家に着いたのは夕方、つまり襲撃は夜だった。
えっ、深夜じゃ無いかって?早いほうがいいだろ、こういうのは……
月9までには帰りたいとか言うタマモに後三時間は大丈夫だと告げて教会に移動する。
よーし、俺マスターとして魔力供給頑張っちゃうぞ。
「目標補足。なんか飛んでるなぁ」
「堕天使、ですね」
「よし、メフィストとタマモは奴らに呪術スキルで攻撃だ!」
フフフ、俺はマスターだからステータスを見ることが出来るのだ。
俺の指示によって奴らも何かされたと気付き此方を向く。
「貴様達、レイナ―レ様をやったな!」
「そうに違いないっす」
みんなで空を見上げながら、やって来る堕天使に身構える。
堕天使は二人、裸にスーツのロングヘアーの痴女とゴスロリ金髪ツインテール。
なんだろう、堕天使ってエロとか趣味に走りすぎて堕ちた天使の集まりなのかな?
「痴女だあれー!」
「おい、裸の上からスーツってどうなんだ?」
「パンツ履いてないとかタマモでもドン引きニャ」
「わわっ、見えなーい!」
「アレキサンダーさんはまだ早いですよ」
ちょっと、ウチの子の教育に悪いだろクルルァ!
マシュが目隠ししたから良い物の、まったくもう。
「くっ、まぁいい。貴様らに何かされて癪だ。さっさと始末する、行くよミッテルト、ドーナシーク!」
「やれやれ、折角の奇襲が台無しだ」
「ヌッ!」
スパルタクスが此方を向いて、走り出す。
何だ!?と思うのも束の間俺を飛び越して飛んだ。
そして、空中で光の槍に貫かれるスパルタクス!
身代わり、また身代わりですか!?
「だ、大丈夫か?」
「弱者の盾となる以上の快感はない」
か、格好いいぞスパルタクス!よし、君に決めた!
「おっと、邪魔はさせねぇぜ。アイツが男気を見せたんだ」
「私以外は対空戦は不向きでしょ」
俺達の戦いが始まった。
最初に動いたのは、パラケルススだった。
「風よ、水よ、炎よ!」
「な、どこから!?」
「各属性の人工霊、私の使役するエレメントですよ。尤も私にとっては触媒などにも使う神秘ですがね」
聞き取れない速さでずっとボソボソ言いながら、腕を振るい指示を出す。
エレメントを使ったと言ったが、その前に高速詠唱で何やらしていたのは確かだ。
カラワーナと仲間に心配される、痴女堕天使の身体がエロゲの様に爆発して服が脱げていく。
マシュがハッとしてアレキサンダーの目を手で隠したのは英断であった。
流石堕天使、エロゲの世界の住人かよ。
「先輩、最低です」
「俺じゃ無い、パラケルススがやったのだ!」
「私は、よかれと思って……生かして捕獲はしないと」
「確信犯かよ!」
しかし、腐っても英霊。
戦いは一瞬だ、堕天使は爆発して服だけ無くして墜落。
あの高さ、勝手に死ぬだろう。
「余所見すんな、嬢ちゃん!」
「うえぇ、うちっすか!?」
兄貴、跳躍。
その高さは家を優に越え、飛行している堕天使の頭上に飛ぶ。
そして、槍を振るうと思いきやまさかの蹴りであった。
それにより、堕天使が地上に堕ちる。
あり得ない高さだよ兄貴、でも死の国に行くときに海とか渓谷を飛んでるんだっけ。
兄貴ってやっぱりやべぇわ。
「ままま待つっす!見逃して欲しいっす、何でもするっすから!」
「うん、今何でもって言った!」
「小娘が、もうちっと年取ってから出直してきな!」
「や、やめ――」
スパッと金髪ツインテールが空を飛ぶ。
たまげたなぁ、生首がフライしてる。
ケルトの兵士って容赦ないぜ。
「カラワーナ、ミッテルト!貴様ぁぁぁ!」
「いいぞぉ!いいぞぉ!」
「クソ、何故死なない!不死身かコイツ!」
「おお、圧制者よ!汝を抱擁せん!さあ、愛を受け取りたまえ!我が誇りを受けるがいい!ふはははは!愛!愛を!」
光の槍に貫かれながら、一歩一歩スパルタクスが前進する。
逃げれば良いのに、堕天使は攻撃を続けた。
それに対し、スパルタクスはその持っていた武器を投擲する。
「くっ!」
「甘いぞ、圧制者よ!」
「飛んで、ぐあああああ!?」
避けたところに背後から忍び寄る影。
それは抱擁だった。
スパルタクスは堕天使のいる場所まで飛び、翼を抱えるように抱きついた。
