュさんや。帰りましょうか」
「はい、了解です」
「女の子に片手で持ち上げられる、私は悲しいポロロン」
ウチの奴らは好戦的だからトラブルになる前に撤退である。
転生者を殺さないと行けないけど、俺ってば基本的に争わないで良いならそれでいいから。
悪魔も殺せと言ったけど、寿命で殺しても大丈夫だろう。
まぁ、たぶん無理ってお言葉も頂いてるけどな。
「ま、待ちなさい!貴方達には事情を聞かせて貰うわ」
「おいおい、どうするよマスター」
「無視して帰るぞ、はい解散」
了解、と槍を担ぎながらやれやれという仕草をするランサー。
主人に絶対服従、ケルトの兵士って扱いやすいってわかんだね。
「マスター、それは命令か?」
「お願いです。弱者の懇願、反逆はノー」
「懇願なら仕方ない、反逆ぅぅぅ」
主人に絶対反抗、スパルタの兵士って扱いにくいってわかんだね。えっ、ローマ出身?知らなかったなぁ。
サーヴァントの速度に付いていけるわけも無く、そそくさと俺たちは撤退した。
マシュは、なんていうか固かったよ。
マシュのマシュマロは鎧のせいで固かったんだよ。
私は悲しい、ポロロン。
「マスター、通販で欲しいものがあるのですが」
「パラケルススの口から通販って言葉が出てびっくりだよ」
「素材を加工して礼装でも作りたいですからね。密林は素晴らしい」
適応力高いな、お前。
まぁ許可を出すんだがな。
帰宅してからは、みんな自由に過ごした。
キャスター二人が部屋に籠もって何やらやってるし、ショタとマッチョは庭で筋トレである。
兄貴はタマモとテレビゲーム、適応力本当に高いなぁ。
「征服、征服か!まさに圧制、反逆である!」
「線から出たら負けですよ、はっけよーい!」
「おい、汚ぇぞ!後ろから攻撃すんな」
「赤い甲羅は自動攻撃、マタタビダッシュの猫が如しなのだぁ~」
「マスターご飯が出来ましたよ。二階の部屋が騒がしいですね」
「キャスター達には関わりたくない、爆発音とか知らない」
ちなみに、晩ご飯は鍋だった。
タマモ、ネギでお腹壊したね。猫だったんだ、お前。
「あ、熱い!だが屈しぬ、これも愛か!」
「やるなって言ってるのにやりたがるよね、あっその肉は僕のですよ!」
「悪いな坊主、弱肉強食ってやつだ!って、俺の皿を取るんじゃねぇ!」
「残念ですが、この皿は僕が征服しました」
「お行儀が悪いですよ、二人とも」
騒がしい食事だったが、悪くなかった。
「肉、肉ぅぅぅ!だがしかし、トイレは友達、タマモはトイレから出られない」
「分かったから、ドア閉めろ。ちゃんと残しておくから、なっ」
「おのれネギめ裏切ったか。この恨みインガオホーにするのである」
「ぐおぉぉぉぉ!辛い、辛いがこれもまた愛。もっとだ、いいぞぉ!肉、汝を抱擁せん!」
「おいエール飲もうぜ!違った、ビールって奴だ!」
「あっ、僕も僕も!お母さん、僕も!」
「未成年はダメですよ。あと、私はお母さんじゃ無いです」
なおキャスター達は部屋に籠もって何かしていた。
ご飯すら食べないで何かするとか、絶対ろくでもない事だよ。
「マスターマスター、大変ですぞぉ!」
「やっぱり、今度は何したんだよメフィスト!」
「じゃ~ん、プレゼントです」
俺は急に降りてきて騒いでいたメフィストの出した物に絶句した。
それはリボンを巻かれた中学生の女の子だったからだ。
「……にゃあ」
「…………」
「契約終了です。報酬として……ご飯食べたいです」
「……あっ、どうぞ」
頂きます、そう言って女の子は席に座って食事を開始する。
うん、取りあえずお前正座しよっか。
「あれれ~嬉しくありませんでしたか。ウヒヒヒヒ」
「犯罪なんざ起こしやがって」
「おやおやおや、敵対ですか?わたくし平和主義なのですがねぇ」
「野郎ブッ殺しゃぁぁぁぁ!」
殴りかかって、秒殺でKOした。
え、英霊には勝てなかったよ……うぅ。
「おい弱すぎるだろ!ガハハハ!」
「ビール、ビール、クソ!何故僕は子供なのか」
「メフィストさん、ちゃんと訳を説明して下さいね。あとこれ、取り分けておきましたから」
スルーか、俺が負けたことはスルーか。
我が家の女神マシュすらスルーである。
「マスター、話せば長くなるのですがチラシに魔力を込めたらあら不思議、召喚されたのです」
「なるほど把握」
「……マシュ殿、わたくし野菜は――」
「ダメですよ」
「…………はい」
笑顔のマシュにメフィストが従った事で俺は思った。
マシュってスゲーってな。