その気配に、身を震わせ戦闘態勢に入ることが出来たのは木場祐斗、只一人であった。
なんだこれは、その感情に支配されたことがありありと分かる。
常在戦場、戦いが始まった瞬間に殺せる。
その男にはやると言ったらやると言う覚悟が垣間見えた。
……みたいなナレーションが聞こえたりするのかな?
「あぁん?」
ランサーが睨みを利かせる。
ビクッとした木場先輩が後ろに下がる。
うぅむ、他の奴らはなんとも思ってない。
俺だって思ってない、兄貴って凄いの?それとも、木場がビビりなの?
「おい、レア度で考えてるようだが現実の性能は違うからな」
「あー、なるほど」
固まっていたグレモリー先輩が、あなた何者とランサーに問いかける。
「俺を知らねぇとは、これだから極東の奴らは」
「兄貴はクーフーリン、本物の英雄だよ」
えっ、という驚きの声が上がった。
そして、ボソボソと英雄の魂を受け継いで生まれてくる者もいるがまさか、なんて言葉が聞こえた。
あぁ、確かいたなそういうの。
「ところで、貴方は聖杯によって呼び出されたという解釈で良いのかしら?マスターって呼んでいたし」
「おう、まぁな」
「そう。じゃあ……そう言えば何て名前かしら?」
「フランシスコ・ザビ……!?」
「ちょっと!何を言わせるのみたいな目でみないで!それより私の眷属にならない?寿命も延びるし、魔力や筋力だって上がるわ。貴方にとって良い条件だと思うの」
ほらやっぱりと、勧誘されたことにやれやれといった態度を取る。
横で転生者が、部長なんて叫んでるけどお前まだ部員じゃないだろ。
さて、この余裕の正体が何なのか俺は分かった。
慢心だ、慢心である。
自分の事を強いと思っているのだコイツ。
悪魔に人間が逆らうわけが無い、だから断るはずが無い。
断ったらどうなるか、原作では分からなかったことである。
だから、俺は断らないことがベストだろう。
「だが断る!」
「なっ……!?」
「この俺が最も好きな事のひとつは、自分で強いと思ってるやつに「NO」と断ってやる事だ!」
スピードワゴンはクールに去るぜ。
こんな悪魔の巣窟にいられるか!
「待ちなさい!」
「動くな!それ以上動いたら、俺も動かなくちゃいけない。この意味が分かるな?」
「ッ!?」
ランサーが背後で見張っているのを確認して、俺は外に出る。
さーて、勧誘を断ったし今日の晩ご飯が楽しみである。
数日後のある日の晩、パラケルススが舌打ちした。
「おい、びっくりだよ。いきなりどうした」
「最近、悪魔が鬱陶しくて」
「メフィストが?」
「いいえ、違うのです」
そうかいそうかい、ならば別の悪魔という訳か。
グレモリーの奴ら、監視でもしていると。
大方、うちの結界に四苦八苦しているのだろう。
「そんな些事はどうでもいい問題は、これだ」
「聖晶石のことですね」
それはいつ現れたのか分からなかったが、聖杯を出した時に杯の中に入っていた石についてだ。
どういう原理で、どうして石が出たのか。
もしその原理が分かればたくさんガチャを回せるんじゃねと思ったのだ。
「聖杯を調べた結果、マスターの魔力を蓄積し結晶化した事が分かりました。つまりマスターが作り出したようです」
「増やせるか?」
「無理ですね。一定量ずつしか吸収しないので一つにつき一月は掛かります。駄洒落じゃ無いですよ?」
「放置でいいけど一月掛かるログインボーナスか。これが現実の弊害か」
「えっ、ツッコミは……」
しねぇーよ。
そんなことより礼装どうした、礼装はよはよ。
まぁそんなパラケルススは置いといて、早速石を砕くことにした。
「よし、マシュ行くぞ」
「はい頑張りましょう」
マシュの盾の上で光のリングが一つ出来上がる。
さぁ、円環の理に導かれて……あれ、一つ?
