翌日、学校である。
帰り際、明日覚悟して下さいと意味深な言葉を残した少女をどこかで見たようなと思いながら登校した。
久し振りな気もするし、初々しいどこか不思議な気持ちで一歩進む。
「むっ」
すると、踏み込んだ瞬間に違和感を感じた。
それは結界らしき物のようだ。
「凛ちゃんもこんな感じだったのだろうか」
自分で有り他人の記憶を頼りに教室にやって来る。
しかし、何というか今までの俺はモブらしい平均的な性格に成績だった。
なんだろう、逆にここまで普通って凄い。
何かしら変なところとか目立つところがあるのが人間だって言うのにだ。
「待ちなさーい!」
「逃げろ!」
廊下をものすごい勢いで三人組が駆けていく。
その後を追う女子、駒王の風物詩である。
ギャグ漫画とかじゃないので、普通に覗きは犯罪なんだが注意だけで済むんだからビックリな風物詩である。
「そっとしておこう」
主人公らしく、関わらないで置くのが一番である。
そして、席に着いて準備をしていると誰かが肩を叩いた。
「…………」
「何か反応して下さい」
数秒、フリーズした俺はその言葉で正気を取り戻す。
いや、まさか昨日の中学生が目の前にいるとは思わないじゃ無いか。
「まさか同じ一年生だったとは」
「私は気付いてました。だから、自宅にチラシを入れといたんです」
「へぇ」
聞いてもいないのに、部長が興味を持っているとか、その不思議な力について知りたくないかとか言ってくる。
別にいいです、知ってますんでと思うのだがこれが世に言うフラグって奴なんだろう。
「分かりましたか」
「聞いてなかった」
「はぁ……放課後、オカルト研究部に行きますよ」
そう言って離れていく少女、そういえば名前を聞いていなかった。
たしか、一年は白音だか小猫って眷属がいたな。
たぶん小猫ちゃんなんだろう。
「おい、小猫ちゃんと何話してたんだ」
「あぁ、やっぱり小猫ちゃんと言うのか」
タイミング良く友人が話し掛けてきて、名前が分かった。
ヒロインだし可愛いから人気だもんね。
このノリ男子高校生っぽいなぁなんて思うのだった。
放課後、普通に帰ろうとしたら連行された。
ょぅじょっょぃ、とはこの事か。
そういえば悪魔の駒で強化されてるんだったね。
二日連続女子に片手で連行されるとは、私は悲しいポロロン。
「もしもし」
『はい、どうしました先輩』
「ちょっと呼び出しで遅れそう。あと、兄貴呼んでくれる?」
『ランサーさんですか?昨日のように敵でしょうか?』
「一応、こっちに来てくれたら助かる。一番早そうだし頼んどいて」
運ばれながら、家の方に電話した。
いや、原作とかうろ覚えだし眷属にならないなら死ねとかありそうじゃん。
絶対勧誘するはずだしな。
「運ばれながら何してるんですか?歩かせますよ」
「兄貴が免許持ってるから、迎えに来て貰おうと思って。遅くなるんでしょ?」
「そういうことなら、ただすぐに帰して貰えると思いますよ」
え~本当でござるかぁ?
だったら良いんですけどね、それにしても降ろしてくれませんか。
結局諦めて自分から行くのだった。
旧校舎、そこはボロすぎて行きたくない場所。
正確にはそう思わされていた場所である。
今は違うけど、前の俺なら寄ろうとすら思わなかっただろうな。
「ここです」
「ちなみに活動って何してるの?」
「オカルトを研究してます」
「そのまんまなんだね」
奉仕部や隣人部並みに意味が分からない活動内容である。
さて、恐らく転生者がいるならこのイベントにいるはずだがいなかった場合は敵側にいるのだろう。
例えば渦の団とか、悪魔とか堕天使になってるとか。
教会の線は、エクソシストになりたくなさそうだし薄そうだ。
部屋の中に入ると、ソファーやティーセットなど結構内装は綺麗だった。
ただ、ぶち壊すように変な魔法陣とかあるけどな。
「ふっかふか、ふっかふかだぞ小猫ちゃん」
「座っていいなんて言ってないです」
「小猫ちゃん、お茶とかないの?」
「図々しいですね」
知らんし、というか他の人達はいないのだろうか。
そう思っていたらドアが開いて誰かが入ってきた。
「あら?もう来ていたの」
「どうも」
「ゆっくりしていってね」
そう言って入ってきた人物、赤毛でピンと来た。
グレモリーってこの人だってね。
ただ、俺とは昨日会ってるはずなのにこの対応である。
普通、警戒とかしないのだろうか。
「あらあら、お茶でも出しましょうかね」
「ありがとうございます、えっと」
「姫島朱乃です」
小猫ちゃんからご存じないのですかみたいな視線が来たけど、知ってる知ってる。
ただ、文章上だったから見たこと無かっただけである。
グラビアアイドルみたいだな、清楚系で売ってる。
そして、何故かシャワーを浴びるグレモリー先輩。
痴女なんだろうか、学校でシャワーを浴びるとか意味が分からないよ。
「小猫ちゃん小猫ちゃん」
「何ですか?」
「ここって他に部活あるの?」
「無いですよ」
「なのに水道と電気は来てるの?えっ、なんで」
「何ででしょうねぇ……」
答えは悪魔が運営する学校だから、クソ権力者め!