英霊にとってあの程度の高さは余裕ってことなのだろうか。
そして、そのまま抱擁し続ける。
「ぐぎぎぎ、がぁぁぁぁ!?」
「許せぬ物か。圧制者とは永遠に相容れることはない。死ぬがよい」
バキバキと折れる音がした。
腕が、羽が、背骨が、折れて曲がってしまう。
そして、数秒の締め付けの後にふと姿は消え、黒い羽だけがゆっくりと堕ちてきた。
「結局、ずっと何も見えなかったよ」
「すみませんアレキサンダーさん、でも教育によろしくないので」
「……よし、気を取り直してアーシアを助けるぞ」
人外の奴らだし、もっと苦戦すると思ったが英霊の名は伊達じゃなかった。
そうだよな、序盤だもんな。
レベル1のモンスター対カンスト勇者みたいなもんだもんなぁ。
勝てる訳無いよなぁ。
教会に入ると、さっきぶりの神父とアーシアさんがいた。
「テメェ!よくもノコノコやって来たな」
「先輩」
「あぁ、彼女同伴かリア獣が!ぶっ殺して、テメェの前で犯してやろうか!あぁ!」
服は血みどろだが、怪我は無かった。
恐らくアーシアさんの神器で治したのだろう。
「アーシア、無事か!」
「おおっ、今度は何だ?」
俺達が神父と睨み合っていると、後ろの扉がバーンと開かれる。
そして、そこには転生者である兵藤がいた。
「サーヴァントがこんなに……やっぱり、先に原作に介入して」
「兵藤先輩、ちっすちっす」
「何だ坊主、コイツも知り合いか?」
いや、こんな所で会うとは奇遇だな。
まぁ、そんなことよりサクッと終わらせよう。
「兄貴頼んだ」
「なんか似たような場面思い出すな。退きな餓鬼、テメェが触れていい女じゃねぇぞソイツは」
「ハァ?アンタ、何様の――」
兄貴の槍が壁に突き刺さる。
同時に、神父の肩に傷が新しく出来た。
あぁ、シンジ君と重ねて見てたのかね。
「ひ、ひぃぃぃぃ!」
「だ、大丈夫かアーシア!」
ビビって窓をかち割って逃げていく神父。
俺たちが追い払った様子を見ていた転生者君が、走り出してビクビクしているアーシアさんに駆け寄った。
しかし、何故かフーワーユーって言われてる。
知ってる知ってる、アレでしょ、テメェ何者だって意味だろ。
「なんか凄い英語で会話してるけど、誰か分かる人」
「男なら、コイツだろ」
兄貴が拳を掲げて、ニィっと笑う。
肉体言語ですね分かります。
パラケルスス以外納得の表情だ。
そういえば、メフィストはなんでこういう時いないんだよ。
「私が行きましょう」
おお、やってくれるかパラケルススと思っていると、近付くパラケルススに何やら叫ぶ転生者君。
「日本語でおk」
「悪魔は確か言語に堪能になる、そういう特典があるらしいです。メフィストさん調べです」
「転生者君、チートかよ、チーターやないの」
転生者が悪魔に転生、何回転生するんだよ。
それでなんでパラケルススに威嚇してんの、野生動物?
案の定、なんかの魔術で動けなくされてるし訳が分からないよ。
「マスター彼女を保護しました」
「気を失ってるけど」
「眠らせました。ここでは邪魔が入りそうですし」
起きて知らない場所に連れてかれたらびっくりすると思いますが。
これだから無自覚黒幕系は……。
「い、いけませんでしたか?」
「大丈夫、よし撤収!」
あ、ありのまま起きたことを話すぜ。
速攻突撃したら転生者に絡まれた。
何を言ってるのか分からないと思う、俺も分かってない。
原作の進行とか主人公とか関係ない、尤も迅速な方法でスルーしたぜ。
帰宅、何やらパラケルススが魔法陣を作成。
でもって中心にアーシアさんを設置。
「何してるの?」
「ホムンクルスのように言語を植え付けようと思って」
「安全?」
「えぇ、日本語が喋れるようになります。オプションで、ドイツ語中国語ロシア語もサービスしますが」
「サービスとかいらんわぁー」
そりゃ、そうか。
ホムンクルスがいきなり喋るためには短い期間で学習する必要があるもんな。
それくらいの技術あっても可笑しくないのか、魔術師ってすげぇわ。
「こ、ここは……」
「すごいぞ、パラケルスス!日本語喋ってる」
「……キャァァァァァ!」
その後、急に悲鳴を上げる物だから落ち着かせるのに苦労した。
お、お前のせいだぞパラケルスス!