「どういうことだってばよ……」
「先輩、剣が!剣が出てきました」
「これはアゾット剣のようですね……おや?」
パラケルススが、うそ私のアゾット剣おかしすぎっ!みたいな驚愕の顔をする。
俺にはボワッと光ってるだけの剣にしか見えないけど、概念礼装なんだろう。
ガチャで出たし、アゾット剣なんてあったかな……あっ!
「マスター、これから尋常じゃ無い魔力を感じるのですが」
「宝石剣ゼルレッチだ。無限に魔力を平行世界から供給する、ガチャでたまに出てくるアレ」
簡単に出たけど、魔術師からしたらふざけろと言いたくなるような代物だ。
ゲームだとそこそこでも現実で考えたらヤバいやん!遠坂さんちが血眼で解析させろって言ってくる代物だわ!
「所持するだけで四分の一程ですが私の魔力量が増えている気がします。あと、魔力供給量も……」
「無限に魔力を得られるんじゃ無いのか?」
「私ですら扱い難いことから、魔法の一種なのでは……」
「それを使えば根源でも目指せるんじゃ無いか?」
「くっ、マスターその話は私に効く」
あぁ、そうだった。
フラグメンツで裏切った記憶がFGOだとあるんだっけ、何の事かマシュは分かってないが取りあえず裏切ったことを後悔しているんだよと後で教えてあげよう。
そういえば、概念礼装で思い出したけどあの堕天使の羽はどうしたんだ?
「そういえば、概念礼装は作ったのか?」
「微妙な出来ですが、使い捨て程度には」
そう言ってパラケルススが赤い石を手に持って渡してきた。
なんだこのルビーみたいな赤い石は……俺は覗き込むように色々な角度から観察する。
微妙に弾力があるんだよな、本当なんだろう。
「これ、何?」
「賢者の石です」
「えっ?賢者の……石?」
「魂一つ分では使い捨てが精々ですがね」
「……そうだった、道具作成スキルEXだった」
前に兄貴にも言われたが、レア度と英霊のすごさは比例しないんだった。
これが賢者の石か、錬金術師の兄弟が探していた物と製造方法は一緒か。
「マスター、そんなのより一緒にやるニャ!」
「もっとだ!いいぞぉ!汝を抱擁せん!」
「スパルタクスは自分から当るか掴みしかしないから弱いんですよねぇ、喰らえ!」
「ボム兵とか汚ぇぞメフィスト!喰らいやがれモンスターボール!」
お前ら楽しそうだな、とゲームする彼らをジト目で見る。
えっ、お金ですか?俺のバイト代ですよ。
出費がすごい、畜生はやく黄金律の持ってる奴を呼ばなきゃ!
「テメェら、誰が買ったと思ってるんだ。負けた奴交代な」
「交代だと、そんな圧制には断る!」
「お前さっそく負けたのかよ、しかもまだやりたいのかよ」
「当然である。我が叛逆は永遠不滅」
このあと滅茶苦茶、スマブラした。
こないだのことを踏まえて、霊体化した状態で一人ずつ交代で護衛につく事になった。
なんで交代かというと、外に出たいらしいからである。
「イヒヒヒ、マスターこっちには止めましょう。嫌な気配がします」
「他の奴の忠告なら従うが、メフィストには従わない」
「イギャァァァァ!?」
護衛メフィストに従わず、散策しているとメフィストが悲鳴を上げた。
なんで散策していたかというと、シスターさんを探しているからである。
たしか、アーシアって子が死んじゃうらしいからな。
と思ってたら、横にいるメフィストが死にそう。
「大丈夫か、急にどうした」
「わたくしこの世界の悪魔と違いますから、聖なる物に敏感なのです」
「ほぉ、それで」
「この聖骸布みたいな物が、ダメージををを……」
仕方ないからヴェールを取ってやる。
そして、なんだこれと見ていたら、遠くからソーリーって聞こえてきた。
が、外人さんだ!?
「どうしましたマスター?おやおや、もしや英語が出来ないんですかぁ?」
「そういうお前は出来るのかよ」
「悪魔でサーヴァントですので、英語くらい出来ますよ。イヒヒヒ」
「お前、俺の漫画読んだな」
やってきた外人さんをメフィストに隠れながら見て思った。
あれ、この人がアーシアって人なんじゃね?