ランサーでは無くスパルタスの方が良かったかもしれない。
「っていうかさ、今まで話したことも無かったのに何で呼ばれたのよ」
「そうですね、こういう人だとは思っていませんでした」
「ありがとう」
「褒めた意味で言ったわけじゃ無いです」
知ってた、皮肉だよ。
そんな会話を繰り広げていたら、ドアが開いてまた誰か来た。
あ、あれは風物詩の兵藤先輩。
つまり主人公じゃ無いかぁ!
「こんにちは!」
「部長に言われたとおり、連れてきました」
「あれ、呼ばれたのは俺だけじゃ無い?」
どうもと頭を下げると、相手は大分困惑した様子だった。
おや、おやおや、メフィストじゃないけどそんな言葉を言わずにはいられない。
この状況に違和感を感じる、それってつまり一人だと思ってたんだろ。
もしかして、コイツが転生者なのかな?
「木場、俺の他に人がいるのは何でなんだ?」
「あぁ、彼も君と似たような物でね。部長が説明してくれるよ」
たぶんそういう事じゃ無いんだろうが、可能性がグンと上がった。
シャワーから出てきた先輩は、着替えてから定位置についた。
この後の事を知ってるから、練習とかしたのかなと見ている。
「これで全員揃ったわね。それじゃあ、貴方達」
呼びかけと同時に、バサッと翼が飛び出る。
「私達、オカルト研究部はあなたを歓迎するわ……悪魔としてね!」
そして、渾身のドヤ顔である。
ポカーンとする兵藤先輩、俺は横で拍手した。
「お、驚かないのね?」
「驚きましたよ。凄いコスプレですね」
「えっ?」
いや何言ってんのお前と言った顔をされるが、こちとら横に警戒対象がいるのでアホなこと言うしか無い。
ここで理解力なんて示したら、俺と同じようにこっちを転生者じゃないかって思うはずだからだ。
「コスプレじゃ無いわよ!本物よ!」
「そうですね」
「信じてないでしょ!もう、触ってみて」
ぐいっと翼を出してきたので思いっきり引っ張ってみた。
「痛たたたた!?」
「ほ、本物っぽい!」
「痛がってるから!本物だから!」
「いやだな、先輩そんな演技しなくても」
そんな感じで時間稼ぎしていると、耳元で待たせたなと声が聞こえた。
ふぅ、ようやくか。
「まぁいいわ、悪魔かどうかはこの後の話で分かる事よ。いい、貴方達には
「知ってます知ってます、格ゲーですよね。あぁ、よくやったな」
「全然違うわよ。というか、貴方の知り合いは覚醒している筈よ」
おぉ、なるほど。
ランサーは神器じゃ無くて、所持者として予想しているのか。
今の発言で兵藤先輩が俺の事をスゲー見てきてるけど、やっぱり転生者なのだろうか。
よし、ダメ押しにしてみるか。
「それってコレの事ですか?」
そう言いながら念じて聖杯を呼び出す、同時に現界せよと命令することでランサーを呼び出した。
「おう、マスターの命令により現界したランサーだ、よろしくな嬢ちゃん達」
「えっ!?」
ガタッと立ち上がった、兵藤先輩。
いや、主人公に乗り移った転生者だと俺はソイツを見て確信した。